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異世界転生は履歴書のどこに書きますか  作者: 打段田弾
「激動のグランツアイク」編
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戦いのレシピ side.道周

あらすじ

ミノタウロスはやはり強敵であった。その体躯に筋力、恐るべく再生能力を持つ強敵を前に、道周は突破口を見出す。

「何だ、あの怪物は……?」


 眼前のミノタウロスを捨て置き、不覚にも道周は天空の異常を見上げていた。

 ガーランドロフの住まう極彩色の宮殿からは、止めどなく赤黒い「何か」が噴出し続ける。遠目から見ても分かる怪物の異形は、ミノタウロスの比ではない。

 道周が持つ現代日本の知識を総動員しても、その怪物を形容する言葉は一つしか思い当たらない。


「あれは……、ジャバウォックか?」


 道周が口にした怪物の名は、現代日本でも形容しがたい空想種の名である。

 ジャバウォックとは他の空想種のように「これ」といった確固たる形は存在しない。語る者によればドラゴンのような形を取る者もあれば、蛇頭やトカゲに他動物を連想させる場合もある。

 しかし、語る者全てが口を揃えるのが特徴が存在する。

 「ジャバウォック」という怪物とは、すなわち「殺人衝動の塊」である。ジャバウォックとは、捕食のためではなく、本能的に人を殺すのである。

 目の前に出現した怪物は、異形に奇形を重ねたような、既存の生物の枠を超えている。


「「「Burubbb!」」」


 左右非対称の翼を広げるジャバウォックは、目下の道周に目もくれずに遠方を見据えている。その視線の先、遥か遠くにはグランツアイクの街の数々があった。


「あのジャバウォックの群れは、話にあった「ガーランドロフの企み」の正体か? だとしたら、協力者が存在する……。そいつが魔王の関係者か!」


 ジャバウォックの群れを観察し、道周は推論を立てる。その立論に自信を持った道周だが、今は思考だけをしている場合じゃない。

 丘の向こうへ消えていった爺さまの心配はあるが、ジャバウォックの群れが爺さまに構う様子もない。その動きの動向は伺い知れないが、目下の脅威として対処する相手ではないと切り捨てる。


(グランツアイクの街に向かったジャバウォックは、バルバボッサやモニカが対処してくれるだろう。宮殿に潜入したリュージーンたちとの合流もしたいが、今はミノタウロスのことだけを考えないとな……)


「GuaAAA!」


 道周の考えに共鳴したように、ミノタウロスも雄叫びを上げる。粗暴に大地を蹴り出して、牛角を振り回して二足で疾走する。


「来い……!」


 道周はミノタウロスの猛進に対して脚で対抗する。正面衝突を徹底的に回避し、ヒット&アウェーで一撃離脱を試みる。

 ミノタウロスは巨腕と鉄拳を連打し、道周はギリギリのカウンターを繰り出す。

 しかし魔剣を以てしても深手は難しい。浅い傷であれば跡形もなく回復し、深手を与えても揺らぎの一つも見せない屈強さを見せつける。


(硬すぎるだろ……、先にこっちの体力が尽きそうだ……)


 絶えない攻撃の最中、道周は内心で歯噛みした。その思いの通り、道周はすでに額に一杯の汗を流している。止まることなく捌き続ける脚にも乳酸が溜まり、泥濘にあるような重さが圧し掛かる。

 対するミノタウロスは、多少の裂傷や出血などでは止まらない。屈強な巨躯と重機のような思い鉄拳で道周を追い回す。

 埒の空かない攻撃の中で、道周は深い吐息を吐き出す。疲労に歪む視界の中で、一条の光明が差し込んだ。


(待てよ、硬い肉を切るときは確か……)


 道周が脚で掻き乱し続けたことが、突破口を切り開く。

 疲労で乱れる呼吸が酸素の供給を不安定にさせた。脳に届く酸素が減ると、思考が乱れるのは必定。思考に乱入した、一見無駄とも思える考えが、この場を覆すことだってある。


「この手に懸けるか……!」


 脳裏を過った作戦に、道周は悪戯な笑みを浮かべた。

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