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第八話  「出会いました」

2021年三月三十日に改稿しました。主人公の名前はシルヴァへと変更しています。

 母さんから明かされた衝撃事実を聞いた日からひと月が経ち。その日も変わらずに山へと昇り高地での鍛錬をしていたが。この一か月は何処か繊細さに欠けており、しかしその理由も俺自身既に自覚していた。とは言いながらそれを治せるかはまた別の問題だった。


 それでも、ここ数日は幾分か戻ってきたようで、精力的にメニューをこなして体を鍛えながらも、頭は改めてあの時の事を思いだす。それ程までに俺に衝撃を与える出来事だった。


(はあ、あの時は驚きの連続だったな…)


 実際、あの後も午後の鍛錬の為に再び今いるこの高地へと戻ったが。今と同じような機械のようにこなしているだけで、一通りが終わるといつもより早めに下山して家に帰り。

 体を拭いて夕食を食べ、そのまま本を読んだりなどして時間を過ごして寝て翌朝となる。

 それを凡そ三週間ほど繰り返し、最近になってようやく普段通りの鍛錬が出来るようになったのだった。


「はぁっ!」


 剣を振りながら、この一月の間で衝撃も緩和され、ある程度の整理が自分の中で終わりつつあった。が、頭では理解できても、心ではそう簡単に納得は出来ず剣の素振りをしている現在も、ももやもやとした感じがあった。まあ、そのもやもやの原因も分かってはいるのだが…。それよりも考えることがあった。


(スサノヲ…。この世界の俺の父親。一体何者なんだ?)


 機械的に鍛錬と剣を振る三週間の間に考えていた事。

 父親であるスサノオノミコトという男についてだった。グランブルム大陸の外から来た、和服を身に着けた男。母さんの言葉通りなら二十人の盗賊を軽くあしらい、尚且つ消えたと思わせるほどの速さで移動できる事からも、その実力は未知数で、その目的も不明。


 確定情報としては黒髪、黒目という事からスサノオノミコトの可能性はあると言える。だが、本当にあのスサノオかは、疑っている部分もあった。

 だが、本当にその可能性があると思える部分もあった。それは体の異常と言える自己治癒力だった。

 四歳から体を鍛え始めた時、当たり前だが朝ない体はそこまで強くなく翌日筋肉痛になった。


 だが、その翌日には体の筋肉痛は無くなっており、その際はラッキー程度にしか思わなかったが。

 それが、何度も続けば。更に言えば、鍛錬で怪我をしても翌日には薄皮が出来ていたりと。それも回数を重ねるごとに自己治癒が早くなっているとなれば、あり得ないその異常さは際立つ。


(実際、今じゃあ多少の切り傷は一時間ほどで治ってしまうからな…)


 人ではあり得ない異常な自己治癒力が根拠として一つ。そしてもう一つは生まれた時から既に見えていたもの、それは魔力の色だった。

 この世界には「魔法」が存在する。そして魔法を行使する際に自身の適正属性である無・火・水・風・土の魔法を使うのだが、その際に色が出る。無であれば白、火であれば赤、水であれば青、風であれば緑、土であれば茶色。

 そして魔法の威力が上がるごとに色も濃くなっていくという事がノウェルさんに手伝ってもらって分かった。勿論、その後に本人の魔法の特訓にも付き合わされたが。

 それでも、そのお陰で相手が使うの属性が何かを事前に察知することが出来る事が証明された。

 そして、それとなくメイド達に聞くも揃ってそんなものは見えないと言われた。


 普通ではあり得ない治癒能力と魔力を視ることが出来る眼。この二つの情報から考えるに、もちろん突然変異の可能性もあるが、俺は父親が普通ではないと考えていた。

 そして、それほどであるならば 神話に語られる存在で、名前も一致する【スサノヲ】の可能性があり得ると考えられた。


(何時か割り切れたり、真実に辿り着くことはあるのか…?)


 そんな考え事をしながらも、周囲への経過を怠たらない。実際、過去に何度か鍛錬中に魔物が昇ってくることもあり。そんな時は威圧するか、それでも逃げなければ倒すほかなく。

 故に鍛錬と周囲への警戒を並行して行っていた最中だった。


(‥‥上っ!?)


 圧倒的な感覚を肌で感じたそれは地上ではなく、頭上である空からだった。


(なんだ、これ‥‥!?)


 圧倒的なまでの威圧感。そうとしか言えない、まだ見えない何かに対して、直ぐに動けるように剣を構える。


(これほどの威圧感…、一体なんなんだ?)


 戦慄にも似た、恐怖と緊張を二つ同時に味わいながらも上空へと向けていると、降りてきているのか雲に映る影が濃くなりそれは己の体で雲を裂いてその姿を現した瞬間、俺は思わず唾を飲むことすら忘れた。何せそれは、現在ではその存在すら滅多と確認されない力の塊、象徴というべき存在。


(ドラゴン!?)


 雲より姿を現したドラゴン。その姿は日本など東洋では龍と呼ばれるドラゴンではなく、イギリスなどの西洋にて伝えられる爬虫類に羽が生えた姿のドラゴンだった。そして、そのドラゴンは、綺麗だった。


部分強化カットアップ】で目に魔力を流し視力を強化した先に見えたのは、雲を裂いて現れたことによって差し込む太陽の光を受けて全身を覆うは輝く白い鱗。四肢は太く頑強、振るわれるだけで鉄を容易に切断できるであろう鋭い爪。

 そして頭部にある眼は紅玉を思わせる鮮やかなピジョンブラッド、そして瞳は獣性を示すかのように盾に割れた黄金の瞳で。


 その姿は神々しく。まさしく人を寄せ付けない神秘性を宿したドラゴンが徐々に高度を下げていき、その大きさがより理解できるようになった時、気が付いた。


(まさか、あのドラゴン、ここに降りようとしているのか!?)


 その巨体は確かにここに降りようとしているようで、羽ばたきによる風圧で辺りの微細な砂が舞い上がり始めており。

 俺は咄嗟に近くにあった岩の後ろへと隠れると一段と風圧が激しくなり直後。着地したようで大きな音と同時に砂埃が舞い上がり一メート(メートル)先も見えない視界状況だが、部分強化カットアップで強化した目は、少しは見えていた。


(あのドラゴン…どこに行った?)


 あれ程の巨体であれば砂煙があろうと強化した目で見えるはずだが、その姿は見えなかった。更に言えば、魔力が視える特殊な眼でその姿を探していたが、先ほどの強大な魔力と気配が今はまるで嘘のように消えており。


(何処に行ったんだ?)


 確かにここに降りた。にも拘わらずにその姿は消え去ったかのように見えない。辺りを探しても見つからず困惑していると徐々に砂煙が風によって払われていき、俺の目の前に現れたのは、


「え?」


 雪の結晶のような純白の和服を身に着けた俺より少し幼げな印象を与える少女だった。


(どういうことだ…?)


 目の前に現れたのは確かに白いドラゴンで。砂煙が巻き起こったことからそれが嘘ではない事は証明されている。だというのに砂煙が晴れた先に居たのは真っ白な和服を身に着けた少女という訳が分からない状況に困惑したが。


(…いや、良く見るとあの子の頭…角が無いか?)


 少女の頭、真っ白な髪に埋もれており良く見なければ気が付かないほどに小さく、角のような物があった。更に言えば彼女の体には極めて微量だが、それは何か魔法を行使したような魔力が視えた。

 だが、知る限りで纏うようにして使う【身体強化魔法】とは違う、何か別の魔法を使ったような感じで。そう考えていると、本で知ったある魔法が浮かんできた。


(もしかして‥‥、変身魔法【変身ライネル】か?)


変身ライネル】それは獣人達の特徴と言える獣の力を使える固有能力で、その能力はその体を動物へ姿を変える【獣身化ビースト】を基に作り出された魔法だった。

 その効果は文字通りの【変身】、即ち体を他のものに変え固定させる魔法で。扱いが特に難しく、効果の内容も異常という事から【特異魔法】と呼ばれる使い手がまずいない特殊な魔法だった。


(特異魔法が使えるのか…。いや、ドラゴンならあり得るな)


 この世界における龍。即ちドラゴンとは力の象徴にして最強の存在で、天災扱いされる存在だった。そして、そんな世界最強にして天災扱いされているドラゴンが変身したと思われる少女はじっと俺を見ているだけで、そこに殺意などは一切感じずこうしている間も、ただ赤い眼に縦に割れた黄金の瞳で何をするでもなく、ただ何かの目的があってか俺を見ている少女(ドラゴン)に俺は困惑するほかなかった。


(一体、なんなんだ…?)


 そもそも、ドラゴンは人が容易に辿り着けない深い森や高山などの秘境と呼ばれる場所に住処を作るとされており、人の住む領域に姿を見せることはまずない。勿論、例外などもあるが、俺が遭遇している今の状況は極めて稀な出来事だった。


「‥‥‥‥」


 そう思っていると、少女の足が動いた。が殺気もなくただ歩いてくる相手に俺はその場から動けずにいた。とはいってもいつでも動けるように警戒もしている中で少女との間にあった距離は無くなっていき、やがて少女は俺のすぐ目の前で足を止めるとまたしても俺をじっと見てきた。


「ええっと…なにか?」


「…‥‥‥」


「ええっと‥‥」


 流石に何も言われずに見られてばかりは居心地が悪く、こちらから話しかけるが聞こえてないのか、それとも夢中な事でもあるのか返事はなく。どうしたらいいんだ、そんな心境のまま三十分程の時間が過ぎた時、じ~っと俺の事を見ていた少女が口を開いた。


「貴方、スサノヲの子?」


「ど、どうしてその名前を知ってるんだ!?」


「助けられた。そして、お願いをされた」


「お願い…?」


 少女の口から出たまさかの名前に俺は驚くことしか出来なかった。まさか、ドラゴンにまで知り合いがいるという訳ではなさそうだが。


「スサノヲはちゃんと伝えるって言ってた‥‥聞いてない?」


「どういうことだ?」


「スサノヲは誰かに言伝を頼んでおく、って言ってた」


「‥‥‥まさか」


 スサノヲの伝言。それはつい最近まで俺の頭を悩ませていた事しかなくて。ほぼ確信を得ながらも念のために、確認の意味も込めて、尋ねる。


「お前が、永遠なる(エターナル)星龍(レイドラゴン)、なのか?」


「そう。私は…」


 少女は一呼吸置き、コテンと可愛らしく首を傾げ言葉の爆弾を投下した。


「貴方の花嫁」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?」


「本当」


「……ええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!???」


 辺りに何もない静かな山の山頂にて、ドラゴンの少女が投下し、爆発させたそれは俺が思わず驚きの声を上げるのには十分すぎて、俺の心の底からの声は静かな山に木霊したのだった。

今日も、投稿していきます。

出来たら今日も三話ほど…投稿出来たらなあと思います。

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