第九十話 「戦闘、開始です」
よ、ようやく書けた……ので、投稿です。
この二週間程の間、完全に燃え尽きてました……けど、昨日、幾分か虚無感が改善しましたので、書くことが出来ました。少しでも楽しんで貰えると幸いです。
【邪龍】それは過去に実在していたとされる最強の龍の内の一体に数えられる存在で、俺の身近で言えばエルがそうだったりする。
エルは永遠なる星龍〈エターナル・レイ・ドラゴン〉と呼ばれる伝説の存在で他の最強龍と比べてもその強さは頭が一つ二つは群を抜いており読んで字の如く”最強”だった。
そしてそんなエルと共に並び称される龍の内の一体である【邪龍】その一体がグレンデルだった。
そしてグレンデルも【邪龍】の名前を持つ通りにそう呼ばれる所以と言える厄介な性質を持っていた。
それはなかなか死なない。言い方を変えれば異常なまでにしぶとく、そしてそれを具現化しているのが異常なまでの、まるで時間を逆再生しているかのような再生能力だった。確かに倒せない訳では無いのだが圧倒的に困難な存在だった。だが決して倒せない訳ではない事は過去の歴史が証明しており実際、過去に一度、その時代の英雄によってグレンデルは倒され、絶命した事は確認されており、それが今ではお伽話になっておりその存在自体は知っていたが実際に目の当たりにするとその強さに納得すると同時にグレンデルを倒したという英雄に対して俺は思った。
(こんな奴を倒すって‥‥どんだけだよ…)
お伽話の英雄は一体どれ程の超人だったのかという事を、今の自分の状態を棚に上げてもそう思うのは仕方がなく、同時に頭を抱えたくもあった、いや実際に表には出さなかったけれども、内心では本気でどう倒せばいいのかと頭を抱えていた。
(まさか、母さんに何度か読み書きせてもらったお伽話の龍と相対する事になるなんてな…それに心臓を破壊して倒すとか‥‥難易度高すぎだろ…!)
確かに人と龍では肉体の強度でも圧倒的な差は存在するが共通して内蔵までは鍛える事は出来ず、それを破壊して倒すという方法自体には理解は出来る。だがそれを眼の前のグレンデルに対して出来るかと問われたとするならば、俺は無理と断言するだろう。何せ一撃で内部に、再生不可能なほどの攻撃を体内へと通さなければならないのだ。もし仮に身体強化強化魔法でも通すことが出来たとしても十全の内のニ、三割ほどしか通すことが出来ないだろう。
(やっぱり、確実に体力を減らして行くしかないか…?)
今の俺に一撃で倒すことが出来ないのであれば、あまり選びたくなかった長期戦を選ぶほかない。
とそんな事を考えながらもグレンデルから眼を放す事無く態勢を整えながら俺は思わず苦笑いを浮かべる。何せ、グレンデルと名乗った龍は今ではお伽話となっている程の過去に滅ぼされ、蘇ったばかりというのにその存在感と禍々しいオーラからは猛者を彷彿とさせるものだった。
何より厄介なものは二つあり、一つは【邪龍】であるグレンデルも持つ、一度グレンデルを倒した英雄ですら倒す際に苦戦したとされる、時間を逆再生しているのかの様な驚異的なまでの回復力。
そして二つ目は先ほどの一撃を受けて良く分かった事、それはブレスなども確かに脅威だがそれより遥かにシンプルな脅威。それは奴の単純な力、即ちパワーだった。
(…やっぱり、あの力は脅威だ…)
先ほど吹き飛ばされた時の感覚からはまだ全力は出せていないと感覚的に感じ、それは奴自身の呂律が上手く回っていない事からまだ体が完全に馴染み切っていないが故にという事が伺えた。だがそんな状態でも俺を容易く吹き飛ばせるほどのパワーに加え異常な回復力を持つ相手に長期戦は避けたいが、そうも言ってられず、俺は前に行くために足に力を籠める。
(あいつの力を利用できれば、行ける)
そう決めると、俺は足に溜めていた力で地面を踏みしめると、砲弾の如くグレンデルに向けて突っ込む。
そして距離を詰める事で風を視る者で見て分かっていた事ではあったが先ほど傷つけた傷が全体の三分の一程が既に塞がりつつあった。だがそれでも治る速度は遅いように感じた。
(どうやら、天叢雲剣の龍殺しはちゃんと奴に通じているようだな)
だが、俺の攻撃を受けたグレンデルは寧ろ、痛みを感じるという事に喜びを見出しているのか、それとも自分を傷つける存在に出会えたという事が嬉しいのか、もしくはその両者なのかもしれないが、勢いよく接近してくる俺を見て明らかに嬉しそうな笑みを浮かべ傷ついていない側の右手を握り、振るう。
それを見ても俺はその場で足を止め、鞘に手を添える。もちろん馬鹿正直に力勝負をするつもりは更々なく、もちろん狙いがあった。
(まだ…)
そうしている間に俺と奴の彼我の距離は無くなり、グレンデルの右の拳を振るい迫る中、俺はまだ鞘に納めた天叢雲剣を抜刀せずに抜刀の構えを取ったままどっしりと両の足を地に着けた状態で待ち構えつつ、一度深く息を吸い、吐き出すと同時に全身の筋肉をほぐし、全身の力を抜く。
「すぅ‥‥ふぅ」
そして何かをしようとしている俺の動きが見えていて感付いているであろうグレンデルはしかし動きを止める事無く寧ろ、それを破り俺を殴り潰そうとでも考えているのか、もはや目標の場所に向けられた状態の拳の勢いが衰える事はなく寧ろ加速していく。そして、グレンデルの拳がもはや一メートル圏内に入った瞬間。
「ッ!」
俺は剣を抜刀しグレンデルの拳が剣に当たった瞬間、グレンデルのその巨体は数メートルは後ろへと吹き飛ばされ、その証拠を示す様に地面にはグレンデルが圧された際に刻まれた足跡があり、それだけにとどまらず、グレンデルの右手は原形がほとんどない程に破壊されていた。
「…ほぅ‥?」
何が起こったかまでは理解できていないが、先程とは逆に今度は自分が圧され、右腕も壊されたという事実を自身の右手見て驚いているのか、先程の笑みとは違い純粋な驚きがグレンデルの顔を支配していたが、その表情を俺は見るそんな余裕はなかった。
「…はっ…はっ…!」
グレンデルを圧し返す事が出来たが、俺は体の内側からの鈍く、時に鋭い痛みを堪えるが顔に少しばかりの脂汗を浮かばせながらも体の周囲の状況に気を配りつつ体の状態を確認する。
(四肢は大丈夫だが、変わりに肋骨が二、三本くらい折れたか…けど、成功した…)
呼吸をする度に突き刺すような痛みがある。だが、初めてその程度の損傷で成功する事が出来たのとい事に緊張から解放された影響か、自分の心臓の音がいつもよりも大きく聞こえた気がした。
何せ今行った事が万に失敗していれば、最悪自壊によって全身の骨が粉砕され内臓も傷ついていた可能性がある技。それは自分よりも強い力を持つ相手と出会った時の為にと開発だけは出来てはいたが作って以降今まで一度も使わなかったカウンター技。それが【輪壊】だった。
【輪壊】は読んで字の如く輪を持って壊す、即ち相手の力を構築した輪の中へと取り込み、そこで上手く循環させて相手に返して壊す。という内容の技でグレンデルに対して最適だと判断し【輪壊】を使った事で圧す事が出来たのだった。
そしてようやく体の痛みと呼吸が納まりグレンデルを見るとそこには、先程よりも明らかに凶暴な笑みを浮かべたグレンデルの姿があった。
「く、くくくくっ、ああ、ほんとうにサイコウだな、お前!」
吹き飛ばされたという事実にが更にグレンデルを喜ばせる要因になってしまったのか、より噴き出すオーラが二、三倍ほど強くなった。
(‥‥マジか)
何処となく余力が感じられた気がしていたのだが、まさかそこまでの余力を残していたのは、予想外もいいところで、流石に【輪壊】を使ったとしてもかなり厳しくなる事が容易に予想できた。
(出来れば援護が欲しいが…難しいだろうな)
エルは現在疲弊しており、ティアやフェイも例外。微かな可能性としてはレオンだが、グレンデルの攻撃をそう何度も防げるほどの魔力が残っているとは考えにくかった。
(これは、かなりやばい状況だな‥‥)
改めて考えてみれば思った以上に絶望的な状況のあまり、本当に乾いた笑みしか出なかった。だが、同時に如何にして絶望的な状況であるならばそれを覆そうかを考え始めていた。
(取り敢えず、これ以上時間を引き延ばす)
ここからは自分の体と気力の勝負だ。
「いくぜぇぇぇぇっ!」
今度はグレンデルから距離を詰めてくるのを見ながら俺は再度意識を集中し直し、武器を構える。
「こいっ!」
前書きにも書きましたが、前回の投稿より時間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。
遅れた原因は、今思えばスランプと燃え尽きてしまっていたことが重なり虚脱感に襲われていた影響と思われます。ですが、昨日より幾分か改善し、2日がかりでようやく投稿が出来ました。
そして、タイトルの後ろに数字が書いてある通り、話が続きます。次話は骨組みは簡易的に組上がりつつあるので、話を組み立てるように書き出して出来る限りの早さで投稿できるように致します。(目標:今月(頑張る)
ですので、時間が以前よりかかっている現状ですが、少しでも 楽しみに待って頂けると幸いです。長くなりました。どうか、少しでも今話を楽しんで貰えると幸いです。それでは失礼します。また次話にて。




