第三十二話 「国王との話し合い」
前半、国王とリリフィアの話ですけど‥…ムズイ。
私事ですがPVが四万超えました。正直嬉しいです。
現在、俺と母さん、エルたち(エル・ルヴィ・リリィ)を含めた五人と向かい合うようにして一人椅子に腰かけているのはリリィの父親にして、魔法に関しては大陸随一と謳われるエクセリーナ魔法王国の国王、アルテス・E・フリードが目の前に座っており、今も母さんと話を続けていた。
「となると、今年も魔法学院の入学者は貴族だけじゃなく平民も才能があれば入学させるという事を議会で認めさせた訳なのね?」
「ああ、貴族ばかりではこの国は立ち行かない。ならば、平民であろうと、貴族であろうと才能が学院に入学させるというのは私としては間違った判断ではないと思う。それに他の二か国、ゲルネーアとナトゥーア
からの入学も同じようにするよう議会を通した。流石に頭の固い上級貴族を黙らせるのは苦労した。だが」
「リリィの件を問いたださない代わりに、議会で意見を飲ませたんだでしょ?そうでなければ頭の固い、特に侯爵辺りの老害は首を縦に振る事は無いはずないもの」
「ははは、ああ、確かにな」
何やら母さんと話しているのは、リリィと同じく同じ紅い瞳、そして金色の髪を短く切った優男風なしかしワイルドな感じの風貌の国王、アルテス王で、二人は腹黒い会話に花を咲かせていた。しかし俺はその話を右から左に聞き流し、エルとルヴィは再びお菓子を食べ初めていた。流石に途中リリィの名前が出て来た辺りの話は聞いていたが、それでも途中で頭が痛くなったので聞き流すことにし、そして現在進行形で俺の服の裾を握ったまま離そうとしないリリィに意識を傾けた。
「‥‥なあ、リリィ?そろそろ腕を離してもらえないかな?」
「‥…(フルフル)」
そう言って先ほどから、この椅子に座った時から握ってきていた腕をそろそろ離してもらえないかと尋ねているのだが、それでもリリィが腕を離してくれることは無かった。いや寧ろ先ほどより悪化し、更に腕を離すまいとギュッと握りしめたのだった。
「ははは、すっかりシルバー君を気に入った、いや好いているな‥…これならば」
そして俺はなぜリリィがこれほどまでに俺の手を離すまいかとするようにし、それを見たアルテス王は何か覚悟を決めた目でこちらを見て、そして母さんへ視線を向けたと同時にこちらへと頭を下げてきた。
「どうか、娘を、リリィをリリフィア、あなたの所に置いてもらえないだろうか」
言葉の最初にアルテス王の口から出たのは、まるで予想もしなかった言葉だった。それを聞き俺、エル、ルヴィ、そしてリリィ自身も驚いた表情を浮かべていたが、その中でただ一人母さんだけが驚く事無く平静でそっとテーブルに置いていたカップを口にし、そっとソーサラーに戻すと口を開いた。
「そう、まあ貴方が私をこの城に呼び寄せた事で何となく予想はしていたけど、貴方はそれでいいの?」
「ああ、今の私の力ではまだ老害と太刀打ちできない。力ならば負ける事は無い。だが今の私には情けない事だが俺は力はあっても権力はまだあまりない。そして今の俺は彼女とのその間に産まれた、アルシェラ、リリィの姉を守るだけで手一杯なのだ。ふ、まさか国を守るための十二の剣の内の幾つかの剣が王に向かって突きつけられるとはな。無様なものよ」
何処か自嘲気味に言い、そこに居たのは、一国の王ではなく、自分が力を持たないが故に子をひどいめに合わせてしまった事を悔いている一人の父親の姿だった。そして母さんはそんなアルテス王に言葉は掛けなかった。下手な慰めは、時として人を傷つける刃ともなりかねないと理解していたからだった。
「‥‥分かったわ。この子は責任を以て私の所で預かるわ。それが今の私に出来る、あの時貴方の思いを断った、それでもあの子との幸せを願った私が出来る事だもの。大丈夫、私だけでなく、私の家族になる子だもの、何が何でも守って見せるわ。それに」
母さんは間を空ける事無く言葉を続けた。
「貴方は自分と相手との実力の違いを感じながらも自身で考えた結論が例え自分達から引き離すものでも、それが最善と娘の為だと思い選択したのなら、貴方はそんな自分を責めないで。それは貴方が自分は間違っていると認めているようなものよ」
「‥‥…ありがとう」
母さんの言葉を聞いて、短く言葉を返したアルテス王の声音は何処か湿っぽいような感じがしたが、恐らく気づいていた母さんと同じく俺はそれは聞かなかった事にした。
「すまない、湿っぽい感じになってしまったな。」
「いいえ、こちらも気にしていないわ、それに、貴方が負けっぱなしのはずがないものね?」
「ああ。奴らにキッチリこの恩を返させてもらうとするよ」
そう言って頭を上げたアルテス王の顔はまあ、目元が若干赤かったりしたが、それも気にしなければどうとでもない程で、最後の母さんの言葉に目元が紅いながらも何処か不敵な笑みを浮かべたアルテス王を見たが俺はスルーした。何となく腹黒い事がありそうだと直感で理解したからだった。そして、これがリリィが家に来るようになった大雑把な経緯だった。
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「あの時は驚いたな‥‥」
その時の事を思い出しながら俺はリリィが持ってきてくれたお茶を飲みながらそう独り言ちた。まさか城に呼ばれて一国の王女を預かる事になったのだから。しかしそのすぐ後、城から家へ戻る馬車の中でリリィからされたカミングアウトの方がよっぽど衝撃的だった。小さな声でリリィが尋ねてきたのだ。
「あなたのぜんせでのなまえは、たつみやはやとではないですか?」
と。
まさか前世での自分の名前を聞かされることになるとは予想もしてなかったからだ。しかしこの時幸いにも小さな声でリリィが言って来たので周りに聞こえる事は無く、そして俺も驚きのあまり声が出ていなかったのが幸いして母さんたちに気が付かれる事は無かった。しかし俺は少女に尋ねて見た。
「‥‥どうしてそう思ったんだ?」
「わたしは、あなたのいもうとでした。そのときのわたしのなまえは、あかね、たつみやあかねでした」
リリィの口から聞いたその言葉の内容は、俺の予想を通り越してもはや、俺は一時的に考える事を放棄したほどだった。
(まあ、それでもあの場で、なんとなく母さんに俺が転生者だと気が付かれた可能性もあったかもしれなかった。今まで普通じゃないことをしていたからな。それでも何となく気づいたとしても母さんは「それがどうかしたの?私の子供である事に変わりはないわよ?」って言いそうだしな)
四年前の出来事を考えながら、俺はそんな事に考えを巡らせてながら寝っ転がって空を眺めていた時だった。視界に
「義兄さん?どうかしましたか?」
そんな風に四年前のあの日の事を思い出していると、俺が黄昏ているように見えたのか、リリィが声を掛けて来た。別に黄昏ていた訳では無かったが、ふと一人だと何となく寂しいかと思い、リリィにも今まで思い出していた事を話すことにした。因みに俺は少し休憩がてらに横になっているが、少し離れた所ではエルとルヴィがじゃれ合いの様に鍛錬がてら遊んでいた。それでも時折地面が爆発したり、炎があたりの空気を焼き尽くしていたが、それでも今の二人の本気を知っていれば遊びの範疇だった。
「いやな、四年前の、城での事を思い出していたんだよ。何せ城での事も衝撃的だったが、帰りの馬車の中でリリィに言われたのが衝撃的だったからな、そうだろ、明音?」
「やめてください。義兄さん。いえ、覚えてくれている事は嬉しいんですけど、今の私はリリィ―ナ・E・フリードで、お義母さんとお父さんがが決めた、貴方の将来のお嫁さん一人ですよ?」
「ああ、そうだったな。にしても母さん、なんであか、じゃなかった、リリィと婚約をあの場で取り決めたからな‥‥」
そう、城を出る際にリリィの実の父親であるアルテス王と何かしらの話をしていたのだが、それを屋敷に戻って尋ねて見ると、その内容はリリィを将来の自分の娘に、息子である俺の嫁の一人にする事の了承を取り付けていたのだった。そしてアルテス王もそれを喜んで了承してくれたと母さんが言っていたのを今でもよく覚えている。そして俺はどうしてそのような事をしたのかと尋ねると母さんは一緒に居たリリィを見て、そして言った。
「え、だってリリィちゃんはシルバー、貴方に恋しているわよ?」
「‥‥‥は?」
母さんからのその答えに俺は思わず数秒間その場で思わず惚けてしまったが、咄嗟に横に居たリリィを見るとその頬は微かに赤くなっていた。そしてそれは母さんが言っている事があっているとリリィ自身が物語っているものだった。如何に前世で義妹だったとしても、それはあくまで知っている者同士の事で、言ってしまえば過去の事だった。そして結局婚約が決まったという事を覆すことは出来なかった。母さんに既に二人も婚約者に近い状態(うち一人は確定)なのにだ。どうやら貴族では重婚に違和感がないらしい。しかしそれよりも、
「リリィ、あの時…絶対俺の事を知っていただろ?」
「‥‥‥お二人とも頑張ってください~!」
何となくスルーされた気がしたが、別に今はどうという事は無いし、差し迫った問題はなかったので見逃すことにしたのと同時に地面が爆発し、エルが吹き飛ばされた。そしてエルが反撃に移ろうとした瞬間、それを認識した瞬間俺は魔力で肉体を強化し、宙を舞うエルに向かって飛び出していた。
「くっ、やりますね。ですが!」
そう言うとエルは片手を上に挙げると、その腕を中心に風が巻き起こった。最初は弱かった風の勢いも、強さも増していき、それは小さな竜巻となる。そしてその竜巻の中に小さく存在を主張する光が瞬いていた。
「風雷」
無詠唱でエルがその手を地上に居るルヴィに向かって未だ晴れていない砂煙越しに放つ。その瞬間、地面に向かって渦を巻く竜巻とその中を走る雷がルヴィに向かって放たれた。流石に威力は落としているが、威力を落としたところで地面に当たれば二メートル程の穴を開けてしますのは請け負いだった。流石にこの程度の威力であれば今のルヴィでも弾く事は出来るだろう。だが俺個人としてはそろそろ切り上げて家に帰ろうと思っていたのだ。
何せ、後一週間もすればエクセリーナ随一の魔法学院、「ヴァルプルギス」への出発する日となるのだ。それ故に、如何に回復、治癒が早いし、治癒魔法が使えるとはいえ傷を負うのは得策ではないと俺は判断した。そして、丁度ルヴィとエルの魔法の中間地点で俺は風を魔力で固定して、足場を作った。
そして、無名の刃抜きされた剣を腰だめに構えると火属性の上級魔法「獄焔」を剣に纏わせた。
「えっ!シン避けて!」
そしていきなり俺が魔法の射線上に現れた事に驚いたエルは回避するように言って来たが、俺はそれに構うことなく、更に「獄焔」を強化し、剣に納まりきらなかった火の粉がまるで花弁が散って行くかのように舞った。
「龍牙炎裂」
俺は自身に迫ってくる風と雷のコラボの魔法に対して剣に纏わせた炎を打ち出した。
撃ち出した炎は赤い牙を持った、西洋ではなく、東洋の蛇のようなドラゴンとなり「風雷」とぶつかり合った。ぶつかり合った瞬間、急激な温度の変化に辺りは荒れ狂ったが、それでもエルは手加減をしていたおかげで炎の龍は風と雷を食らいつくし、そのまま姿を消した。
「よし、これでいいかなっと」
エルはいくら手加減をしていたとは言え自分の複合魔法を撃ち消された事に、ルヴィは自分以上に強い炎を使ったシルバーに驚きの表情を浮かべているを見て、俺は腰に剣を納めるとエルとルヴィの両方に聞こえる様に言った。
「よし、二人とも、今日の鍛錬はここまで」
俺はそう言うと風を魔力で固め作っていた足場を解除してそのまま地面へと自由落下し、膝のクッションで衝撃を和らげて着地し、エルは風の魔法で風を操作してゆっくりと地面へと降り、そのままこちらへと歩いて来ており、ルヴィはリリィと一緒にこちらへと向かって来ており、リリィの手には大きめのバスケットと草の敷物を持っていた。そして俺はそれを見て言った。
「よし、帰るぞ」
俺がそう言うとエル。ルヴィ・リリィが頷くのを確認すると、俺達は家に帰る為に下山を始めたのだった。
ああ、色々なものが入り混じって、後体がボロボロなので腕が思うように動いてくれない‥‥
ふう、さてどうにか二週間以内に投稿が出来ました。今話の内容は四年前にどういう経緯でリリィがシルバーと一緒に暮らす様になったのかを書きたかったので書いたのですが‥‥ここでも実力不足、文章力不足が露見してしまう内容になってしまいました。申し訳ない。
次の話ですが、一応次の話は屋敷での話を書こうかなと思っています。楽しみにしていただけると嬉しいです、それではまた。次回の投稿も‥‥浮かび次第ですが二週間以内に出せたらと思っています。では




