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第三十四話 「帰宅と夕食」

熊肉‥‥食べてみたい。

リリィの腕試しも無事に終わり、疲れたのか迎えに行くとリリィはおんぶをしてくれと言って来たので俺としても別に構わないと思ったのでそのままおぶって森の入り口へと向かっていると疲れたのかリリィは眠ってしまいそして起こさない様に気を付けながら、入り口で待っていたエルと散歩から戻っていたルヴィと一緒に屋敷へと帰路についていた。もちろん返る道すがら何故リリィをおんぶしているのか等を聞かれたので俺がリリィに腕試しをしてリリィが疲れた結果だという事を教えると二人とも納得していたが機会があればおんぶをしてくれと約束させられたのはまた別のお話。


「お、もうそろそろだな」


「うん、今日の夕ご飯楽しみ」


「‥うん、シンの御飯は美味しい」


家が見えてきてエルとルヴィは今日の夕ご飯は俺が作る事を教えており楽しそうな表情を浮かべていた。ここ最近は主にリリィがご飯を作る事が多くなったが、偶に俺も料理をしておりそれがその日の夕食はどうなるのかというまた別の楽しみになっていた。

因みに今の料理のローテーションは主にリリィで→俺(ひと月に4.5回程→メイド(リリィが作らない日)の順になっていた。


「シン、今日の夕ご飯はさっきの「タイラントベア」の肉を使った料理にするの?」


そう、今日の夕飯のメニューはリリィが倒した「タイラントベア」の肉を使った料理を作ろう思って血抜きしたタイラントベアから食べる部分の肉を解体して他の部分は土に埋めて供養し、「風神の天廻」にしっかり収納済みだった。そして材料から予想は着いただろうが今日の夕食は熊肉を使ったものだった。


「ああ、俺が知っている料理の中に熊肉料理があったのを思い出してな。久々にそれをみんなに振舞おうと思ったんだよ(前世という知識の反則はあるがな!)」


内心でそんな事を思っていると背中で眠っていたリリィが身動ぎして、見えないが欠伸を噛みしめたような声が聞こえた。


「ふあああ‥‥…あれ…義兄(にい)さん‥‥ここは?」


まだ寝ぼけているのか、目元をこすりながらリリィは尋ねてきた。起こしてしまったがまだ半分程眠っている感じだったし、それに家までもう少しの距離だったし、ついでによく頑張ったから俺はもう少し寝かせてあげることにした。


「ああ、家までもう少しあるからまだ寝てていいよ?」


「‥…はぁい、そうしま‥‥ふ」


そう言うとリリィは再び俺の背中に体重を預けるとそのまま再び可愛らしく寝息をたて始めた。どうやら俺の背中で安心したようだった。まあ俺としても昔みたいにリリィをおんぶ出来るのは懐かしく感じていたので、あと少しとは言えおぶって居たいと思っていたのでちょうど良かった。それに背中に抱き着いてきたお陰でリリィから女の子特有匂い柔らかさが鼻と触覚を刺激して来ていたが理性を総動員し俺は誘惑に耐えた。なぜなら羨ましそうにこちらを見ている計四つの眼があった。


「むぅ、リリィだけずるい」


「そうですよ、ご主人様(マスター)。私にも絶対して下さい」


「わ、分かった分かった。ちゃんと機会があればおんぶしてあげるから」


俺がそう言うとエルとルヴィは約束ですよと念押しして来たので俺は勢いに押されて頷くしかなかった。女の子の勢いにはどうしても勝てないとこの四年で実感していたことを改めて俺は感じていた。


(これが尻に敷かれるという奴なのか?)


前世では特にモテる事もなく彼女もいなかった俺としてはその部分に関して良く分からなかった。しかし今ではそれでよかったとも感じていた。下手に付き合っていて苦手意識があればエルたちとこんな風に過ごす事も無かった可能性もあるのだから。そう思うとかなり幸運と言うべきなのかもしれなかった。

そしてそうこうしている間に俺達は家へと到着したのだった。


「よし、それじゃあ俺はリリィを部屋に寝かせてから厨房に行くから、エルたちは適当に時間を潰しておいてくれ」


「分かった」


「分かりました、ご主人様(マスター)


エルはそのまま、ルヴィはまた後でと言うと家の奥にある手洗い場へと歩いて行った。

この家に来てから外に出て帰ってきたらまず手を洗うと俺が言った事もあり帰るとみんなまず最初に手を洗うようになっていた。そうしてエルたちは手を洗いに行ったので俺は背負ったままのリリィ寝かせるためにを二階にあるリリィの部屋へと向かった。

二階にある部屋は主に俺と母さん、そしてエル、ルヴィ、リリィの部屋となっており、メイド(使用人)の部屋は一階と分けられておりその部屋は全て南向きで日が入る様に作られていた。

そして俺はその内の一つのリリィの部屋の前に到着したので一応部屋の主は背中で眠っていたがノックをして扉を開けた。

部屋に入ると目につくのは淡い色の絨毯が敷かれており、部屋に入って右側にベットが置いてあり、その上には手作りと思しき手乗りサイズのぬいぐるみが幾つかあり、反対の左手には机がありその机の上には裁縫箱もあったのでどうやらあのぬいぐるみはリリィの手作りのようだった。


「ふう…っと」


あまり見ても悪いと思い俺はそれくらいにしてリリィをベットに寝かせた。そしてそのまま立ち上がろうと

した時、袖が誰かに引っ張られたのを感じそちらに視線を向けるとリリィが服の袖を握ていたようだった。

普段であれば目が覚めるまで一緒に居てやるのもやぶさかではないのだが、今日は夕ご飯を作らなければならないので一緒に居るわけにもいかなく、


「‥…仕方がないか」


そう言うと俺は離そうとしないリリィの手を離すのではなく、今自分が着ていた服を脱いで抜け出す事にし、そしてそれは見事に成功した。出来れば服を抜き取れればいいなと思ったが、そこに対しては上手くいくこともなく、脱いだ服はリリィが抱き込む様にしてしまったので結局回収することは出来なかった。


「はあ、仕方がないか」


そう言いながら俺は音を立てない様に部屋から出ると、廊下で「風神の天廻」に入れていた予備の服を取り出して着ると、その足で厨房へと歩き出した。

そして厨房に着いた俺は手洗いなどをした後、綺麗に洗った板の上に必要な野菜も用意して、「風神の天廻」の中に入れておいた鉄鍋を取り出した。


「よし、じゃあ始めるか」


そう言ってまず俺は鉄鍋のふたを開けて中の状態を確認した。その中には赤ワイン、タマネギと同じ味と食感のオニョンと同じくニンジンと似たキャロッツとつい最近市場で見つけたローズマリーに似た感じの香草と幾つかのスパイスを入れてあり、そこに先ほどの「タイラントベア」の肉を入れて漬けておいた肉を取り出した。そしてこれはまた最近分かったがどうやら「風神の天廻」の中に収納されたものは個別に、一つだけだが時間の操作が出来る事だった。そしてそのお陰で家に戻るまでの間に鍋の中に入れておいた「タイラントベア」の肉は一日ほど経過した状態になっていた。


「さてっと次は」


そして次に俺はフライパンを取り出して油をを敷くと火魔法「ヒート」を刻印した鉄の板に描いた魔法陣に魔力を流し、その上にフライパンを置き、徐々に表面の温度を上げ、温まったフライパンの上に鍋から取り出し、一口大程の大きさに切った肉を焼き色が付くまで焼く。肉を焼いていると熊肉独特の匂いと香ばしさが鼻をそしてお腹を刺激する。そして一旦肉を取り出すと野菜を入れしんなりするまで炒め、野菜がしんなりすると先ほどの鍋に熊肉と共に戻して鍋に蓋をする。


「そして次は鍋に蓋をしてっと」


風魔法「プレッシャー」は風による圧力を相手に加える、具体的に言えば物を潰す魔法だが、それをうまく威力調整して刻印した鍋を「ヒート」の上で煮込みつつ、開かない様に蓋をした鍋に刻んだ魔法陣に魔力を流し鍋外部と内部に「プレッシャー」をかける。


普通の鍋でこれをやれば爆発するか、隙間が出来るが鍛冶師のイシュラに頼み作ってもらったこの特製の鍋を使えば爆発する事も「プレッシャー」によって隙間も無くしているので心配も無かった。蒸気を逃がす穴も蓋に開いているし、蓋が飛ばないように「プレッシャー」で抑えているから安全だ。

そして出来るまでの間にサラダなどの準備にも取り掛かる。因みにこの四年間の間に家の中の、特に調理場に関して言えば大幅に変化した。最初は「フレイム」で起こしていた火も「ヒート」を刻印した魔法陣に魔力を流す事で楽に、鍋も俺が使っている奴と同じものをイシュラに作ってもらい家に常備したお陰で料理の時間の短縮化を図れたりとまあ、色々な変化があり、圧力鍋もイシュラの所で売り出されて人気になったお陰で店に客が来るようになり、俺が知っている限りの調理器具も作って貰ったりしていた。


っとそんな事をしている間に時間が経っていたのか、「ヒート」と「プレッシャー」を解いて蓋を開けるとそこにはいい感じになっており、一旦野菜を取り出し、そこにフライパンで焼き色が付くまで炒めたベーコンを入れ、縦切りにした野菜と一緒に入れ、再び出力を調整した弱い「ヒート」で煮込む。

そしてキャロッツに火が通ったら、少し深い皿に移し、緑野菜を加えれば。


「よし、赤ワインの熊肉野菜煮込みの完成だ。…あれ?どうしたんだ?」


気が付くと厨房の入口あたりでエル、ルヴィそして起きたリリィ、そして母さんもいた。


「‥‥エルたちはともかく、なんで母さんまでいるの?」


そう、なぜかエルたちに交じる様に母さんも交じっていた。その容姿は四年たっても美人のままだった。


「え、だって今日はリリィじゃなくてシンが作るって、それも扱いが難しい「タイラントベア」の肉を使って作るって聞いたから仕事を早めに終わらせて見学させてもらってたの」


「‥‥手が空いてるなら手伝ってもらえるかな?」


結局、俺がこの状況を打破するのに打てる一手はこれだけだった。


そして料理は出来上がっていたのでそのままメイド達も一緒に食堂へと運びこみ、運び込み終わるとみんなが席に座った。そしてそれを見て母さんが音頭を取った。


「皆席に着いたわね。それじゃあいただきます」


「「「「「いただきます!」」」」」


そうして俺達は夕食を食べ始めた。そしてみんなが最初に手を付けたのはやはりと言うべきか「タイラントベア」の肉で作った赤ワインの熊肉野菜煮込みだった。そして一口食べた皆の反応は‥‥‥


「「「「「美味し~い!」」」」


「よかった」


味見をして大丈夫とは思っていたが皆が美味しいと言ってくれたことに俺は一まず一安心し、ようやく俺も一口食べれた。あ、確かに美味い。

圧力で硬かった肉が解され、ほぐれた所に赤ワインとスパイスの味が入り込んでいていい感じに柔らかく、味が染み込んだものになっていた。


(今度は熊肉を燻製か七輪でも作ってもらってそれで焼いてから入れてみるのもありかもな‥‥)


自分で作った料理をそう評価し、次はこんなのを作ってみようかと考えていると、


「「おかわりっ!」」


早くも一杯目を完食したエルとルヴィがおかわりを言って来たので後で食べるメイドの人たちがおかわりを注いでもらうと貰うとまた凄い勢いで食べ始めた。一方リリィと母さんはいつもより食べるペースは早いがゆっくり味わうかのように食べていた。


「あらあら、シンたらまた腕が上がったんじゃない?」


「はい、美味しいです、義兄(にい)さん!」


どうやら母さんとリリィも気に入ってくれたようだ。こうしてその日の楽しい夕食は終わりを迎えたのだった。因みにその後俺が作った料理を食べたメイド達が朝大変美味しかったと言ってくれた事がさらに嬉しかったという事を追記しておく。






思いついたので書かせていただきました。いや~シウ自身料理はまあ、出来ないよりは出来る方なのですが(やる気がない)、熊肉は食べた事がないんですよね‥‥どんな味なのやら。

さてこのお話はタイトルの通り、家での夕食をメインに書かせていただきました。次話の内容は‥‥イシュラを登場出来たらと思っていますが構想は出来ていませんが、楽しみにして下さい。

では、また次話で。前回と同じく二週間ほどで投稿できると思います(出来たらいいな…)

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