第三十五話 「恋せし少女と鍛冶師」
改めて見たけど‥‥半分寝ながら書いていたら自分の想像以上に‥‥甘い?けど、食事の後と言えば……あれですよね?
夕食を食べ終え(後片付けもしようとしたがメイド達に止めさせられ)た俺は、現在は四年の間に厳密に言えばリリィが家に来た翌日から作り出した湯船に浸かっていた。もちろん、頭と体を洗ってだ。
そして現在、温かなお湯が体を優しく包み、微かな水の浮力による無重力感によって思いっきり体の力を抜きクラゲの様に湯船の中を揺蕩う。そして空には晴れているので、そして排気ガスなどもないので自然と星と月明かりによって照らされて幻想的な夜空だった。
「はあ~、星を見ながら入る湯船。やっぱり風呂は命の洗濯だな~」
露天風呂に浸かりながら星を見る。爺臭いかもしれないが俺にとっては至福の時だった。
この世界では、お風呂と言えばお湯に布を浸して体を拭くのが一般的だったが、四年の間にした事の一つで、リリィがこの家に来た時、俺は思い切って石で周りを囲った浴槽を思い付き、試行錯誤をして家に湯船を作ったのだった。流石に軽い大工などはやったことはあったが一から湯船を作るのはやったことがなく、十数回程失敗した。それでもその失敗の中で改善点を見つけ、徐々に形にし、そしてようやく湯を張る浴槽が完成した。
だが次に問題なのは、湯を張るための膨大な水の量だった。風呂は一度に何十リットルもの水を使う。とそこで一旦行き詰ったが、そこは魔法を使えばいいと思い、エルに頼んで水魔法「アクア」のおかげで一時的に解決した。がそれではエルに負担を掛けてしまい、それは俺の本意ではなかった。理想は前世のような自動風呂だった。が流石にそれは難しいと思い直し、「アクア」の魔法陣を浴槽に刻んで魔力を流すと、あっさりと成功したが、水風呂になってしまったので、思い切って「ヒート」と「アクア」の幾何学模様の魔法陣を組み合わせて見た。結果は失敗で、せっかく作った浴槽が破壊された。
そこで更に試行錯誤をしたが、やはり属性が対極だったのが原因かは分からなかったが、結局浴槽の中心の床に横並びで少し間を空け魔法陣を刻み、魔力を流すと今度は干渉や爆発することなくうまく水が熱せられて、お湯になった。そして念の為に三十センチ程の大きさの自然に高濃度の魔力を内包し、魔力を再度注ぐことによって再度使用可能の石「魔石」を購入してその魔力で「ヒート」と「アクア」を使えるようにもしておいた。
「あ~、やっぱり風呂の魔力は抗えないな~」
そう言いながら空を見ていると仕切りの向こうから声が聞こえてきた。今俺が入っている風呂の間に仕切りを作り、その向こうにも風呂を作っており、そちらは女湯にしていた。そして聞こえてくるのはこの家にいる三人の少女たちの声。
「わあ、エルさん肌が綺麗ですね。」
「ありがとう。でも胸の大きさだとリリィに負ける」
「いや、エルさんは肌が私よりきれいじゃないですか」
「そうですよ、エル姉さま」
「何を言ってるのルヴィ。ルヴィだって胸もあるし、それに肌も綺麗じゃないの」
っと少女たちが互いにそれぞれを褒めている声が仕切りだけなので丸聞こえだった。そして微かに泡立つような音が聞こえる事から三人で体を洗っているのだろう。俺は内心でちょ~とばかり気になったが邪心を洗うために息を止めて潜水を開始した。
そして、シルバーが湯船の中に潜水を始めた頃、三人の美少女が互いに洗いっこをしている光景は、素晴らしかった。エルの白い髪は濡れた事で妖艶な輝きを、髪から肢体に流れる雫はその体に視線を誘導し、ルヴィの赤い髪は肌に豊かな胸に張り付き、そして健康的な肌は月明かりを受けて怪しく輝き、リリィの黒髪は対照的に白い肌をより白く際立たせており、そして少女三人の肌は湯気の影響か、ほのかに赤くなっており、それがまた妖艶な魅力となっていた。そして言っておこう、桃源郷はここに在ったと。
「それにしても、どうしたら二人みたいに胸が大きくなるの?」
エルのその問いは互いに背中を洗いあっている時だった。突然の質問にリリィとルヴィは不思議に思いながらもその質問に答えた。
「え、それは良く分からないですけど…でも成長期ですからこれから大きくなると思いますよ?」
「でも、私、胸の大きさは数百年は変化してない」
エルのその言葉を聞いた瞬間ルヴィとリリィは困ったとばかりに表情に困り気味な表情を浮かべた。
「ま、まあそこは個人差がありますし、それにまだ私たち子供ですし」
そして言った瞬間、リリィは後悔した。なぜならエルは自分達以上の年上だという、地雷を踏んだ事に気が付いたが、もはや言葉となって出た言葉を消すことは出来ない。
「私、あなた達より遥かに年上」
「‥‥…えっと」
「‥‥‥…」
そして、その場に沈黙が下りるのは必然であった。そしてその沈黙をルヴィとリリィは破る事が出来なかった。
「胸なんて関係ないわよ、みんな可愛い私の娘だもの」
そう言ってタオルで体を隠して浴場に入ってきたのは、この家の女主人にして、少女たちが思いを寄せている少年の母親である人物、リリフィアだった。そしてタオルで隠されているがそれでもタオルの上から分かるその容姿はまさにモデル体型で、出る所は出て、引っ込むところは引っ込んでおり、とても一児の母親に見えないプロポーションの持ち主だった。
そしてリリフィアは浴場に置いてあった木の椅子に腰を掛けると体を覆っていたタオルを外した。
「「「おおっ!」」」
その瞬間、リリフィアを見ていた少女たちが小さく、しかし確かに歓声を上げた。それはタオルを外して現れたリリフィアのプロポーションに対しての歓声の声だった。そしてリリフィアの登場によって先ほどの重苦しいかった雰囲気は完全に払拭されていた。
「あら、何か私についてるかしら?」
「いえ、その‥…」
「一体どうやったらそんな体になるのか」
「教えてください、お義母さん」
何やら義娘たちがそう言って来たことに対してリリフィアはどうしたのかと笑みを浮かべるが、もしその笑みを見たら男性陣は全員前かがみになっていただろう。湯気でしっとりし、髪が肌にくっついているリリフィアの姿はまさに大人の女の色香を身に纏っていた。
「あらあら、どうしたのかしら?」
そう尋ねて来てくれたリリフィアにエルたちはある人の事をその母親であり、髪を洗いだしたリリフィアに率直に尋ねた。
「「「シン(義兄さん)は私たちの事をどう思っていますか?」」」
「う~ん、それは流石に分からないわね」
「「「ですよね」」」
リリフィアから帰ってきた答えは、まあある程度予想していた通りの答えで、安堵も、そして落胆も無かった。流石に母親であっても息子がどんな思いをこの三人の少女たちに抱いているかは分かるはずもなかった。そう思いエルたちは体を洗い始めた。そしてそれを見たリリフィアは再び口を開いた。
「う~ん、でも何となくだけど。やっぱりあの子は貴女達を大切にしようと思ってるだろうし、でも貴女達を束縛じゃなくて自由で、一緒に居たいって思ってるんじゃないかな?それに、あの子は貴女達に平等には出来ないけど、区別はしていないと思うわよ?」
母親の勘だけどね?とリリフィアは言う事は言った後、体の泡を洗い流すとといつの間にか体を洗い終えており、そのまま湯船へ向かって歩いて行ってしまった。
一方残された三人の少女たちは先ほどのリリフィアの言葉の意味を考えていた。
貴女達を平等に出来ない。それは平等に接する事は出来ないという事なのだろう。人によって接し方が変わってしまうのは仕方がなく、その意味は分かったが、それよりも分からないのは区別をしていないという言葉だった。そしてその言葉をそのまま受け取るのならばそれは例え三人のうちだれであっても区別することなく接してくれ、大切にしてくれるという事だが。
(なんかそれはそれで悔しい)
その中で少女たちはそれぞれにそんな思いを抱いた。なぜならそれは大切であって、その少年にとっての特別な人に成れていないという事では無いかという事だった。そしてそれを解決する方法はただ一つ。それに数日後に学園へと行く今がベストだと気が付いた。
ならば後はそれを行動に移すだけだった。
(うふふ、シン、今日の夜は大変かもしれないわね。うふふ、それに孫も早く見たいしね)
そして火種を撒いた張本人は自分の息子が作った湯船でその疲れを取りながら娘たちを微笑ましく見守っていたのだった。そしてその頃、割と長い時間の潜水を終えて顔を出したシルバーの背中に悪寒のようなモノが流れた。
「うう、何かよからぬ事が起きるのかな?」
そう呟きながら俺は十分に温まったので浴槽を出て脱衣所へと向かった。その頃には先ほどの悪寒の事等すっかり忘れていたのだった。風呂上がりの因みに冷えた果物のジュースは美味かった事によって。
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そして、その日の月が闇夜を照らす深夜、三つの影がシルバーの部屋の前へと訪れていた。
「うう、勢いで来ちゃったけど、どうしよう」
「大丈夫です、リリィ。一人では無く三人であれば」
「うん、数は力」
そう、リリィ、ルヴィ、エルの三人だった。
あの後三人はそれぞれ何かしらの行動を今夜しようと決めたが、何をすればいいのかが分からず、結果リリィの部屋にエルとルヴィが訪れ、互いの考えを伝え、どうしたらいいかと相談しあった結果、三人で行こうという事になったのだった。一人で渡る赤い横断歩道は怖くてもみんなで渡れば怖くないという訳の分からない状態になった結果だった。
(うう~、三人なら怖くないって、勢いで義兄さんの部屋の前に来ちゃったけど…)
(((どうしたらいいのか分からない)))
そうしている間にも時間は過ぎていき、しかし今のリリィたちにとってそれはまるで永遠にも繋がるかのような時間だった。その時だった。
「なんだ、夜遅くに夜這いか?」
「「「ひゃあ!」」」
そして、気はつかないうちに扉を開けて立っていたのは少女たちの思いを募らせて、その部屋の主であるシルバーだった。そしてその人物の登場に少女たちは驚きのあまりその場に座り込んでしまった。
「お、おい?」
「あははは、驚いて力が抜けちゃいました…」
「ビックリですよ」
「うん、びっくりした」
しかし、とりあえず今は腰を抜けているとはいえ廊下に三人を座らせるのは申し訳なかったので俺は部屋にエルたちを入れた。因みに三人とも腰が抜けて立てなかったので俺が抱えでベットに座らせた。俺は椅子に腰かけると本題に入った。
「それで、一体こんな時間に三人で何をしようと俺の部屋の前に居たんだ?」
「う、それは‥…その」
「三人でご主人様の寝床に潜り込もうとしていました。」
「(うんうん)」
「ちょっ!」
リリィが恥ずかしそうに言葉を濁していると、それをぶち壊すかのようにルヴィがストレートに言い、エルもそれに追随するかのように頷いていた。そしてそれを見て俺は頭に頭痛を感じた気がしてこめかみをぐりぐりしてごまかしながら要約した。
「まあ、要約すると、三人で俺の寝込みを襲おうとした、って事か?」
「「はい(うん)」」
「‥‥‥‥‥‥…」
エルとルヴィは恥じらうことなく頷き、リリィは顔を手で覆っていたが、その手に隠された顔が赤くなっているのは想像しやすく、その頭からは湯気が上がっているかのように俺には見えた。いや、それ以上に俺が気になったのは
「なんで、夜ば、ええっと俺の寝込みを襲おうとしたんだ?」
「…それは」
何故エルたちが俺の寝込みを襲おうとしたのか、その理由―わけーだった。そしてエルとルヴィが互いに顔を見合わせ、再び俺を見た時その理由をエルが教えてくれた。
「シンにとっての、大切な存在になりたかった、から」
「それは一体どういう意味だ、俺は三人を大切に思っているぞ?」
「じゃあ、行動で示して?」
エルにそう言われても、今の俺が示せる行動はそう多くないし何より俺は困惑した。しかし俺を真剣な眼で見てくるとエルとルヴィ、そして指の間から見てくるリリィに対して行動で示さなければ彼女たちに不信感、不快な思いをさせてしまう。ならばやる事は一つしかない。
「分かった」
そう言うと俺は椅子から立ち上がりベットに腰掛けているエルたちへと近づいて行ったが、エルたちは期待するような目を向けて来るだけで逃げる事は無かった。
そして誰もが寝静まる月明かり中、俺と三人の少女達の影が重なり合ったのだった。
因みに理想郷はここに在ったとシルバーが感じた事をここに記しておく。
そして同時刻、ある町の鍛冶店にて。
「ふう、久々に遊びに来ないかな、シルバー」
一人の少女がそう独り言をつぶやいていた。
申し訳ない。イシュラが最後に、ほんのちょびっと登場になってしまった‥‥。まあ次話で登場出来たらいいかな、と思っています。甘くて申し訳ない。因みにこの話で本格的にハーレムが形成されました。
因みに正妻はエル、寵姫一号がルヴィ、第二がリリィです。
さて次はまあ今度こそイシュラを登場させれたら良いかなって思います。店もシルバーのおかげで繁盛し始めていますし‥…
次の投稿は、浮かべばすぐに出来ますが浮かばないこともあるのでまた二週間程の時間をいただきます。この作品を楽しんでいただけると嬉しいです。
それでは、また。




