第八十六話 「更なる変貌と救出」
すいません。他作品の設定を書き出したり整理、そして仕事でバタバタしていて投稿が少し遅れました。
申し訳ありません。急ぎ突貫で書きました。少し短いですが投稿です。
ラークの慣れの果ての姿であるトロールを前にし、俺は小手調べに現在の俺の肉体が耐えれる限界まで身体強化魔法で強化、その後踏み込み一瞬にして距離を詰めトロールの腹部に拳を撃ち込む。
「ッッッ!!??」
トロールは反応すら出来ずに後ろへと吹っ飛び壁へと激突し辺りに煙をまき散らす。
正直、今の拳の一撃は普通の魔物であれば当たればその部位が消し飛んだように見える程の威力を誇っていた。だが俺はトロールを殴った瞬間に感覚で理解した。その感覚はまるでとても柔らかいゴムを殴ったかのような感触だった。
(こいつ、衝撃を吸収しやがったのか)
そして、反応が出来なかっただけだろうが結果的にそれは衝撃を緩和するという事に繋がり、さらに壁というクッションがあったお陰で衝撃の全部では無いだろうが何割かを逃すという事に成功していたのだろう、雄たけびを上げながら無傷の状態で正面から俺に突進してきた。そして見た感じ幾ほどか小さな傷こそ負っていたがトロールに大きな傷は見当たらなかった。
(衝撃を緩和したとはいえ幾分かはダメージが入っているはずだが、鈍りは無いな)
正直、呆れるほどに頑丈だなと思いながらもトロールは馬鹿正直に突撃してくる。それから推測するに今のトロール《ラーク》に人であった時ほどの知性はないではと思われた。そうでなければ馬鹿正直に突進をするという事はしないはずだ。だが巨体に体重、そしてそれを支えられる足があるというだけでそれは十分な脅威になる。
そして距離を詰める為にトロールが地面を踏むたびに地面から伝わる衝撃から体重は軽く見積もっても三百から四百キロは超えているだろう。
それは地球で例えるならば、一般人に軽トラが体当たりをしてくる様なもので普通であれば対格差や強度なども含めていくら鍛えているとはいえ素の状態では劣る俺が圧倒的に不利だ。だがこの世界には身体能力を強化する術がある。それが身体強化魔法だ。
「クタバレェェェェッ!」
「おおおぉぉっ!」
俺は解いた身体強化魔法を再び発動させ、その場で重心を落とし正面から受け止める様にして待ち構え、衝突する。その瞬間、先ほど以上の俺は驚きに見舞われた。
(くっ、限界レベルに強化してようやく力は同じレベルか!?)
巨体になったレベルでかなりの強化をされているのだろうと想像はしていたが、まさか現状の限界に近い状態で発動させた身体強化魔法と競るまで力が強くなっているのは予想が甘かったとはいえ想定外もいいところだった。それでもまだ大丈夫だと押し返す為に前に足を踏み出そうとした時だった。
「グ、ガアアアッ!!!」
「がっ!」
その瞬間、トロールの体から黒が多分に混じった緑色のオーラが発せられ至近距離でまともに受けて俺は後ろへと吹き飛ばされながらもどうにか態勢を整えて見るとトロールの体からは濃密と言うべきオーラが噴き出ていた。
(なんつう濃密なオーラだ。だが足が止まっている今ならっ!)
まるで嵐の様に部屋全体に吹き荒れ、その発生源であるトロールは体のあちらこちらが隆起を繰り返し何かへとさらなる変貌を遂げようとしているのは直ぐに分かった。
だが、相手が変身をしようとしている時は大体のお約束ではその場から動くことが出来ないはずというゲーマーの様な考えの元、俺はトロールを無視し未だに拘束されているエルを助けすことを優先する事にした。
幸いにも身体強化魔法を纏った状態であれば砂浜を走るような感覚で幾分か動きは遅いが移動に支障はなく、俺はエルの元へと辿り着くことが出来た。
そしてエルを拘束していた鎖を天叢雲剣で切断すると、崩れ落ちる様に倒れそうになったエルの抱きかかえるようにして俺は膝をつき、エルに呼びかける。
「エル! おいエルッ! 目を覚ませ!」
「‥‥う…うう‥‥‥…シン…?」
「ああ、俺だ。助けに来た」
「リリィ、達は?」
「ああ、大丈夫だ。お前のお陰であいつらは無事だ」
声を掛けると直ぐに反応があり、エルは眼を覚まし何度か目を瞬かせながら俺の顔を見てきて、俺だと確認した後、エルが俺に尋ねたのはリリィ達の事だった。
「そう、良かった…あう!」
そして無事だと分かるとエルは嬉しそうに微笑んだ。自分の事よりも一緒にいたリリィ達を心配するエルに対して俺は正直嬉しいと思った半面、自分の事をどうでもいいように思っているように見えてデコピンを一発、エルの額にした。
そして、デコピンをされたエルはどうして自分がデコピンをされたのか良く分からないと言った感じで俺を見てきた。
「エル。自分をまるで捨て石の様にして守るのはやめろ。でなきゃ、今度はデコピン二発にする」
「え、でも私はあうっ!」
恐らくエルは今は私は大丈夫とでも言おうとしていたのだろうが、俺はそれを言わせない為に宣言通りデコピンをエルの額に二発放った。
「エル。俺はお前に自分を大事にして欲しいんだ。だから約束してくれ、絶対に今回の様に自分を犠牲にしようと思わないと」
「…シンがそこまで言うなら、頑張る」
「ああ、頼む」
エルに対してこれは俺自身の押し付けの様なモノだという事と俺自身も大切な者を守るためなら自分の身を削るという事を厭わないという矛盾を俺自身も分かっているので人の事をとやかく言えないのだが、これは隅の方に追いやっておく事にして、エルを下ろす。
「どうだ、大丈夫か?」
「…体の方は大丈夫だけど、あの女と戦った影響で魔力が枯渇寸前」
「そうか」
正直、出来ればエルの魔法援護があれば今も体が先ほどよりも大きく、元の形が無くなり何に変貌を遂げるのか予測が出来ない元トロールをわき目に俺はどうやって戦うかを考える。
正直、エルは魔法特化と言えるので近接での戦闘は期待できない。またオーラによって【風を視る者】でも見えないのでトロールがどんな姿になるかは分からないが、エルを守りながら戦う事になるのは確定だろう。
(取り敢えず、エルを守りながら戦い、相手の情報を集めつつ戦う‥‥考えている時なんだが、結構な苦行だな)
決して不可能ではないのだが、変身してどのような攻撃をしてくるか等が分からない相手に守りながら戦うと言うのはかなりの苦戦を強いられる戦いになりそうだと思っていた時。
(…こいつは)
【風を視る者】でここに近づいて来る三人の気配に気が付き、扉が開きその三人が姿を見せたのだが‥‥。
「この馬鹿! 何も無いから良かったけど罠だったらどうするのよ! 私達で全部が対処できる訳じゃないのよ!?」
「そんなこと言っても先に進めないだろうが!」
「二人とも、喧嘩をやめてください。シルバーが何事かと見ていますよ?」
何故かティアとレオンが喧嘩をしており、フェイが仲裁をしていて、その影響か、俺は思わずわき目のトロールの事を少しの間、忘れてしまうほどだった。
今回も少し投稿が遅れました。そして、この後は仕事が更に忙しくなることに加えて、他の作品の書き出しと設定の書き出しを平行して行わなければならないという地獄です…。
さて、切り替えて、今回は少しばかり短いですが、シルバーが見つけた三人とは誰なのか、それは読んでいる人は容易に予想が出来るあの三人です。(伏線とも言えない)
次の話より戦闘が本格的に書いていきます。そして、元ラークであったトロールは何になるんでしょうね…?
と、この辺りで今回は失礼します。
今回は短いですが少しでも楽しんで貰えると幸いです。また次話を楽しみにしていただけると嬉しいです。
次回も二週間以内の投稿が出来るように頑張ります。
また誤字、脱字の報告をしていただけると本当に助かります。それでは、長くなりましたが失礼します。




