第五十七話 「破壊の生誕」
ふう、意味深なタイトルになってしまった‥‥‥思いついたので投稿です。
10月26日現在内容を修正、または書き直しを行っています。未熟で本当に申し訳ありません。
速いうちに修正したものを投稿できるように努めます。
10月27日に一部改稿したものをサイド投稿しています。ですが、おかしな箇所、分かりずらい箇所などがあればご報告をお願いいたします。
11月2日、最後を少しだけ削りました。現在次の話を書いています、もう少しお待ちください。
シルバーがアルクを押しとどめ初めたのと時が同じ頃、私は何か嫌なもの近づいて来ているような予感がしながらも、アルテシアと刃を交えていた。そして、私が手にしている武器は自分の影で作り出した槍だった。影で作り出した武器とは言え、影の内部に魔力を流すことでしっかり実体を保つことが出来ていて、その槍で刺突を繰り出す。
「はあぁぁっ!」
「くっ!」
そして槍を引き戻し、槍を横に薙ぎ払った攻撃をアルテシアは暴毒の喰剣で受けたが、流石に全てを受けることは出来なかったのか、後ろに僅かにバランスを崩した。
今の私は血に宿る魔力を高速で全身に循環させることで身体能力を引き上げており、薙ぎの威力ももちろん刺突の威力と速さも向上していた。それでもアルテシアはどうにか逸らすことに成功するとバランスを崩した方に逆らわずにそのまま後ろへと下がった。
今放った凡そ、普通の細剣であればへし折れていてもおかしくはない程の威力で薙ぎ払ったつもりだったけれども暴毒の喰剣に罅どころか、傷1つ、ついていなかった。
(分かっていたけれど、やっぱり折れない、か)
そう、私はここに至るまでの間に、既に影で作り出し破壊された武器の数は四つを越していて、そのどれもお壊したのがアルテシアの持つ暴毒の喰剣だった。そして、厳然たる事実を突きつけられ改めて、思わず私は苦笑を内心で浮かべるしかなかった。
けれどもまだ全体的に余力のある私が選択したのは新しく更に武器を作り出す事でそれが今手にしている槍だった。そして、狙うのは、先程もだが攻撃の全てをアルテシアではなく、その手に持つ暴毒の喰剣に向けて放つ。
「はあぁぁぁ!」
「はっ!」
細剣を振るってくるアルテシアに対して私は影で作り出した槍で応戦する。けれども確かにアルテシアは戦いが始まる前と今とを比べれば確かに強くなった。けれども、私の目から見ればまだ何処か武器に振り回されているように見え、しかし、それでも、それは徐々に私と刃を交えるごとに無くなってきていた。そんな中、決然とした表情でアルテシアは口を開いた。
「私には、全てを捨てる事が出来た姉様と違って、守らないといけない人がいるの!」
そう言いながら再びアルテシアは距離を詰め、私は刺突と薙ぎ払いで対抗する。アルテシアの覚悟、気迫は確かにすごい。けれど今はまだ私の技術と経験、そして強化で上回っている。だが恐らく、もし次があるのならば全力であっても負ける可能性も否定できないほどに、アルテシアの力は急速に伸びていると私は肌で感じていた。
「いやあぁぁぁっ!」
「くっ!」
予想よりも、成長が早い。私が想像していた以上の早さでアルテシアは力を着け、強くなっていく。そして、私が放った刺突をアルテシアは一撃で槍が中ほどから暴毒の喰剣によって絶った。
私は咄嗟に中ほどから断たれた槍をアルテシアに向けて目眩まし目的で投げると即座に影で今度は小回りの聞く短剣を二本作り、両手に構えるとアルテシアが放ってきた刺突を交差させた短剣で受け止めたけど、その威力は先ほどより重いものだった。
(くぅ、さっきよりも一段重い!)
ここまま受けていればすぐに短剣を壊されてしまう予感がして細剣を逸らす、それと同時に二本の短剣から手を離し、そのままアルテシアの懐に潜り込むと、がら空きだった腹部に
掌底を叩き込む。
「はあっ!」
「こふっ!」
掌底を受けたアルテシアは後ろに吹き飛ばれ、背後の岩へと背を打ち付けるとその衝撃で打ち付けた岩が砕け散り土煙が舞う。それを見て私は少し後悔した。
「あ、ちょっと、やり過ぎた‥かも」
と思わず、そう思ってしまうほどにはやり過ぎたと思ったけれども、その認識はすぐに改めた。何故ならすぐに土煙が晴れ、そこから姿を現したアルテシアの手には先ほどまでの暴毒の喰剣ではなく、勝利と破滅の呪剣が握られ、その背後には、まるでアルテシアを守護するかのような龍の化身が顕現していた。恐らく岩に当たる直前にアルテシアが呼びだし緩衝材の役割を果たしたのだろう。そして私はアルテシアの背後の龍に関して驚く事は無かった。
「なるほど、それがシンの言っていた因果を逆転させる勝利と破滅の呪剣と、貴女の後ろにいるのが血に宿る魔なる血龍って事かな?」
「‥…ええ、本当はこの細剣で貴女の全てを喰らおうと思ったのですが、今の私の力ではまだ、敵わない。なら、少しでも勝つことが出来るのであれば、私は、今の姿を、捨てる」
「なにを、くぅっ!?」
アルテシアの魔力が急激に高まり、それに呼応するかのように勝利と破滅の呪剣から薄赤い光が放たれ、後ろの龍もそれに呼応するかのように蠢き、その中でアルテシアは私が聞いたことの無い呪文を口にしていく。
「わが身、我が血に封じられし龍の力、我が身を糧にその御業を以て破滅を喰い、勝利をもたらせ! 破滅を喰い勝利をもたらす黒邪龍!」
詠唱が進み、背後の魔なる血龍がアルテシアの全身に纏わり付き、その全てを黒く染め上げていく、その黒い物の肌の表面は鉱物ではない、何処か生物的な、龍を模した、例えるならルヴィのように全身を覆う黒い全身鎧へと変化していき、しかしそれだけでは止まらず尻尾が生え、背には龍の特徴ともいえる翼が形作られ、その姿を人型の龍へと姿を変えて、やがてアルテシアだった少女の姿は、漆黒に覆われ、その中で赤い瞳が特徴的な人型の龍へとその姿を変えてしまい、それは例えるならば小さな災厄の化身、竜そのままだった。
そして、その力、魔力は膨大、いや強大だった。だがそれ以上に私には気になった事があった。それはこれほどまでの力を、アルテシアは一体どうやって制御しているのかだ。
「あは、ははは、どう、これが私の全力だよ」
「‥‥‥‥‥」
アルテシアの笑い声が聞こえたが、それ以上に気になったのは、私の眼から見て呪文を口にする前のアルテシアはまだ完全に己の魔力を制御できるようには見えなかったが、しかし呪文を口にし、強大な力を己のモノにしたアルテシアは自身の魔力の制御が出来ているように見えた。だがそれはおかしいのだ、この短時間の間に魔力の制御がここまで習熟できる事は如何に才覚があろうとも不可能で
故に、何か外部の、力を制御、または抑えるだけに足る何かがあるはずと私は思い、目を凝らす。アルテシア全体を見る。するとふと胸部に小さな小指の先ほどの赤い宝石が据えられている事に、目を凝らすとその中に小さな剣のようなモノが見えた。
(……あれは、勝利と破滅の呪剣、でもどうしてあそこに?)
そう、その小さな宝石の内部にはサイズこそ縮んでいたが確かに勝利と破滅の呪剣が納められていた。見た感じの宝石の大きさは小指の先ほどの大きさに縮小されているけれど、そこには確かに勝利と破滅の呪剣があった。
そこでふとシンから聞いた話を私は思い出した。本来アルテシアが持っている剣も龍殺しの特性を持っているらしく、本来であれば龍に関係するものを傷つける力を持っているらしい。けれどあれほどまでに龍の血を深く継いだアルテシアが剣の力に蝕まれてもおかしくはないはずなのだ。でも見た感じではアルテシアに何らかの異常があるようには見えなかった。
でも疑問は残る。なぜ龍に関するモノを傷つけるという剣がアルテシアを傷つけないのか、気になる箇所はあった。
(いや、もしかしたら、龍の力を今も相殺しているから、アルテシアに影響がないのかもしれない)
考えてみれば、アルテシアの魔の血龍は血に流れる龍の力が具現化したもので、その魔力の制御は今のアルテシアではまだ、不可能であるならば、外部、即ち剣にその有り余る魔力を相殺させれば、あれほどまでの魔力を制御出来ている事に一応納得がいく。
(なら、あの剣が果たしている役割は力の相殺‥…ならアルテシアの魔力の制御はまだ拙いはず‥‥‥でもどうしてわざわざあそこに据えたのか‥…)
他にも気になるがあったが、それ以上に私が気になるのは勝利と破滅の呪剣をなぜわざわざ胸部に据えられているかだ。考えられる可能性は幾つかあるが、その中で最も可能性が高い物があった。それは、心臓で生成される魔力。
確かに胸部、その中で取り分け心臓は大事な機関だ。その理由は、心臓が魔力を作り出す場所で、即ち魔法、血操術に関わらず魔力に関係する中で大事な場所という事だった。
そして心臓に近い胸部に剣を据えたという事は魔力に関係する制御、または魔力を打ち消しているのかもしれないという予想が固まりかけていた、けれどもそれ以上考える時間は無かった。
「せやああぁぁぁ!」
「っ! くぅっ!」
考えに意識を集中しすぎていたせいか、アルテシアが踏み込んだ音が聞こえたと認識して顔を上げた瞬間、アルテシアは既に目の前に来ており、その手に握られていた勝利と破滅の呪剣を既に振り下ろそうとしていた。咄嗟に最大出力の魔力を内包させた影で腕に籠手のように形成、纏わせて防御の態勢をどうにか作れたかどうかというタイミングで剣が降り下ろされ、影の籠手と接触したと感じた瞬間、弾かれた様に吹き飛ばされた、そうとしか表現しようがない程に呆気なく私は弾き飛ばされ、何個目かの岩を砕いたのと同時に私は意識を手放してしまった。
一方、レティスを斬り、防御されたので吹き飛ばしたアルテシアは手にしていた勝利と破滅の呪剣の具現化を解き、体の状態を確かめるように何度か手の開閉を繰り返していた。
「やっぱり、まだ力加減が上手くできない、か」
そう言いながら龍を模した生物的なフォルムの黒い鎧の中心、即ち胸に赤い宝石のように輝く場所に手を当てる。そこには大きさこそかなり縮小されているが、そこにはまごう事無き、勝利と破滅の呪剣がそこにあった。
これはアルテシアの特異魔法ともいえる操影魔法で、影の内部に色々な武器を出し入れできるのを応用して、胸部に設置しているのだった。何故胸部に勝利と破滅の呪剣を据えたのか、それはレティスの予想通りで人間そして他の種族、吸血鬼も同じ心臓、命の、力の根源がそこにあり、その場所に近ければ近いほどに今纏っている魔の血龍の力を制御できるだろうとこの戦いの前に接触した【教会】の弓使いの男に言われ、アルテシアは姉に勝つために、本来ならば頼らない外部の力を使った結果だった。だが、その成果は予想を上回る程の力をアルテシアに与えた。
魔の血龍は宿主であるアルテシア自身をも喰らおうとする危険な力だが、それを制御できる術があるのであれば、それはアルテシアの力へと変わる。そして、自分の力ではなく、【教会】から与えられた勝利と破滅の呪剣の、龍殺しの力で魔の血龍の力を相殺する事でアルテシア自身が喰われる事もなく、ある意味で安全に力を行使する事が出来ているのだった。そしてアルテシアは、その手強く握りしめた。
「この力が、私自身の力だけでない例え紛い物の力でも、私は姉さんに、勝って見せる……そして………えっ?」
そして、アルテシアは自分が殴り、いや斬り飛ばした姉であるレティスが吹っ飛んで行った方へと風を切るような速さで走り始めた、その時だった。夜空から音もなく降ってきた、何かがアルテシアの鎧の一部分を、ある場所をピンポイントで穿っていた。
(これは……矢……まずいっ!)
自身を貫いている矢、そして貫いている場所をアルテシアが認識すると同時に制御されていたアルテシアの魔力、胸部の縮小された勝利と破滅の呪剣によって制御されていた魔の血龍がアルテシアの全てを塗りつぶし、その全てを乗っ取ろうとし始めた。
アルテシアも必至に制御できるだけの魔力を制御し抗った。だが抑える、対抗する術が破壊された今の状態ではどうしようも無く、しかし薄れゆく中で思い浮かべたのは人質に取られている母親と、幼い頃よくお姉ちゃんと呼び、その背を追っていた姉であるレティスの姿だった。
(いやっ!消えたくない!私はただ、お母様を助けたくて、それで私はお姉ちゃんに…認められたくて‥…‥お姉‥‥…ちゃん…助け‥…)
最後に、空に輝く月へと手を伸ばしたのを最後にアルテシアの意識は深層へと墜ち、そこに居たのは、人のサイズの、獲物を求める凶暴で、最強な生物の姿で、その生物はまるで自らの生誕を祝うかのように月夜に雄叫びを上げた。そこには居るのはアルテシアでは無く、ただの一匹の災厄の姿だった。
「GURUUUU、GUGAOOOOOOOO!!!」
アルテシアに宿り、その主を喰らった最強の生物の楔が、解き放たれた瞬間だった。
まず最初に、時間が空いてしまい申し訳ありません。そして、色々と思いついたのを書いていたら、このような内容になりました(マジでどうしよう‥‥‥)。正直自分でやったことですが、本当に頭を抱えました。ですが一応終わりの方は固まっているので、どうにかそこに向けて軌道修正をして行けたらと思います。場合によってはまた手を加えたり修正をすると思います。誠に申し訳ありません。
さて、話題を変えまして、次回の投稿は、まあ、相変わらずの二週間以内に投稿できればと思います。(仕事などの状況次第で遅れる可能性もあります)
最後にこの作品を見て、少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。長くなりました、それでは、次話を楽しみしてもらえると嬉しいです。(レティス力とは……)




