第四十八話 「試練‥‥といえば」
一応、出来た‥‥投稿…
後日、修正するかもしれません。申し訳ありません。
「くくくっ、あはははははっ!、凄いね、君は。まさか因果を断ち切ることが出来るだなんて、ワクワクさせてくれるじゃないか!」
「まあ、まだまだ、だけどな。にしても、お前も頑丈だな…」
呆れながらそう言いながら俺の胸に剣は無く、変わりに左腕にかなり深い切り傷が出来ていたが、それは因果を切り裂くことが出来たという証拠だった。腕の傷も命に影響があるというほどでは無かった。
一方の俺が砕いたニクスの左肩は既に癒着、治癒したのかごく普通に何度か動かしていた。
「はは、君に言われるのは心外だな。さっきの言葉嘘じゃないのかい?普通この剣の切れ味だと腕が飛ぶはずなんだけど?」
「サラリと怖いこと言いやがるな、それに体に関しては俺に言われても知らねえよ」
そう言いつつも、俺は神と人間の混血の半神、ハーフなんだろうなとは思っていたが、未だに直接父親と会っていないので確信を持てていないの事と、異常な回復力を誇る吸血鬼で戦闘狂と思しきニクス相手に下手に情報を開示すると面倒事になるかも知れないと思ったが故だった。だがニクスの言葉を信じるならば人間であれば腕を飛ばされていた可能性もあったのだろう。
「ふ~ん、思いのほか君は謎が多いみたいだね。まっそこそこ楽しめた事だし、いいかな、それにそろそろ時間かな」
そう言うと同時に空の雲が徐々に晴れて行き、少しずつ辺りに光が差し込み始めていた。そして光が差し込む場所が増し、ニクスの体は何処か薄靄がかかったかのように透け始めていた。
「彼女を探していたらと思いの外楽しめる君の様な人間もいる事が分かっただけでも収穫かな」
そこで、俺は改めて尋ねて見る事にした。
「やっぱり、お前はレティスや始祖と同じように光の下を歩くことは出来ないんだな」
「ああ、幾ら回復力が凄くても、陽の光の下では何一つ残さずに消滅する、そんな儚い種族が吸血鬼さ」
「何処かだよ」
俺の言葉にニクスは笑みを浮かべるもその体は徐々に透けて行く。
「とりあえず、今日はこれで失礼するよ。それと、予告をしておこうか」
「予告?」
「ああ、明日、今度こそ彼女を、我らが始祖の直系の吸血鬼の女王にして、忌み嫌われしハーフであるレティス・ア・カーミラのその身、力、全てを頂くよ」
徐々に薄れながらもニクスのその表情はまるで獲物を狩る獣の様なモノだった。そしてその宣言は、レティスの命を、力をその全てを喰らうという宣告だった。だが俺はもちろん、エルとルヴィ、リリィにイシュラの全員がレティスを大切に思っている。ならニクスに返す俺の言葉は決まっている。
「なら、俺はお前を倒す」
「はは、君ならそう言うと思ったよ。何せ、力が弱まっている彼女が信じた人間だからね。それじゃあ楽しみにしているよ」
そう言うとニクスは完全に姿を消し、そのすぐ後辺りに再び陽の光が届き始めた。そして光に眼を窄めていると隣に降り立つ足音があった、エルだった。
「どうだった?」
俺のどうだったの中には、強さはどうだったか、疲れていないかなどの意味も含んでの問いだったが、エルもそれは分かっていたのだろう、頷くと口を開いた。
「うん、傷とかは大丈夫。でも問題はあの血の中の魔力が竜の形となったドラゴン」
「そんなに厄介なのか?」
問題、エルがそう口にする事はあまりなく、寧ろ初めて聞いた気がしたのですぐに聞き返した。
「アイツは、幾ら傷を付けても、恐らく主人が死なないと活動を止めない。もしかしたら‥…」
「主人が死んでも、止まらないかもしれない、か?」
エルの言葉を引き継いで言った俺の言葉は的を射ていたのだろう、エルは頷いた。
「もし、繋ぎ止める宿主が死ねば、アイツは暴れだす。己が生きる為に命ある物を喰らう存在になる。そんな気がする」
その時のエルは眼はここではなく、何処か別の何かを見ている様に俺には見えた。
「‥‥‥」
エルのまるで予言の様な言葉に、思わず俺は何とも言えなくなってしまった。何せ、これまでエルが何か予言の様な事を言うと、それは偶に外れるが大抵、的中していた。
「‥…どうする、今日は鍛錬をするのはやめておくか?」
「‥…ううん、いつも通り鍛錬はしよ、何事も、継続は力なり?」
ギュッと手を握りながら首をかしげるエルに俺は思わず笑みを浮かべた。
「なんで疑問形なんだよ。分かった。それじゃ、時間を喰ったから少し飛ばしていくぞ?」
ごく自然にラグなく身体強化魔法「ボディエンチャント」を纏いながら尋ねると、いつの間にやらエルも身体強化魔法「ボディエンチャント」を纏っていた。
「行こ」
「ああ」
その後、俺とエルはごく普通に鍛錬をし、朝食を食べるとエルはルヴィの所に行き、俺は久々に一人で鍛錬をし、昼を食べた後も一人で鍛錬をした。そして朝食の後(傷に関しては鍛錬前に回復魔法をエルに掛けてもらった)、ニクスからの伝言、というか宣告を皆に、狙われているレティスも含めてもしもの時を考慮し皆に伝え、俺は警戒だけはしておこうというに留めた。俺にはあの男、ニクスが自分で言った宣告を歪めると俺は思えなかったからだった。
もちろんレティスの事を心配するルヴィ達に大丈夫なのかと言われたが、そこはエルの「大丈夫、何かあればシルバーが守ってくれる」の一言である程度納得したが、
「でも、もしもの事があったら「ハイハイ、イシュラさん落ち着いてください」~、~ッ!」
イシュラが何かを言おうとした時、背後に回り込んだルヴィがイシュラの口を押え、逃れようとするイシュラの耳元でルヴィが何かを言うとイシュラの顔が一瞬にして真っ赤に染まった。
「いいですね、イシュラさん?」
「わ、分かった、よ。もう暴れないから‥‥」
「はい、分かればいいんです」
と、何やら聞き取れないほどの声でイシュラに言うとイシュラは何処か骨抜きの状態でへたり込んだ。そのようなことはあったが、それ以外は特にこれという事は無かった。そして昼食と同じように夕食も特に何も無く、いつも通りだった。だったのだが‥…
夜を照らす月の光が湯船の水面がある浴場にて、俺は現在、浴場の椅子に座って、いや座らせられており、俺の背後には五人の影があった。もちろんそれはエル、ルヴィ、リリィ、イシュラ、レティスだった。浴場という事もあり、全員タオルを巻いているの状態でいたがそれでも見える手足が眩しい。
「それでは、ご主人様のお背中を私達が洗わせて頂きます」
「あ~、とりあえず、どういう事?」
困惑している俺を置いて、風呂場にいる五人の影の内の一人、ルヴィがそう音頭を取ると、一斉にそれぞれが各々に動き始めた。
「な、なにを!?」
「ん、ルヴィからのお願い、シン捕まえる、拘束」
「ごめんなさい、義兄さん」
そう言うとエルは淡々と俺の左腕に、リリィは恥ずかしさを押し殺した表情でエルとは反対の右腕をそれぞれ胸に抱くように腕を拘束してきた。そして両腕から伝わる二人の胸の柔らかな感触に思わず意識が傾きかけたが、目を閉じ、更に敏感になった肌から伝わってくるその感覚を理性で押しとどめる。だがそんな俺の
前に立つ二つの気配。
「少し間、ごめんッ!」
「すみません、ご主人様」
そう、第二波であるルヴィは羞恥心なく、むしろ嬉しそうに左足を、一方のイシュラも顔を赤くしながらも右足と拘束して来た。エル達と同じように、しかしそれは第三者から見れば、女を侍らせるまたは女同士の男の取り合い、もしくは某黄金の王様を想起させる傲慢な男の様に見えるだろう。だがここで言っておく、これは、決してっ、俺がやらせたことではないという事を。
(くそ、柔らかい!)
タオルで隠せていない部分、俺の腕や足を拘束していると必然的に当たってしまう腕や足などから伝わってくる、ハリのある肌、そしてまるで柔らかい餅のように柔らかな感触に対してどう対処していいのか徐々に俺は分からなくなっていた。痛み等であれば前世でも色々な、そしてこの世界でも怪我をして来たので痛みに関しては慣れの耐性が出来きているのだが、
(これに関しては‥‥全く、経験した事が、無い!?)
そして俺の腕と脚を拘束したエル達、そしてルヴィはバッと勢いよく俺の背後へと振り返り最後の人物、レティスへと声を掛けた。
「ご主人様は私達が抑えました。さあ、レティスさん、安心して、ご主人様の背中に抱き着いてください!」
(‥‥‥なに~!!!?!!??)
「え、あ…その‥‥」
この事態について来れていないのか、それとも何かしらの羞恥心によるものなのか、レティスの声は迷いがあった。恐らくこれはエル達は事前に知らされていたのだろう。そうでなければこれ程スムーズに行く筈がない。だがレティスが躊躇っている今ならば、
(この意味が分からない状況を打破する事が出来るかもしれないッ!)
何せ、こちとらごくごく普通に風呂に入った瞬間、背後に引っ張られ椅子に座らせられたのだ。それだけで状況を理解しろというのも無理なのだった。だが先ほどエル達が全員一緒にいるというのは何かしらの意味があるのではないかと俺は思っていた。だが、
「そんな事では、私が課した試練を乗り越えることは出来ません、さあ、覚悟を決めて、躊躇わずに一気に!」
「レティス、シンを信じて、大丈夫。」
「そうです、義兄さんを信じてください!」
エルとリリィの言葉にレティスは僅かに肩を震わせた。
「大丈夫です、レティスさん、いえ、レティス、頑張ってください!」
「‥‥一息にやっちゃいなさい!」
エル達の言葉にレティスは顔を上げる。そして皆の声援?に背中を押されてか、まるでヤケクソみたいに、突進してきて、ぶつかる様にしてレティスが俺の背中におぶさってきた。そして、伝わってくる、自己主張をしてくる柔らかな二つの膨らみ‥‥
「レティス、シンを信じる。シンは、来る人は拒まない。それに約束は守ってくれる。」
「‥…はい、はいっ」
そう、自ら、声援を受けたとはいえ、踏み出したレティスにエルは優しく言葉を書けた。そしてレティスが微かに頷くような感触と冷たい感触が肩越しに伝わったのを最後に、鼻の辺りに何か生暖かいものが流れつつあるのを感じた。しかしその間も話は続く。
「はい、操られていたとはいえ、戦った相手である私を受け入れてくれたんです。ですから大丈夫です。それに、女は強い人に引かれるんです。ですよね、リリィさん?」
「はい、義兄さんはレティスさんを拒みませんよ。義妹である私が保証します!」
ルヴィに同意を求められたリリィが同意している言葉を他人事のように聞きながら俺の意識は朦朧としていた。
(い、意識が‥‥‥)
「シン‥‥?」
「もう、限、界‥…」
それを最後に押しとどまっていた赤い濁流が流れ出て、俺の意識は急激に薄れて行く。
「義兄さん!?」
「ちょ、大丈夫!?」
「ご主人様!」
「シンさん!?」
リリィとイシュラ、そしてルヴィがとレティスが血を流す俺の事を気遣ってくれ、更に肌との密度が更に増え、加速的に流れる血の量も増えて行く。
「ど、どうしよう!?」
「落ち着いて、取り敢えず回復魔法を掛ける」
自分のせいではと慌てるレティスの声と、冷静にレティスに声を掛けながら回復魔法を施そうとするエルの声をまるで他人事の様に聞きながら、俺はそれでも何とか保っていた意識を完全に手放した、がレティスの覚悟は、確かに俺にも伝わったのだった。
次の投稿も、思いつき次第、投稿したいと思います。とりあえず、二週間以内に投稿できればと思っています。修正、おかしな箇所がありましたらご報告していただけると嬉しいです。
では。また、次話を楽しみにしていただけると嬉しいです。




