第六十四話 「迷宮、解放されます」
三章の一斉消去、本当に申し訳ありませんでした。
ですがこの話を起点に修正をした話を少しは良い感じでお届けできると思いますので、どうかよろしくお願い致します。
ヴァルプルギス魔法学院の試験を受け、その数日後、無事入学を果たして、はや二か月が経った今日、俺達一年生は大きなイベントを目前に控えていた。
(入学から二月、いよいよあれが解放されるのか)
(…楽しみだね?)
(ああ。そうだな)
エルと念話で話をしているとリリィ達も話に入って来た。
(あ、エルさん。ズルいですよ? 私だって義兄さんと話したいんですから!)
(エル姉さん、抜け駆けはダメです!)
(貴方達、趣旨が変わって来てない?)
何やらリリィを皮切りにルヴィ、レティスの順に念話に参加してきて、レティスはどちらかというと二人の中では年上という事もあり本来の話からズレてきていると指摘し、このままでは止まらない可能性があったので俺は軌道修正を図る。
(おいおい、今はそんな事を話しているんじゃないだろ?)
(いいえ! 今言っておかないとエルさんはしれっと義兄さんと一緒にいるのは羨ましいので注意をしておかないと!)
(そうですよね、リリィ。私もご主人様と一緒に居たいんですから!)
(ああ~、分かった分かった。今度一緒に何かしよう。は。これでこの話は終わりな!)
(……)
約束ですよ!とリリィとルヴィは声を揃えて言い、ふと前の方から視線を感じて前を見るとレティスが無言で私も、と訴えてきたので俺はそれに対して頷き、そして、俺達がそんな事を内輪(念話)で話している間、その発表を俺達は、いやクラス全員がメリナ先生を見て今か今かと待っていた。
「それでは~、皆さんも入学から半年が立ちましたので~、学院の地下に作られた迷宮の攻略への参加を許可しますね~」
「「「「オオオオッッッッ!!!!」」」」
「はーい、迷宮に関しての説明をしますので静かにしてください~!」
今のこの瞬間だけはクラスメイトの心がひとつになったかのように教室中に声が咆哮のように響き渡り、メリナ先生が落ち着くようにほわほわした感じの声で声を掛けると興奮しながらも表だっての声は収まり、メリナ先生は迷宮に関して説明を始めた。
「はい。では迷宮について説明をしますね~。 ですがまず最初に、迷宮に入る際は必ず学院の生徒である証である学院証を提示してくださいね~」
そう言いながらメリナ先生は縦凡そ七センチ、横幅九センチ程の金属製のカードを俺たちに見えるように提示した。そのカードは俺達が学院での試験を終え、当日の合否で合格した時に渡された金属製のカードだった。
「渡したときにも説明をしたと思いますが~、このカードは皆さんの情報を記録した身分証明の証であるので、無闇に無くさないで下さいね~?」
無くしたら罰金ですよ、とさらりとメリナ先生は忠告をすると迷宮に関しての説明を続けた。そして今現在迷宮に関して俺が知っている情報としては迷宮は魔力が集まって出来た自然の者ではなく、ディアネルが魔道具によって作り上げた人工の迷宮という事だけだった。
「はい、では、迷宮に関して説明を始めますね~」
俺が改めて知っている情報を思い出しているとメリナ先生はそう前置きをすると説明を続ける。
「ヴァルプルギス魔法学院にある迷宮はディアネル学院長が魔道具によって作り出した、一種の結界の中に作られたものです」
(へえ、そうなのか…)
メリナ先生の説明によると、ディアネル学院長の魔道具によって展開された結界(迷宮)内に行くには門にある認証装置である水晶に学院証明書を翳すと門が起動し、門を潜る事で第一階層へと転移させられるらしい。
迷宮内の広さは凡そ五キロに及び、各階層には内部にはゲームでありがちな魔物もいるし、階層支配者もおり、階層支配者を倒せば次の階層への階段(道)が開き、次回は次の階層からの攻略になるというまさにゲームのようだが、実戦経験を詰めるという事は確かに良い事だった。
(まさに、実戦を経験するゲームみたいだな)
前世でファンタジー系のゲームをやっていた俺は素直にそう感じた。だが確かにこの世界は前世の地球程安全ではないのだから、事前に少しでも経験を詰めるのは良い事だろう。
そして迷宮内では魔物や階層支配者の攻撃をくらうと体力でも、血が出ない代わりに魔力を削られ、魔力が全消耗した際になる魔力欠乏状態に陥った場合は強制的に迷宮から退去させられるのだ。
とこのような説明を一通りした後、メリナ先生は真剣な顔で俺達を見てきた。
「そしてもう一つ、皆さんのやる気を刺激する重要なことがあります~。それは…内部の魔物は五階層ごとに強さ、生態がガラリと変わってしまうとの事、それもあって今までに到達できた最高攻略階層は五十までで、それ以降何階層あるのかが判明していないんですよ~」
「「「「おおおおおおお~~~っっっ!!!!」」」」
のほほ~ん、といった感じでメリナ先生はさらっと言ってくれたが、それは凡そディアネルが学院長になり、迷宮を作って凡そ五十年の間、誰も最下層まで到達していないという事実だった。そしてそれはかなりの難しさと同時にその記録を越えてやろうというやる気を起こさせるのには十分なもので、俺にとっては別の意味でも厄介なことになりそうな予感がしていた。
(ディアネルが作った迷宮か‥‥食堂の件で変ないたずらをしてきそうだな…)
迷宮の話を聞きながら俺の脳裏に浮かんだのは、入学祝いで【クラシオン】で全てを奢らされて恨めし気に俺を見てきたディアネルの事だった。というか確定的に何か仕掛けているような気がするのだ。
(でも、あいつが悪いんだしな)
と俺はそう思う事で取り敢えず問題を先送りにする事にしている間もメリナ先生の話は続いていた。
「それと最後にですが、迷宮に潜(入)る時は必ず前もって教師である私に申請をしてくださいね」
では、授業を始めますよ~とメリナ先生の声を聴きながら俺はこの後は確実にパーティーを作る時に起きるであろう事態、勧誘合戦に俺とエルは確実に巻き込まれるだろうなと思いながら一時限目の授業に取り組みながらエル達と念話をする。
(エル、四時限目が終わったら、すぐに【クラシオン】に行くぞ)
(‥‥分かった)
(リリィ達もそれでいいか?)
俺とエル程じゃないが、(巻き込まれて)十分に目立ったであろうリリィ達も了承の返事をそれぞれ返してきた。
(そうですね。義兄さん達ほどじゃなくても、私達も目立ったでしょうし…)
(そうね。じゃあ【クラシオン】で合流するとしようか)
(それが良さそうですね)
リリィ、レティス、ルヴィからの返事もあり俺達のこの後の動きは決まった。
そして、その予想通り、授業と授業の間は静かで、いや静かすぎるほどに平和だったのだが四時限目の授業が終わり、昼食の時間になると同時に入学試験の時に注目を集めた俺達を勧誘しようと人が集まるのを感じ取った俺達は打ち合わせの通り、授業の終了と同時に学院の外にある【クラシオン】と言う名の大衆食堂へと逃げ込んだのだった。
「ああ~、やっぱりこうなったか…」
「まさに、群体の脅威…」
エルの言葉通り、一つの目的の為に集まってきた人間の群れは個では抗いきるのはかなりの難行といえるだろう。(不可能とは言っていない)そしてそんな事を愚痴りながら入って来た俺達に、リリィは苦笑いと労わりの籠った眼を向けてきた。
「義兄さんのほうも、凄かったようですね‥‥」
「ああ、先に付いていたのか。って事はそっちもか?」
「はい。ご想像の通りです。と言っても義兄さん達ほどではないですけど」
「はい、そうですね‥‥どうぞ」
俺とエルが【クラシオン】には一足に三人そろって同じクラスだったリリィ達が既に到着していた。そしてその服は所々皴が寄っていたことから苛烈な勧誘があったことを伺わせていた。そういう俺とエルも少なからず服にしわが寄っていたりする。そしてそんな俺とエルにルヴィが水の入ったコップを渡してくれた。
「ああ、悪い」
「ありがとう」
ルヴィにお礼を言い俺とエルは受け取った水を飲むと、水の特有のほのかな甘みと冷たさが全身に染み渡るのを感じた。
この気に乗じて、既に俺の婚約者である事を明確にしているエルに対して不埒な事をしようとした男子共の動きを風を視る者をフル稼働させて全て防ぎ切り、その代償としてクタクタで、もみくちゃにされた俺とエルは【クラシオン】に来るために身体強化魔法をも使い全力で走ってきた事と、限界に頭を行使した影響で茹っていた頭に冷たい水はまさに生き返る冷たさを孕んでいた。
「ああ~っ! 美味い。まさに命の水だな!」
「こくっ‥こくっ」
俺が親父っぽく冷えた水を一気に飲んだ隣でエルは行儀よく、しかしかなりの速さでコップに入っていた水を空にするのと同じ頃に厨房からいい香りが漂ってきて厨房の方を見るとそこから俺達が学院から抜け出すときには既に脱出し姿が見えなかったレティスが料理を持って出て来るところで、俺に気が付いたレティスは男のような口調で俺に尋ねてきた。
「お疲れ様、シン。皆で食べれる物を勝手に頼だのだが、良かったか?」
「ああ、構わないさ。一人で食べるよりは皆で食べたほうが美味いだろうからな」
「う~ん、いい香りだ。せっかくだからご相伴に与ってもいいかな?」
「何処から湧いてきたんだ、メリナ先生、いやカルネア?」
いつの間にか、俺の背後には気配もなく俺のいや、俺達の入学試験の実技を担当し、俺達の現担当教師であるメリナという偽名を使って教師となっていたカルアスいや本当の名前はカルネアだったか、がシック《ディアネル》が身に着けていた姿を偽る魔道具を外した素の姿でそこに居た。
本来であれば敵対している人間ですぐにでも戦いに発展するのが普通なのだが。今の俺たちは敵対関係ではなく、互いに停戦状態なので、エル達も警戒はしているがすぐに戦いに発展するほどの者では無かった。
「別にいいが、少しは金を払えよ?」
そう言いつつ俺達はレティスが料理を置いたテーブルを囲むようにして椅子に座ると全員が手を合わせる。
「それじゃあ」
「「「「「「いただきます」」」」」」
そう言って俺達はまさにピザと言うべきピラッザを食べ始めた。
(うん、美味い。けど、やっぱりこれはピザだな)
と俺は内心でそんな事を思いながらもピラッザを食べて行き、そんな俺を遥かに上回るスピードでエルとレティスと交代で、しかし凄い速さで食べ進めるルヴィという俺達にはいつもの光景がそこにあった。
ルヴィとレティスは厨房とテーブルを行き来を交代でこなしながら、それでも楽し気で、俺達は食事を心行くまで楽しみ、食後にアメルの実を炒ってすり潰し、湯で濾した、正に前世のコーヒーのまんまのアメル茶を口に含むと、コーヒーと同じ独特の苦みが口いっぱいに広がった。
「ふう、食後はやっぱりアメル茶だな」
一週間ほど前に来た時に見つけたアメル茶だが、実はエル達も飲んで見たのだが、
「‥‥‥苦い」
「に、苦い、です‥‥」
レティスは平気だったのだが、吐き出さなかったのだがエルは顔を顰め、ルヴィは顔を青くしてダメだったようだった。 因みにリリィは前世でもコーヒーが苦手だったので飲んでいなかった。だがその後リリィが聞くと幸いにもミルクがあることが分かり、アメル茶と一緒にミルクと砂糖をリリィは頼み、ミルクと砂糖を加え、カフェラテの様にしたものをリリィがエルとルヴィに進め、二人は恐る恐る口を付けると同時に驚きの表情へと変わった。
「‥‥美味しい」
「はい、さっきのとは別物みたいで甘くて美味しいです!」
「良かった。あのままだと苦いけど、これなら大丈夫でしょ?」
とリリィが作ったカフェラテが高評価を得たので、現在エル、ルヴィ、リリィはアメル茶にミルクと砂糖を加えたものを、俺とレティス、そしてカルネアは何も加えないストレートで飲んでいた。そんな中、唐突にカルネアが口を開いた。
「速いもんだね。君たちが学院に入学して、二か月が経つのか…」
「急にそんな事を言って、一体どうしたんだ?」
実際、カルネアは見た目通りの年齢ではないので年寄りというのは俺達全員が知っているし間違っていないが、それを行ってしまえば、恐らくリリィ辺りから何かしらの小言が飛んで来るだろうから口にはしなかったが。
「いや、ふと時間が経つのは早いと思っただけさ」
「…確かにそうだな」
言われてみれば、確かに俺達にとって今日に至るまでの二か月は早い事だったのかもしれなかった。
「さて、私は一足先に戻るよ」
午後の授業に遅れるんじゃないぞ? としっかり教師らしく俺達に釘を刺し、カルネアは自分のピラッザとアメル茶分のお金をテーブルに置くとそのまま店を出て行き、俺達はその姿を見送った後、俺達もお金をテーブルに置き、挨拶をし、おばちゃんの声を背に聞きながら店を出て、午後の授業を受ける為に学院へと戻って行ったのだった。
さて、ここで当たり前の疑問が浮かぶ。何故敵対していたカルアスもといカルネアがいて、俺達と停戦状態で一緒にご飯を喰い、くつろいでいるのかと。
それを説明する為には俺達が学院に入学する為に試験を受ける所まで遡るのだった。
言わずもがなではあるが、学院に戻って授業を受け、放課後になった瞬間、争奪戦がまた起きそうだったので俺達はそれぞれの部屋のある寮へとそれはもう猛然と走って戻ったりしたのだった。
取り敢えずは現在進行形で修正、改稿に取り掛かっています。それが終わり次第、新たに投稿を継続していく予定です。次回の修正版の投稿なのですが、どうにか二週間以内に二話ほど投稿できればと思っています。急な削除、本当に申し訳ありませんでした。
このように、偶に修正をする事もありますが、どうか今後も楽しんでもらえると嬉しいです。
それでは、また次話でお会いしましょう。




