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第九十七話 「寄り道と約束」

くそう、なかなか、話が書けなかった影響で短い…けど、どうにか、投稿です。(短くて、申し訳ないです)

「はぁっ!」


「キュイ!」


 レオンが目を覚まし、食堂へと向かい始めた頃。シュトゥルム領に近い森にて気合いの声とティアの剣と角兎の角ぶつかり合う音が響き、僅かな拮抗の後に飛んだ事で足場がない角兎が姿勢を崩す。


「そこっ!」


 そのタイミングを見逃さず声と共に放たれた剣閃によって頭部と胴が分断された事によって角兎の体から力が抜け、地面へと墜ちる。対峙していた魔物、兎の額にユニコーンの様な角を持つ雑食性の魔物、角兎(ホーンラビット)が確実に倒した事を確認した後、視線を切り息を整える。


「すぅ‥‥‥はー…よし、次!」


 その間に俺達は魔法でティアへと近づこうとする残りの角兎に対して足止めをする。

 ティアが倒したのを含め、現在倒した魔物の数は全五匹のうち二匹で。息を整えたティアは俺達が足止めをしていた三匹の内の一匹へとあっという間に距離を詰める再び剣を振るい、その様子を俺は風を視る者を使いながらティアの動きを観察していた。


(‥‥‥‥)


 この戦闘ではティア以外は俺を含めた全員が角兎に対し妨害こそすれど、一切攻撃はしない。しかしそれにはちゃんとした理由があった。それは、ティアの鍛錬の方向性を決める為で、同様の事をフェイにも先ほどして貰い、フェイに関しては大まかな方向性は決まり、今の戦闘からティアの方向性も固まった。


(‥‥やっぱりティアは、手数と速度重視だな)


 夏季休暇中に行う鍛錬の大まかな方向性が俺の中で決まったのと、ティアが残っていた最後の角兎倒し終えたのとほぼ同時だった。


「ふ~、これで全部かな?」


「ああ。よし、それじゃあ討伐部位を回収するぞ」


 指示を出すとエル達は手馴れた様子で素早く討伐の証明となる角兎の角を切り取り、あまり慣れていないティアとフェイは近くでその様子を見ている中で、俺も近くにあった角兎の角を切り取り回収していき、一通り回収を終えると俺達は再び馬車へと乗り込むと馬車を走らせ始める。

 向かう先は、シュルドだ。そして馬車を走らせていると、音も無く俺の隣に座る人影があった。


「どうした、ティア?」


「うひゃあっ!?」


 正面を向いたままに話しかけると、気づかれてないと思っていたのだろう。腰掛けた直後に話しかけたせいか、座席の上で数センチ程飛び上がった後、まるで今合った事を無かったかのように再度座り直したが、その事に俺は一切触れないでいると、表面上は落ち着きを取り戻したティアが尋ねてきた。


「ねぇ。‥‥‥いつから気づいてた?」


「扉を開けたところ辺りからだな」


「思いっきり最初じゃない‥。むぅ、気づかれてないと思ったのにな~」


「そいつは残念だったな?」


「本当だよ~」


 最初から気づかれていた事にティアは何処か悔しさを発散するかのように足を揺らし、それに対して俺は変わらず正面を向いたまま苦笑を浮かべながらも、ティアが何かを表面上で取り繕っていると、何となく感じながらも俺もそしてティアも何も言わずにしばし時間が過ぎた時だった。


「ねえ、シルバーが魔物を倒したのは、いつだったの?」


「…えらく唐突な質問だな?」


「どうなの?」


「そうだな…俺が初めて魔物を殺したのは確か、六歳ごろだったかな?」


 俺がこの世界に転生して最初に殺した魔物。それはラーガと呼ばれる赤い体毛が生え、蛇のような色の横縞が中央に横一文字になっているのが特徴の虎の魔物。それが初めて殺した魔物だった。


「六歳で、魔物を倒したの?」


「ああ」


 俺の言葉の内容に驚いたのだろう、ティアは改めて尋ねてきたので、俺は首肯し、それを見たティアは更に尋ねてきた。


「その時は、どうだったの…?」


「そうだな…まあ怖くはあったし、申し訳ないとも思ったけど、そこまでの忌避感はなかったな」


 あの当時、前世とは比べれないほどの強さを手に入れ、魔法も使えるようになっていたとはいえ初めて魔物と戦った時確かに恐怖と申し訳なさもあったが、何故か忌避感だけは無かったが、その辺りは前世でのいじめの影響で何かが壊れた影響なのかもしれないとあの時は考えたが、それ以降気にする事は無かったので、すっかりと忘れてしまっていた事だった。


「そう、シルバーは強いんだね…」


「いや、これは別に強いとかは関係ない、寧ろティアの方が正常なんだよ」


「え…どういう事?」


 自分もそうならないとと思っていた所での俺の言葉が予想外だったのか、ティアが見てきているのを分かりながら俺の考えを言い聞かせるように伝えていく。


「忌避感を抱かないのは割り切れる人間か、感性が摩耗したか、壊れているかのどれかでしかない。だから俺はティアが今も感じている感性を無くさないで欲しい。まあ、戦わせた俺が言うのはおかしいけどな」


「それは違う! あれは私が決めた事だからシルバーは別にっ!」


「ありがとうな」


 一旦。正面からティアへと視線を向け、それ以上言わせない為に頭を優しく撫でる。


「‥‥…いじわる」


 撫でた事でそれ以上言わせないという俺の考えに気づいたティアはそのまま横に向いてしまったが、それでも話を聞いていない訳ではなさそうだったので、優しく頭を撫でながら伝える。


「だから、この場で約束してくれ。命を奪うその感覚は絶対に忘れないと。約束しないと手を除けないからな?」


「…分かった。約束する。だから頭から手を除けて」


「ああ」


 顔は見えなかったが、耳に赤みが見えた事から流石に恥ずかしかったのかなと思いながらティアの頭から手を下ろし再び前を向き、五分ほど過ぎた時、落ち着いたのか唐突に再びティアが話しかけてきた。


「さて、それじゃあ勝手に私の頭を撫でたシルバーには罰として一つ私の言う事を聞いてもらうわよ?」


 正直。言わせないためとはいえティアの頭を何も言わずに撫でたのは悪かったかな? と思っていたので、特に拒否することなくティアの提案を受けることにした。


「…まあ、出来る範囲であれば別に構わないが…?」


「そう、じゃあ‥‥ん」


 そう言うとティアの左手が俺へと差し出された。


「ええっと?」


「んっ!」


 訳が分からず視線をティアへと向けると言葉短くそう言って差し出した左手を揺らし、その様子を見てようやくそれが何を意味するのかを理解できた。


「…握れ、ってことか?」


「‥‥‥‥」


 ティアから帰ってきたのは無言。だがそれが正解だと分かった俺は左手で手綱を持ち空いた右手をそっとティアの左手に重ねる様に置くと、ギュッと、まるで子供が親の手を離さないと感じに握ってきて、それによってティアの手が震えている事に気が付きはしたが、その事には気づかないふりをしつつ、俺とティアはシュルトの街にかなり近づくまでずっと手を繋いだままで過ごしたのだった。

今話は、どちらかといえばタイトルの『約束』がメインみたいな感じになった感じです。

そして、次話ではようやくシュルトにシルバーたちが到着します。そして、シュルトにはあの方もいるので、次話で登場出きればと思っていますので、楽しみに待って頂けると嬉しいです。(幸い彼女は夏期休暇中は出番はありそうですしね…ボソッ)

最後にですが、評価、感想、または誤字脱字など送って頂いた方々、本当にありがとうございます。ブックマークや評価が気づいたら増えていたので嬉しいと同時に申し訳なさもありましたが、それをバネに少しでも良いものを投稿できるように今後も頑張って行きますので、宜しくお願いします。

長くなりましたが、皆様、宜しくお願いします。では、また次話で。

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