第九十六話 「相談と出発」
ふう、間に合いました…原案が出ると書きやすいですね……そうでなければ…その先は地獄です…投稿です。…短いのは、申し訳ありません。
※八月二十一日に少しばかり増量しました(理由としては‥‥区切りが悪いな、と感じたからです)
平和な午前中の授業を終え、リリィ達と合流し、食堂へと向かいながら朝から考えていたことを三人にも話す。
「‥‥‥‥ってのを考えているんだが、どう思う?」
「私はすごくいいと思います!」
「はい、その方がより実戦に近い練習ができますから」
「ですね!」
俺の話を聞き終えるとリリィは即座に賛成、ルヴィとレティスは実戦的な練習が出来るという点で嬉しかったのか、こちらも賛成してくれた。
とそうしていると目的の食堂へと到着した。そして食堂の入り口でリリィ達に話した事を伝えようと考えていた三人の内の二人、ティアとフェイの二人が食堂の入り口で立っており、俺達を見つけるとティアが手を振ってきた。
「あ、遅いよシルバー!」
「いや、遅いもなにも約束なんてしなかったはずだが…?」
念のためにエル達に視線を向けると全員が首を横に振ったのを確認し、俺は再度ティアへと向き直る。
「あ、あははは…そうだっけ?」
「…ティア、嘘をついたのかな?」
「ええっと…」
助けて!視線で救援要請をしてくるティアと疑っているフェイの様子から見るに、恐らくティアが俺と約束したとレオンとフェイに言い、三人でいち早く食堂にきて俺の事を待っていたと言うところだろう。
(はあ、仕方ないなぁ)
しかし、そうあるなら此処にいないレオンがテーブル確保しているはずなので、ここは救援要請を受諾することにしよう。
「…あ! そうだったな、悪い悪い。すっかり忘れた」
「! も、もう! 今後はきをつけてよね!」
そう言いながら視線ではありがとう!
とお礼を言ってくるティアに同じく視線で大丈夫だと返した後、フェイへと顔を向ける。
「悪いな。待ってもらって」
「いいよ。それにそれほど待ってなかったからね」
苦笑を浮かべながら俺にそう言うフェイの様子から、恐らくフェイはおおよその真実に気づいていたのだろうが、それを掘り返す気はないようだった。
「さて、そんじゃあ何時までも此処に立ってないで、テーブルを確保してくれてるレオンの所に行こうか?」
俺の提案に二人とも異論はなく俺達は一緒にレオンが待っている食堂へと入ると、お昼時という事も合わさり、混雑と言う言葉が相応しい状況が広がっていたなかで、テーブルの争奪戦も現在進行形で行われているのだが、その中で俺達全員が座れる大きさのテーブルを確保した状態で待っていたレオンが俺達に気が付いたのか、体を起こし手を振ってきた。
「あ、お~い! 遅いぞ皆!」
「すまんレオン。何も頼まずに席だけ取ってもらってて」
「いいさ。気にすんな! けど‥‥流石に腹減っているから、急いでもらえると」
「そうだな、じゃあ俺が残っておくから皆は先に頼んできてくれ。ああそれと、食べてるときに相談したい事もあるから」
「「「分かりました!」」」
「じゃあ、先に取って来る」
「「「?」」」
まだ話をしていないレオン、ティア、フェイとの三人は不思議そうにしながらもそれぞれ本日の昼食を注文する為にテーブルを離れて行き、そして少し時間が経ち、一足先に戻ってきたリリィと入れ替わる様にして俺も注文を擦る為にカウンターへと向かった。
「それじゃあ」
「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」
全員で手を合わせた後、俺はそれぞれの昼食を食べ始める。俺が今日の昼食に選んだのはチキン南蛮擬きにパン、サラダにトマトがふんだんに使われたスープで。
まずは口を潤す為にトマトがふんだんに使われ事によって爽やかな香りのスープをスプーンで一口含む。
(このスープ、結構さっぱりしているな)
そんなスープの感想を抱きながら次はメインであるチキン南蛮擬きの一切れにフォークを刺し、かじるととパリッと触感が伝わり、噛んでいくとパリッとした所とたれを吸い込んだことによってシナッとしている部分が口の中で混じり合う。そしてそこにパンを一口食べ、スープを一口飲んだ。
(うん、美味い)
チキン南蛮擬きは、恐らく敢えて味に僅かなムラが出来るようにたれをかけたのだろう。それによって程よい味となり、そこにパンを食べる事でパンのほのかな甘さによって両者のバランスが取れ、そして最後にトマトがふんだんに使われたスープによって口の中の油分が流された。
それは正に黄金のルーティーンともいえるもので、気が付けば空腹であった事も影響してかあっという間に食べきってしまった。
「ふぅ~」
「「「「「「‥‥‥‥」」」」」」
ふと視線を感じ周りを見るとエル以外の全員が手を止めて俺のことを見ていた事を不思議に思い、俺は尋ねる。
「どうかしたか?」
「「「「「「いや(え)、べつに」」」」」」
「?」
帰ってきたよく分からない反応に俺は内心で首を傾げながら水を飲んだのだが、実はその時六人が共通して思った事。即ち「「「「「「あの短時間で、あれだけの量を食べた!?」」」」」」という事に俺が気づくという事は無かった。
「ふぅ、ごちそうさまでした。さて、それじゃあそろそろシルバー、そろそろ私達にも話してもらえるかしら?」
俺が食べて終えて少し時間が過ぎた頃、皆がそれぞれ粗方食べ終えたのを確認したティアがそう切り出してきたので、俺は三人にはまだ伝えていなかったある提案を伝える。
「実はな、夏季休暇中の間なんだが、俺の実家に来ないか?」
食堂で話をしてから、一週間後の今日。ごく普通で平和な学院生活を過ごし、いよいよ昨日、学院の修了式を終えた俺達は事前に用意していた馬車に必要な荷物を積み込み、後は出発するだけという状態となる。とはいえ今回は俺達だけでの帰省、という訳では無かった。
「お待たせ~!」
「すまない。待たせてしまったかな?」
そう言いつつ荷物を持って姿を現したのは、ティアとフェイの二人だった。
「いや、丁度いいタイミングだ。ところで、フェイは熱くないのか、と言うかなんで制服なんだ?」
夏季休暇に入ったお陰で制服を着る必要は無くなった影響か。麦わら帽子に動きやすいサマードレスを身に着け、健康的な白い肌が見えるティア。そして対照的に、夏季仕様の薄手の学院の制服を着崩す事無くしっかりと身に着けていたフェイの二人だった。
ティアとフェイ、それぞれの荷物を預かり、馬車の荷台に積みつつタイミングで尋ねると、フェイは苦笑を浮かべた。
「いや、実は、それほど私服を持ち合わせていなかったからね…目についたのがこれだったんだ」
「そうなのか? 言ってくれれば俺のを貸すぞ?」
「ああ、大丈夫。少ないと言っても大丈夫なくらいは持ってきたから」
「そうか。まあ、もしもの時は言ってくれ」
「ああ、助かるよ」
そんな事を話しながらしていた荷物積みの作業は直ぐに終わってしまい、俺はそのまま御者台へ、エル達とティア、フェイは後ろの馬車へと乗り込んだのを確認する。
「よし、それじゃあ出発するぞ?」
「うん」
「はい!」
「どうぞ」
「出発だ~!」
エルから始まり、ルヴィ、レティス、リリィの返事が聞こえたので、後の二人にも尋ねる。
「ティア、フェイ。いいか?」
「うん。大丈夫~」
「僕も大丈夫かな」
「よし、じゃあ行くぞ!」
手綱を持ち、振るうと馬が歩き始め、最初はゆっくりとだったが徐々に車輪が一定の間隔で回り始めると時折小さな揺れがあったが、それも気にならなくなる程度の揺れで、晴れ晴れとした天気の中、俺達は順調に家へと向けて出発したのだった。
「ん‥‥んん‥…朝か‥‥」
眼を開けて最初に見えたのは入学した時から眼を覚ますたびに見る見慣れた天井を見た後、俺、レオンハルトはベットから体を起こしカーテンを開けると太陽は中天にかなり近い位置にあった事から、かなりの時間眠っていたようで、けど幸いにもそれだけ眠れた理由は直ぐに思い出せた。
「…そうか、フェイとティアはシルバーと一緒に実家に行ったんだっけ?」
一週間前、食堂でシルバーに実家への帰省に際して一緒に来ないかと俺達三人も誘われた。
「実はな、夏季休暇中の間なんだが、俺の実家に来ないか?」
「え‥‥シルバーのって、実家ってたしかエクセリーナ魔法王国の貴族、だったわよね?」
「ああ‥‥まあ、そうだな」
ティアのその言葉に苦笑い気味の表情を浮かべたシルバーを見て恐らく俺だけじゃなくティアやフェイも改めてシルバーは俺達とは違う世界の人間だという事を改めて思い出していた。
ヴァルプルギス魔法学院内では、貴族であろうが関係なく完全な実力主義の学校だ。故に表立って貴族が家の力を誇示することは出来ない。
だが、学院という箱庭より外の世界では貴族による権力や家の名と言う力の誇示を使う事が出来る。
そして、決してそんな事をしないという事は分かっていても改めて言われるとシルバーは、いやシルバーだけじゃなくその周りの少女達も俺達とは住んでいる世界が違うのだと、俺は改めて感じていた。
そんな俺を他所にティアは興味津々とばかりに質問をする。
「それならさ、シルバーの家の領地内に湖とかある?あと貴族って学院にもあるようなお風呂を持っているって聞くけど、それって本当?」
「湖に関しては良く分からないが、お風呂に関しては露天風呂を自作したからあるぞ?」
「お風呂を‥…自作…?」
シルバーからの予想外の答えにティアは本当?といった感じでエルさん達に視線を向けると、エルさん達は迷いなく首を縦に振った。
「うん、シルバーが頑張って作った」
「そうですね。湯船も大きいですから、開放的で気持ちいいですよ?」
「ですね」
「はい」
「あはは‥‥そうなんだ…」
エルさん達四人からの予想外の事実と回答にティアは苦笑を浮かべる事しか出来ない様子で、俺とフェイも驚きの表情を浮かべながらシルバーに視線をシルバーは少しばかり恥ずかしそうに視線を横に逸らし、その事から見て嘘の可能性は皆無だったが、気を取り直したのかシルバーが咳払いをする。
「んんっ。それでなんだけど、三人はどうする? 俺の家に遊びに来るか?」
「面白そうだから私は行くわ!」
「う~ん…ティアだけだと不安だから、僕も行こうかな…レオンはどうする?」
「そうだな‥‥‥悪い、今回はパスさせてくれ」
ティアとフェイは付いて行くことにしたけれど、俺は断ったのだった。
「ええっ! なんで? せっかくの貴族の家に行けるチャンスなのよ!?」
「まぁまぁ。落ち着け、ティア」
「むぅ~」
なんやかんや言いながらも俺も一緒に行くと思っていたのか、いち早くティアが抗議の声を上げたが、すぐにシルバーが宥めた事でティアは不満げな表情を浮かべながらも腰を下ろし、それを確認した後、シルバーが俺を見てきた。
「レオン。答えなければ答えなくていいんだが、断るのには何か理由があるんだろう?」
俺が何の理由も無く断るはずがないと信頼した眼で俺を見て来るシルバーの信頼に応える為に俺は断った理由を口にする。
「ああ。俺は夏季休暇中に自分なりに自分を鍛えたいと思ったんだ」
そう言いながら拳を握りつつ思い出したのは邪龍グレンデルと戦った時の事。あの時は夢(?)の中の人物の助けとシルバーの力もあって撃退する事が出来た。けれど俺はアレは自分の力で撃退出来たのではなく、誰かの借り物の力で勝ったとして思えなかった。もちろんシルバーの力も無しに勝てなかっただろう。けれどあの戦いを終えて俺は自分自身の力の無さを実感した。そして、シルバーの帰省に付いて行けば鍛錬で強くなれると俺も思った。けどそれは何か違うと思い、だからこそ、まずは自分で鍛えてみたいと思ったのだった。
「…分かった。頑張れ」
「ああ」
シルバーは何かを感じたのかそれ以上深く聞いて来るようなことは無く引き下がり、それは俺にとってありがたい事だった。
と、合った出来事を思い出しながらと動きやすい服装に着替えた後、気合いを入れる為に、掌と拳を打ち合わせる。
「…っし! 取り敢えず食堂で何か食ってから体を動かす事にするか!」
まずは体を動かす為に必要な栄養を取るために俺はまず食堂を目指した。
今回は、学院での帰省に際しての相談と出発の場面を書き出しました。相談のところを省きましたのは、まぁ、後に書き出そうかな?と思いましたので、今回のような書き方となりました。
そして、次話なのですが、まあ、異世界で帰省と行ったら絶対に安全とは言えないですからね(意味深
まあ、そこら辺を次話で書き出せればと思っています。
それと、最近は猛暑などによって体調を崩しやすくなっていますので、皆様もお気をつけください。(私は頻繁に崩してますが…)
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長くなりました、今回はこれにて失礼します。また次話で。




