第八十七話 「束の間の休息」
ど……どうにか、投稿で、す。
あー、疲れた(仕事に)
* 一月二十日に内容を加筆、改稿しました。
「あ、シルバー! 良かったちゃんと合流できて!」
「ティア? それにレオン、フェイも」
俺を見つけたティアはまるでつい今までレオンと喧嘩していたと微塵も感じさせない切り替えで俺の所へと近づいて来て、その後ろを困った感じの表情を浮かべたフェイと何とも言えない表情のレオンが合流してきた。
「どうやってここに?」
「ああ、それはレオンが「(シルバーが居るはずの)奥に行こうぜ!」といって突き進んでね。僕とティアはレオンを追い掛けてきたの」
「ああ、なるほど」
「そうゆうこと」
返答の時は普段通りといった感じだが、レオンを見る眼は細い。どうやら、先程の喧嘩はレオンが独断専行してここまで来たことに対してティアは相当に怒っている事が伺えた。
そして二人の仲裁をしたフェイに視線を向けるといつものことでも言うかのようにフェイは肩をすくめるだけで、その仕草は何処となく苦労性である事を伺わせる仕草だった。
だが取り敢えずティアはレオンの事を後回しにすることにしたのか、切り替える様に深呼吸をした後ティアは俺の隣に視線を向け尋ねてきた。
「ところで、さっきから気になってたんだけどシルバーの隣に居るその子が言ってた?」
「ああ。っとまだ紹介していなかったな、エル」
ティアに聞かれて俺はエルの事を紹介するのをすっかり忘れていたのを思い出し、エルを見るとエルも俺が何を言いたいのかを察したのだろう、エルはティアに自己紹介を始めた。
「エル・シュネーヴァイスです。シンと一緒に助けに来ていただいて、ありがとうございます」
「別に気にしなくていいわよ。私達が勝手に付いてきただけだから」
「そうです。だから気にしないで下さい」
「‥‥‥…」
エルの自己紹介の後の謝罪にティアは何処となくサバサバした感じで答え、リフェルとも気にしないでくれといった感じでそう答えるなか一人、レオンだけはエルに見惚れているのだろう、呆けていたが
「はい、この子はシルバーのなんだから見惚れてんじゃないの」
そう言ってティアはごく自然な動作で身体強化魔法を発動させその様子に俺は関しながらも止めずに様子を見る。そしてそのままエルに見惚れた事で隙だらけのレオンの額にへとノックするように、コンっとするように見た感じはさほど強くやったようには見えず、手加減したのかと思ったが。
「ぐおおおおおおおおっ!!??」
しかし、喰らったレオンの反応を見る限りではそのような様子はなく、むしろ痛みのあまりその場でひっくり返るとそのまま地面をゴロゴロと転がり始めた。
(上手いな)
レオンのそんな様子を尻目に俺は今見せたティアの身体強化魔法の操作技術に関して素直に驚いていたが、家が剣を教えている事を聞いていたので既に下地に加えてティア自身の努力や才能もあり出来たのだろうと。
そしてそんな事をしたティアはレオンの様子を見た後に溜息を吐いた後すぐに切り替えたのだろう、刃の様な鋭さを宿して眼でレオンはそのままにしてこの場に入った時から気づいていたある話題に触れてきた。
「それで、ここに来てから気になっていたんだけど…あれは何?」
ティアのその言葉が何を指してるのかということを察するのは容易だった。
「ああ、元はラークが変化したトロールなんだが、今は恐らく進化の為に近づけない様にオーラの嵐を形成している」
「なるほど。…まあ、どうなってああなったのかは知らないし興味ないけど。それにしてもかなり厄介そうね。ねえシルバーならあのオーラを斬れないかな? こう、同じ箇所を二回斬るみたいな感じで」
「‥‥いや。さすがに絶対に無理とは言わないが難しすぎるな」
「そっか」
ティアは俺の言葉を聞いて少し残念気味にそう言ったが、俺は何でも出来る訳ではないので下手に期待させることは避けたかったし、何よりそれをやろうとしても実際の所、本当に難しいのだ。
(何より、常時オーラの放出に加えて嵐だからな…)
それが風があれば風を視る者で見る事が出来て分かるのだが、あのオーラは嵐の中央にある球状の玉から常時放出されて続けており、それは傷つけてもすぐに修復する障壁の役割を果たしているのだが、それだけであればまだ同じ箇所を二度斬り突っ込むという事もまだ出来ただろう。
それでもコンマレベルで同じ箇所を二度斬らないといけないのだが。だがそこに嵐という要素が加われば話も、更に同じ箇所を難易度も変わる。
(正直、止まっていればまだ斬れるが、嵐、いわば常に渦を巻いている状態で二度斬るってのは俺の今の技術じゃ無理だな)
故に、俺は(出来る限り)お約束を守るというのも合わさりトロールの進化が終わるのを待つという選択に至ったという訳だった。だが別にこれは別に現在進行形で進化しているトロールにだけに優位性があるという事に繋がる訳じゃない。では、その優位性とは何か?それは。
「よし、取り敢えず今は何も出来ない。だからあんまり時間はないかもしれないが、少しでも体を休めようか!」
休息の時間を取る事が出来るという事だった。
「‥‥そうね。シルバーがそう言うんなら、そうしましょ。私も正直ちょっと連戦はきついと感じてたからね。フェイもそれでいいかな?」
「うん。こっちもそれでいいよ…ところでレオン、大丈夫?」
「‥‥ああ、けどもう少し時間をくれ…」
「あ、ああ。分かったよ」
反対の声は上がらずあの嵐が納まるまで休息を取る事が決まった。
そしてその間にレオンは大分回復した様子だったが、体を起こす事無くそのまま床に横になっている事にしたようで、まあ別に深く聞く必要もないと俺は判断して俺達はそのまま少しでも体力と魔力を回復させることに専念する事にし、俺達はその場に腰を下ろす。
「さて、それじゃあ水分補給と吸収とに良い甘い物でも食べるか?」
「え、シルバーなにも持ってない様に見れるけど…あるの?」
「ああ、収納できる魔道具を持ってるんだ。ほれ」
俺がそう説明しつつ【風神の天廻】から取り出したのは大きさは一円玉サイズの竹に似た木の皮で包まれた飴で、それを自分のを含めて五つまとめて取り出すと同じく腰を下ろし休息を取っていたティア達へと放り投げる。
「ありがとう。 シルバーって準備が良いよね」
「…用意してもらっていたからって調子よさげな事をガハッ!?」
「アンタは黙ってなさい」
うつ伏せの状態でも上手く投げた飴をキャッチしたレオンだったが、その後に呟いたティアに対する愚痴を零したのだが、それが聞こえていたのだろう、ティアは音もなく立ち上がり、レオンの頭を思いっきり踏んずけ、その光景をスルーしつつ俺はフェイとエルに飴を渡した後、自分の飴を口の中に放り込む。
と口の中にハチミツ特有の香りと甘味、そしてほんの僅かな苦みが口いっぱいに広がる。
(うん…悪くはないかな?)
今回のハチミツ飴の作り方としては至って簡単で、鍋を火にかけそこに水と砂糖、ハチミツを入れ、黄金色に輝くまで煮詰めた後、冷める前にスプーンですくい取り受け皿に置いて冷まして完成だ。まあ、少し焦がしてしまったが、悪くはないと自己評価しつつ隣のエルを見ると美味しそうに飴を舐めており、エルを見る事で精神的に癒されているとレオンが黙ったのを確認してティアは何事も無かったかのように俺の近くに腰を下ろし、皮で作った包装を外し飴を口に含むと驚いた表情を浮かべる。
「あ、美味しい! これってハチミツでしょ?」
「ああ、結構簡単だぞ?」
そんなごく普通の話をしつつ体と精神を休め初めて五分ほど経った頃だろうか、俺達は休憩を切り上げることにした。短い休憩だったがそのお陰で幾分かは体力と精神的にも回復する事が出来た。そして休憩を切り上げたのは何より…嵐が弱まりつつあることを察したからだった。
「いよいよ、姿を現すか」
「「「ごくっ‥‥」」」
緊張しているからだろう、ティア達が揃って喉を鳴らしつつも徐々に弱くなり始めた嵐、その中心に現れるであろう存在を見逃さない様に注視していた。もちろん俺も【風を視る者】も併用して注視していた。
「ッ来るぞ!」
そして僅かだが風が止まるのを感じ取り咄嗟に注意の声を皆に掛けた次の瞬間、オーラの嵐の渦は四方八方へと散ると同時に、【風を視る者】であるものを視認すると同時に俺は左手で鞘をそして右手を【天叢雲剣】柄に添え、抜刀の準備を整えた状態で嵐が散ると同時に吐きだされた悠々と人を飲み込むサイズの火球へと突っ込む。
(予想はしていたが、本当に不意打ちをしてきたか。)
嵐が消えると同時の攻撃からして理性はあると見た方が賢明だと、俺は判断した。
もちろん、本能的または偶然の可能性も完全に否定は出来ない。だが最悪の場合も想定し、頭の片隅でそんな事を仮定しながらも飛んできた火球を剣の間合いに入った瞬間『天叢雲剣』を鞘から滑るように抜刀、垂直に切り上げる様にして両断、しかしそのままその場で足を止めること無くティア達へと向かった火球をどうにかする為に体を翻し一歩を踏み出そうとした時、迫る火球へと身体強化魔法を発動させた状態で突っ込む影があった。
今回の話は、前回の続きです。
そして、最後から推測できると思いますが、次から戦闘では、まあ、皆さんもトロールが何になっているのか、簡単に予想してみてください。
予定では次話はギリギリ今年最後にもう一回投稿できるように頑張っております。一年って早いですね~。
長くなりましたが、どうか最近は遅れ気味ですが待って頂けると幸いです。
最後にですが評価や感想、誤字脱字報告していただけると幸いです。
それでは、失礼します。




