謎の二人組
大地母神教団がある場所へ続く街道をひたすら歩いていると、妙な二人組と出くわす。
真っ黒なフードをかぶったふたり連れだ。
最初、親子で巡礼のたびにでも出ているのかな、と思ったが違うようだ。
どうやらふたりとも成人しているようで。
背の小さいほうの女性の声は明らかに大人のものだった。
「失礼、大地母神の神殿へ続いている道はここで間違いないかね?」
大人というよりもかなり老齢というか、野太かった。よく耳を懲らさねば男と間違えてしまうかもしれない。ちらりとルナマリアを見ると彼女は「女性ですよ」と言った。
「この道はたしかに大地母神の神殿に繋がっています。巡礼ですか?」
「似たようなものです」
長身の男性はそう答えた。こちらのほうは女性と聞き間違ってしまいそうなほど綺麗な声質をしていた。正反対というか、真逆というか、変わった二人組だな、というのが第一印象だった。
変わってはいるが、悪い人たちではないようで、道を教えると干し肉と干し茸をわけてくれた。なんでもそれぞれの里から持ってきた逸品とのこと。有り難く頂戴すると、彼らをお茶会に誘った。
僕たちも大分歩いてきたし、彼らの服装は汚れていた。疲れていると思ったのだ。彼らは互いに顔を見合わせると、なにかごにょごにょと相談を始める。しばし、話し合うと意見はまとまったようだ。
「せっかくなので頂戴いたしましょう」
その答えを聞いたルナマリアは、にこにことテーブルを設置し始めた。
歓談をしながらルナマリアの入れてくれたお茶をゆったりと飲む。その間も二人組はフードを脱ぐことはなかった。先ほどからの様子を見るに、なにやら警戒しているようだ。
「私たちはそんなに怪しいでしょうか?」
しょんぼりなルナマリア。
「まあ、神々の息子に、盲目の巫女だからねえ」
慰める僕。
致し方ないといえば仕方なかった。
しかし二人組は警戒はするが、敵対はしない。自分たちのことは一切語らないが、自分たちが旅してきた道の情報や、他の町の情報は包み隠すことなく教えてくれた。
途中、雷雲を見かけたので雨が降るでしょう、とも。
それは有り難い情報だった。僕たちは早く宿場に向かうため、茶器などを片付け始める。彼らも手伝ってくれたのでそのまま一緒に神殿に向かうのかと思ったが、もうしばらくゆっくりしていくと主張する。どうやら一緒に行きたくないようだ。
「……なにか事情があるのでしょう」
その意見に相違がなかったので、僕たちはそのまま街道を歩いた。
僕たちの後ろ姿をフード越しに見つめるふたり。
長身の男性のほうが申し訳なさそうに言う。
「気を悪くさせただろうか」
小柄な女性は肯定する。
「だろうね。でもあたいたちは逃亡の身、目的を達成するまで他者と交わることは出来ない」
「詮ないことだ」
長身の男がそう言うと彼らも街道を歩み出す。




