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第五十五話 「横槍」

ふう、どうにか、書けましたので投稿。

俺は今、ルヴィからの連絡があった方へと飛んでいると正面から赤い光の、まるで赤い流星の様に、一直線に飛んでいたのを視認し、その場で止まり、俺は魔力を眼に集中させることで視力だけを強化、更に魔力を放出して辺りの風を支配し、飛来してくる赤い流星が何なのかをより詳細にとらえる事が出来た。


「アレは‥‥‥矢なんだろうけど‥…まるで槍だな」


そう、俺が見た赤い流星の正体、それは、通常の矢よりも長く、矢全体に及び螺旋状の渦を巻いた、まるで金属の矢と言うべきものが飛んで来ていた。そして良く見ればその赤い矢自体が赤い光を放っているように俺には見え、それが何処か不気味に感じた。


「でも、喧嘩途中のレティスの方に飛んで行くのを見て見ぬふりは出来ないからな。撃ち落とす」


俺は『風神の天廻』から大型のリボルバーを取り出すと、刻一刻とこちらへと飛んできている槍ほどの大きさの矢へと向けると同時に銃身全体に幾つもの小さな稲妻が走り出す。それは射線上の空気を限りなく真空状態にして砲身を作り、そして装填されいる弾丸に雷の属性を纏わせて、増幅するために俺は独自の、リボルバーを使った、そしてカルアスの五煌を以て(ブリュー)空を裂きし槍(ナク)を打ち砕いた、俺の独自の魔法。その改良版の詠唱を始める。


硬き鞘(弾倉)より撃ち出されしは一条の雷光(弾丸)、雷となりて空を奔り、天を裂く光となりて穿て、硬き雷煌:改(カラドボルグ)!」



俺の詠唱によって弾倉内部の雷の魔法刻印が刻まれた弾丸が雷へ変わり、やがてそれは今か今かと待ちわびるかのように放電を始めると同時に俺は引き金を引く。同時に撃ちだされた雷光は一切ブレる事も、霧散する事もなく、赤い矢に向かって飛んで行き、やがて赤い矢と接触した。

俺の撃った硬き雷煌:改(カラドボルグ)と紅い矢が接触した瞬間、空に花火もかくやと言わんばかりに空一面を紅い光と雷が染め上げる。そして矢には魔力によって作り出されたものだったのか、互いに魔力を散らしながら、やがて硬き雷煌:改(カラドボルグ)《に飲み込まれるようにして消滅していった。


「よかった。成功したか‥‥」


そしてそれを見て、俺はようやくと言った感じで詰めていた息を吐きだした。

何せ、俺が撃った硬き雷煌:改(カラドボルグ)は以前の硬き雷煌を改良した魔法で、練習では何度か成功していたが、実戦ではこれが初の使用だったのだ。だが今回の結果としては、弾丸を雷に変換するまでの時間と魔力の消費、そして威力ともに以前に比べて早く、また負担が少ない物になっていた。


以前は弾丸に雷の属性を付与して弾丸を雷に変換、更に射線上を真空にする等の幾つかの面倒な工程を挟んで発動させたいたのだが、今回使用したのは、独自に風の魔法刻印を改造・模索し完成させた雷の魔法刻印を刻んだ弾丸を使用した。これによって弾丸に魔力を流す事によって雷への変換が容易となった。だがそうしても次に上がった問題が、如何に雷を散らさない様に目標に当てるかだった。だがそこはある意味簡単に解決した。それは雷の魔法刻印の元は風の魔法刻印、つまり、弾丸を雷に変換する魔法刻印の中に風の魔法刻印を組み込み、弾丸を雷に変換すると同時に、射線上の空気を真空にする事が出来たのだった。


「まあ、ここまで来るのに何度も失敗したからな‥…」


何度も試し撃ち等をしたので大丈夫とは思っていたが、実戦でも使える事を確認できた事と、矢を破壊する事が出来たから俺にとってはまさに一石二鳥だった。そう思っていた時だった。


「くっ!?」


俺はふと地上に眼を向けると同時に何か瞬いたと感じた瞬間背中に悪寒が走り、俺は天叢雲剣で咄嗟に正面に翳すと剣の腹に衝撃と甲高い音が聞こえ、視線を向けるとそこには先ほどの赤い槍のような矢と同じ長さのしかし今度は黒い矢が落ちて行くところで、しかしその矢はそのまま地面に刺さる事は無く、宙で跡形もなく消えた。


「そこか」


俺は矢が消えるのを見た後、先程瞬いたように見えた場所を見た。すると今度は黒ではなく青や緑の矢が飛んできたが、風を操る俺にとって射線は容易く読めたので俺は最低限の動きで矢を回避した、あくまで念の為と支配している領域を抜けるまで一応気にしていた。そして風の領域を抜けるかというところで、矢はまるで自動追尾があるかのように突然向きを変えてきたが、俺は振り返り様に剣を振る事で撃ち落とすと同時に風の操作を切ると俺は地上に向けて自由落下を始め、風で時折で降りる場所へと調整しながら俺は地面に降り立つ。そしてそこに立っていたのは、目深に被っている黒いローブを除いて見える範囲では、皮当てと麻の服とごく普通の軽装と漆黒の弓を携え、がっちりした体つきの狩人にも旅人にも見えなくない男だった。普通であれば狩人だと思うが、しかし俺にはその男が持つ弓が普通ではないという事に、そして先ほどの追尾する矢は恐らくこの男が射ていたのではと感じていたが、しかし俺はもう一つ気になっていた事を弓を携えた男に尋ねた。


「赤い矢を射ったのは、お前か?」


「ああ。よもや俺の矢を打ち砕くとは、思っていなかったがな」


「そうか、それじゃあもう一つだけ聞いておこう。お前は【教会】の人間か?」


俺が尋ねた瞬間、先程言葉少なげに口を開いた何時やを構えたのか、そしていつ矢を手にしたのかすら分からない程の速さで矢を構えていた。


「なるほど、確かに一瞬の間に弓を構えるだけではなく、矢をつがえて、弦まで引いているとは、凄い技量だ。それ程までその弓を習熟しているという事か。だがそれだけでは無いな?」


「‥‥‥‥‥‥」


俺の問いに男は沈黙を保ったが、俺は構わず言葉を続ける。


「お前のその弓からは、微かにだが魔力を感じる。それがお前自身の魔力か、それとも弓からの魔力かまでは分からない。だがそれでも先ほどの攻撃を受けた後だとある程度の予想は立てられる。それにだ、さっき一瞬とは弓が微かに光ったように俺には見えたが」


違うか? と俺はローブの中に見え隠れしている男に視線を向け続けると、微かに男が笑ったかのように、俺には見えた。


「なるほど、カルアスの言った通り、面白い奴だな、貴様は」


「やっぱり、【教会】の人間か。てかあの女の名前が出るとはな…」


目の前のローブの男の口から出てきた思わず俺があの女と言った名前、カルアスとは六年前、まだイシュラと出会って間もなく、リリィの正体を知る前である【シュルド】での死闘を繰り広げた、竜の血を浴び過ぎて異形の龍の腕に変化させることが出来る女の槍使いの名前だった。そしてその名前が出て来るという事は少なからず相手にこちらの事を知られているという事だった。だが、俺に焦りはなく、寧ろやっぱりかと納得できるものだった。


「ハハ、あれ程の女が恋焦がれている相手、どれ程の者かと思っていたが、これはなかなかに厳しいものになりそうだ。‥‥‥…本来の任務はもっと容易いものだったのだが」


後半あたりの言葉は聞き取ることは出来なかったが、雰囲気からして面倒な事になったと思っているのだろうと俺は適当に辺りを付け気にしないことにし、俺は天叢雲剣の切っ先をローブの男を指す。


「さて、それよりそろそろそのローブを脱いだ方がいいんじゃないのか?まあ俺としてはどちらでも構わんが?」


「そうだな、では、お言葉に甘えるとしよう」


そう言うと男は弦に掛けていた右手を離し、ローブに手を掛け、一息に脱いだと同時に弓の弦が震える音と同時に俺は飛んできた矢を二本とも切り裂き、その少し後、地面に男が脱ぎ去ったローブが落ちた。


「やっぱり、そう簡単にはいかないか」


「当たり前だろ。それにしても、頭だけじゃなく、心臓を同時に狙って来るとは、俺じゃなきゃ死んでいたぞ?」


そう、目の前の男はローブを脱ぎ捨てる事で、ごくわずかの間だが俺の視界は遮られた。そのタイミングで再び弓を引き、つがえた二本の矢を時間差なく同時に、それも心臓と頭を正確に狙って射かけてきたのだ。だが幸い矢は風を裂いて飛翔する。その風切り音で矢の数、早さなどを無意識に理解、後は自身の感覚に沿って剣を振るい矢を落としたのだった。そしてローブを取り払った事によって男の顔が見えた。顔立ちで言えば藍色に近い色の髪に、年齢は三十代前半ほど、体格は引き締まり、全身の中で特に足と腕に筋肉が付いており剣や短剣を持てば弓使いには見えず、また左の眼の下には剣によるものと思しき傷痕、腕には刺し傷やかすり傷など、幾つのも古傷があり、如何にも歴戦の弓兵と言った風貌だった。


「若いながら、それだけの剣の腕を持っているか。末恐ろしいな」


「俺としては、一射で二本の矢を射って来るアンタの方が恐ろしいがな?」


「ふん、矢を斬る程のお前が言うか」


そうして互いに笑みとも苦笑ともとれる表情を浮かべながらも油断なく、俺は剣を黒い弓と矢を構えた男は互いに一挙手一投足を見逃さない様に意識を研ぎ澄ましていく中、俺は尋ねた。


「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったな。お前の名前は、なんだ?」


「【教会】が『弓』アルク・インディオだ」


「なるほど、覚えておこう」


「ふ、あいつが惚れる程の奴に覚えてもらえるとは、光栄なことだ」


何処か軽口を言うかのようにアルクは言ったが、その動き一つをとっても俺が剣を振れる間合いに入るまでにかなりの苦労を強いられると容易く想像させるほどのモノだった。

だが一方で、アルク自身も、なかなかシルバーという、まだ幼いと言える年頃の少年に対して攻めきれて、いや攻める隙を見出すことが出来ないでいた。


(なんて威圧だ。こりゃ下手に動いたらそのまま斬られるな)


視覚的に見れば目の相対しているのはアルクよりも年下の少年だが、その身に纏っているものは、強者特有の雰囲気だった。そして普段から鍛えているのか、全身は引き締まり、また髪と同じくその黒い相貌はまるで剥き出しの刃の如く鋭いプレシャーをアルクに与えており、更に先ほどの攻撃を防がれた事もアルクが攻めあぐねている理由でもあった。

アルクの予想では、先程のローブで相手の視界を一瞬だけ奪い、同時に頭と心臓へと射かけた矢で殺すつもりだったのだが、目の前の少年は苦も無く矢を切り裂いた。何かしらの魔法による感知に気づいたの可能性も否定できない。


(こりゃ、しんどい戦いになりそうだ)


アルクは内心で思わずため息を吐き、その瞬間、風が止み、目の前の少年が動き出したのだった。

まだまだ、調子が戻りませんが以前よりはうまく書けているはず(多分)です。

今回はシルバーと姉妹喧嘩に横槍をいれようとした教会の人間との前哨戦を書き出しました。姉妹喧嘩の話は少し後に書き出す予定です。

姉妹の戦いを楽しみにされていた方、本当に申し訳ありません。もう少しお待ち下さい。

次話ですが、これも前回と同じく二週間程で投稿できればと思っています。では、長くなりましたので、今回はここで失礼します。どうか楽しんで頂けると嬉しいです。それでは、また次話で。

また合間合間の気まぐれでですが下の作品もゆっくりですが投稿しています。興味がある方は見ていただけると嬉しいです。

https://ncode.syosetu.com/n9568ex/

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