第六十八話 「回想 クラス分けバトルロワイヤル 後編」
ど、どうにか、平成の間にできましたので‥‥投稿です。
次の投稿は、新元号になってからですね‥‥。
書きたいのに、話が思う様に進まない‥‥(不思議) そして戦闘シーン、後半部分の文章校正…相変わらず、下手だな…はぁ。
五月五日に大幅な改稿し、内容も大分変更しました。大変申し訳ない。その代わり二千字ほど増量しました。‥‥(修正と消去の連鎖…キツかった)
そして取り敢えずシルバー達は休憩に入るので、次はリリィ達に光を当てれたらと思っています。理想では、その後にシルバー達の戦いを描いて本編に戻る予定です。また改稿に想像以上に時間が取られたため、本日より二週間ほどで投稿を出来れば考えています。申し訳ない。
‥‥それにしても友人から言われた「文字が与える印象」とは一体‥‥?
私の名はアルザーネ・クルィク・ナトゥーア。獣の特徴を持った通称、亜人と呼ばれる者達が多く暮らすナトゥーア王国。その国王の娘、王女として生まれた今の私の体に空虚を知ったのは、一体いつ頃からだっただろうか。
そんな事を思いながら近くに居た奴を吹き飛ばしながら残った人数の把握をする。
(残りは…だいだい六十人ほどか)
単純に百人近かった人数の四割を削った計算で、それだけの人数を相手にするのに、私の中には特にこれといった感情は湧き上がってこなかった。何せ、私は今まで負けた事が無かったのだから。
昔、二人の兄と手合わせをしたことはあったが、結果は私の勝利だった。それでも兄は私が勝ったことを自分の事の様に褒めてくれ、それ以降、魔物と戦っても模擬戦をしても私は負ける事は無かった。
それから少ししてだった、胸の内に空虚な感じに気が付いたのは。
(なんなのだ、この何とも言えない感覚は…?)
それでも最初はすぐになくなるだろうと気にしないでいたが、それでもこの歳になるまでの間空っぽな感覚が払われる事は無かった。それを例えるのであれば、光すらも差し込まない、風も吹かない深い森の中で霧が蟠っているようなもので、それは今も私の中に蟠っていた。
(まだ、晴れない、か)
胸の中の蟠りを感じながら身近に居た男子に身体強化魔法で強化した左手で腹部に掌底を打ち込みながら背後からの魔力を感じ取った。
(なるほど、こいつは囮か。という事は指揮系統は混乱しているように見えたのは私を誘い込むための演技か)
そうしてる間にも後ろにいる灰色の髪の男子の水属性【水弾】《アクアショット》の詠唱が紡がれていく。
「水よ、集い、打ち砕け、【水弾】《アクアショット》!」
詠唱を終えると同時に具現化した球状の水が私を目掛けて飛んでくる。もちろん私の動体視力からすればその速度は容易に視認可能で、回避も可能だが、ここは今この戦いを見ている彼に見せる為に、私は敢えてその魔法を受ける、壊すことにした。幸いにも私の属性は風で、水は風は互いに弱点ではなくトントンで、相殺できるからだ。
「風よ、我が身に纏え【風渦】《ヴェルティ》」
詠唱を終えると私の手から肘までを中心に、まるで渦を巻くかのように様にして籠手を形成する。そして私は飛んできた【水弾】と【風渦籠手】が接触し、一瞬弾かれそうになったが身体強化魔法で強化した膂力で押し切り、【水弾】は小気味いい音を立てて四散する。
「そ、そんなっ! 獣人風情に僕の魔法が、ぐふ!」
「隙だらけだ」
まさか自分の魔法を破壊されるとは思っていなかった、といった感じに衝撃を受けていた男子に一足で接近し、体に手を当てると同時に掌に集めていた【風渦】を当てると吹き飛ばされ、男子生徒は木に激突した後気絶したのか、光に呑まれて消滅した。
「フェンがやられたぞ!」
「くそが!」
どうやら、いま消滅させたのは私達獣人を嫌う類の人間のようだった。そして残りの二人も私のような獣人を嫌っている事が良く分かった。
そもそも獣人とは、人とほぼ同じで、違いといえば耳と尻尾がある事と、人より力が強い程度で、それ以外は同じだと以前父上と来た際に話をしたこの国の王はそう言っていたがそう思っていない人間が特に貴族に多い事を嘆いていた事を思い出していた。
(やっぱり、貴族には私達を嫌う奴がいるんだな)
知らなかった訳ではない。ただ心の何処かでそんな事は無いと思っていたのだろう、私は無意識の内にショックを受けてしまい、それは確かに隙で。ゆえに気が付かなかった、二人の内の一人が密かに詠唱をしていた事に。
「大地よ、楔となりて、咎人の足を地に縫い付けよ!【地楔】!」
詠唱が聞こえた瞬間に私は横に飛ぼうとしたが左足が動かず、見ると左足の地面がまるで木に絡まる蔦の様に変化し、私の足を絡めとっていた。その隙は今ばかりは致命的だった。
「くっ!」
土がまるで蔦の様に脚に絡みついているのを吹き飛ばそうとした時、複数の魔法が発動する前兆の魔力の反応を知覚した時は、手遅れだった。
「今だ! 魔法、一斉射!」
まるで私に隙が出来るのを狙ったかのようなタイミングで一斉に私目掛けて魔法を撃たれた。本来ならば、背後に風を爆発させる事でその場から離脱すればいいだけなのだが、まだ左を絡めている土で出来た蔦を破壊する事が出来ておらず、だが足の土の蔦を破壊しようと思えばそれは簡単だった。左足部分に【風渦】を纏わせればいいだけなのだから。
(けど、それだと防御に間に合わない)
別の魔法からの干渉を受けた状態でそれを破壊するのであれば、干渉を絶ち切るので通常より多くの魔力を消費し、それは次の魔法の発動までに僅かな時間差が生じてしまい一斉射された魔法に対する防御が間に合わない可能性が高かった。そしてそうしている間も魔法との距離は迫って来る。
(どうする‥‥どうすればこの状況を切り抜けられる)
最初に考え着いたのは自分を中心に巨大な【風渦】を作り出す事で今も左足を拘束している【地楔】を破壊のと周りに居る連中ごと辺り一帯を薙ぎ払う事だった。普段から【風渦】を使っているので自分を中心に見立てて魔法を発動させることは可能だったが、それだと魔力の消費が大き過ぎ、次の攻撃に耐えきれないどころか魔力不足による魔力欠乏症によって強制退場をさせられてしまう可能性も高かった。
そして幾つか考えた結果、魔力消費は大きいが、この危機を突破する事を最優先に考え、最適だと判断し、それでも少しでも魔力の消費を抑えるために敢えて詠唱を言葉にして紡いでいく。
「大いなる奔放の風よ、ここ、この場に集い、渦巻く嵐となり、大地を抉る牙と成せ、【大風渦嵐】!」
言葉にして詠唱を紡いだお陰だろう、幾分か魔力の消費が抑えられながらも【大風渦嵐】の効果は絶大だった。私を中心として突如として発生した嵐に対応できなかった者達が吹く飛ばされて行くなか、耐えている者が何人かいる事にすぐに気が付いた。
耐えている二組の内一つは私に魔法を放つ号令を下したリーダーの男を含めて十数人と、今もこの戦いを見ている、もしかしたらと私が密かに期待をかけている同年代の黒髪の少年だけで、他は全て風に呑まれ、遥か上空へと巻き上げられ、同じように巻き上げられた魔法に被弾していき空で光となって消えていく。
(このままだと持たないな)
状況的には相手の八割方とおおよそ大半以上を倒すことが出来た。何故分かるのかそれは【大風渦嵐】の範囲内はいわば私の領域で、その領域内の事は良く分かり、相手がどれだけ減ったのかを確認する事も出来た。そしてそれは私に良い情報と悪い情報を伝えてきた。
(やはり、容易に倒せないか)
悪い情報、それは集団の核である中心人物を倒すことが出来なかった事で、もう一つの良い情報は、私が興味惹かれている彼が私の魔法で吹き飛ばされる事無く、寧ろ悠然と立っている事だった。その事を嬉しく思いながらも私は選択を迫られていた。
(このままだと、魔力不足で気を失うな)
魔法は魔法によって干渉する領域の大きさによって魔力の消費量は大きく変わり、今の私は自分を中心にかなり広範囲に干渉しているので予想通りかなりの魔力を消費していおり、【大風渦嵐】をこのまま維持すれば確実に魔力不足による魔力欠乏症で強制的に転移させられるのは明白で、負けるとしてもそんな負け方は私は嫌だった。
とするならば手段は一つしかない。
(魔法を解除すると同時に接近して、倒しきるしかない)
幸いにも相手の足も今は防御の為に止まっている状態なので【大風渦嵐】を解除した瞬間に身体強化魔法で肉体を強化と同時に走り出せば距離を詰める事が可能だった。
唯一の不安要素といえばあちらはまだ服数人である為に防御をしていない者が何を仕掛けてくるのかが予想できない点だが、それでもそれらを踏まえてもジリ貧の今の状態よりは良い自分に言い聞かせ、【大風渦嵐】を解除するタイミングを見計らう。
(‥‥‥ッ)
僅かに、リーダーが体のバランスを崩したその瞬間、【大風渦嵐】を解除すると身体強化魔法で肉体を強化しまるで疾風の様に駆けて行く。
そして魔法を解除して凡そ一秒にも満たない僅かな時間で凡そ七メートルの距離を詰め、中心人物であるリーダーの男子を倒そうとした一歩踏み込んだ時、リーダーの顔が僅かに見え、その表情はまるで獲物が罠に掛かった事を喜んでいるように見え、罠だと理解した瞬間、私の視界は白く染め上げられていくのを感じながらも最後に、まるで誰かに抱きかかえられたのを感覚的に理解しながら意識を手放し、そして次に目が覚めた時その場に立っていたのは黒髪の同級生になる彼、シルヴァだけでだった。
―――――――シルヴァ・シュトゥム―――――――
エルが近づいて来る奴らを相手にするために飛んで行った辺りからずっと俺はアルザーネの戦いを観戦していた。
戦い方としては分かったのはアルザーネの属性は風という事、ルヴィも体全体を武器の格闘型だがどちらかた言うと鎧を纏って戦う事が多いので戦い方が似てはいるが、アルザーネは鎧などではなく肉体のみ武器にした近接戦闘が得意で、魔法を織り交ぜて戦っていた。その中で俺が驚いたのはアルザーネが手から肘に掛けて風をまるで籠手の様に纏った事だった。それは俺の知る【風鎧】とは違い範囲を限定して発動させた魔法でかなり興味深いものだった。
(…なるほど。全身を包み込み攻撃を逸らす【風鎧】とは違い、あの【風渦】は範囲を限定した事で強度と扱いがしやすくなっているのか)
正直言って、【風鎧】はまさに鎧の様に風で全身を包む込むので全体を守れるが魔力の消費量が多かったのので使いどころに困っていたのだが、アルザーネが使っている【風渦】は範囲こそ限定されるが魔力の消費量の観点から見ればかなり扱いやすい魔法であることが分かり、今度練習しようと密かに頭にメモをしておく。
とそうこうしていると二人組から隙をつかれアルザーネは機動力ともいえる片足を拘束されてしまい、
「魔法、一斉射!」
更に集団のリーダーがその隙を逃す事無くアルザーネへと一斉に魔法を撃ち、幾重もの属性魔法がアルザーネへと迫って行くなか、アルザーネは脚の拘束を解こうとせず、そのまま詠唱の言葉を紡いだ。
「大いなる奔放の風よ、ここ、この場に集い、渦巻く嵐となり、大地を抉る牙と成せ、【大風渦嵐】!」
詠唱を終えた瞬間、一瞬空が暗くなったかと思えば、辺り一帯に力を抜けば容易に吹き飛ばされるまるで超強力な台風のような風が吹き荒れ始め、アルザーネの近くに居た貴族二人と集団のリーダーとその周辺に居た者達以外は一斉に空へと巻き上げられ、そして同じく巻き上げられた幾重もの魔法に当たり結界の外へと強制的に転移させられていく。
で俺はそんな吹き荒れる嵐の中を【風鎧】を纏う事で向かって来る風を受け流しながら立っていたのだが、ふとリーダーの方を見た後アルザーネが俺の方を嬉しそうに頬を緩めたような気がしたのだが、すぐに見返すもそんな事は無く俺の気のせいのようだった。
と俺がそんな事を思っているとアルザーネの表情が心なしか青くなっている事に気が付き、それが魔力不足による魔力欠乏症によるものだとは直ぐに気が付くことが出来た。
(あのままだと自滅だけだが。さて、どうする?)
正直見ているだけは申し訳なく思っていたし、何より彼女と戦ってみたいと思い始めていたので俺としては手を出しても問題は無かったが、敢えて今少しだけ様子を見ることにするとアルザーネが動いた。【大風渦嵐】を解除したのとほぼ同時に身体強化魔法で肉体を強化し、まるで一陣の疾風の様に目測七メートル程先に居るリーダーの居る場所へと一足にして接近していた。
(なるほど、相手は急に魔法を解除されて即座に動けない所を突いて相手の頭を獲ろうって寸法か。だが少しばかりお粗末じゃないか?)
風を視る者で見た感じ、アルザーネが次に踏み込むであろう場所には刻印術が刻まれた罠が、仕掛けられていた。視た感じ火属性の魔法で恐らく前世で言うクレイモア地雷の様に刻印を踏んだ瞬間その上に居るものを吹き飛ばすのが【爆裂】だ。恐らく先ほどの風が吹き荒れる中アルザーネの感覚を掻い潜り地面に仕掛けたのだだろう。
(巧いもんだな。けど)
そして万全の状態のアルザーネであれば気が付けたのかもしれないが、僅かに魔力欠乏症の症状が出始めているアルザーネの視野と感覚が狭まっていた事と相手がそんな罠を仕掛けているはず無いと思っていたことが重なった結果だろう。
そしてアルザーネが気づかず地面を踏んだ瞬間に急速に魔力が凝縮し【爆裂】が発動する直前、体が堪え切れる限界まで身体強化魔法で強化すると俺は、まるで周囲の時間を取り残しているかのような感覚の中アルザーネを抱え上げ、即座にその場から離脱し、身体強化魔法《ボディエンチャントを解除した瞬間、【爆裂】が起爆し、辺りに砂煙を巻き上げたのだった。
アルザーネを奇跡的に無傷で残ってた木の根元に横たえながら内心で思っていると火・水の魔法が俺の元に、いやアルザーネ目掛けて飛来してきたが、それを俺は日本刀の様に斬る鋭さをイメージして放った【風刃】によって両断され、宙で四散し、俺は魔法を放ってきた連中。砂煙の中歩いてきたのは生き残っていた仲間を連れた、少しくすんだ赤い髪のリーダーへと声を掛けた。
「悪いな。ちょっとこいつを倒すのは、待ってもらうぞ。それにしてもいきなりとは、ずいぶんと荒っぽいな?」
「いずれ敵対するのであれば、お前は挨拶を容赦するか?」
「ああ、確かにそれは道理だ。それじゃあ、ここで攻撃してきたお前らを倒すのも、道理だよな?」
「ああ、そうだなっ!」
近づいてくる前に詠唱を終えて待機状態にしていた魔法を俺に放ってきたが、俺は無詠唱で作り出した【風刃】で先ほどと同じように全てを切り裂き四散させ、その次の追撃の魔法を放っては来なかったが、そのわけを俺は既に知っていて、剣を抜き放ち相手の短剣を受け止めると男が少しばかり驚きの表情を浮かべていた。
「へえ、外から見ても分からない様にしていたつもりだったけどな」
「なら今後は足運びと体の動きに注意する事だな」
そう、俺がこいつが武器を持っている事に気が付いたのは、こいつの足運びが他と比べて違っていた事だった。昔の日本の武士や剣客、または現代では剣道の経験がある者はそれにあった独特の足運びをいるのと服の何処かに武器を隠している場合だと無意識の内に隠している場所を隠そうとする心理が働く事を何となく覚えていて、そのお陰で確証までは無かったが相手が武器を隠し持っている可能性に気が付くことが出来き、備える事が出来たからこそ受け止める事が出来たのだった。
「なるほど。なら今後は気を付けないといけないな!」
「ちっ!」
鬩ぎ合っていた状態から身体強化魔法で強化した腕力で押し切ってきたので俺はそれに逆らわず後ろに倒れ込む様にすると目の前を短剣の刃が通り過ぎ、そのまま俺は後ろへと下がりいったん距離を取った。
「ありゃ、今ので首に当たればかなりの魔力が奪えたはずなんだけどな」
「おいおい、初っ端から首を切り飛ばそうとするなよ。危ないだろ?」
そう言い返しながらも内心では肝を冷やしていた。流石に出血などはしない代わりに魔力が削られるというのは分かってはいるのだが、そこに関してはどうしても恐怖心を抱いてしまうが、俺としてはその感覚を忘れない様にしようと改めて肝に銘じながら相手の動きと武器などを観察し情報を集める。
(持っている武器は短剣、そして恐らく属性魔法は火。そして武器の扱いにも慣れているか)
風を視る者で周りを見た限り目の前の男の仲間の姿が見えなくなっており潜伏している可能性もあると考えて辺りを探すも居なかった。なので鎌を掛けてみることにした。
「おい、さっきまでいたお前の仲間は何処に行ったんだ?」
「うん? ああ、あいつ等はどっか行ったよ」
「なに?」
半信半疑ながら風を視る者で索敵をすると確かに近くに反応はなく、念の為に索敵の範囲を広げるとここからかなり離れたそれぞれの場所に散っていた。そしてその内の一人がエルが向かっていた方角に
「信じるかどうかはあんた次第だが、あれはあくまで一時的な協力関係でしかなかったからな!」
「そうかよっ!」
相手が身体強化魔法で肉体を強化したのを見て俺も即座に身体強化魔法を施し接近し振るってきた短剣を再び受け、互いに一歩も引かない鬩ぎ合いへと移ると俺はある事を尋ねた。
「ところでお前、名前は?」
「…ぷはは、首を切ろうとしたヤツに名前を聞くなんて面白い奴だな、お前!」
「お前には、言われたくないなっ!」
流石にそろそろ、あいつとかリーダーって呼ぶのが面倒くさかったので、互いに近いし動いていない良いタイミングだと思ったので名前を尋ねたのだが、目の前の男子は一瞬呆けた表情の後笑い出し、今度は俺が押し来たのだがそいつは軽やかに後ろへと下がった。
「まあ、確かに名乗っていなかったから名乗ろうか。俺はゲルトゥーア帝国の第一王子にして王位継承権第一位、ジーク・レ・ゲルトゥーアだ。呼び名はジークで頼む。」
何と、俺が相手にしているのはゲルトゥーア帝国の第一王子にして、次期皇帝になるであろう人物だったようだった。と驚きながら俺はある事を尋ねた。
「皇帝になるかも知れない男が、護衛も無しなのか?」
「ああ、皇帝になった時に戦えず玉座にふんぞり返っているのは嫌だからな。それに護衛がいない方が見聞をしやすいし、何より肩が凝るような小言を言われる心配も無いからな!」
「いや、明らかに最後のが本音だろ!」
思わずそう突っ込んでしまった俺は直ぐに我に返り距離を詰めてきたジークを迎撃する為に剣を構えるとジークの口が動いており呪文を紡いでいる所が見えた。
「全てを焼き貫きし炎槍、焼き尽くす紅蓮の槍を我が手に、」
ジークの詠唱が進むとジークの背後に炎がそのまま槍の様に形成されて行く。また槍の周囲の空間が陽炎の様に揺らめいている事からかなりの熱量を保有している事を伝えて来る中、ジークが使おうとしている魔法に察しがついていた。それは火属性魔法の上級、火を槍の形にする【火槍】より上の炎を槍の形にして撃ちだす魔法。
「【紅炎槍】!」
詠唱を終えると同時に【紅炎槍】は俺へ目掛けて射出され、だがそれは俺からしたら遅かったのでそれを問答無用で避けると俺の横を通り過ぎると近くの地面に着弾し、地面を抉り、土煙を巻き上げた。
「うん。短剣の扱いに関しては予想外だったけど、魔法はふつうそれぐらいだよな?」
「な、身体強化魔法なしで避けただと!? ガッ!」
「油断、大敵だ」
ジークは銃弾なみの速さで飛んで行った【紅炎槍】は俺が普通に避けて、そんな事が出来るのかと驚いていたようだがこれは体と動体視力を鍛え、または身体強化魔法で強化すれば出来る事で、俺としてはさっきのアルザーネほどでは無かったが、それでも魔法を習い始めた後に伸びそうな気がしていたが、正直今は敵なので、瞬時に身体強化魔法を発動させ、アルザーネがしていたように風を纏わせた状態で腹部に掌底を打ち込み、同時に頭部に空気を圧縮していた風をを解放し内臓と頭の三半規管に直接ダメージを与える。それでもジークは倒れる事だけは拒否するかのように立っていて、その事に俺は素直に驚いていたが、きついであろう状態でジークは俺に話しかけてきた。
「グ。なんという、強さだ…」
「ああ、鍛えたからな」
「ふ、鍛えてお前の様に慣れれば苦労は無いさ」
苦笑を浮かべながらそう言うとそれを最後にジークは強制転移の光に飲み込まれて消えたのだった。
「う‥‥ん‥…ここは、一体‥‥」
「お、気が付いたか。どうだ、気分のほうは?」
「私は‥‥たしか…」
「ああ、それはだな」
そしてジークが消滅するのと入れ違うようにしてアルザーネが目を覚まし、周りが静かになっている事と、何より結界の外に転移させられていない事を不思議に感じているようだったので、俺が身体強化魔法であの爆発から助けると気絶した事、そして残った連中を倒した事を伝える。
「‥‥なるほど。そう言う事か。どうやら世話を掛けてしまったようだな」
「なに、ちょっとしたお節介だ。もし気にしているなら」
するとまるで俺が言おうとしている事が分かったのか、アルザーネは俺の言葉を引き継ぐ。
「分かっているさ。私も君に興味を抱いていたからな。全力で戦うと約束しよう」
「なら、少し休憩した後、戦うとして、少しばかり休憩しよう」
俺がそう提案するとアルザーネも同じ意見だったようで頷き、それから俺とアルザーネはただ無言で話す事無くしかし何処か不思議な空気に包まれながらも休息を取ったのだった。
時間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。(土下座)
本来ならばもう数日早く投稿しようとしていたのですが、家族内でちょっとしたいざこざでネット環境を止められてしまい、投稿が遅れました。申し訳ありませんでした。
…切り替えまして。さて今回の話はどちらかといえば最後のアルザーネ殿下の心的描写に重きを置いたつもりだったのですが、後半の少ししか書くことが出来ませんでした‥‥書きたいことがあったんですが実力不足を痛感しました。
また幾分か戦闘シーンを入れれたかな?と思ったのですが、書いていると戦闘シーンが少なく、私自身もやはり足りないと思い、予定にはなかったのですが次回、主人公とアルザーネ殿下がタッグを組み戦います。シルバーがちょっと本気を出します。
因みに予定ですが、シルバー達が戦っている間のエルやリリィ達の戦いを少し書けたらと思っています。
すみません、長くなりました。取り敢えず次回は二週間以内を予定していますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。また誤字、おかしな文章などあればご報告をしていただけると幸いです。
最後に、また次話でお会い出来れば幸いです。それでは失礼します。
最後に謝罪を、今話の戦闘シーンが少なかった事、本当に、申し訳ありませんでした。(土下座)




