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色落ち

作者: めがふろ

 

音楽を聴く。

映画を観る。

小説を読む。

今まで僕の生活の中で輝きを放っていたそれらはめっきり色を無くしてしまった。


日差しが眩しくてカーテンを閉めた。

モノクロのシーツの皺を伸ばして綺麗に畳む。

銀色のタンブラーにお湯を注ぎインスタントコーヒーを作る。

僕が求めているのはブラックのコーヒーなんかじゃない。

黒は僕の体の隅で増殖をはじめ、その濃度を増していった。


甘くてまろやかなカフェオレが良いだろうか。

口の中に入れると途端に弾ける清涼飲料水。

欲求は理解しているが、行動に移せないのが僕の悪い癖だ。


レギュラーのタバコに火をつけ、煙を燻らす。

暗い部屋の中でその煙は行くあてもなく上空に留まる。


僕の生活の中から色は失われた。

生まれつきの色弱であった僕が色を求めたことが間違いだったのかもしれない。


10歳で始めた剣道は赤を教えてくれた。

15歳で始めたベースは青を教えてくれた。

18歳から付き合い始めた彼女は黄色を教えてくれた。


色弱な僕でも、心の中には色彩豊かな世界が広がっていたはずだった。


灰皿のタバコとは別の所からケムリが出ている。

暗い部屋の中でそのケムリもまた、行くあてもなく上空に留まる。

ケムリは次第に部屋に充満していき、僕の鼻腔から体内へと入って行く。


額がじっとりと湿り、部屋の気温が上がっているをの感じる。

黒はすぐそこまで迫っていた。


人は色を求める。

いつかやってくる黒から逃れるために。

色を手に入れられない人間は黒に染まるしかないのだ。


黒は僕の体を包み込んだ。

ああ、これでもう色に憧れる必要もなくなる。


色落ち。

僕は黒を求めた。

さようなら。







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