第三十一話 「模擬戦・昼食」
ふう、思いつきましたので投稿です‥…休みは最高~です。6/5に一部内容を変更しています。
追記;四年だと何となく微妙に感じたので四年から六年に変更しています
国王と衝撃的な出会い方をした時から凡そ六年ほどたち、俺、龍宮もとい、シルバーは今日も変わる事無く日常的に早朝の鍛錬を山で続けていた。それは習慣になったのもあるが、それ以上にあの時戦たカルアスをそしてその他にもいる教会と戦うために力を付けるためだった。それにしても俺が戦った後、こちらの居場所を特定して襲い掛かって来るかとも思っていたがそんな事は無く平和に鍛錬をしていた。
そして、そんな俺の顔のすぐ横を風の塊が取り抜けた。
「く…なかなか当たってくれないっ!」
「そう言われると、そう簡単に当たる訳にはいかないなっ!」
そして、現在エルとルヴィと一緒に俺は鍛練をしていた。
今は一対多数を想定して模擬戦をしており、エルとルヴィがタックを組み、俺と戦っていた。
最初は個人の能力が突出している俺たちは個々で力を伸ばす様にしていたが、一年ほど前から鍛錬に模擬戦を組み込み、ほぼ毎日一対多数の戦闘を考慮して、また相手の動きを見る視野を広げるために行っていた。
「ご主人様ご覚悟っ!」
俺がエルが放ってくる初級風魔法「ウィンドボール」を同じく「ウィンドボール」で相殺している中両手に髪と同じ籠手を装備したルヴィが接近してきていた。剣以外でもある程度格闘なども出来る様になったが、やはり一日の長があるルヴィに懐に入られると今の所やられているのが俺の現状だった。
だがそれは魔法無しでの事だ。
「そう簡単にいくかっ!」
「え、きゃあっ!」
俺を殴ろうとしたルヴィは手加減はしているが俺は咄嗟に「風鎧」で体の周りに風を鎧の様に身に纏わせ事によって発生した風にルヴィが俺の体から数センチほどの辺りで籠手はそのまま風圧によって押し返された。そして俺は間髪入れずに態勢を崩したルヴィに足で蹴りを放とうとしたがそこに間髪入れずにエルが特大の火魔法「ファイヤーボール」を撃ってきた。それもルヴィに当たらない様に調整されて撃ってきているので、このままだと確実に俺に当たるだろう。なのでここで俺が取る行動は一つ。
「斬るっ!」
右手ではなく、左手で持っていた刃を潰してある剣に魔力を流す。剣に流す魔力はすぐに霧散して行くが俺は構うことなく魔力を流し続け、魔力を流しっぱなしにしている剣で「ファイヤーボール」を切り裂いた。
だが俺は即座に剣を体に引き戻した。なぜなら俺が切り裂いた「ファイヤーボール」の後ろからエルがその間から姿を現したからだった。だが俺に焦りは無かった。もちろんそう来る可能性も想定していたからだった。
「そう来る予想は出来ていた」
「そう、でもこれはどう?」
エルが手をかざしたその瞬間、エルの後ろには「アクアランス」が既に待機していた。そして俺は咄嗟に後ろに下がったがその瞬間、足元に魔力が滞留している事に気が付きエルが魔法を仕掛けて誘導されていたという事が分かったが俺はもうその上に飛んでしまっていたのでどうしようも出来なく、後の祭りだった。
「ズッドーン」
エルの可愛らしくそう言った瞬間、盛大な土煙と同時に俺が立っていた地面が爆発し俺はその爆発に文字通り空に身を躍らせる結果になった。
~~~~~
「あ~、ひでぇ目にあった…」
体を起こして全身に土やら砂やらで汚れた服と髪に着いた土を落としていると近くに居たエルが最初に近づいてきて、その後、俺が吹き飛ばした(蹴り飛ばした)ルヴィが俺の事を心配して近づいて来てくれた。見た感じルヴィにも目立った外傷などは無かった。
「ご主人様~」
「シン、大丈夫?」
そう言って二人で俺の全身に着いた土やほこりを落とそうとしてくれたが、俺は大丈夫だと手を振るとそのまま大雑把に頭や服に砂埃を落とすと先ほどの模擬戦闘の反省会を始めた。
「う~ん、やっぱり接近戦で戦いながらも後方の魔法の発動の感知なんかはまだまだ難しいな…」
そう言いながら俺は自分が先ほどエルが仕掛けていた「アースボム」の存在に気が付けなかった事を反省していた。そしてエルは本当は遠距離からの魔法だけで倒すつもりだったようだがそれが結局接近して罠を張る事しかできなかった事を反省し、ルヴィは近接格闘以外にも扱える火属性と風(と言っても俺とは逆の火がメインで風がサブ)の魔法を織り交ぜながら戦った方が良かったというふうに各々反省を見つけては今後の課題にしようとひと段落した時ルヴィは気になっていたのか俺に尋ねてきた。
「私としてはご主人様に何故拳を逸らされたのかが気になります、あれは一体どうやって?」
「ん、それは私も思った。あの時魔法が発動する予兆の魔力の流れが少しも無かったから驚いた。あれは、どうやったの?」
どうやら気になっていたのはルヴィだけではなくエルも気になっていたようだった様なので俺はエルたちも扱えるようになればもしもの時に身を守る手段に使えると考え、教える事にした。
「あれは簡単に言えば大気を流れる風を纏って、その風の流れや勢いを操作して、ルヴィへの場合は強い風を一瞬吹かせて拳の威力を弱めた瞬間を狙って拳の横合いから強い風を流す事によって攻撃を逸らしたんだ。それで、なんで魔法の発動の予兆とされる魔力の動きがなかったか、それはあくまで俺は周囲の風を操っていただけで、自分で風を作り出していないからなんだ」
「「?」」
二人揃って頭を傾げられたことに俺は改めて人にうまく説明する事が出来ないという事に内心でショックを受けていたが、それをおくびにも出さずに、ヘタながらも少しでも分かりやすいように実際にしながら二人に説明を始める。
「ええと、まずはやりながら教えるから見といてくれ」
俺がそう言うと二人は頷くのを見て俺は先ほどした事を改めて再現する事にした。
「まず最初に魔力を周りに流れる風に馴染ませるように拡散させる」
そう言って俺は少しづつ分からない程度に魔力を放出し、その魔力を辺り一帯に、自分の領域を作り広げるようにして範囲を広げていく。それは注意深く感覚を研ぎ澄まさねば感じ取る事すら難しい程の魔力だった。
「それと、今の状態の注意点だが、辺りに魔力を放出しても魔力は霧散するから常時魔力を放出していないといけない。そこを覚えていてくれ。そして」
俺は辺りに拡散させた魔力を風へと変換するイメージをすると辺りに漂っていた魔力が風となり、辺りを吹き荒れた。
「周囲に拡散した、いや、体の周りに拡散していた魔力を風に変換し、風の鎧を形成して、その風の風圧でルヴィの攻撃を逸らしたってわけだ‥‥分かった?」
「‥…何となく」
「‥‥…」
どうやらエルは俺が言いたいことが何となく分かったようだが、ルヴィはいまいちよく分からなかったのか、無言で首をかしげていた。そして、そんなルヴィに俺の言いたいことが分かったエルが耳打ちで教え始めた。
「だから‥‥を‥‥に薄く‥‥て魔法の‥‥を感知されない様にして魔法を使ったって事だよ」
「ああ、そう言う事ですか」
どうやらエルの説明のおかげでルヴィも俺がどうやって察知されずに魔法を発動したのかが分かったようだ。まあめっちゃ簡単に言えば、体の近くに散らしていた魔力を風に変換して、その風圧で攻撃を逸らしたのだ。
「でも、これは練習しないと難しい」
「…ですね。難しいです。周りの状況にも左右されますしね」
早速試してみたエルとルヴィはそう口々に言った。そう、辺りに魔力を放出することは出来ても、その放出した魔力はいわば、アクセルを吹かしたままハンドルを離した暴れ馬のような状態で、繊細な魔力操作と何よりイメージが一番大切なのだ。
そして、全属性魔法を扱えるエルを推しても初見ではなかなか上手くできず、またそれはルヴィも然りだった。そしてそんな時少し離れた所からこの四年間一緒に暮らす事になって一緒に暮らしてる少女の声だった。
「兄さん~!エルさん、ルヴィさん~!、御昼ごはんを持ってきたのでみんなで食べませんか~!」
そう言って来た声の方を見るとそこには木を編んで作った籠を持った、黒い髪に赤い瞳を持つ、俺が盗賊から助け出した少女。
この国、エクセリーナの第二王女にして、なんの偶然か、元の世界での義妹でもあった少女、リリィ―ナ・E・フリードが立っていた。
そして俺はリリィの姿とその手に持っているやや大きめの籠を見て、もう昼だという事にようやく気が付いた。そしてそれに気が付くと猛烈に腹が減ってきた。そしてそれはエルとルヴィも同じだったのか、お腹を押さえ、視線はリリィが持っている籠へと向いていた。そうなればこれ以上鍛錬をする事を切り上げる事にした。
「よし、それじゃあリリィが持ってきてくれた昼飯を食べるとするか」
俺がそう言った瞬間、エルとルヴィはどちらともなく、まるで競争するかのようにリリィの元へと爆走した。それも身体能力を強化してまで。
「‥…そこまで腹が減ってたのか?」
俺はそう独り言ちながらエルたちとは違い、ゆっくりした普通の速さで歩いて近づいて行く。そして近くに来たときには既に地面に草を編んで作られた敷物が敷かれており、バスケットの中から持ってきた料理を次々と出していた。
エルとルヴィが居る事も考えられてか、その量を例えば、飲食店で出されるセットが一食分だと換算すると、今目の前に置かれているのは3.40食程の量があった。
そして置かれているのは定番のサンドイッチ、じっくり焼かれたロースト肉、そして新鮮な野菜のサラダに、果ては煮込んだ肉がほろほろになるまで煮込まれたビーフシチュー如き(いや、本当にそっくり)まであった。
この六年の間にリリィは前世でも家事、特に料理が得意だったので、屋敷でめきめきと料理の腕を上達させ、今では屋敷のメイド達から味見を頼まれるほどになっていた。
そしてリリィは時折前世で作っていた料理をこの世界ふうにアレンジして振舞ってくれた。もちろんその際は俺もリリィいやリリィの前世、俺の義妹、龍宮明音には劣るが普通から見れば上手い部類に入っている俺も手伝った。
そして、この世界で作るうえで必要な材料や香辛料をもって最初に作れたのがこのビーフシチュー擬きだった。
そして、そんな事を俺が思っている間に料理を並び終えたリリィがエルがルヴィが俺を見て来ていた。そのお陰で俺はまだ立ったままだという事に気が付いた。
「ああ、すまんな、少しは手伝えばよかったか?」
俺がリリィに尋ねるとリリィは笑みを浮かべながら首を横に振った。
「いえ、大丈夫です。こんな事で兄さんの手を煩わせるわけにはいかないですし、何より私がやりたかったことですから」
「そうか」
そう言われてしまえばこちらから言える事は無く、俺は靴を脱いで草で編まれた敷物の上に腰を下ろした。
そして俺が手を合わせると座っている皆が同じように手を合わせた。元々は前世での習慣で、食べる前に生き物に感謝する意味を込めてほぼ無意識にやっていたが、リリィが家に来てからの四年間、何時の間にやらエルとルヴィも手を合わせて食べる様になってしまっていた。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
俺が言った後にエル・ルヴィ・リリィが唱和し、そしてエルとルヴィはまるで最初から狙っていたとばかりにロースト肉から手を付け始め、俺はサンドイッチを、リリィはサラダを小皿にとって食べ始めた。
「あ、私のお肉!」
「‥‥早い者勝ち」
「うう、エルさんであろうと、ご飯の恨みは忘れませんっ!」
口の中のお肉を飲み込みそう言うエルにルヴィは少し涙目ながらそしてそれならばとエルの前にあった料理を奪い取り、それに対してエルは静かに笑みを浮かべながら互いに喧嘩の様にじゃれ合い?ながら食べ、リリィはその様子を見て笑っているそんな楽しい食事を見て、自然と笑みがこぼれた。
「もう、あれから六年も経つのか‥‥」
そう言って何気なく空を見た俺は四年前に王宮にて国王からリリィを託された時の言葉を思い出していた。
ああ~久々の連休(公休)というなの休みを満喫しているシウです。
ああ~仕事がきついとなかなか執筆をするまで体力が持ちません。冗談抜きできついです。
愚痴はここまでとして、今話は二章となる話です。シルバー達の容姿や成長などは次の話の後半あたりから書いて行ければと思います。
次回の投稿は、浮かばない可能性を考慮して‥‥同じく二週間ほどください。浮かべばそれ程の時間なく投稿が出来ると思います。楽しみにしていただけると嬉しいです。ではまた次話で。




