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第四十二話 「爆誕、吸血姫メイド1」

思いついたので、投稿です。(これだけ早いのは偶然です)

レティスを家に連れてきた日の翌日、学院入学までちょうど一週間となった、その日の早朝。一人の少女が暗殺者からメイドへ変身(ジョブチェンジ)を遂げていた。


「あ、あの、これでいいんです、いえよろしいですか?」


「うんうん、とても似合っているわよ」


頭の上に乗るはホワイトブリム、そして陽の光を浴びて輝く金色のをサイドテールに結び、そして身に着けているのはひざ下まである黒いワンピースに純白のフリルが白いエプロンのシンプルなメイド服を身に着けたレティスの姿だった。


「「おお~!」」


「凄く似合ってますよ、レティスさん」


レティスのメイド服姿を見てエルとリリィは驚きの声を、ルヴィは時折メイド服を着ているので仲間が出来たとばかりに嬉しそうに見ていた。一方メイド服を着せられたレティスは恥ずかしそうにスカートの端を引っ張っていた。そしてレティスは俺の方を向いてきた。


「どうしたんだ?」


「ど、どうでしょうか、シン様?」


「‥‥…(ガハッ!)」


レティスのその仕草に俺は表面には出さなかったが、何かがなかなかのダメージを食らった。例えるなら、がら空きの腹にボディーブローを受けたかのような衝撃だった。そしてその拍子に俺の中の何か変なスイッチが入りかけた気がした。


(やばいやばいやばいっ!あの何処か恥じらいのある表情、スカートの裾から微かに見える吸血鬼特有の健康的で白い肌が眩しい)


俺は思った。桃源郷がここにもあった、と。

さて、今更だが何故レティスがメイド服を身に着ける様になったのか、それは単純な些細な答え、それはレティスが着る服が無かった事だった。それであればエルやリリィ達の服を借りればいいのだがレティスは申し訳ないと言って着なかった。そして、俺達が悩んでいた時、母さんが「そう言えば、確かまだ服が余っていたような‥」と言い、持ってきたそれを見た瞬間レティスの眼はその服に釘付けになった。それは、メイド服だった。


「か、かわいい」


それを見たレティスは早速身に着け、結果今の状態へと至ったのだった。因みに俺個人で言えば、ドストライクでノックアウトモノだった。前世ではメイド喫茶に行くのは申し訳ないが金の無駄とばかりに思っていたのだが、


(これは‥‥アリだ!)


何となくこの世界に転生して以降色々な事があったが、その中でもトップクラスの衝撃だった。っと、衝撃のあまり何も返さなかった俺にレティスが不安げな表情を浮かべていた。


「あ、あの、似合いませんか…?」


「あ、いや、似合っているよ。うんとても」


内心の動揺を悟られない様に、しかしレティスが不安にならない様に注意しながら感想を言うとレティスは安心した表情を浮かべた。

そもそもレティスがメイド服を着ているのはしばらくの間家で働くようになったからというのもあるが…


(やっぱり、昨日の夜の相談が関係しているのかもな‥‥)


それは、昨日の夕食後の後の事だった。

夕食(メニューは紅角鹿のステーキ、野菜のスープ、パン、サラダ)を食べた後、俺はいつものように風呂へと向かった。脱衣所で服を脱ぎ、まず頭と体を洗うと湯船へと体を沈めた。


「ああ~、風呂はいいな‥…」


そう言いながら一日ぶりの風呂で俺は全身の力を抜いた。そうする事で全身の疲れが抜けていくように感じた。そして、思い返すのは、イシュラに作ってもらい、俺が渡した指輪の事だった。


「渡せてよかった」


イシュラとは長い付き合いだが、なかなかタイミングが見いだせずに作ってもらうという依頼すら出来ていなかった。当然有名になったイシュラも鍛冶師として忙しくしており、俺もまだ強くなるためにエル達と鍛錬とギルドでクエストを受ける日々だったのでなかなか日取りが会わなかったという事ももちろんあった。

そして、そんなある日、ある貴族が、イシュラを取り込もうとしているという情報を俺は得た。その情報源はリリィの父親にしてこの国、エクセリーナ魔法王国の国王、アルテス・E・フリードからだった。


情報によると今代のディリスト侯爵家の当主であるカザフスが自分の息子であるクルアトの花嫁にその件の鍛冶師を手籠めにしようとしていると事だった。そして現在ディリスト侯爵家内の護衛の一人に王直属の部隊「王の剣(アルシヴィ)」の人間を潜り込ませているとの事だった。

元々、ディリスト侯爵家はあまりよくない噂が流れていたが、隠蔽が巧妙であったお陰でなかなか尻尾がつかめていなかった。そこで内部調査の為に「王の剣(アルシヴィ)」を護衛の冒険者として潜り込ませたのだった。

事情を知った俺はアルテス王にリリィの最近の様子などを書いた定期的に送っている手紙の中にもう一通「その事に関して任せてもらえないか」と言う内容の手紙を忍ばせ、シュトゥム伯爵家の印を押して王宮へと送り、数日後「クルアト・ディリストを殺さずに拘束する事」を条件に了承を得た。もちろんリリィ達を巻き込まない事も含めてだ。


そして、俺はクルアトがシュトルへと出発したという情報を得てイシュラの所へと赴いたという訳だった。

まあ、その辺りはちょうど余裕が生まれていた時だったのも僥倖だった。おかげで彼方は件の侯爵家の内部調査、当主であるカザフスの息子であるクルアの捕縛を無傷で成功した。

その副産物として、カザフスに雇われたレティスを家に連れて来る事が出来たのだ。それに驚いたのはレティスが吸血鬼の、それも始祖の直系の孫だという事にも驚いたが、その吸血鬼の力を与えたのがエルだったという事にも驚いた。いやエルもこちらが尋ねれば答えたのだろうが、なにぶん予想が出来る類では無かった。だがそれより気になるのはレティスの事だ。彼女が吸血鬼のハーフであるという事は、彼女が影を持っている事から明らかだ。


この世界の吸血鬼は影を持たない、代わりに不死身に近い回復能力を持っており、肉の一片でも残っていれば復活するという厄介な種族だ。その代わり前世にある様に聖なる加護を受けた武具、銀製品、光に弱いという幾つもの弱点を抱え込んだ。そもそも、何故吸血鬼の始祖は人であることを捨てたのかは誰にも分かっていない。恐らくその本人と会った事のあるエルですら分からないだろう。


「この二日は、今までにない程に濃密だった気がするな‥‥うん?」


月を見上げながら俺は一人で呟いていると、脱衣所と浴場を隔てている扉が開いたような音が聞こえ、俺は音のした方を見るとそこには湯気でよく見えなかったが確かに人影があった。その数二人。


(エルとルヴィか?それともリリィか?)


ここ最近、エルとルヴィが俺が風呂場にいる時に突撃してくるという出来事が何度かあった。最初は普通に入ってきて、二度目は浴場を隔てている壁を乗り越えて、三度目は浴槽の中に隠れていたりと色々あった。

そして四度目は一度目と同じく普通に入ってきたのだが、入ってきたのがリリィだった事には驚いた。

それでもリリィは体を洗うと湯船に浸かった後俺へと近づいてきたが、羞恥心と湯の温度が重なり、倒れてしまって俺が急いで色々と見ない様に気を付けながら介抱したのは、まあいい思い出だ。


「おいおい、こっちは男風呂‥‥だ…ぞ?」


湯煙に隠れている人影を見て、俺はある事に気が付いた。まず気が付いたのは背丈だ。エルは出会った当初から伸長はさほど変化しておらず、今の俺と同じ程で間違える事は無い。リリィとルヴィは体が女性的な体つきになりつつあるので、何となくそれも分かる。だが、今見える影の二人にエル、リリィ、そしてルヴィの身体的特徴と合致する部分が無かった。

では俺の母親であるリリフィアか?いや、確かに何度か母さんが男湯へと入ってきた事はあったが、体の豊かさが違う。そしてある程度の可能性を排除して浮かび上がってくるのは‥…


「まさか‥…」


俺がそうつぶやくと同時にその二つの足音はこちらへと近づいてきた。それによって二人の特徴が見えてきた。

一人は赤毛の髪の少女で、その体は女性的な丸みを帯びながらも引き締まっており、その体つき、そして微かに焼けた肌が彼女が職人であるという事を物語っていた。

そしてもう一人の少女はサイドテールにしていた髪を解いたのか、背中までのロングになっており、またそれがまた彼女の印象をガラリと変えていた。まさに深窓の令嬢と言うべき雰囲気を纏っていた。

そして体つきはイシュラと同等程のもので、イシュラが太陽とするならばレティスは月と表現していいほどにその肌は白いという事を伺わせたが、今は湯気による温度か、それとも羞恥心によってかその肌は僅かにピンク色だった。


「な、え、はっ!?」


「ごめん、シルバー」


「‥‥少し、恥ずかしいです」


幸いにもイシュラとレティスはタオルで前を隠しているので全部が見えているわけではないが、それでも十分刺激的すぎる絵だった。正直、鼻血が出るのではと思ったほどだ。


「な、なんで二人が…?っと、とりあえず…入ったら?」


混乱する中で二人から視線を外さないと言えないという事は分かってはいるが、なかなか視線を背ける事が俺は何故か出来なかった。故にやや濁り湯である浴槽に浸かる様に俺は提案してしまった。一方俺に見られているイシュラとレティスは頷くと恥ずかしながらも頷くと湯船へ体を着けた。


「はあぁあ、気持ちいい…」


「はい、温かくて、解されます…」


湯船に浸かった二人はそれぞれ湯船の温かさと全身を伸ばせる心地よさに頬を緩ませた。その表情を見て俺は改めて風呂を作ってよかったと思っていたが、忘れてはならないことがあった。それはここが男湯だという事を。


「ところで、いったどうして二人揃って男湯の方に入ってきたんだ?」


「えっと、それは‥‥その」


「‥‥‥」


俺が尋ねるとイシュラは途端にその表情をこわばらせ、一方のレティスは湯船が余程気持ちよかったのかそのまま船をこぎだしていた。そして俺は浴槽に浸かっているおかげで先ほどよりはマシだとイシュラを視界に納める。すると、イシュラは何処か慌てた風に教えてくれた。


「わ、私が自発的に入ってきた訳じゃないわよ!?」


「となると、母さんか、エル達のどっちだ?」


イシュラが自発的に男湯に入ってくると云う事は考え難い、となるとエル達か、母さんのどちらかだ。


「‥…お義母さまよ」


犯人の存在をイシュラは告白し、その名前を聞いて俺はやっぱりかとばかりにため息を吐いた。そもそもエル達が俺が入っている時に突撃してくるようになったその原因は母さんであった。俺がため息を吐いた事に何か勘違いでもしたのかイシュラが慌てて母さんを援護した。


「あ、でもお義母様が全部悪いわけじゃないわよ!?お風呂場の前でどうしようか悩んでいた私にお義母

が行ってくればと背中を押してくれただけなんだから」


(という事は、自分はシルバーと一緒に入りたかったと言っているようなものだぞ?)


「あ、いや、その、あううう」


俺が内心でそう思っていると自分から一緒にお風呂に入りたかったと言ってしまっていたという事にイシュラも気が付いたのか、顔が真っ赤に染まっていった。


「か、体洗ってくるわ!」


そう言うと猛ダッシュで浴槽から出るとそのまま体を洗う場所へと走って行ってしまった。

一方の俺としては先ほどの発言を喜ぶべきなのか、注意すべきなのか迷ってしまっていた。もちろん一緒にお風呂に入りたいと言われて嬉しくないわけではない。だけども一緒に入るなら入るとで俺自身の理性がもちだろうかという別の不安要素が出て来るのだ。っとそれは置いておくとして。


「起きているんだろ、レティス?」


「‥…気が付いていたの?」


「湯が気持ちよくて寝る事はあるだろうが、途中から明らかに反応が違っていたぞ?それで、何か俺に用があっては言って来たんじゃないのか?」


そう、イシュラと話している途中からレティスの呼吸は寝ている時のと違い、起きている時と同じ呼吸だった。もちろん普通であれば気が付くことは難しいだろう。湯煙によって絶えず相手が見えたり見えなかったりするのだ、余程目が良くなければ不可能だ。だが風を通して自分の感覚のように俺はそれを感じ取る事が出来る。いや出来る様になったのだった。といっても何となく程度だが…


「うん、貴方に用事があって来たけど‥‥後で貴方の部屋に行っても良いかな」


「‥‥ああ」


レティスの、何処か真剣でありながら、何処か何かに縋りたいかのような声だった。その声に俺は咄嗟に答えていた。


「良かった。それじゃあ、後で」


俺の返事を聞きレティスは、安心したのかそのまま再びしかし何処か安心した表情で眠ってしまった。


「あ、おい?」


レティスは眠ってしまったが一方の俺はそろそろのぼせかけていたので、とりあえず上がることにしたが、流石にないとは思うがレティスがおぼれる可能性があったので一応体を洗っていたイシュラに一声かけておくことにした。


『イシュラ』


『え、な、なに!』


取りあえず近づくのは拙いと判断して空気を振るわせてイシュラの耳元に直接声を届かせた。原理としては糸電話に近いものだった。あれはコップとコップの底を糸で繋ぎ、振動によって相手に聞こえるのだが、これは俺の声が空気(糸)を振るわせてイシュラへと声を届けているのだった。しかしそれを知らないイシュラは驚きのあまり辺りをキョロキョロと見ているのが影の動きで分かった。


『大丈夫だ。これはイシュラのいる所に俺の声を届かせているだけだ」


『あ、そ、そう、なんだ。で、どうしたの?』


何となくイシュラの声音が沈んだ様に感じたが、すぐに持ち直したのかイシュラが聞いてきた。


『ああ、俺はそろそろのぼせそうだから上がるが、まだレティスが入っているからな、気に掛けておいてもらえるかとお願いしておこうと思ってな』


『ああ、そういう事ね。分かったわ』


『ああ、よろしく頼む。それじゃあ『ねえ、シルバ―』なんだ?』


いきなり俺の名前を呼んだイシュラに俺は驚きながらも、何か伝えたいことがあるのだろうと思い、イシュラの次の言葉を待った。そして、イシュラも何故自分が俺の名前を呼んだのか理解できなかったのか、何処か焦ったような感じで言葉を返してきた。


『あ、ううん、何でもないわ。取りあえずレティスの事は任せて、それだけよ』


『ああ、分かった。一応体には気を付けろよ?』


俺がそう言うと風の制御を解除する直前に小さくイシュラがありがとう、という声が聞こえたが、あえて聞かないふりをして脱衣場へと戻ったのだった。

何となく思いついたのを書いていると思った以上になりました。そして前半の部分は完全な妄想が入ってしまいました。申し訳ない。

今回は三分割版で投稿する予定です。最後の辺りにレティスが何故メイド服を着る様になったのかなどを書けたらなと思っています。ですが思い付きに頼っている分、内容がズレたりする場合があります。おかしいなと感じられた箇所があればご報告をお願いいたします。

次回の投稿は二週間以内の予定です。それでは、また次話で。

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