第七十二話 「早朝訓練」
思い付いたので、投稿です。ちなみに、これだけ早いのは偶然です。
それにしても。エルの寝間着姿……眠気が凄い…ガクッ
「よし。準備完了!」
カーテンの隙間から朝日が差し込むまだ朝と呼ぶに少し早い時刻、
なんとなく、懐かしい、クラス分けバトルロワイアルの夢を見たよう気がすることに首を傾げつつベットから抜け出した俺は走りやすい身軽な服装に着替え、腕には【風神の天廻】を付ける。
中には飲み物、そして武器として【ジョワユーズ】と【天叢雲剣】入れていた。トレーニングには不要だろうし、魔法があるから必要ないかもしれないが、武器があると無いとでは勝手が変わるので、いつでも【風神の天廻】を身に付け、中に武器を携帯するようにしていた。
「…やっぱ、居るか」
そうして準備を終えた俺はそのまま部屋を出ようとしたのだが。どうして、俺の寝ているベットの向かいにあるベットにあるふくらみが目に入ってしまった。もちろんそれは中に荷物があるなどによってではない。
その証拠に、その膨らみは規則的に揺れていたからだ。そして、その膨らみの原因を俺は既に知っていて、軽く溜め息を吐く。
「はぁ、毎度いつの間に来ているのやら。んで、どうしているんだ‥‥エル?」
「‥‥おはよ…う‥‥シン…」
まだ寝ぼけているのか、ベットから体を起こしたエルは寝巻の姿だった。もちろん普通の寝間着であれば何の問題もない。いやそもそも俺の部屋が男子寮内にある一室である事から、俺の部屋でエルが寝ている時点で既に問題なのだが、既にエルを含めて日ごとに入れ替わって寝ているので、既に慣れてしまっていた。
では何が問題なのか、それはエルの身に着けているものが問題だった。
「ぶふっ! エル、なんだ、寝間着は!?」
「‥‥ふぇ?」
普段のエルは絶対に言わないであろう、その単語と、今のエルの寝間着姿に、思わず俺の理性はクラっと来てしまった。それはあたかも、サキュバスが人間を魅了するかのように。
だが其れと同時それはそうだろうと、俺は納得していた。
起き上がった事によって捲れた掛布団の間から見えたのは、エルの白い髪と肌と対比を成す様な黒い、胸元からおへそ辺りまでを覆う、俗にベビードールと呼ばれる寝間着、更に下着は上と同じく黒の、…しかも紐で結ぶタイプの下着を身に着けていたのだ。
確かにエル達は学院へ出発する前に、母さんから寝間着を貰っていたという話を聞いてはいたが、今までこの部屋でエル達は母さんからそれぞれに渡されたという寝間着を来て寝ているという事は無かったが、何となくその理由が分かった気がした。女子ならざる俺の推測に過ぎないが、恐らく着るのが、恥ずかしかったのだろう。
「‥…エル、取り敢えず、服を着てくれ…」
「‥‥分かった」
何処かまだ寝ぼけているエルに、どうにか、深呼吸で上がった心拍を整え、そう伝え即座に後ろを向いた俺の背にエルの返事が聞こえ、その後、寝巻から服へと着替えている事を伝える衣擦れ音が朝の静かな部屋の中に響く。
その間、俺は心を落ち着かせる為に、必死で冷静、とわざわざ画数の多い感じを書いて飲み込むを繰り返す事、凡そ一分程経っただろうか、後ろでしていた衣擦れがしなくなった。
「‥‥終わったか?」
「うん…着替えた」
エルからの返事を聞き、後ろを見るとそこには学院の制服を身に纏ったエルの姿があり、そこには先ほどまでの雰囲気とは一変していた。そして落ち着いた今、聞かなければならない事があった。
「ところでエル。さっきの寝間着なんだが…「義兄さん~!早くトレーニングに行きましょう~!」」
「…行こう」
「…ああ」
寝間着の事を聞こうとしたのだが、タイミングよくリリィが外から声を掛けて来たことにより、そしてエルは見つからないように窓から外に飛び降りた。(因みに俺の部屋があるのは三階建ての寮の最上階の角の部屋だ。どうやら成績上位者の組であるエルメス組の人間は部屋を好きに選ぶ権利があるらしかった)
本来、建物の三階から飛び降りれば最悪骨折などをする可能性があるが。
(まあ、大丈夫だな)
この世界では魔法があり、何より俺が知りうる限りでは最高峰の魔法使いであるエルに、そんな心配は無用で、今も無詠唱で発動させた、恐らく風魔法【風圧】によって重力を緩和し、危なげなく地面へと着地した。
「義兄さん~! 早く行きましょ~!」
「分かった!」
エルが飛び降りた窓を閉め、俺は少しばかり速足で寮の玄関へと向かったのだった。
ヴァルプルギス魔法学院は広大な土地を誇り、敷地内では幾つもの修練場があり、俺たちの姿はその中の内のひとつにあった。
「ッ!」
そして、その目的は遊ぶためではなく、それぞれよ鍛練の為だった。
そのなかで俺は、アルザーネとの戦いで披露した技、一瞬にして全身にあるスイッチをいれ、トップスピードに至る技、その習熟だった。
(…まだ、ズレがあるな)
だが、まだ普段の状態では、その早さに認識が追い付いていなかった。その証拠に、目標の案山子に剣を当てたつもりだったのだが、剣先が僅かに掠っている程度だった。
言うなれば、普段は電車に乗っているのに、いきなり新幹線に乗ると速く感じるように、今の俺はその認識の差があり、その誤差を無くすために感覚を慣らしているところだった。そして鍛錬をしているのは俺だけではなく、エル達もそれぞれ鍛錬をしていた。
「んっ」
先ほどから魔力が幾度となく高まっているのだが、それはエルが今も新たな魔法の開発、また使える魔法が少ない「相乗」の種類を増やす事だった。そして少し離れた事所ではリリィ、レティスとアルテシアが模擬戦をしていた。
「くっ‥‥まだまだ!」
レティスは血で作り出した弾丸をリリィへと撃ち放ったが、リリィはそれを全ていなす様にして弾丸を全て逸らすことに成功させる。
「やるな!」
称賛するレティスと入れ替わる様に、全身鎧ではなく、腕にだけ装甲を纏ったをルヴィが入れ替わる様に前に出る。
「それなら。これはどうですか!」
距離を詰めたルヴィは正に拳のラッシュで、普通であれば滅多打ちにされるだけで終わる速さだった。
それをリリィは時折ルヴィの拳に当たりながらも剣だけで受け流し、レティスとルヴィ、二人の交互に容赦ない攻撃にリリィは必死に捌いて行く。もちろん二人はリリィをただ袋叩きにしているわけではなく、もちろん明確な目的があった。それはリリィの「反射」の技量を高める為だった。と見ている間にも腹に入り苦し気な声と表情を浮かべたが、それでも眼は死んでいなかった・
「まだ、まだ!」
本人たちがどう言ったとしても、まあ、傍から見れば、タコ殴り、弱い者苛め状態だ。俺も最初は止めたのだが、クラス分けバトルロイヤル後よりリリィはより「反射」に磨きを掛けたいと言っていた。そして何度か俺達は止めたのだが、リリィの熱意を止めること敵わず現在に至るという訳だ。
レティスが言うにはリリィにとって良いライバルが出来たみたいな事を言っていたので、それも関係しているのだろう。
因みに、レティスとリリィはそれぞれ力をより無駄なく効率に扱えるようになる為の模索の意味合いもあった。
「よし、続けるか」
そして、少し休憩した後、俺は自分自身の体に神経を張り巡らせ、再び人形に剣を当てれるように鍛錬を再開したのだった。
そうしてそれぞれが鍛錬を続ける事、凡そ一時間。ここに来た時に比べると大分日が昇って来ていた。これ以上鍛錬を続けると、そろそろ朝食の時間に間に合わなくなってしまうのだ。流石にこれだけ体を動かした後の朝食抜きは体に悪いので、ここで切り上げることにした。
「よし、それそろ切り上げるぞ!」
エル達に聞こえる様に声を掛けると、座った状態で魔法の開発をしていたエルは立ち上がり、模擬戦をしていたリリィは剣を鞘に納め、レティスが「血操術」を解除し、ルヴィは腕の装甲を解除し俺の元に集合するとそれぞれに今日の進捗状況を軽くな話した後(因みに、この時にリリィの傷の治療もした)、そしていつも通り、それぞれの寮へと戻り、制服に着替えると俺は寮の前で待っていたエルと一緒にそのまま食堂へと向かった。
学院の食堂は校舎の一階の一角にあり、寮からは歩いて凡そ十分ほどの距離にあった。身体強化魔法で走れば一~二分ほどだが。まあ、幾ら魔法学院といえど、敷地内で許可なく魔法を行使した者に対する罰則が存在する。もちろん緊急時などの際の行使は例外だが、もちろんそれは滅多と起こる訳でない。
何故敷地内での許可なく魔法を使えない様にしているのか、それは扱いを間違えれば、魔法は人を容易く傷つけ、最悪殺す事が可能だからだろう。いわば極端に言えば、この世界で魔法を使える人間は、意思のある一種の兵器と同じなのだ。っと内心でそんな事を内心で考えていると食堂へとたどり着き、既にリリィが待っていた。
「もう、二人とも遅いですよ!」
「悪い、少しぼーっとしていたからな」
リリィに謝りながらも再び揃った俺達は纏まるようにして食堂へと入るとそこは既に多くの生徒によって賑わっていた。
食堂はどちらかというとカフェテラスに近い感じで、ガラス張りの窓から見える外のテラスでは、俺達と同じく制服を身に着けていた何人もの生徒がそれぞれに談笑をしつつ朝食を楽しんでいた。
「さて、それじゃあ俺達も注文しに行くとするか」
俺の言葉にエル達は頷き、朝食を頼むために料理を注文するカウンターへと向かったのだった。
‥…因みに、相変わらずの大食いで、何度目か覚えていないが、周囲からの視線が集まり、気にしないことにしたがそれでも俺が肩身が狭いと密かに思った事を、密かにここに記しておく。
この話は、クラス分けバトルロワイヤルを終えて、数日後の話です。
この話を起点に迷宮攻略へと話が向かっていきます。
さしあたっては、パーティーを作るところからですかね…。
次回の投稿は二週間以内に投稿できればと思っています。おかしな箇所等あれば、ご報告をよろしくお願い致します。また評価、感想等いただけますと、嬉しいです。
それでは、今話も読者の皆様が楽しめていただけたら、また次の話を楽しみにしていただけると幸いです。
それでは、失礼します。また次話で。




