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第五十四話 「月夜の姉妹喧嘩」

長い時間が空いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。どうにか書けましたので投稿です。まだ本調子ではないので、誤字やおかしい箇所などがあればご報告をしていただけると嬉しいです。

後の話とつながりがおかしくなりそうだったので、一部を改修しました。申し訳ありません。

太陽が沈み、月が顔を出す中、私、レティスはシルバーと別れると、シルバー達が何時も鍛錬をしているグンテーレへ山頂と向かった。


「恐らく、アルテシアも私の考えは分かっているはず……」


そう思いながら、アルテシアは必ずここに来ると信じて山頂を目指して走り、私は山頂にたどり着いた。辺りには何もなく、そこには大小の岩の群れと開けた場所だった。いやそこには既に先客が私を待っていた。


「ふう、まさか、先に来ているとはね、アルテシア?」


そこに居たのは、私の妹、アルテシアが月の光を背に受けながら待っていた。

そして少しの間、私はアルテシアと向かい合っていた。互いに口を開くことは無く少しの間沈黙が辺りを支配したが、それを切り裂くようにアルテシアが私に尋ねてきた。


「ところでお姉さま、その服装は何ですか? 元とはいえ誇り高き吸血鬼の王に相応しくない服装だと思いますけど?」


「今の私は王ではなく、彼に全てを捧げる一人の女、いや主に仕えるメイドに過ぎないからな。故にこれが今の私の正装だ」


「全てを‥‥捧げた?‥‥…まさか!?」


私の言葉から何かを察したのか、アルテシアは私の首筋に眼を向けてきた。


「ああ、察しが良いな? そう、今の私は彼に証を刻まれ、その血を受け入れた。言うなれば彼の眷族となった、という事だ」


そう言いながら、私はシンに噛んでもらい、その痕跡が残っている首筋に手を当てた。それを見てアルテシアは驚きの表情を浮かべていた。


「正気なの!?」


「もちろん、正気だとも。そして、正気で私は彼の伴侶となる事を選んだのだ。お前も知っているだろ?」


レティスの服装はメイド服だった事に加えてアルテシアをここまで驚愕させたのは、私がシルバーを自分の主だと認め、身も心も、その全てを捧げると事と、もう一つ、私がシンの眷族になった、いや主従の関係を結んだという事だった。本来吸血鬼は相手の首筋から血を吸い、その部分に自身の血を流し込むことでその相手を吸血鬼化させ、従僕にする事が出来る。だが逆も、吸血鬼を従僕とする事もまた可能なのだった。それは吸血鬼がするように首筋に噛みつき、証を体に刻み、その上で、吸血鬼に自身の血を取り込ませると、吸血鬼をその血の主の従僕とする事が出来るのだ。

また吸血鬼たちにとって、特に王の血を引く者にとって、その行為は結婚の際に行う行為で、永遠にその人に添い遂げるという意味があったのだ。


故に普段、吸血鬼は首筋に噛みつかれない様に身を守る術を持っているのだが、結果として私は自ら望んでシンに噛みついてもらい、その血を飲んだという事で、それは私が望んで自ら従僕の身に落ちる事を望んだと取られても、実際にアルテシアにそう取られても仕方がないし、しかし自身が望んだことだったが、それでもアルテシアのその驚きは私にも分かる事だった。因みに、それが行われたのは、私がシルバーと別れる直前だったが、今は言っても栓無き事だった。

そして、それを聞いたアルテシアの表情は無表情で、しかし怒りが宿った眼で私を見ていた。


「そうですか、それなら私は容赦をしません。貴女を王としてではなく、ただの我ら吸血鬼の反逆者としてレティス・ア・カーミラ。我が姉である貴女を新しき王となる私自ら殺しましょう」


「ああ、それで良い。今の私は(シン)の為に生きるメイドだからな。」


アルテシアを見ながら、それが時に王に必要となる覚悟だと言わんばかりに内心で笑みを浮かべながら私は魔力を放出、更にそっと手首に隠し持っていた短剣で傷を付けると、溢れ出た血が珠となり周囲に幾つも浮かび上がる。私に少し遅れてアルテシアから濃密な魔力が吹きあがり、同時に辺りの影が幾つも揺らめいていた。恐らくアルテシアの特異魔法【操影魔法】がアルテシアの魔力に藩王しているのだろう。だが、今の私にはそんな事は関係が無い。


「では、アルテシア、行くぞ?【血操術】・【(シュヴェールト)】」


「もはや、従僕に落ちた貴女は王でも私の姉でもない!貴女の命、その全てを私がもらう!暴毒の喰剣(ツェリット)


アルテシアが影から取り出した剣に私は眼を細める。


「なるほど‥…あの剣は、やはり貴女を主に選んだのね」


そう言いながら私は血操術で作り出した剣を両手で構えたが、一方のアルテシアも影から取り出した細剣、暴毒の喰剣を改めて見る。アルテシアが持つ暴毒の喰剣は、かつて私も一度ほど触れた事があったが、拒否をされてしまった。それはまるで主はお前では無いとばかりに。

そもそも私が王となる時に抜き、主と認められ、今は私の血に宿る血魔の呪王剣(グラム)だが、それ以前は、王となった後、父から聞いたのだが、今でこそ「選定の剣」という王を選ぶ剣と言われているが、それ以前は、元々血魔の呪王剣は砕け、それを打ち直した一度は暴毒の喰剣の鞘となった経緯があるのだが、しかし血魔の呪王剣に宿りし魔力は砕け、鞘となっても力を持っており、魔力の塊、それがある日、一夜にして剣となった。それが私の中に宿りし血魔の呪王剣の正体だった。


それ故に今も城にある血魔の呪王剣は何の力も持たないただの鉄屑と化し、その血魔の呪王剣の魔力は私の体の中で、いや私の魔力と溶け合い息づいているのだから。

そして息づいているからこそ分かる事もある。そもそもの血魔の呪王剣は、一度鞘となった事もあり、王を守るための守護まもりの剣で、暴毒の喰剣こそが真の王となる者を選定する剣なのだ。そして血魔の呪王剣は砕ける以前は暴毒の喰剣の姉妹剣で、その姉妹剣を作り出し、始祖に献上した刀匠曰く、二つで一つの剣であるという事を伝えたという伝承を私は眼にしたことがあったのだけれど、


(でも今は、これだけ監視されていてはまともに話すことが出来ないかな。それに今のアルテシアに言っている余裕は、なさそうだね)


私は内心で苦笑を浮かべたがそれはおくびにも出さず、剣を構え、アルテシアも暴毒の喰剣を持つ右腕を弓を引くように引き、左足を一歩前に踏み出している。

互いに無言の中、辺りに吹いていた風が一瞬止んだと感じた瞬間、私は自然と脚が前に出て、そしてそれはアルテシアも同じだったのかちょうど一歩踏み出したところだった。


(さて、妹の事は私がどうにかするけど、周りの事までは手が回らないからね。頼んだよ、シン。)


再び吹き始めた風に、恐らく風を通して私を、この状況を視ているだろうシンに向けて微かに笑みを浮かべ、私はアルテシアの細剣を受け止め、辺り一帯に何か硬い物同士がぶつかり合ったような甲高い音が響くと同時にその衝撃を物語るかのように衝撃波が辺りを襲った。



―――――――――――――――――――


レティスとアルテシアとの姉妹喧嘩が始まったのを、俺は風を視るシュトゥムで確認し、閉じていた目を開け、こちらを見ていたエルとルヴィに指示を出す。


「よし、戦闘が始まった。エルとルヴィはそれぞれ吸血鬼たちの居る場所に向かってくれ。それで経過報告をこの、イシュラに作ってもらった風の魔法陣を刻んでもらった魔石を通して聞くから」


「分かった」


「分かりました」


俺の指示にエルとルヴィは頷くと、エルは風魔法で宙に、ルヴィは赤い全身鎧を身に纏うとそれぞれ別々の方へとエルは飛んで、ルヴィは走って向かって行った。


「さて、取り敢えずは見つけ出した、レティス達を監視している吸血鬼ども殲滅しないとな。下手に手を出されるのは困るからな」


「でも義兄さん、レティスさんは大丈夫なんでしょうか、妹さん相手に手を抜いて自分から死を選ぶ事は、無いんですよね?‥‥‥あっ」


俺の隣に立っていた、そう心配そうにリリィが尋ねてきたので、取り敢えず今出来る事を、リリィを安心させる為に立っていたリリィの手を引っ張り、座っていた俺の膝の上に少々強引にだが座らせるとリリィはすぐに振り向こうとしたが、俺は抱き寄せて動きを阻害する事でそれを阻止し、一方のリリィは急に抱きしめられたことに驚いたのかジタバタと逃げ出そうとしたが俺は逃がすまいとしっかりとしかし優しく抱きしめる。そして互いの距離が近づくとなると俺からリリィ伝わるものがある。それは心臓の音だった。そして俺の心臓はまるで今にも飛び出さんばかりに暴れていた。


「やっぱり、義兄さんも心配だったんですね‥‥」


「やっぱりって何だよ。人間なんだ当たり前だろ。確かにレティスを信じているが、心配するさ。出来れば今にでも駆けだしたいほどにな」


俺の心臓の音が聞こえて、それが今にも飛び出さんばかりに暴れている音を聞いてリリィは、納得したのとばかりに言葉を返し、俺は今の自分の心の中の思いを吐露した。

そう、本当はレティスの所に駆け付けたい、だがそれはレティスの事を信用していないと言っているのと同じことだ。それなら今俺が出来る事を、レティスを信じる。信じてレティスとアルテシア、姉妹の喧嘩たたかいに水を差しかけない来客の応対をすることにしたのだった。そして、レティスは俺がそうしてくれると信じているだろう。ならば俺はその信頼に答える。そうでなければ、俺に自ら首筋を晒し、俺の血を飲んだレティスに申し訳が立たない。それに先ほどの「風を視る者(シュトゥム)」で視えたレティスの笑みは信頼できるものだと俺は感じた。


(だから、俺は出来る事をする。それが今、俺がレティスにしてやれることだ)


俺がそう思っていると、手に持っていた魔石が白い光を放った。それは邪魔な客にご退場頂いたという合図に他ならなかった。


『どうだ、エル、片付いたか?』


『うん、全身をこんがり焼いて、雷の魔法で痺れさせたから二時間ほどは動けない』


エルが向かった場所には少なくても五人ほど居たはずで、それに飛んで行ってまだ数分としか時間が経っていなかったと言うのに、もう仕留めるとは予想外だった。


『分かった。それじゃあ今後は随時吸血鬼の掃討に当たってくれ。だが幾ら相手が弱くても油断はするなよ?』


『分かっている、それじゃあ、また後で』


そう言うとエルとの通信は切れた。そしてリリィは俺が持っていた長方形状の魔法刻印が刻まれた、先ほどまでは白く発光していたが今は透明に戻っている魔石に視線を落とした。


「それがイシュラさんに頼んでいた物ですか」


「ああ、エルとルヴィに渡した魔石にはこれと同じにそれぞれに俺が魔力を流し込み刻んだ風の魔法刻印をでな、刻印に魔力を流す事で風を媒介に、特定の魔法刻印、この場合はこの魔石だが、に刻んである魔石に遠距離の通信が出来るってわけだ。まあ、ちょっとした糸電話、いや風話だな。それでまあ、イシュラにはこんな物があるなら早く教えてと怒られたがな」


「なるほど、イシュラさんらしいですね」


リリィも糸電話を知っているので、大まかに説明するだけで、この魔石に関する事とそれに対するイシュラの反応に納得の表情を浮かべた。そうしていると今度は魔石が赤い光を放った。それはルヴィからの連絡を知らせる光で、俺は魔石に魔力を流す。


『どうした、ルヴィ『大変です!』‥‥どうしたんだ?』


そして聞こえてきたルヴィの声が想像以上に大きかったせいで俺は耳が痛くなり、少しばかり間が空いたが、それはある意味で仕方がない事で、リリィもいきなりのルヴィの大声に驚いたのか膝の上から転げ落ちてしまっていたがどうにか立ち上がった時だった。


『東の空から何かが飛んで行きます。アレは‥‥‥矢でしょうか‥…目標は恐らく』


『(なるほど、やっぱり横やりを入れてきたか)‥‥…分かった。そっちに関しては俺が対処に向かう。ルヴィは引き続き周辺に居る吸血鬼どもを倒すなり捕縛するなりしておいてくれ』


ご主人様(マスター)、無理はしないでくださいね』


『ああ、死ぬつもりはないさ』


『分かりました。では私は吸血鬼の殲滅に戻ります』


俺の返事を聞いて、ルヴィはそう答えると通信が切れた。恐らくルヴィは再び吸血鬼たちを倒す為に行動を開始したのだろう。ならば俺がすべきことを、姉妹喧嘩に水を差されない様に横槍を射れようとしてる、その攻撃を防ぐのみだ。


「まあ、恐らくアレはまだちょっとした小手調べによる一撃に過ぎない気がするが。リリィはここに居てくれ」


「一緒に行ってはいけないのですか?」


「ああ、リリィにはこの、俺達の帰る場所を守って欲しんだ。戦いに勝っても、帰る家が無くなったら意味が無いからな。頼めるか」


何処か拗ねた様に俺を見て来るリリィに俺は苦笑を浮かべながらそっと頭に手を当てると子供をなだめるように言い聞かせる。別に本心として付いて来てほしくないと思っていないが、俺にとって、いや皆にとっても本当の変えるべきであるこの屋敷が無くなると言うのは言葉にならないショックを与える可能性が高く、俺自身も立ち直ることが出来ても、長い時間を必要とする可能性があるのだ。ならば信用できる人間を、リリィを残した方が全力で戦えるという意味も込めて目を見ながら俺はリリィの頭を撫でた。


「‥…分かりました。屋敷(ここ)は私が守ります。でもちゃんとレティスを連れて帰ってきてくださいね?」


「ああ。分かった」


俺はリリィの言葉に頷き、最後にリリィの頭を優しく撫でると、全身に風を纏わせると、月と星が照らす夜の空へと、飛び立ったのだった。

長い時間が空いてしまいましたが、どうにか一徹で浮かび、書かせてもらいましたが、まずは謝罪を致します。長い時間を空けてしまい、本当に申し訳ございません、どうにか投稿のペースを元の二週間ほどで投稿できるようにして行きたと思いますが、まだ以前の様に上手く投稿が出来る感じではないのですが、今月の内に、出来れば二章を書き終える事が出来ればと思っています。

本当に申し訳ございません。ですがどうか次話を楽しみにしていただけるととても嬉しいです。次話はまだ未定ですが、取り敢えず二週間ほどで投稿を考えています。

長くなりました、今話ではこれで失礼します、それでは次話で。

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