第百十五話 「行動、開始です」
はい、三本目の投稿です…。
我ながら、早いですね…(  ̄- ̄)
「それじゃあ、まだ時間があるみたいだから、僕は挨拶がてら周りを見てくるよ。シルフィ君とリオン君は一緒にお茶でも飲んだりしていてくれ」
「え、ちょっ!?」
言うが早いか、ディアネルは歩き始め、猛特訓を受けたとはいえ慣れていないドレスとヒールの靴のお陰で咄嗟に足が動かずに追い掛けることが出来ず、伸ばした手がディアネルを掴むことなく何もない宙を掴む。
「女二人を‥‥‥置いていくなよ」
と、思わずそんな言葉が口から漏れて出てまた顔に血が集まってくるのを感じ、手を戻すついでに深く息を吸って吐くことで熱を外へと逃がしつつ姿勢を整え、レオンへと話しかける。
「まったく、今度一緒にお説教をしないといけないな…て、アレ? リオン?」
先ほどまですぐそばに居たレオンの姿はそこにはなく、一体何処に行ったのかと辺りを探していると。
「美味しぃ~~~~~っ!!!!」
少し離れたテーブル。そこには今回のパーティーの参加者用に用意されたのだろう、立食用に大量の料理や皿、そして飲み物が置かれおり、その中の一角。料理が置かれているテーブルで一人の素朴だが十分ん美少女といえる少女が丁寧な仕草でお皿を料理を盛ると、その端から凄い勢いで料理がその口の中へと消えていく。
「もう、探したよリオン。それにしても‥‥よく食べるね…?」
「ふぇ?(え?) ふぉう?(そう?)」
「うん。それに口に付いて、化粧が台無しだよ?」
徹底的に叩き込まれたお陰で、無意識レベルでも女性らしい話し方がお互いに出来ている事に安堵しながら、同時に見た目のお陰で更に子供っぽいレオンに俺は笑いながらテーブルに同じく置かれていた紙を一つ取るとレオンの顔についていた汚れを拭う。
「はい、綺麗になった」
「‥‥ごくん。ありがとう、シルフィ」
にぱっ! とまさにそうとしか表現がしようのない笑顔に対し、俺は仕方がないなと苦みが二割、無自覚だろうが緊張をほぐしてくれた感謝の笑みである甘み八割で笑う。
「‥‥‥凄く、良い…」
「美少女たちの絡み、ああ今見ている物を絵にして飾りたい!」
すると後ろからの視線とそんな声と聞こえてきて俺は背筋に悪寒が走る中、レオンは再び料理を食べ始め、その様子を見て何だか俺自身馬鹿らしく感じ。
「リオン、私にもお皿をもらえない?」
「ふぁい(はい)」
口の周りを汚すことなく器用にパスタを口いっぱいに頬張ったリオンから食器を受け取り、取り敢えず緊張が解れたおかげで昼からほとんど何も食べてなかった事を思い出したお腹が空腹を訴えてきたので、腹が減っては戦は出来ぬという諺に準えてまずは空腹を満たすことにした。
そして、二人ですごい勢いで料理を食べ進めながらも、一切所作が汚くなく、寧ろ綺麗なまま食べる二人を周囲は何とも言えない表情で見ており、中にはその様子に興奮していた者も居たようだが、まずは空腹を満たす事を優先したレオン、そしてシルヴァがそんな事を気にすることは無かった。
そして。
「すみません、二人とも。大丈夫…です?」
結果的にディアネルが二人を見つけるまで誰にも声を掛けられるという事なく、安全に時間を潰すことができ、更に空腹を満たすことが出来た、そんな二人が手を止めたのはディアネルのそんな声だった。
「まったく、離れた僕が言うのもなんですが…結構食べましたね…」
「ふぅ、八分目当たりかな?」
「お、私はもういらないかな…」
「まだ入るんですね…」
「何もしないなら…あと、あの一皿ならいけるかな?」
と俺が指さした皿に盛られていたのは、肉を香草とワインでじっくりと煮込んだ角煮のような料理で、こぶし大はありそうな肉の塊が軽く四十を超えるほどの量があった。
「アレが入るんですか…」
ディアネルが呆れるのも無理は無かった。用意されていた料理の内、俺とレオンで十分の二割ほどを二人で食べたのだ。そしてもしそれ以上を食べるのであれば一日絶食をすれば八割までは完食できるがそれ以上は無理だが。
(やっぱり、前世より胃袋が大きくなってる気がする。体を動かして食べるからか…?)
と、そんな事を考えているとディアネルが咳ばらいをした。
「んんっ! それより、本題に入りたいのですが?」
「そうでしたね。それじゃあ見てきたのなら、何かしらの朗報はありました?」
「ええ。というより今回ばかりはやはりあなた達を女の子にしてもらって連れてきたことが功を奏したといった感じですけどね」
「「?」」
ディアネルの言葉の意図を測りかねて俺とレオンは首を傾げる。
「ところで、二人とも。飲み物は飲みましたか?」
「え? まあ、流石に食べてるときに何も無いのは無理だから幾つか飲んだけど」
「私も」
「そうですか。それは良かった。それじゃあそろそろ効いてくるはずですね」
何が? と二人がそう思った時。俺とレオンはほぼ同時にある衝動が襲い掛かってきた。
最初は弱くさざ波のように。しかし次はそれよりも強く、その後はさらに強くと押して退けばさらに強くなって戻ってくるその衝動、その衝動の正体とは、肉体のある生命であれば必ず起こるある生理現象。それは、尿意だった。
「ああ、実は回っている時、事前に少し催す様に薬を仕込んでいたのですが。どうやら効いてきたようですね」
「ちょっと…これ、どうするつもり!?」
「も、漏れそう…!」
潜入前に一旦【変化】を解除して男の体へと戻りトイレなどを済ませて、再び【変化】で女の体に戻った。その理由がその少し前に女の体でトイレに行った際に変な感じがして、そう感じるくらいならとわざわざ事前にトレイに行っていたのをディアネルの薬によって完全に無意味にされてしまい、力を抜けば漏れてしまいそうなのを内股に力を籠めることでどうにか堪える。
「これが作戦ですよ。二人はこのままトイレに行って下さい。トイレはここを出て左に曲がって少し行った先です。それが済んだらこちらの城の地図を見ながら王の間の玉座へと向かってください。玉座の足元。そこに魔法を破却する陣がありますので。因みに陣を壊しても後ほどどうにかしますので、方法は任せます」
「‥‥ねぇ。それなら私たちがわざわざこうして潜入する必要は無かったんじゃあ?」
「いえいえ、決してあなた達の女の子姿が見たかったとかそんな理由ではないですよ。もちろんそれがあったという事は否定はしませんが、この方が目立たたないと思ったからですよ」
俺のそんな疑問にディアネルは確かに女の子の姿を見たかったと堂々と打ち明けたので、俺は呆れてしまった。
「戻ったら、覚悟しておいてくださいね?」
「…ええ。無事を祈ります」
戻ったら何をされるか。と表情が若干青くしながらも見送るディアネルを背に、俺とレオンは先ほどよりも大波となって襲い来る荒波を鎮めるために、出来うる限りの速足でトイレへと向い。
それを見送ったディアネルの表情は、まるで鋭い刃のように研ぎ澄まされる。
「さて、気味の悪いのが幾つかいる、か。二人が無事陣をどうにか出来たらこちらの番ですね。まあそれまでは楽しむことにしましょうか」
そう呟き終えるとその表情は嘘だったかのように飄々としたものに変わっており、手直にあった薬を仕込んでいない料理を皿へと盛り、少しばかりの休息を取ることにしたのだった。
「‥‥はぁ‥‥間に合ってよかった‥‥」
そして、所変わって会場近くのトイレから出た俺が手を洗ってると少し遅れて水の流れる音が聞こえた後、ドアが開きレオンが出てきた。
「も、漏れるかと思ったよ‥‥」
「あはは、これは今度しっかりとお礼をしないとね?」
「うん、そうだね」
改めて、しっかりと仕返しをしようと二人で決めながら手を洗い終えた俺とレオンはそのまま通路に出ずに、その場でディアネルから渡された折り畳まれた城の地図を広げる。
「それじゃあ、行動を始めますか」
「お~!」
ディアネルからのやり方はどうであれ、行動を開始するには絶好といえる機会を逃すことなく、俺とレオンは破却の魔法陣のある王の間の玉座にある陣を壊すために動き始めた。
今話は前話の続きと言った感じの話です。そして、次かその次の辺りで戦闘が入るかも、知れないですが未定ですので、楽しみに待って頂けると幸いです。
※因みにですが、投稿ペースが早いのは調子がいいことによる一時的なものです。普段はもっと遅いです。
それでは、皆様、また次話で。




