第七十三話 「朝のひと悶着」
すいません。時間がかかりましたが、なんとか出来ましたので、投稿です。(久々に短い…)
最近、書けるときと書けないときの差が激しくて苦戦です(書きたいのに)
場合に依り、改稿をする可能性があります。申し訳ありません。
周囲からの注目を集めながらも朝食を食べ終え、授業までまだ余裕があったので、俺とレティスは、何も入れないストレートのアメル茶、リリィ、エル、ルヴィは砂糖とミルクを入れたカフェオレ状態にしてそれぞれ食後の休憩を満喫していた時だった。
(…懲りずにまた来たのか)
まだ離れてはいるが、俺達の座っているテーブルへと近づいて来る奴が居ることに気が付いた。そして、そいつは入学してから、エルに対してしつこいストーカーのするような奴だった。そんな事を考えて間に俺達と同じ制服を身に着けた、金色の髪の男子生徒、ラーク・アルフレッドが向かって来ていた。名だけでなく性もあることから分かるように、こいつは貴族で、そしてそれを自己紹介の時にぺらぺらと自慢していた。
(確か…二十年前に貴族に取り立てられたんだったか)
アルフレッドという性は貴族になった際に授けられた名前で、それ以前は貴族ではなく商人で、それでも独自の魔法を利用した商売でかなりの財を成した豪商だった、らしい。なかには多種多様な女・子供を誘拐し、奴隷として売買しているなどの黒い噂話がまことしやかに囁かれており、正直関わり合いたくないのだ。その証拠に、周りは巻き込まれるのを嫌って遠目で見ているもの、知らん顔をしていると別れていた。
そんなアルフレッド家だが。それでも貴族に取り立てられる為の功績は、聞いた話だと現公爵の(名前)が軍備の増強する為に安易で増産が可能な土魔法で作れるゴーレムに目を付け、そうして選ばれたのがラークの家であるアルフレッド家だった。そしてアルフレッドが土魔法によって作り出したゴーレムはかなり高性能だったというのは、割と有名な話だった。
そして貴族になったのが凡そ二十年程前。こいつの父親の代から貴族となったのだった。
因みに爵位は、上から公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵・準男爵・騎士の順なのだが、アルフレッドの爵位は子爵、つまり、俺の生家であるシュトゥム伯爵家の一つ下の爵位だった。
「やぁエルさん、朝食はもうお済のようですね」
そして、そんな周囲の反応に気づいていないのか、いや、実際気づいていないのだろう、俺達のテーブルに着いたラークは俺達に眼もくれず、饒舌にエルに話し掛ける。
「やあ、エルさん。朝食はもうお済のようですね。もう少し僕が早起きでしたら、ご一緒できたものを」
そう言いつつ、ラークは俺に嫉妬の籠った眼を向けて来た。もちろん視線に気が付きはしたが、それはそれで面倒そうなので俺は気が付いていないふり決めこむ。
一方、俺が気づいていないと思っているラークは、僅か二口元を優越交じりの笑みを浮かべ、しかしそれは、時間にすれば一瞬で、俺の他に、周りが気づいている様子はなかった。
恐らくラークは俺にだけ見える角度でしたのだろう。
(無駄な器用なことを)
内心、そう思ったが、アメル茶を口に含み、飲み込む様にしてのみ下す。そうして無視している間もラークはエルに話しかけ続ける。
「それにしても。貴方のような才能豊かな方が、彼のような凡人が同席されているとは、いはやは信じられません。だからどうです?今後は、僕と一緒に朝食をとるというのは?」
ラークは好き勝手言ってくれているようだが、確かにこいつの土魔法で作られるゴーレムは強い部分は否定はできない。だがそれはあくまで、普通の同年代から見ればの強さであり、俺達から見れば、全く問題は無かった。
「‥…煩い」
ラークを無視していたエルだったが、それでも限界はあり、限界を現す様に普段は言わないその言葉は、エルを怒らせつつある証拠で、徐々にだが体から魔力が漏れ出し始めていた。まだエル自身を抑えてはいるが、徐々に辺りの空気が下がったかと錯覚するほどだった。
「な、なんだ?」
流石のラークも周囲の雰囲気がピリつきつつある事に気が付いたのか、辺りを見回し、周りも不安げに俺達のテーブルを見ていた。
そんな危険な状況下、リリィ達は焦る事無く、慣れた者特有の落ち着いた様子で俺に視線を向けていた。それは今のエルを宥めれるのは俺だけだという共通認識ゆえの事だった。
(はあ、平和だった時間は一体何処に…)
内心でため息を吐きながらも、俺はそっとエルの頭に手を乗せ、優しく撫でる。するとエルから漏れ出ていた魔力は途端に霧散。同時に圧迫感も消え去ると、エルは俺の手に頭を擦り付ける様に甘えてきて、周りは甘ったるいものを口いっぱい詰め込んだみたいな表情を浮かべ、また男子の中にはまるで眼から血涙を流しているよう見えるものまでいた。
「‥…そう、か。そう言う事かっ!」
そんな中、ラークはまるで見たくないものを見たと言わんばかりに一切の表情が抜けたような無表情で、しかし次には俯き、何かぶつぶつとつぶやくといきなり声を上げ、納得気に頷くラーク。傍から見れば、単なる変人だろう。まあストーカーに今更変人とかは今更な気がするが。
「ならば仕方ありません。少々乱暴ではありますが、あなたを縛る枷がどれだけ脆いものか、ここで僕が証明してあげましょう。シルバー・シュトゥルム、貴殿に決闘を申し込みます」
「‥‥は?」
開いた口が塞がらないとは、こういう事を言うのかと、何処か他人目線でそんな事を感じながらリリィの方を見ると、リリィ達も困惑していた。その表情はまさしく、意味が分からない、といっていた。
と、せっかく穏やかな朝食の時間は、こうも意味も分からずに終わりを告げたのだった。
「あ~、疲れた‥‥」
結局、あの場は食堂に先生が姿を現した事でラークは急激に大人しくなり、その場は終わりをつげ、俺達は手早くそれぞれの飲み物を飲み干すとそのまま教室へと向かったのだ。
そうしてそれぞれの席に座ったのだが、朝なのに、どっと疲れた俺は思わず机へと突っ伏していた。
そんな俺の頭上に影が差し、誰かが話しかけてきた。
「朝からお疲れだね?」
「…フェイか」
顔を横にして見てみると、亜麻色の髪をボーイッシュに切った髪型、玻璃色に中性的な容姿の男子生徒、それがフェイだった。
「相当に疲れたみたいだね。もしかしなくても、またあの人かな?」
「ああ、お前が想像した人物だよ…」
「あはは、それは、散々だったね」
俺がこれだけ精神的に疲れているその原因を理解してか、フェイは何処か労わるかのように肩を叩いてきた。リフェルの家は一般家庭だった。それでもその実力は、トップ10に入る実力者だった。
「っと、そんな疲れてるシルバーに朗報があるんだけど、聞きたいかな?」
「うん、朗報?」
「ああ、迷宮攻略に関してなんだが。条件付きだけど、君からの勧誘を受けよう」
「マジか!?」
「あ、ああ」
フェイの口から出た、その言葉は精神的な倦怠感を吹き飛ばすには十分な言葉で、一息に起き上がった事に驚いたのだろう、驚いた表情で頷いていたが今の俺にはあまり関係が無かった。
「あ、悪い。いやなことがあっただけに、つい、な」
「…まあ、分からなくもないけどね」
フェイは俺と同じ被害者であるエルの方の方を向いていたのだが、俺のその質問にまた俺の方を向いた。そもそも、何故エル達とパーティーを組めば問題ないのだが。
『あ、君たちがパーティーを組んだら強すぎるから、組むのは禁止ね』
『何故だ!?』
まるで、散歩に行こうかとでも言う感覚で、カルアス言われて、何の冗談かと思っていたのだが、正式に迷宮攻略が通達された時に改めて俺達は組んではダメだと通告されたのだった。その理由を聞く為に学院長であるディアネルに説明を求めたのだが、バランスが崩れるからやめてくれとディアネルから言われてしまえば、納得をせざるを得なくなり。
『仕方ないです。それぞれでパーティーを作りましょうか』
と、リリィの号令のもと、俺達はそれぞれでパーティーメンバーを探す事になり、その中でエル達は順当に声を掛けて集める事が出来ている中、俺は声を掛けても断られて、未だに一人もいなかった。
そんな中、フェイは断ることなく、少し時間をくれと言ってくれたのだ。それでも返事がなかなか来ないために半ば諦めていたが最後の希望だった。
「それで。パーティを組むための条件のはなんなんだ?」
「実は、パーティーを組む時、僕の友人なんだけど、二人ほど入れてほしいんだ」
今回の話で出した二人の新キャラは今後、確実に関わってきます。(多分という曖昧な確信)
因みに、書くのが難航した原因のひとつが慣れないキャラを書き出そうとしたことによります。
なかなか思うように書き出せず、本当に難産でした。
次回はどうか、もう少し早く投稿できればと思っています。
長くなりました。今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。また評価・ブックマークをしてくださった読者の皆様、ありがとうごさいます。今後も励みに、少しでも楽しんでいただけるように勤めていきます。
それでは、今話はこれにて失礼します。どうか、また次話で。




