第八十九話 「邪竜 グレンデル」
遅れに遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
仕事の忙しさに加え、なかなか話が書けませんでした(不幸だ)そして、来月に投稿する予定の話がずれましたのでなかなかに修羅場とかしているのが現状です。
(頑張る、それしかない!)
話は戻りまして、短いですが、前哨戦として、見ていただけると幸いです。
それは、白の炎の檻の中、今なお自分の鱗のみならずその内にある肉をも舐めるように焼く程の熱を持つ白い炎を受けて、かつて肉体を滅ぼされた時の事を思い出していた。
それは、ただ一人の人間と龍という見ただけでなく、更にその龍には異常なほどの自己治癒能力が高く、竜の勝利は揺るぎがないものと言えた。
だがその結論は予想を裏切り、龍は人間がいう英雄と呼ばれる者に己の肉体にして全ての核である心臓を破壊しつくされた事で敗れ、その肉体は二度と再生する事なく滅んだ。
だがそこまでしても滅ぶことが出来ないものがあった。それは龍の魂だった。
そして龍は長い間、魂だけで世界を彷徨い、やがて一人の魔女と出会い、こう提案された。
「魂では不便でしょう。ですので、私と契約を交わしませんか?」
『契約だと?』
契約。それには三種類が存在する。一つは互いに平等である契約。二つ目は片方だけが有利である契約。そして三つ目は自分に不利である契約。そして、魔女が流に提示してきた契約は一つ目の契約だった。
「ええ。私は貴方に貴方の魂の器となる肉体を用意します。そして肉体を貴方には提供できるそれまでの間、私を守護してくださいませんか?」
『‥‥‥‥‥』
魔女からの提案に龍は牙を剥くか否かを思案した。そもそも実力的には魂だけの存在になったとは言え、最強の種族である龍の方が強いのである。しかし、魔女が提示した契約は龍に有利ではない、平等の契約だった。本来、龍と契約するのであれば魔女の方が下手に出てと思っていた龍は侮られているのか考えたが、同時に別の可能性、魔女自身が最大限の譲歩を既にしているという可能性だった。
『‥‥‥‥‥…いいだろう。その契約、乗ってやろう』
そして考えた末に龍はその提案に乗った。そして、現在。新たに得た肉体に二度目の、確かな痛みを持つ攻撃を受け、龍は確かに肉体を得ているという事に歓喜した。
(ハ、ハハハ、ハハハハハハハハハハっ!!!!!! イイネェ、サイコウジャネェカ!)
それはかつて一度、己を倒した人間と戦っていた時に抱いたそれは、飢えた狼が餌となる動物を見つけた歓喜ともいえるものだった。であるならばする事は決まっていた。
「ガアアアアアアアッ!」
そうして、それは鱗だけでなく身すらも焼いていた白い炎を、自身の毒々しい緑のオーラによって意図も容易く吹き飛ばした。そしてその様子を見て驚いている人間もいたが、
「やっぱ、そう簡単にはいかねえよな…」
その様子を、予想していたとはいえ、さほどダメージを受けているように見えず思わず苦笑している様に見える人間を前にし、龍は喜んだ。こいつは決して逃げない人間だと。そしてそう言う人間は大概何かを守るだという事を。そして凶暴な笑みを浮かべる。
「アア、このカンカク、イクらブリだロウな…!」
体に漲るこのマグマのような血が沸き立っているのではないかと感じさせるほどの熱量がオーラとなって噴き出し、牙をむきだしつつ慣れてきた口を動かし宣言を人間に向けて口にする。
「このオレ、グレンデルさまのふっかついわいだ、ニンゲンッ!オレをたのしませてみやがれ!」
その瞬間、地面を踏み砕き、遥か昔に肉体を滅ぼされながらも魂だけの存在となりながらも再び肉体を得た龍、グレンデルは背後に人間達を庇う様にして立つ白い見た事も無い衣を纏う人間へ拳を構え突進して行く。
そして、人間はグレンデルが期待した通りに逃げる事を選択せず寧ろ剣を構え、前へと加速する。
やがて両者の距離はゼロとなり、グレンデルは笑いながら拳を、人間は雄叫びのように声を上げながら剣を振るう。
「ははははっ!」
「オオオオッ!」
拳と剣が衝突し、僅かな時間の停滞の後、吹き飛ばされたのは、グレンデルではなく、ニンゲンの方だった。だが、衝撃を殺す為にワザと転がり勢いを殺し体勢を整えたニンゲンの顔には、笑みがあった。
そしてその笑みが示すのは、ただ吹き飛ばされただけではないという事で、グレンデルはニンゲンの剣を受けた手を見ると、剣を受けた右手の中指と薬指の付け根が掌へと向けて大きく切り裂かれていた。
「なるほど。あのいっしゅんにきってやがったか…それにドラゴンスレイヤーとは、ハハッ!うんがいいなッ!」
しかし感じる鈍い痛みを感じている事を喜びながらも、あのニンゲンが持つ剣がどういうものなのかを理解した。だがそれだけで、グレンデルには龍殺しの剣に対して恐怖心は全くなく、寧ろ以前は一度も出会う事がなかった存在と戦えるという事に寧ろ感謝していた。そしてグレンデルの調子が反映されているのか、その体から更に濃密なオーラが噴き上がる。
「さあ、もっところし合おうぜ!」
どうにか体勢を整え見える龍から眼を離さないでいるとその体から先ほどよりも濃密な戦いを知らない者であればまるで空気が薄くなったのではと感じさせるほどの圧迫感を放っていた。そして何より。
「さあ、もっところし合おうぜ!」
今のあの龍の状態は例えるなら新しい玩具を与えられた犬と言えるだろう。…まあ、犬であるならば可愛い物なのだが。現実はそうではない。
「‥‥全く。好き勝手に言ってくれる…!」
幸いにも吹き飛ばされた時のダメージは転がったお陰でさほどなく、何もせずに吹き飛ばされるのは癪だったので反撃として硬そうな奴の手を切り裂く事は出来たが、俺の感覚からすれば与えた傷はかなり浅いというものだった。
カルネアの様に鱗が硬いという事もあり、あの龍もそのタイプなのだろう。硬い鱗は防御にも攻撃にも使えるので、仲間であれば助かるが敵である今回の場合は決定打を与えるのがなかなか難しく、更にグレンデルもそこに属しているのだが、【邪龍】と呼ばれる龍は他の龍と比べ、かなり厄介な部類の存在だった。
次回の投稿は、正直な所、私自身が予想した以上に調子が戻りにくい状態ですが、少しずつ話を進めて行きたいと思います。目標としては二月の間に元のペースを掴めればと思っています。それまではやや遅れ気味になりますが、次話や他の作品を読んで楽しみにしていただけると幸いです。
そして、最後に短くて本当に申し訳ありませんでした。
次回は2~3週間ほどで一、二話ほど投稿を出来ればと思います。
それでは、どうかまた次話を楽しみにしていただけると幸いです。それでは、また次話で。




