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第十八話 「戦闘」

2021年5月2日に改稿しました。次話との繋がりがおかしくなっている可能性があります。出来る限りの早く改稿して参りますので、どうか、宜しくお願いします。

「なんて、酷いことを…」


「エル、どうしたんだ?」


「あの子、悲しんでる」


 普段は、あまり感情を表に出さないエルが、今、悲しげな表情を浮かべていた。


「あの子?じゃあ、あの龍が…?」


「うん、あの龍が、火龍の子供」


 男の背後から現れた【死竜】。しかし、その正体は、今回の依頼を受けた幼い火龍だと、エルは言った。


「ほう、流石は同族と言った所か。さあ、あのお方の加護を受けた【死竜】よ。同族を喰らいつくすがいい!」


「ガオオオォォォォッッ!!」


 眼には、幽鬼のような炎眼、そして血の匂いを全身から発しつつ、男の命令の通り、俺とエルへと突撃してくるが、俺とエルは余裕をもって回避するが、その際、龍がどんな状態なのか、分かってしまった。


(…酷い)


 視線を走ってきたほうに向けると、そこには剥がれ落ちた鱗、そしてこぶし大ほどの血だまりが点々と続いており、その様子は、痛々しいという言葉すら生温いほどだった。


「ふふふっ、これこそ、あのお方より授かりし祝福。死によって祝福された肉体、その肉体に魂を封じ込め、下僕とする祝福の魔法っ!」


「祝福だと? 呪いの間違いだろ?」


「…あのお方の祝福を理解できぬとは、なんと悲しき事か」


 狂信者の言葉に、俺は思わず顔をしかめつつ、俺は横へと飛ぶと、つい先ほどまで立っていた場所に腕が振り下ろされるが、余裕をもって回避したつもりだったが。


「くっ!?」


 想像以上に力が強いのか、殴った時に出来た石礫が思っていた以上の速さで飛んできたため、咄嗟に顔を庇う事で、事なきを得つつ、一旦着地すると、エルと合流する。


「エル、アレが火龍の元々の力なのか?」


「うん。元々、火龍は他と比べて力が強い。それは幼龍でもだけど、今は魔法で元よりも強化されている状態」


全身強化ベルガを使っている状態か、それならあのパワーには納得だ」


「ふふ、驚いたか? これこそがあのお方の祝福と、この私に授けられたこいつのお陰だ」


 そう言いつつ、男が取り出したのは。


「剣?…いや、刀身が短い…短剣か?」


 懐から取り出したのは、鞘に収まっているが刀身がおよそ四十センチほど、やや大振りだが、見た目は特に装飾などなさそうな短剣だったが。


「‥‥」


「エル?」


 俺と一緒に、その短剣を見ていたエルはギュッと俺の服の裾を握りしめ、その手は震え、更にその表情は警戒と、恐れのような感情が混じっていた。


(エルが、こんなに警戒するなんて。あの短剣は、一体…)


 何なんだ。その視線に気づいたのか、男は口を開く。


「ほう、これに気づくとは、同じ龍でもそいつと比べれば、いい眼をしている。冥土の土産として教えてやろう」


 そう言いつつ、男は鞘から短剣を引く抜き、ベルライト鉱石に照らされる中、現れた刀身は深い青色、刀身の中心には白い線が走っていた。


「この短剣こそ、あの御方より認められ、天災たる龍を裁く者に与えられる龍を殺す、龍滅具の一つ【滅毒剣バルジス】だ。そして、その名の通り、刀身に仕込まれた毒は、あらゆるものを殺す。龍もその例外ではない」


 滅毒剣バルジス。今の話を聞いた限り、人のみならず、強大な存在である龍であっても触れると、その毒に侵されて死に至る。


(だから、エルが警戒していたのか)


 強大にして【天災】と恐れられるも、不死身ではない龍。それを殺す武器であるなら、エルの警戒や恐れている事に納得できた。


「そして、この毒によって殺された龍は、もがき苦しんだ後、祝福によってその魂を留め、死した体で、我らが目的のための駒として、使わせてもらうのだ」


「‥‥屑だな」


「なに?」


「死してなお、道具のように使うお前らのような存在は、そのあの御方とかいう奴も含めて屑以下。そう言ったんだよ」


「一度のみならず、二度も崇高な目的を持たれる、あのお方の事を侮辱するか」


「侮辱されて当然だ。死した者を使うなど、死んだ者に対する最大の侮辱に他ならない。故に、覚悟しろ」


 俺は背負っていた二振りの剣を引き抜き、今まで、ほんの一瞬だけしか使ってこなかった「全身強化ベルガ」と「魔刃強化ゼル」を同時に、発動させる。


「その、ふざけた短剣。斬り壊す!」


「ふん、やってみるがいい! 【死竜】!」


「ガアアアァァァッ!」


浄火リヘル


【死竜】から放たれた、液体。恐らく体内に流し込まれた毒が混じったものが、俺とエルにむかって吐き出されるも、俺は焦る事無く、手のひらを閉じる。


浄火リヘル


 俺は多めに魔力を使って「浄火リヘル」を発動させ、手を開くとそこにがビー玉サイズの白い炎があった。


「無駄だ! その程度の火属性の魔法などで、あの方の毒を破ることなど、出来ぬ!」


 男がそんな事を言っているが、俺は可能だと思っていた。

 この魔法は大小ではなく、火を以て、あらゆるを浄化する。そんなイメージを元に開発した魔法で。「浄火リヘル」であれば、その白炎を以て、燃やし尽くし浄化すると、確信に似た自信があった。


「行け」


 押し出すように放った白炎は、毒を含んだ水球と衝突した瞬間、まるでどうもな蛇のように白い炎で覆い隠し、飲み込んでしまい、水球はあっと言う間に蒸発し、気化を許すこともなく、その全てを焼き払い浄化される。


「馬鹿な、上級魔法如きで、毒を焼き払っただと…!?」


大地瀑布ジオリス


 男の驚いた隙をつき、エルが発動させた大地を隆起させ、相手へと流し落とす土属性中級魔法「大地瀑布ジオリス」を発動させるが。


「小癪な!母なる大地よ!我を襲う厄災より、わが身を守り給え!大地天障バルグ!」


 それに気づいた男は即座に大地を天を覆う膜のように展開する土属性上級魔法「大地天障バルグ」を詠唱、発動させ。


「うおおおおぉぉぉ!」


 降り注ぎ圧し潰さんとする「大地瀑布ジオリス」と鬩ぎあう。その最中、俺はエルに声を掛ける。


「エル、交代だ。悪いがあいつは俺が引き受ける。だからエルは」


「分かった。あの子の相手は、私がする」


「頼んだ」


 エルと俺は入れ替わり、俺は黒衣の男を、エルは、【死竜】と化した幼い火龍アルシアと対峙する。


「どうした? その程度か?」


「この程度で、終わるわけがなかろう。【大地爆雷レデュル】!」


 土砂に埋もれた中から声が聞こえた直後、土砂が爆発しその中から多少服に砂が付いたほどの黒衣の男が姿を現した。


「ふむ、あの人を真似た龍はどうした?」


「エルはべつにいいだろ。それより、お前の相手はもともと俺だ。別に、上から目線も構わないが、そのままだと…」


「ッ!」


 ギャリン! 「全身強化ベルガ」で強化した身体能力で一瞬にして距離を詰め、二振りの剣を振るったが、男は驚異というべき反射速度で構えた短剣で、魔刃強化ゼルによって強化した【天叢雲剣あまのむらくものつるぎ】と無銘の剣を受け止める、が力を抑えきれなかったことでその足は僅かに後退を余儀なくされる。


「すぐに、死ぬぞ?」


「…どうやら、子供だと甘く見ていたようだな」


 互いに距離を取り、俺は剣を構えなおすと、先ほどまで一切構えを取っていなかった男が、短剣を構えた。


「「‥‥‥」」


 そして、聞こえるのは、戦うエルと【死竜】の音のみになる事、数秒。


「「ッ!」」


 両者ともに動くための、一歩を踏み出し、二つの剣と一つの短剣がぶつかり、火花が散るも、それだけに終わらず、十を超える剣戟が繰り広げ、再びつばぜり合いにもつれ込む。


「ほう、私の剣術に付いてこれる者が、その齢にして居ようとは。そして貴様。その剣術、我流だな?」


「それが、どうかしたかっ!」


 踏み込み、斜め上へと斬り上げるが、短剣で受け止められる。


「なに、敵であれど、我流でこれほどの腕を持っているのは、褒めるべき事柄だ」


「そうか、よ!」


 しかしそれを想定していた俺は更に全身強化ベルガ魔刃強化ゼルの強化を引き上げ、吹き飛ばすつもりで剣を振りぬく。


「ぬうっ!」


 剣で吹き飛ばされると想定していなかったのか、男はそのまま吹き飛ばされ、壁へと激突し、煙を上げるが、男は直ぐに煙の中から出てくる。


「ふむ。これだけ斬り合って、尚も壊れぬか。貴様のその黒い剣。いったいなんだ?」


「さて、正直に教えると思うか?」


 男の質問に、俺はそんな風に言葉を返しつつ、剣を構える。


「ふん、まあそう簡単には教えぬよな」


 予想していたと言わんばかりの反応に、しかし俺は注意深く男の一挙手一投足を観察する。


「では、こちらからも行こう!」


「くっ!?」


 全身強化ベルガを発動させた様子がない、にもかかわらず気づけば距離を詰めら、短剣がすぐそばへと迫ってきており、それを右手に握る「天叢雲剣」で弾くが、引き戻され、放たれる短剣の突きを反対の剣で受け止める。


「ハアァァァァッ!」


「ッ!」


 裂帛の声と共に入り乱れるように放たれる斬撃と突き。それをどうにか捌きつつ、時に反撃するも、手数では圧倒的に上をいかれていた。


(このままじゃあ、じり貧だ。なら)


 俺は、勝負を掛けることにした。


「ぜあっ!」


「ぬぅ!?」


 振るわれた短剣。そのタイミングを狙い、意図的に弾くことによってできた隙を突き、俺は後ろへと距離を取る。


「私の連撃を、まさか弾き、距離を取るとは、見事だ、小僧」


「小僧じゃない。シルヴァ・シュトゥルム。それが俺の名前だ」


 自分の名前を名乗りつつ、俺は左手に持っていた剣に掛けていた「魔刃強化ゼルを解除し、背中の鞘に戻すともう一方。「天叢雲剣」の鞘を取ると左手に持ち、納刀し、足を前後の肩幅に開き、腰を落とし、浅く息を吸い、止める。


「ほう、みない構えだ…こい」


 男はそう言いつつ、何かを察知したのか警戒するように構える。


「‥‥」


 いま、そう思った瞬間、全身強化ベルガ、そして魔刃強化ゼルを最大に発動させ、俺はまるで自分が雷になったのではという錯覚の中、まるで圧縮された時を掛けるそんな感覚を得ながら、通り抜け。剣を振り、抜刀した剣を納刀する。


「居合抜刀 雷閃飛燕らいせんひえん


「ぬ、ぐおぉぉ!?」


 剣を納めた瞬間、背後から男の痛みと驚きの混じった声と、パキンッと砕ける音を聴きつつ、俺は振り返ると地面には、右の肘の半ばから切断された右腕、そして砕け散った破片が散らばっていた。


「これで、お前はもう戦えない」


「よもや、決して砕けぬと思っていた、あの御方が授けし武具を、砕くとは…」


「砕けないものはない。だからこそ、守ろうとするんだよ」


「だが、まだ我が下僕が‥‥」


 血が流れ出る右腕を押さえながら、信じられないものを見たとばかりに、男の表情には驚きがありありと浮かんでいた。その時、更に驚くべき事が起こった。


「グオオォォォォ」


「なに!?」


 男の後ろに吹き飛ばされてきた巨大な影、【死竜】。その体は所々が焼かれ、氷漬け、貫かれ、切り裂かれており、その後ろには、悠然とその様子を見るエルの姿があった。


「もう、その子は戦えない」


「くっ、よもや、これほどとは、な」


 恐らく、頼みの綱であった【死竜】をもってしても、エルを凌駕することが出来なかった。そのことを悔いているのかは不明だが、男は苦い笑いを浮かべた後、左手で目深にローブを被る。


「このままでは、こちらが不利なのでな。ここは、撤退。逃げの一手だ」


 その瞬間、男のローブが霞んだかと思うと、男の姿も徐々に霞んでいき、やがて完全に見えなくなる。


「その【死竜】はくれてやる。好きにするがいい」


 その言葉を最後に、足音は聞こえなくなり、念のため【風を視るテンペスタ】と中級風魔法「音響結界ヴォイス」で確認するが、何も捉えることがなく、男は確かにこの場から姿を消していた。


「…ふぅ」


 張り詰めていた緊張の糸を解き、視線を【死竜】へと向けると、そこには既にエルの姿があった。


「グルルルルッ」


「心配しないで、大丈夫」


 その体には、毒があることから触れることは出来ないが、それでもそして、俺には理解できない、恐らく龍同士で使われる音か言葉で【死竜】はエルに話しかけており。それを聞いたエルは、絶対の自信を以て答えていたのが気になり、近づきながら尋ねる。


「エル、何を話しているんだ?」


「うん。この子を助ける為の魔法を使ってもいいか。その確認をしてた」


「…助けられるのか?」


「私だけじゃ、無理。だけどシンが居れば、出来る」


「俺が居れば?」


 俺とエルがこの坑道に来た、そもそもの目的。それは【死竜】と化している幼い火龍アルシアを助けるというのが、そもそもの目的だったので。

 助けることが出来るのは確かな朗報だったが。しかし、気になったのは、何故俺が居れば可能なのか、そこが気になった。


「エル、どういう事なんだ?」


「シンには、この子を一度、殺してもらう」


「…え?」


 エルの口から出た言葉に、その処理ができずに俺は思わずその場で少しの間、立ち尽くしてしまった。

ふう、どうにか間が空かずに、そして自分なりに全力で戦闘シーンを書きました。

自分ではいい出来なのではと思っています(内心不安)さていよいよ次の話は邪法によって死竜となった火竜の邪法からの浄化?解放を最初に書き出して話を書いて行く予定です。

どうか皆様今後ともよろしくお願いいたします。

評価、感想、ブックマークを頂けますととても嬉しいです。…次の投稿ですが出来るだけ間が空かないようにしたいと思っています。忙しくなれば遅くなってしまいますが楽しみに待っていただけますと嬉しいです。

最後にですがPVが一万をいつの間にか超えていました。ありがとうございます。これを励みに頑張って行きたいと思います。それではまた次話でお会いできるのを楽しみにしております。


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