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第五十九話 「黒き災厄の邪龍1」

お待たせして申し訳ありません。どうにか書けましたので、投稿です‥‥

宿主の内に飲み込んだ【魔の血龍】、いや|破滅喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)は飲み込んだ元宿主と限りなく同じ魔力を感じ取り、更に都合の良い事にその波長は弱っていた。ならば今の状態でも喰らう事も、果てにはより力を得る事が出来ると山を下り、感じ取った魔力を探すとその魔力は少し先から発せられていた。そこは開けた場所だった。そして魔力を発している女は石を背に気絶しているかのようだった。

|破滅喰い勝利齎す邪龍は探していた魔力を発する女を見つけ、歓喜の雄たけびを上げかけたが、しかし目を覚まされても困ると自重し、まだ慣れていない元主の肉体を操りながら距離を詰めて行く。

だがそんな中でも目は舌なめずりするかのように獲物、即ちレティスへと向けられていた。そして着実に距離を詰め距離を詰める。その道中でレティスが動く様子はなく、この時破滅喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)はレティスは気絶しているとばかり思っていたが、その実、レティスは見えない様にして密かに不敵な笑みを浮かべていた。だがその事に対して勝利喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)は気が付く事無く、レティスへとその牙を突立てようとした。その時だった。右側から二つの、いや三つの魔力と影が生まれたのは。


「GURUUUU!」


一体何処から現れたのか、と思ったが、それでも不意打ちに対して|破滅喰い勝利齎す邪龍は振り返り、自身のドラゴンの腕で装甲を纏った拳と剣を受け止め、


「「吹っ飛べ」


「GUGYAA!?」


る事は出来たが、更なる追撃である左右からの撃ち込まれた拳までは回避することは出来きずに吹き飛ばされ、幾つかの木々を薙ぎ倒す事となったのだった。


「さて、取り敢えずは予定通りだな。大丈夫か?」


殴り飛ばした人型の龍の事を一時置いておいて、俺はレティスへ近づき手を差し出すとレティスは笑みを浮かべながら俺の手を取って立ち上がり、立ち上がった後、メイド服に付いていた砂を払う。そして俺を見て来る表情は予定通りとでもいうかのような笑みが浮かんでいた。そもそも、レティスは完全に回復していたのに何故わざわざこんな事をしたのかだ。もちろん、それにはちゃんとした理由があった。


「さて、それで、どうだエル?」


そう言って俺は目を閉じて座っていたエルへと声を掛けるとエルは眼を開けて服に付いた着いた土を払いながら立ち上がり頷いた。


「うん、レティスが言っていた通り」


「やっぱりか‥…ったく。あいつめ。厄介な事をしてくれやがって」


そう愚痴を呟きながら思い出すのは、アルクが射た六、いや五本の矢についてだった。…この状況がアルクの計画していた事だと思うとむかつくが、それでも今すべきはレティスの妹であるアルテシアを如何にして助け出すかだった。元をたどれば俺があの矢を封殺していたらこのような事になっていなかったかもしれなかったからだ。だが後悔をしても意味は無い。今はただ最善を尽くすのみだからだ。

そして後ろでエルに探ってもらったのは、あの人型のドラゴンの中にアルテシアの魔力があるかだった。

そして、アルテシアの魔力はあった。何故アルテシアの魔力があるかもしれないかという事になったのか、それは合流を果たし、情報の交換をするために、四人で話していた時にレティスがアルテシアの声が聞こえたと言い、そしてその前にアルテシアが【魔の血龍】を鎧のように纏っていた事を聞き、俺も飲み込まれたという事にたどり着き、そしてもしかしたらアルテシアはまだ完全に取り込まれていないではないかという事になり。その確認の為にエルにはあの人型ドラゴンの内部を探ってもらったのだった。しかし幾ら愚痴っても状況は変わらずに動いて行くだけだ。


「まあ、愚痴や後悔を仕方がない。彼方さんも、さっきの攻撃で俺達が敵だと明確に認識しただろうからな」


幾ら本能のような状態でもな、俺がそう言いながら視線を向けた先には幾本もの気が倒れ、僅かに土煙が上がるなか、ゆらりと蠢いた影があった。そしてその様子を見て俺はある言葉が口を突いて出て来たのだった。


「|破滅喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)か」


「それ、なに?」


「うん? ああ、あいつの名前らしいぞ?」


まあ、アルク《あいつ》が付けたんだけどな、と俺はエル達への説明に付け加えながら教えると納得と頷いていたがそれでも全員の視線は人型のドラゴンから外すことは無かった。何せ、凶暴な獣を前にして視線を外して喉元を食い破られるのはまさに愚者の行いだからだった。それにしても。心なしか殴り飛ばしたドラゴンから何か不穏気な魔力が感じられた。


「うん‥‥怒らせた?」


「まあ、こっちが攻撃したから怒るだろうが‥‥にしても」


「GURURAAAAAAA!!!」


「いきなりか」


そう呟く視線の先、即ち人型のドラゴンの口からチラチラと見える魔力と同時にオレンジ色の花が散った、と思た瞬間辺り一面が火の海へと様変わりした。

しかしその様子を事前に張っていた風に指向性を持たせ構築した風魔法で構築した結界「風流結界(フロウ・ウィンド)」でブレスを逸らしただけだった。そしてもちろん熱に関しても遮断済みだ。

元々ブレスには予備動作、もとい口から火が漏れるという微かな動きでも読み取ってしまえば対策など容易というモノだった。(素人は厳禁)そして、何よりドラゴン=ブレスは定番だからな! 

と余計なことは脇に置いておいて。考えるべきはどうやって身動きを封じるか、だ。


「さて、取り敢えずの差し当たっての問題は捕縛なんだが」


「どうやって動き止めるか、ですか。」


「ああ」


ルヴィの問いに俺は頷くと同時に腰に差している剣、【天叢雲剣】へと向ける。そう、俺の言葉の続きを引き継いだルヴィの言う通りで、如何にして、捕縛するかという事だ。アルテシアとあの【魔の血龍】を引き剥がすという方法はある。のだが、その方法は最悪アルテシアをも巻き込んで、消滅させてしまう可能性も否定できない方法だった。

その方法とは何か、それは【魔の血龍】と言う意志ある魔力とアルテシアの繋がりを【村正】で断つ事だった。偶然にもアルテシアがニクスと名乗り、最初に剣を交えた時だった。ニクス(アルテシア)は戦いの終盤で勝利と破滅の呪剣(ティルフィング)で因果逆転の呪いによって勝利と破滅の呪剣で俺の心臓を穿つという結果を作り出し、確定させた。

そして俺はそれに対抗するようにしてある物を強固にイメージした。運命、宿命、怨恨、全てを切り裂く刃。妖霊を、冥府の鬼を斬り、天の法則を斬る妖しき刀である「村正」、その時再現したのは「村正」の斬るという概念一点。そしてその時斬ると定めたのは既に定められた俺が死ぬという結果の因果だった。

結果俺はその因果を断ち切ることが出来た。そして因果を断ち切れるのであれば、即ちアルテシアと融合している【魔の血龍】を二つに断ち切る事も出来るのではないか?と。そして話しあった結果、それで行こうとなったのだが、少しでも成功する確率を高めるためには相手の動きを捕縛するか、アルテシアの意識を幾分か表面化させなければならなかった。

流石に何でもかんでも斬れるという訳でもなく、俺自身もかなりの集中力とイメージを要求されるので疲労も大きかった。故に出来るならば動きを止めれる捕縛がベストだった。


「…招雷光槍(トールスピア)


ルヴィのその言葉に頷きながらエルは風と水の複合魔法である雷魔法で作り出した、雷が槍の形を成したそれを|破滅喰い勝利齎す邪龍へと撃った。


「GURURUッ!」


すると破滅喰い勝利齎す邪龍は次弾のブレスを吐きだそうとしていた動きを止めて、俺からすればやや大げさ気味に回避し、空を裂いて疾った招雷光槍(トールスピア)は背後の木に着弾した瞬間、辺りが唐突に太陽に照らされているかのような光が発生し、着弾したであろう木を見るとそこには何一つとなく(もちろん塵も含め)綺麗に消滅していたのだった。そしてその威力に俺も思わず背中に冷たい物を感じながら隣のエルを見る。


「おい、エル。木が、塵一つ残さず消し飛んだぞ?」


「‥‥‥威力の調整が難しい?」


「いや、そんなどうしたらいいかなって感じで首を傾げられてもなっ!」


集中している中俺は思わず、次はもっと調整してくれと言う思いで、そう突っ込んでしまった。どうやら思いついた雷魔法で思いついたのを使ってあわよくば痺れて動きを拘束してしまえばいいのでは?とエルは思って使ったようだが明らかに今のは過剰攻撃(オーバーキル)だった。あれではアルテイシアを助ける処の問題では無くなっている所だった。そして俺がエルを注意した事に対してレティスは心底ホッとしたような表情を浮かべていた。その間も|破滅喰い勝利齎す邪龍はこちらを警戒して動く事は無い。流石にエルもここまで考えていなかっただろうが、正直、このちょっとした膠着状態()はこっちとしてはちょうど良く、俺にとっても意識を完全に切り替える事が出来る貴重な時間だった。


「すぅ~、は~‥‥…行けるか?」


「はい。大丈夫です!」


「私も、大丈夫だ」


俺の問いかけにルヴィは元気に、レティスは集中しているのか、それとも緊張しているのか言葉少なげに答えてきた。なので。緊張を解す為にある悪戯を敢行する。


「本当か?」


「はい‥‥‥ひゃんっ!」


「気を張り詰めすぎぞ?」


そろりと音もなくレティスの背後に忍び寄り、背中を人差し指でそっと撫でただけだったが、集中と緊張故にか視界が狭くなっていたレティスは出会ってまだ短いが、その間で聞いたことが無いような可愛らしい悲鳴を上げて僅かに飛び上がり、すぐに何処か潤んだ目と僅かに赤くなった表情で俺を見てきた。


「こ、こんな時に、何をするんですか!?」


「こんな時だからこそだ、レティス。気負うのは良いが、行き過ぎれば視界まで狭くなると危ないぞ?」


「うっ、それはそうですが‥‥」


何か言いたげな表情を浮かべたレティスに適度に体の力は抜いておけ、と俺が言うと表情はまだ赤くしながらも、自覚があったのだろう、何処となく恥ずかしそうにしながらも、落ち着きを取り戻した。そして先ほどは何処となく硬かったその表情からは俺のいたずらが功を奏したのか、硬さがとれていた。


「よし、良い表情だ」


「ありがとうございます。このお礼は必ずさせてもらいますね?」


おれは思わずいや、別にいいよと言いかけたが、その言葉を飲み込み、まあ仕方がないかと、と内心で納得した。下手にレティスが怪我をする事態を避けれるのであれば安い物だと思うことにしたのだった。

さて、始めるかとばかりに俺とレティス|破滅喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)へ向き直った。


「さて、それじゃあ、お前の妹、助けるぞ?」


「はい、皆さんのお力、お借りします」


何処となく申し訳なさそうな言ったレティスにいつの間にかエルとルヴィが隣にいた。


「…大丈夫。私達は家族」


そう言うとエルは静かに魔力を解放する。


「そうですよ、私達はご主人様の大切な家族なんですからっ!」


俺も思っていたが言葉に出さなかったことを笑顔でルヴィは言い。だから気にしないでください、とそう言うとルヴィも抑えていた魔力を解放する。それを傍で見ながら俺も魔力を解放、同時にいつでも「村正」を抜けるようにイメージを練り上げていく。そして横目でにレティスを見ると、その眼元に一筋の雫があったが気が付いていないのか、拭う事をせずに、そっと両手を胸に当てる。

恐らく今のレティスはエルとルヴィが何でもない様に言った「俺の家族」と言葉に何か感じるものがあったのだろうと俺は思ったが、何を感じたのかはレティスだけにしか分からないだろう。ならこの場で言う事は決まっている。


「レティス。お前の家族。助けるぞ」


「‥…はい」


レティスは浮かんでいた雫を振り払うようにしてレティスも魔力を放出する。そして今。準備は整った。なら次に言う号令は決まっていた。


「行くぞ!」


「うん」


「はい!」


「ええ!」


俺の号令で、俺、エル、ルヴィ、レティスと破滅喰い勝利齎す邪龍(アジ・ダハーカ)からレティスを救い出すという戦いが始まったのだった。

予定では後三話でこの戦いを含めたこの章を書き終えたい感じなのですが、なかなか上手い感じに書き出せていません。ですが後二話でこの戦いを全て書けたらと思います。そしていよいよ三章の影が見えてきました。(三章の構想自体は前から頭の中にあったのでいよいよかと内心で感慨深い思いがあります)

さて、取り敢えず次の話は本格的にアルテシアを飲み込んだドラゴンとの戦闘に入ります。楽しみにしていただけると嬉しいです。また誤字脱字やおかしな箇所があればご報告をしていただけると嬉しいです。

次回の投稿は二週間を予定しています。それでは、また次話で。

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