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第六十話 「黒き災厄の邪龍2」

ふう、どうにか、描けましたので投稿です。

内容におかしな箇所などがあれば(ありそう)ご報告をお願い致します。それ以前に、少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。いよいよ最終話が近くなってきた。

12月4日に最後の部分を追加しました。またまだ予定ですが、三章を書き出すまでに、二章を幾分か手直しをする予定です。

高鳴る胸をどうにか落ち着かせながら私、レティスは何度か浅い深呼吸を繰り返す。そうする事で幾分か落ち着くことが出来た。けどさっきシン、レティス、ルヴィさんから何でもない様に言われた家族という言葉を聞いて以降、何か胸の中にまるで陽だまりに穴っているような、ポカポカと温かいモノが広がり、その熱が余すことなく私の全身を巡る。その熱はまるで全てを燃やし尽くすマグマのようでありながら、そっと優しく包み込む優しさと包容力があった。


「【血解術】想起(クリエイト)血魔の呪王剣(グラム)


 血魔の呪王剣(グラム)を作り出し、引き抜きながらその感覚を、私は上手く言葉に出来なかった、でも不思議と安心感と力強さ、そして今も妹を助けよとしてくれている彼に抱きしめられているかのような感じがした。その事に感謝しつつ、けど今は気を引き締めると浅く深呼吸をしつつ、目前の黒いドラゴンへと視線を定める。それと同時にエルさんがある特別な魔法を放った。


重力牢獄(ディバイド)


その魔法が発動した瞬間、アジ・ダハーカの周囲に一帯に陽炎のようなものが生まれ、牢獄を形成する。


「GURAA!?」


急に自身の重さが数倍にもなった事に、それにより動くことも出来なくなったアジ・ダハーカも驚きの声をあげる。一方私自身も聞いて、実際に見て驚きしかなかった。

何故なら今エルさんが使っているのは創生魔法とも呼ばれる原初の魔法(ノア・マギア)とも呼ばれる、四つ(火・風・土。水)の魔法の内の一つ、土の創成魔法だった。土の創成魔法では重力が扱えるようになるらしい等の、事前に大雑把にどのような魔法かを聞いていた私達は特に驚く事はなく、私自身も冷静に息を整え、意識を研ぎ澄ませる。


「すぅ…はぁ‥‥行きます」


「分かった。エル。三秒後に重力圧縮を解除、ルヴィはレティスの援護を頼む!」


「わかった。(わかりました!)」


 私の声に半身立ちで片目だけ開けた状態で万物を絶つ刃を構築しているシンがエルさんとルヴィさんに指示をだし、エルとルヴィさんは頷き、確認するかのうようにこちらを見てきたシンに視線で頷きをかえし、私は前をみて刹那の後、シンの声が聞こえた。


「カウント行くぞ、3…2…1…エル!」


重力解放リリース


シンのカウントが終わったと無意識に認識した瞬間、私は体内で魔力を活性化させ、私は風を切るような早さでアジ・ダハーカへと距離を詰めていると陽炎が消え去った。エルさんが重力牢獄(ディバイド)を解除したのだと私は理解し、気を引き締めるつつも更に加速していく。重力の牢から解放されたアジ・ダハーカは若干戸惑いの様な感じがあったが、獲物が近付いてきている事に勘づいたのか顔を上げこちらを見ていたが、血魔の呪王剣(グラム)を下段に構え私は寧ろ更に加速して距離を積めて行く。そんな中今の私の速さに追随してくる赤い鎧を纏た影があった。


「ルヴィ、ブレス!」


「はい、極煉吐息!」


シンの声が聞こえると追随していた影、もといルヴィが飛び上がる。同時にまるで兜の口が開き、そこからまるで太陽のフレアのように白く、僅かに紅蓮が混じるブレスが吐き出される。その余波だけでも鎧であれば誘拐させるほどの熱量を誇っていたが、私にその余波が来ることは無かった。恐らくシンが風魔法でブレスの余波を遮断してくれているのだろう。

そんな強力な極煉吐息に対して、アジ・ダハーカも口を開き、まるで闇を凝縮したかのような黒いブレスを吐きだし、衝突した。極煉吐息()とアジ・ダハーカの闇のブレスが互いを消滅させようとしていたが、その威力は拮抗しており、決定打が無かった。だがルヴィはその様子を見て笑みを浮かべた。


「エルさん!」


空素爆破(ブレイク)!」


その瞬間、ルヴィのブレスの後ろに発生した圧縮された風の爆弾が炸裂、そして指向性を持たされた衝撃波により極煉吐息が後押しされ、アジ・ダハーカのブレスを飲み込み、その膨大な熱量がアジ・ダハーカへと襲い掛かる。


「GURGYAAAAAAA!?」


熱量によって肌の表面を焼かれアジ・ダハーカが苦悶の声を上げるも、その表面はまるで時間を巻き戻すかのように治癒されていく。でも、それによって確かな隙が生じた。


「はあっ!」


「GURU!」


その隙を突いて私はアジ・ダハーカへと接敵する。その頃には受けたダメージは既に回復した様子だったが、そんな事に構うことなく剣を振り抜いたが、アジ・ダハーカが剣を手で掴んでしまった。心なしかその表情はどうだと言っているかのように私には見えた。でも今の私は一人だけなじゃない。


炎翔龍拳(エンプレス・ロア)ッ!」


爆発によって視界が遮られた後、私のすぐ後ろに気配を消して隠れていた(メイドなら当然です:ルヴィ談)ルヴィさんが私に意識が向いている隙を突いてアジ・ダハーカの腹部に両の掌を撃ち込み、そのダメージにより血魔の呪王剣(グラム)を握っていた手が離れる、その瞬間、手に押しとどめられる形となって溜め込まれていた力をダメージへと確実に与える為に為に、もう一歩深く踏み込む。


「く、おおおおおおっ!」


「GURURAAAAAA!」


裂帛の声と同時にグラムを振り抜く。その後アジ・ダハーカは後ろへと吹き飛ばれた。しかし私の手には剣を振り抜いた時、確かに切り裂いた感触が帰って来ていた。そして確認するかのように吹き飛ばされたアジ・ダハーカを見ると、剣を握っていた左腕は手首から数センチ程の辺りで斬り飛ばされていた。

それでもその腕はまるで時間が巻き戻されて行くかのように再生した。


「やっぱり、凄い再生能力」


「でも、限界がある」


いつの間にか近くに居たエルさんが私の言葉を継いでくれた通りで幾ら再生しても無限という事はない。それに一人ではないという事を知っている私に恐怖は無く、寧ろ更に攻撃が通るという事が逆に倒せるという希望が持てた。


「この調子でご主人様(マスター)の為に時間を稼ぎますよ! 」


「ルヴィ、抜け駆けは、駄目」


言うが早いかルヴィがいの一番に突っ込んでいき、それを諫めるようにエルも追い掛けていく。それを見た時、私は感じていた事がストンと落ちたかのように感じた。そんな私にエルが振り返った。


「行くよ、レティス」


「‥‥はい!」


少しでも、アルテシアを助けだす可能性を上げる為に、更に時間を稼ぐために踏み出していく。





 魔の血龍、いや|破滅喰い勝利齎す邪龍、アジ・ダハーカの内部でアルテシアは暴毒の喰剣(ツェリット)が守護の為に構築した魔力結界によって精神の消滅を免れる事が出来ていた。体こそ乗っ取られていたが意識ははっきり残っている。その中、私の体を乗っ取ったアジ・ダハーカの爪と剣を交わらせる姉であるレティスにアルテシアは必死に声を上げていた。


(もうやめて…こんな、こんな私を助けようとしないで!)


 そしてその前では自分を救い出そうと剣を振るう姉であるレティスと、先程姉に悪戯をし、何より姉を眷族にした少年が後ろで、膨大な魔力を半身で構えている剣へと束ねて何かをしようとしていた。恐らくレティスと二人の少女たちがしているのは後ろの少年の為に必要な時間を稼いでいるのだろう。

 そして、アルテシアは少年、いや彼が何をしようとしているのかはすぐに分かった。それは初めて出会い、初めてあの剣の力を(今となってはあの剣に自分が頼ったせいでこのような事態になったのだが)行使し、剣の力によって定められた運命を絶ち切った一撃であろうという事を予想する事が出来た。そしてそれが予想できたのと同時に私はある事に気が付いた、いや気が付いたのと同時に確信へと変わった。それは、姉さんたちは、いや、あの少年は絶対に自分を助け出そうとするだろう、と。レティスの妹であるだけで、一度は殺されかけたであろう者であろうとも、傷つきながらその剣を振るであろうという事。


 そしてそれを証明するかのように、戦いの合間合間に移る剣を構えた状態で魔力を剣へと収束している少年の腕からは、幾筋もの血筋があった。恐らく、自身の魔力を剣へと収束しているのだろうが、収束された魔力が持つ鋭さによってが自身の体を傷つけているのだった。だがそんな事を吸血鬼のような超回復能力を持たない人間が自然と力に耐えきれずに自壊する可能性が、圧倒的に高かった。そしてそれを証明するかのように少年は痛みを堪えるかのように歯を食いしばっていた。


(あんな無茶をして!)


 それを見ていたアルテシアを推してそう思わずいられないものだった。だがそうしている間も、レティスとエル、ルヴィ対アジ・ダハーカの戦戟は更に加速していく。


 レティス達が時間稼ぎをしてくれている中。俺は自身の魔力の操作に四苦八苦していた。


(くそ、思った以上に制御が難しいかっ)


 今にも暴れようとする魔力をどうにか制御、押さえつけながらも剣へと収束させ、収束させた魔力を更に鋭く束ねていく。そして束ねながら俺は片眼で根源、アジ・ダハーカの内部に囚われたアルテシアとの繋がりを探していく。


「くっ!」


「GUUUU‥…GURAAA!」


だが俺がその繋がりを探している間にも戦いは更に激しさを増していく。そして野生の本能か、レティスの剣を逸らした一瞬の隙を突いてアジ・ダハーカはその爪を脳髄へと突立てようとした。レティスも避けようと頭を動かしているが、あのままでは当たってしまうのが容易に予想できた。

でも、この場所には動けない俺以外にエルとルヴィがいた。そして最初こそバラバラだった動きはこの少しの間に随分と連携が取れ始めていた。


風炎弾(フラム・ヴェイル)


「GURAAA!?」


「喰らえ、炎化雷嵐(フレイム・ガイア)!」


エルは風を相乗させ、炎を強化した魔法【風炎弾】で、ルヴィは最近使えるようになった超高温のブレスによってプラズマが発生させ、それにより相手を痺れさせる【炎化雷嵐】で援護し、破滅喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)に僅かに隙が生じた。そのタイミングを逃す事無くレティスは後ろに倒れ込むようにして後ろへと距離を取り援護してくれた二人にお礼を言った。


「ありがとうございます!」


「うん、油断は禁物」


そうですよ、とエルに同調しながらルヴィはアジ・ダハーカの攻撃を流し、時に反撃に拳を撃ち込んでいく。


「一人で何でもやろうとしないでくださいよ?」


「はい」


何処となく申し訳なさげな雰囲気のレティスだが、妹が囚われているのであれば突っ込み気味だったのは仕方がないとは俺は思った。それでも素直に謝ってきたレティスに対してエルは頷く重力圧縮で一瞬アジ・ダハーカの動きを阻害し、そのタイミングでルヴィとレティスは入れ替わった。

その流麗な動きは即席とは思えないほどの動きだった。それに引き換え、俺は未だに魔力の収束に手間取っていた。だが今までこんな事は無かった。だが現実は上手く魔力を操作、収束が出来ていないのだ。考えられる要因とすれば。


(くそ、黒化した悪影響なのか…?)


そう、アルクの戦いの際に黒化した影響によって何らかの弊害が起きている可能性が高かった。だがそれでも今それを嘆いていても仕方がない。あの状況であの形態にならないと今この場に立つ事すら不可能だった可能性もあったのだから。


(魔力操作‥…もう少し努力するか)


「魔力が上手く扱えない?」 


そんな中、俺にエルが声を掛けて来ていた。前を見ると今はレティスとルヴィがアジ・ダハーカの動きを止めていた。というより押していた。それでも一応気になったので俺はエルに尋ねた。


「二人だけで大丈夫なのか?」


「大丈夫。四閃(フォアクリッド・)乱舞(エルメッツア)を残してるから」


(なるほど)


その言葉通り、エルの背後で繰り広げられているレティスとルヴィの戦いの中で煌く四つの剣が幾筋の軌跡を残しながら援護していた。俺がその事を確認していると、目の前に音もなくエルが居た。が近づいて来ている事は風を視る者(シュトゥム)で分かったので俺に焦りは無かった。


「無茶してる?」


しかし、エルのこの言葉には真面目に驚いたし、焦った。何せ、黒化した事を悟らせないようにして居たので(実際レティスやルヴィには気が付かれていなかった)まさか気が付かれるとは思わなかった。


「いや、特に無茶はしていないぞ?」


「嘘、いつものように魔力が落ち着いてない。膨大な力を扱った影響で魔力が暴れて回路自体を傷つけてる。それによって少し頭に靄が掛かっているような感じがしてるはず」


「‥‥‥‥」


まるで照魔鏡のような俺を見て言ったエルに俺は何も言えなくなった。そしてそれを言われ、魔力に意識を向けると確かに魔力が流れる回路を傷つけており、それに確かに頭の隅に靄が掛かっている。それが魔力の収束が上手くいかないのは回路を傷つける魔力が混じっている事によって収束が上手くいていなかったことが原因だったようだ。まさか黒化した影響がこのように出るとは、予想できなかった。


「でも、取り除く対処法はある」


「本当か?それは一体どうやって?


「こうする」


「うむっ!?」


対処法があると言われ、俺が顔を上げると同時に、エルが俺にキスをして来た。それも戦闘の真っ最中にだ。


(え、ええええっ!、対処法って‥…これ(キス)の事なのか!?)


俺がそう思っているとエルは何処か荒く息を吐きながらも積極的に俺へとより深くキスをして来て、俺も無意識の内に返していく。すると何となく俺の頭の芯の部分に靄がかかったような感覚が吹き払われるように完全になくなり、エルが唇を離すと艶っぽく舌で唇を舐める。‥…エロい。と同時に何となく帰ってから厄介なことが起きそうな気がしたが、今は気にしないことにした。俺がそう考えているとエルが口を開いた。


「シンの中で暴れていた魔力を食べたから。魔力の操作がしやすくなったはず。それと誓約を交わした時に構築した経路を通して魔力を送ったから調子もいいはず。」


「お、おおっ!」


言葉通り、疲れていた全身に力が巡って来るのを感じ、先ほどまで上手くいかなかった魔力の収束が簡単に出来た。


「千山海刃 村正!」


するとどうだろう、先ほどまであれほどあれほど苦労していたあらゆるを絶つ刃の構築に成功したのだった。先ほどまでの俺の苦労は一体‥…


「ルヴィ!レティス、下がれ!」


レティスとルヴィは俺の声が聞こえると即座にアジ・ダハーカから距離を取った。


「GURURU、GURAAAAAAAA!」


アジ・ダハーカは俺を認識、雄たけびを上げると一直線にこっちに突っ込んできていた。だがそれは俺にとって好都合だった。天叢雲剣を腰だめに構え、居合の構えを取る。そうしている間にも二十メートルは離れていた距離をこのわずかな時間の間に三メートルの距離まで詰めて来ていた。それを見ながら、俺は「村正」の構築が完了すると同時にアルテシアとアジ・ダハーカのつながりを掴むことが出来ていた。

そしてアジ・ダハーカと俺との距離が一メートルを切った。


「因果、悪しき繋がりを絶つ、其の名、千の山を斬り、海を裂く無双の刃成り」


「GUOOOOOO!」


「抜刀【天閃斬魔】!」


半身だけ横にずれ回避、そして交差と同時にアジ・ダハーカ俺が剣を振り抜くと、その剣はアジ・ダハーカの体を斬る事無く通り抜けた。だがそれは失敗ではないという事を返ってきた確かな感触で俺は理解して、その変化はすぐに訪れた。


「GUGYUU,GURAAAAA!?」


苦しみ悶え始めた全身から魔力が放出するアジ・ダハーカ。それはアルテシアとの繋がりを斬ると同時に存在へと傷を付けたことによるダメージの影響だった。また魔力が放出されているのは、繋がりを切断したアルテシアに対しては繋がりを傷付けないように斬ったのに対して、アジ・ダハーカに対しては繋がりに傷が残るように斬っただけの違いだった。


(上手くいって良かった…)


思わず安堵の溜め息を吐いているその間も黒い魔力が放出され続け、徐々に黒い鱗が消え、尻尾も消えていき現れたのはアルテシアの姿だった。

そして、力無く崩れ去る中、駆け寄り支える影が1つ。レティスだった。


「良かった…」


妹の確かな重みを感じ、レティスを思わず安堵の呟きを口にした。



同時刻、上空にて、アジ・ダハーカは消滅の危機にあった。支配していた肉体に対しての繋がりだけでなく、魔力の繋がりも切断された影響で魔力がただ漏れの状態で、このままでは数分もしない内に消滅してしまっていただろう。だが、アジ・ダハーカは見つけた。空に残りし、四つの矢を。

生存本能に従い、アジ・ダハーカはその四つの矢、宿りし膨大な魔力を全てを喰らい肉体を構築し顕現する。人形でなく、完全なるドラゴンとしての肉体を。そして、その様子を一人の弓使いの男、アルクが楽しそうに笑みを浮かべていた。


「さあ、本当の闘いだ。精々、俺を楽しませてくれよ」




(この匂い‥‥それにこの手つきは‥‥‥レティス、姉さま?)


優しくて懐かしい感触、そう思い感受している状態だった私、アルテシアはゆっくりと閉じていた瞼をを開けると、まず差し込んできたのは月の光、そして月光に照らされる黄金の髪、そして顔を左に向けるとそこには、昔と同じように優しく私の頭を撫でる優しく、母さんとは同じようなで、何処か包容力のある手つきはレティスの手つきで。

そんな中、私が目を開けた事に気が付いたレティス姉さまは笑みを浮かべながら尋ねてきた。


「目は覚めた?」


「私は、確か‥‥‥」


混乱している頭で必死に今の状況を理解しようとしている中。息を吸い込むと、久しく嗅いでいなかった、懐かしい姉の匂いがした。私と姉さんの二人がまだ幼い頃によく一緒に遊んでおり、その際毎度と言って良いほどに私はレティスに抱き着き姉の匂いを嗅いでいたのだった。それは赤ん坊が母親の匂いを嗅いで落ち着くというモノに似ていたが、もちろん私にその自覚は無かった。

しかし、そのお陰か、混乱はすぐに落ち着き、自分がどういう状況なのかという事も私には理解できた。


「そっか、助かったんだ、私」


しかし、最初に出て来た言葉は、胸に去来した何処か空しいものだった。助け出された事への喜びはない訳ではない、だがまた姉に助けられた、昔と変わっていないという事が私には悔しく感じていたのだった。だがそれでも私は姉さんに聞いておきたいことがあった。


「どうして、私を助けたの」


私の予想としては頼りない、手のかかる妹だから等の言葉が姉さんから出ると予想していたのだけれど…


「家族だから。助けるのは当たり前じゃない。」


「お姉ちゃん‥‥」


しかしレティスの答えは私が予想していたのとは違うモノだった。以前であれば私に対して上から物を言っているように聞こえたのだが、そんな感じはなく、寧ろ本当に自分の事を心配してくれているのだという事が、何故か分からないが、今の私はそれを素直に受け止める事が出来たのだった。もしかしたらそれは、姉であるレティスが間近にいる事が関係しているのかもしれないが、それは私以外に、そして今の私自身も分かるものでは、無かった。




そして、そんな姉妹の様子を見て俺、シルバーは微かに笑みが浮かんだが、しかしこの場ではそれも許されるだろう。何せ取り敢えず、仲直り出来たようで安心出来た事もあった。だがそんな中、俺には何か拭えない予感があった。それは言葉にするのであればとても簡単だった。それは、ある事に尽きる。


(呆気なさすぎな気がするんだよな)


何せ、カルアスと戦った前回の時と同じような事が起きそうな気がし、そう感じた俺は念の為に辺りを警戒しつつも横目で何処か微笑ましい姉妹の様子を見て和んでいた。姉妹の様子を言葉にするならば、ニクスという偽りの姿を見た事がある俺としては、今の雰囲気はまるで違い、例えるなら憑き物が落ちたように感じられた。そして今のレティスとアルテシア、姉妹の様子を見ている俺が感じた事を言葉にするのであれば、


(まるで、母親と子供だな‥‥なんだ?)


その時、何もないとは思おうが、アルクが弓で狙撃する可能性も考慮し、すぐに対応できるようにと念の為に風を視る者で辺りを警戒していたのお陰がそれに気が付くことが出来た。かなり微弱だが、魔力を俺は感じ取った。即座に周囲の風へと意識を集中、辺りを索敵する。予感めいたもの感じながら。掴んだ。


「…あいつは」


かなりの上空にて、禍々しい魔力を放ち、ほぼ形を成している存在を。そしてそれが纏う魔力はつい先ほどまで間近で戦っていた存在の魔力で。


(あのままの状態だと自然に消滅していたはずだ。一体どういう事だ?)


頭に過った疑問。それはあの状態ではアジ・ダハーカは魔力を回復、更に具現化出来る程の魔力は無いはずだと振り払い、俺はエルとルヴィの方を見ると、俺の視線に気が付いた二人も頷いた。そして、魔力の反応が急降下してきた。その目標地点は、もちろんここだ。

どうやら、第二回戦、いや最終戦の幕開けのようだった。であるならば。


「取り敢えず、作戦会議をするぞ」




一週間格闘した結果、ようやく書けました。今回はアルテシアをアジ・ダハーカから救出するという話でした。次はいよいよアジ・ダハーカ本体との戦いです。

出来れば次で最後なので出来れば姉妹が一緒に戦うような描写が書けれたらと思っています。

私事ですが、PVが15万、ユニークが三万人となりとても嬉しく思っています。本当にありがとうございます。

さて次回の投稿も二週間ほどで投稿できればと思っています。ですがなかなか思いつけない場合は少し遅れるかと思います。その際は申し訳ございません。ですが少しでも楽しんでもらえるととても嬉しいです。

それでは、また次話で(‥‥考えねば‥‥)


申し訳ない。12月9現在、なかなか執筆が進んでおりません。遅くても今月中にはこの章は完結させますが、少し遅れると思います、申し訳ございません。

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