第九十四話 「エピローグ」
うう。今回の話も、お、すぐ書けそう、という状態から一変…なかなかの難産でした。やはり、エピローグは次の話とかの辺りも考えないといけないので難しいです。
まず、先に事実を言っておくと。俺達(俺とレオンは除く)は無事に救助に来た学院長率いる救助隊に助けられ、魔力の消耗と怪我を大小ともに傷を負っていた俺とレオンは治療院へと入院する事になったらしい。
というのも、気絶してから、俺が目を覚ましたのは三日後だったらしい。
そして、俺が眠っている間にレティスやリリィ、そしてエルにティア、そしてフェイ達が学院長から今回の事に関しての事情聴取があった事を、つい今しがた目が覚め体を起こした俺はベットの傍の椅子に座るエルに教えてもらったのだった。
「なるほどな…にしても、俺は三日も寝たままだったのか…」
「…うん。私もだけど、みんな心配してた」
「悪かったな、心配かけて」
そう謝りながら寝ているベットの横にある椅子に座るエルの頭を優しく撫でると、エルは気持ちよさげに目を細めたかと思うと、途端にシュンと落ち込んでしてしまった。そしてエルが落ち込んだ理由については察していたので、慰めの意味も込めて少しばかり強引に頭を撫でる。
「シルバー?」
「気にするな。誰も死んでない。それが今回の結果なら、それでいいだろ?」
「でも、今回は私のせいでわっ!」
「はい、それ以上は言わない!」
その後も気にしそうだったので、取り敢えず何も言わさない為にエルの手を引っ張り、ちょうどエルの頭を俺の足の腿の辺り来させると、有無を言わさない為に俺はただひたすらエルのさらさらした髪を撫で続ける。正直なことを言えば、グレンデル、そしてエルを連れ去った今回の主犯であるメティス・ブラッドとラークが読んでいた魔女の動向と目的が気になりはした。
が今は脇に置いておくことにしてエルを慰める事に専念する。そして同様にどうやら俺が気絶すると同時に砕けた黒色の大剣に関しても、柄だけは残っていたので後々、作成者であるイシュラに話さなければならない事も、今は脇に置いておく。
「今回のは、エルが悪かったわけじゃない。いいな?」
「…うん」
それで諦めたのか、エルは何も言わずにただただ俺に頭を撫でられ続けたのだった。
そして、時間にして十分ほどの間だったが、幾分かそれによって癒され落ち着いたようで、エルは元に戻っており、体を起こすと椅子へと再び座ると、俺とエルはお互いに特に話す事は話したので、ただ静かで穏やかな時間が過ぎる、という事は無く、【風を視る者】で俺は自分の病室に近づいて来る数人に気が付き、それから少しして部屋の扉が開かれた。
「お~す! いてっ!」
「もう、病室なんだから静かにしなさい!」
まず部屋に入って来たのは昨日治療院を退院したレオン、そしてティアとフェイで、レオンは入室直後、ティアに頭を叩かれて睨み合いへと発展といった一連の流れを展開、その様子を見てフェイは仕方がないといった感じで苦笑いを浮かべた後、俺に尋ねてきた。
「ははは…調子はどうだい、シルバー?」
「ああ、問題はない」
「そうか。それは良かったよ」
答えながら安心させる為に手を動かすと、その様子を見てフェイは安心したかのようにやけに女性的な柔らかい笑みを浮かべた、その事に一瞬ドッキリしたがすぐにその表情は見えなくなった。
(…気のせいか)
フェイの先ほどの表情の事が少し気になったが、目覚めて然程経ってないので気のせい可能性もあったので、取り敢えずは気にしない事にすると、部屋の扉に新たな三人の人影が現れた。
「シルバー(ご主人様)(義兄さん)、大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だから静かにしてくれ…」
「「「あ」」」
レオンたちに次いで部屋に入って来たのはレオンより一日前に退院したリリィにレティス。そしてルヴィの三人で、心配なのはわかるが、雪崩込むようにして入って来る様子は何処となく今も扉のすぐ近くでティアと睨み合いを続けているレオンを彷彿とさせたが、リリィ達は直ぐに申し訳なさそうに揃って口元に手をやった後、静かにベットへと近づいてきた。
「ふふん!」
「くっ!」
そしてそのやり取りを見てティアはしたり顔で笑い、一方のレオン何故ティアに叩かれたのか、その理由がわかりバツが悪げな表情を浮かべながらベットの方へと近づいてきた。
「よ。どうやら昨日退院したんだってな」
「あ、ああ。俺の場合は怪我はさほどなかったけど、念の為の入院って感じだったからな。…それで、その…」
「ああもう! シャキっと言いなさい!」
「痛ってぇ! いきなり頭を叩くなよ!」
「もたついていた貴方が悪いのよ!」
「なんだと!」
「なによ!」
と、ティアに頭を叩かれた事によりいい感じの音が聞こえると同時にレオンは頭を抑えた後即座に後ろに振り返りとまたしても犬と猫のような睨み合いと口喧嘩が始まり、その時にはレオンの申し訳なさそうな表情は全く持ってなかった。
「そこまでにしておけ、二人とも」
「は~い」
「けどよ、シルバー」
「レオンも、ティアが頭を叩いた意味が分かっているんだろ? ならそこまでにしておけ」
「‥‥‥…」
ティアが何故頭を叩いて来たのか、その意味をしっかり理解していたのだろうが、それでも叩かれただけのレオンは不服そうだったが、やがて自分を納得させたのか。乱雑に頭を掻いた後、俺の方を向くと頭を下げてきた。
「シルバーのお陰で俺達は助かった。だから、本当にありがとう」
「…ああ。礼は確かに受け取った。だからレオン、頭を上げてくれ。それにお前の一撃もあったお陰で助かったんだ。だから頭を下げられるのは、正直むず痒い」
「…そうか?」
「ああ」
俺がそう言うとレオンは頭を上げると直ぐにそっぽを向いてしまい良く分からなかったがその表情は何処となく気恥ずかしさが混じったものだという事に俺とティア、そしてフェイは気が付いており、ティアは密かの笑っており、後に今回の事をレオンを弄るんだろうな、と思いはしたが俺は見なかった事にした。
そこからの時間は特に何もなく、その日はごくごく平和な時間が過ぎていったのだった。
その日の夜、部屋には俺だけとなり、明日からのやるべきを考える事にした。取り敢えずは、部屋の前に居る人物の応対だった。
「さて、誰も居ませんから、入っても大丈夫ですよ。学院長?」
「…おかしいな。風魔法で気配のみならず匂いも消していたんだけど?」
「嘘も大概にしてください。分かり易く意図的に気配を漏らしてましたよね?」
そう言って扉を開けて入って来たのは魔法の学び舎であるヴァルプルギス魔法学院の学院長にして三属性の魔法を使いこなすエルフでもある、ディアネル・シルクード。
「ふふ、敏いね」
「ええ。この歳でも、幾つかの修羅場を潜り抜けましたからね」
その表情には素直な驚きと嬉しさが確かに含まれていたが、その様子に俺は騙されない。ワザと俺に分かる様に気配が漏らした、という事は俺に気づかせる意図があると考えるのが、自然だ。そして、どうやら俺の予感は当たっていたようで、学院長は僅かに微笑む。
「ほう。だがそれは‥‥君がエル君、いや永遠なる星龍に見初められたからかもしれないよ?」
「学院長。貴方は何処まで知っているんです?」
学院長はエルフ。いわば長命種でありその知識量は人を遥かに凌駕し、人の間から失われた伝承すらも知っているのではと影で噂されていたりもする。そんなエルフである学院長の意味深な言葉に思わず警戒してしまうのは、致し方ない事だが、学院長は何も言わずに両手を上げ、降参のポーズを取りつつ口を開く。
「いやなに。別に脅しじゃないからそんなに警戒しないでくれ。単なる確認さ」
「確認…?」
「ああ、君は彼女が永遠なる星龍だと知ってなお一緒に居るのかという、確認を、ね」
「どういうことだ?」
学院長が言いたい事がいまいちよく分からなかったが、一応は敵ではなさそうだったが最低限の警戒を維持しつつ言葉の先を促すとディアネルはこちらに背を向けた状態で諳んじ始めた。
「『白き龍、見初めし者が現れし時目覚め。黒き龍やがて覚醒し、数多の悪しき龍よ目覚め世界に破壊を齎すであろう』」
「…何かの詩か?」
唐突な詩の様なモノを口にした学院長に驚いたが、詩を聞いた限りでは、俳句に近い歌の様に感じ取れ、確認の為に尋ねると、ディアネル学院長はこちらへと振り返ると、その表情は真剣なままに厳かに頷いた。
「ああ。我らエルフ以外では黒き龍を復活させようと企む【竜裁者】によって失伝してしまった、遥か昔に歌われた詩「予言の詩」だよ」
少し短いですが、今回の話で、第三章は終わりとなります。そして、現在まだ構想が出来上がっていないので次の章に関しての話は出来上がり次第書く事になりますので、正確な日数は書けません。申し訳ありません。
早ければ来月の頭辺りに投稿を開始できればと(内心で)画策はしていますが、まあ、その日になってみないと分からないですね。
さて。長くなりましたが、今回はこれにて失礼します。
現在、小康状態ですが、改めて皆様も自粛、手洗いうがいをされてお気をつけください。またそんな皆様のちょっとした暇潰しになれれば、幸いです。
最後にですが、評価、感想、ブックマークなど頂けると大変励みになります。
では。今回はこれにて失礼します。どうか皆様、また次章にてお会いできることを楽しみにしています。では、また。




