第七十八話 「挑発をされたら、受けますよね?」
ど、どうにか、書けましたので、投稿です(…冷や汗)
最近、思う様に書けない‥…何故だ‥‥。
少し、最後の部分を改稿しました。
「よし、それじゃあ食堂に行くか」
「「「お~!」」」
迷宮から地上に戻った俺たちは、俺の号令のもと昼食を摂る為に食堂へと向かって歩き始めた。
「いやー、それにしても、シルバー君の指示のお陰で初めての迷宮攻略だったけど、誰も脱落しなかったのは凄いよね~」
「そうなのか?」
「そうよ。幾ら実力があっても初めての迷宮の攻略で、階層支配者を倒した時には最低でも一人は脱落するって言われているんだから」
ティアが言うことが嘘ではないことを、俺は知っていた。確かに俺達が迷宮に潜る前に挑んだパーティーは多かったが、その内、全体の五割強程、即ち半分以上がパーティーの内の一人が脱落していることを示していた。
だが、俺としては脱落すること事態は悪いとは思っていない。寧ろ脱落した事を糧にしてより強くなるための活力になると思っているからだ。
だが、パーティーメンバーが脱落するというのは気持ちの良いものでは無かったので、出来るだけ安全第一を優先し、指示を出すことが慣れない頭で考え、指示を出していたのだが。
(この感じなら、もう少しハードにした方がいいか?)
そんな事を内心で考えていると、隣を歩いていたティアと風を視る者で見た後ろを歩いていたレオンの体がほぼ同時に体をブルッと震わせた。
「な、何? 急に寒気が…」
そんなティアを見た後、後ろのレオンを見るとティアと同じような体を震わせていた。
「あれ、どうしたんだいレオン? 体が震えているけど」
「いや、なんか背中に悪寒が‥‥」
そんな、二人は腕を擦りながら不思議そうに辺りを見回しており。それは、あたかも俺の考えを無意識の内に感じ取り、危険な予感を感じ取ったかのようだった。とそんな事がありながらも俺達は食堂へと辿り着いた。
食堂に入ると、ピークのお昼時を少し過ぎ、更に迷宮に潜っている者以外は授業の時間帯だったので食堂にいる人はあまりいなかったので、余裕をもって考える事が出来る。それでもティアたちを待たせる訳にもいかなかった。しかし正直な所、指示を出すという事は前世でもした事があったのだが、戦闘の際の指示では、それ一つで人の命を預かっているも同じという責任からか、無意識の内に神経をすり減らしてしまったようで、結構な空腹であると体が訴えかけて来ていた。
(どれにするか)
そして今は昼食の時間からズレていたので俺達はカウンターでそれぞれの昼食を注文する。
レオンはボリューム満点でガッツリな牛ステーキセットでステーキ三百グラムを頼み、フェイとティアは野菜と肉、アインを入れて鍋の中で煮込み、うま味の詰まったトゥルクと言う(見た目ビーフシチュー)料理のセットを頼み、一足先に席を取りに行ってくれたのだった。そんな中で俺はどうしようかと悩んでいた。
「…よし、決めた。牛ステーキのセット。ステーキは五百で」
「はいよ。少し待ってなさい」
俺の注文を聞いたおばちゃんはそう言うと厨房の奥の方へと入って行くのを見送り、俺はレオンたちが待ってくれているテーブルへと向かう。すると、そこにはラーク・アルフレッドの姿があった。どうやら奴も迷宮に潜っていたようだった。そうでなければ、授業をサボってわざわざここに来たと言うことになる。まあ、どっちでもいいことなのだが。
「もう一度、言ってみなさいよ!」
そんな事を考えながらテーブルに近付いていくと、ティアが声を上げ、ティアの向かいに座っていたレオンもほぼ同時に立ち上がっていた。二人の顔には怒りの色が見えた。
(ラークの奴になにか言われでもしたのか?)
俺の事を目の敵にしているラークだけに、パーティーを組んでいるティア達に嫌がらせでもしたのかもしれなかった。
そして、ある意味不穏な空気が漂い始めたなか、俺は特に気にすること無く声を掛けることにした。
「はいはい。食堂じゃ静かにしろよな?」
「ッ、シルバー。でもこいつは!」
ティアが何かを言おうとした瞬間、テーブルに置かれていたベルがチリンと、風鈴に似た音が鳴った。それは頼んでいた料理が出来た事を伝える音色だった。
「取り敢えず、出来たみたいだから昼ご飯を取ってこい。もちろん。その間に頭を冷やすのも忘れるなよ」
「けど!…分かったわ」
料理を取りに行くためにまだ納得してない感じが残るが、ティア達は立ち上がると料理を受ける取るためにカウンターへと向かう。そしてティアが俺の横をすれ違ったときだった。
「今度、何か奢ってよね」
「ああ、分かった」
結果的に、ティアに何かを奢ることになったが、それで落ち着いてくれるのであれば安いものだと、俺はその場で了承し、ティア達はそのままカウンターへと向かっていた。そして、残ったのは俺とラークだけとなった。
「さて、わざわざ俺のパーティーメンバーを弄る為に迷宮から出てきたのか?」
「ふん。そんな無駄な事をするほど、僕は暇じゃないんだけどね」
「へぇ、そんならどうして、俺の事を露骨に馬鹿して話していたのかな?」
「お前っ!」
てっきり、俺に聞こえていないとでも、本気で思っていたのだろうラークは驚いた表情を浮かべた後、それは直ぐに怒りへと変わった。
そのまま殴ってくるかと一応警戒をしたが、ラークは大きく息を吐くことでその怒りの火を消したようだった。もちろん、完全には消えていなかったが。
「ふう、僕は君達みたく暇じゃないからね。単刀直入に言おう。どちらがより早く三十階層に行けるか、僕と競ってもらおうか!」
「…はあ?」
正直、ラークの口から出てきた言葉の内容に耳を疑いたくなったが、自信満々なラークの様子からも、それは間違いではないことを教えてきていた。
「ふっ、驚きのあまり声もでないか」
「いや、馬鹿らしくて声にならないだけなんだが…」
俺の呆れたツッコミを聞こえていないラークが調子づいているようだが、面倒になってきたのでもう気にしないことにする。
「はあ、そんで、別に競うのは構わないが、いつやるんだ?」
「ふん! そうだな。あまりに簡単に勝って文句をつけられたくないからな。一週間後でどうだ? 因みに、私は今十語階層だがな。」
「あ、そう。一週間後でいいなら、俺はそれで問題はないからな。じゃあ、俺のも出来たみたいだから、じゃあな」
ベルが鳴った事に気がついた俺は、ラークの返事を聞かずにさっさも料理を受け取るためにカウンターへと向かって歩き始めたのだった。まあ、その後ろでラークが何かを言っていたが、これ以上馬鹿に気を割くのは疲れたので全無視しつつ、その場を離れたのだった。
そして、ラークにあったせいで悪くなった空気と気分を変えるために、カウンターで待ってくれていた皆と一緒に外に出で、外のテラスで昼食を取り始め、その合間に恐らくティアたちも関わる事になりそうだったので先ほどあったことを一通り説明した。
「という訳で。もう面倒だったその挑発されたんで受けてきた」
「「いやいやいや! そこは断るところでは!?」」
「ま、普通ならそうなんだが、な」
レオンとティア、二人揃って仲良くツッコまれ。無理もない、と俺も思った。
実際、俺個人の事に巻き込まれた二人からしてみれば、そこは断ってほしかったのだろう。何せ、ラークが示した競い方はどちらが早く三十階層に辿り着くかだ。
そう考えれば現状第六階層までした攻略していない俺達に比べ、第十五階層まで攻略しているラークとではかなりのハンデを背負っている状態だった。一階層ごとに階層支配者が居る事を計算すると、その差は更に広がるだろう。
だがそれを差っ引いても受けたのには理由があった。それは最近、何となく嫌な感覚、予感があり、確かな確証は無かったが、それでも簡単で稚拙だったが、可能性が一番高いラークを潰そうと考えていたのだ。もちろん、そんな事はティアやレオン。フェイ達には欠片も見せるつもりはなかった。あくまでしっかりとした根拠のないものだ。
なので、それっぽい理由をでっちあげることにした。
「正直、そろそろ面倒だったらな。良い機会だから、今回本気で潰そうと思ってな」
「それで、即決したって訳か。にしても、出来れば相談もなしに決めるのは一言言ってほしかったけどな?」
「良いのか?」
「…まあ、ここ数日で、シルバーがどんな奴か分かったつもりだからね。大丈夫。力になるかは分からないけど、鍛えてくれたお礼として、協力させてもらうわよ。ね?」
「おうっ! 任せろ!」
「僕も、問題は無いね」
「‥‥ありがとう」
正直言って、俺とラークの問題に協力させるのは、気が引けた。それでも、手伝ってくれるというのは、素直に嬉しい事だった。
「それで、かなりの差があるけど。受けたからには、勝算はあるんでしょ?」
そんな中、ティアが意地の悪げな笑みを俺に向けて来て、俺はその問いに当然とばかりに頷く。
「ああ、もちろんだ。といっても勝負を出来るだけフェアにするだけ、だがな?」
そんな事を話しながら俺達はそれぞれの昼食を食べ終え、食器を下げる。明日も迷宮に潜る予定なので、今日は早めに切り上げ、午後からは休息を取る様にしたのだった。もちろん、これに関しては事前に申請・許可をもらっているので何の問題も無い。
「それじゃあ、今日は解散。街に出ても良いが、ちゃんと体を休める事。いいな?」
最後に、俺からの注意を聞いた後、俺達は食堂で解散したのだった。そして、俺は体を動かす為に修練場へと向かいながら、明日の事を考える。
(明日は、ちょっとばかり本気を出すか)
ラークに勝つ方法、それはごく単純で。今回はあくまでティアやレオンの成長とチームワークを良くする為に俺はあまり戦わなかったが、明日からは少しばかり本気で迷宮を攻略させてもらおうと考えていたのだった。
因みに、俺が修練をしているとフェイ、ティア、レオンの順に修練場へと集まってしまい、結果仲良く鍛錬をして、その日を終えたのだった。
その日、夜の帳が降りつつある自分の部屋でラークはある人物と密会をしていた。カーテンは閉められており、部屋を照らす魔力灯の光はそこまで強くないために詳しく分からないが、黒いドレスに同じ色のローブを目深く被った女が窓際近く立ち、ラークと話をしていた。
「それで、上手く行ったかしら?」
「ああ。あいつは僕の挑発を受けたよ。それが、僕と君が作り上げた罠である事を知らずにね」
「あら、それは重畳ね。それじゃあ私の方も貴方の為に頑張るから、貴方も、頑張ってね?」
「ああ、リティ。俺はあいつを殺さないと、気が済まない!」
手の上で杖を器用に回しながら、男をとろけさせるような甘い声でラークを褒める。それによって、ラークの目に憎悪の光が宿る。それはまるで、元々目の敵にしていたシルバーに対して更に憎悪を植え付けていくかのようだった。だが、次の朝になればラークは今の事を忘れてしまうだろう。
その事に、女、いや魔女は笑みを浮かべる。
「うふふ。それじゃあお休みなさい。私のお人形さん?」
蠱惑的な笑みを浮かべながら、魔女はその体はまるで溶け消えるかのように消える、ラークは何事も無かったかのように、眠りに就いたのだった。
時間が空いてしまいましたが、どうにか今回も投稿をする事が出来ました。
とりま、次の話は迷宮攻略で、主人公であるシルバーが本格的に戦闘に参加して、この章がいよいよ佳境?に入って行きます。今後も頑張りますので、楽しんでいただけると嬉しいです。
それでは、失礼します。どうか次話を楽しみにしていただけると幸いです。それでは、失礼します。




