第百十話 「出会い」
短いですが、投稿です…短くて申し訳ない。(本当に最近時間が足りない…)
2021年10月3日に改稿、少し文章を増やしました
その日の早朝。レオンはいつも通り早起きをすると、まず学院内を走って一周していると。
(なんだ、あいつら?)
学院の敷地外。そこに見えたのは武装し、各所に装甲を身に付けた数人の男達で、それは何かを探しているのかのようで、レオンは少し気になったが走ることに集中するために頭からそのことを追い出し走ることに集中した。
「‥‥ふぃ~…さて、次と行くか」
息を整え、吹き出た汗を拭いつつそう呟くと、レオンはそのまま寮の裏手にある人があまり来ない広場へと移動すると、まずは柔軟体操をして全身を解し終えると、レオンは拳を構える。
「はっ!」
気合の籠った声と共に正面に拳を放ち、流れるような動きで右腕を引き、左腕でも拳を放ち。更に体を左に捻るようにして右足で蹴りを放ち、その姿勢が乱れることはなく着地する。
「しっ!」
着地からは急激な猛烈な拳打を放ち。
「はあっ!」
気合の籠った声と共に放たれた拳の圧によって空気が揺れた。
「…ふぅっ」
一息つき、構えていた拳を落すと。レオンは倒れるようにそのまま地面へと座り込む。
「あ~、やっぱりまだ全然駄目だな」
そしてそのまま横になると空を見上げる。
番いとぼしき鳥がじゃれ合うように空を飛んでいき、思わずそれを目で追いながら、レオンは頭の中では別の事を考えていた。
(このままじゃ、駄目だ。俺は、もっと強くならないといけないんだ。あの時見た、あの人みたいに…)
以前、気絶していた最中に見た夢。それは今もしっかりとレオンの記憶に焼き付いていた。そしてレオンがその夢の中の人物を自身の目標に掲げていた。
それは夢の中に出てきた人物がレオンと同じように属性魔法を使えなかったのかは不明だが、レオンが見た場面においては無属性の身体強化魔法である全身強化だけで戦っていた。
(属性魔法が使えない俺だって、頑張れば…!)
シルヴァと肩を並べられるほどに強くなれるはず。そう思うと今こうしている時間も勿体ないと思うのは当然で。レオンは一気に立ち上がる。
「っと。よし、それじゃあ鍛錬の続きを‥‥ん?」
ふと、視界に何かが映った。それが気になったレオンは川へと近づいていく。
先ほどまでレオンがいた場所は川にかなり近い場所で。そこで流れている川は学院と市街地の敷地の境界線の役割を果たしているのだが、その川に流れているのは王城で使用され流されてきた水。いわば下水道であるが、王城の地下に水を浄化する陣が形成されているお陰で下水道といっても汚くはなく、寧ろ他の川と比べて綺麗といえる程なのだが、それでも下水道という言葉からして誰も近づくことが無い川で、そんな川にレオンは近づいてくと、見間違いではなかった事が分かった。
「あれは‥‥人…なんだよな…?」
レオンが思わずそう呟くのも無理はなかった、何せ川の大きさは幅十メートル、深さは三メートルほどなのだが、その中央に何か白い塊のようなものがぷかぷかと浮いていた。そして、その白いものに全体を包まれていたが、唯一、手または足のような物が僅かに見えた。故にレオンの言葉が歯切れの悪いものになってしまっていたのだった。
「けど、まあ。見つけちまったからには…そのままって訳にはいかないよなぁ」
我ながら、厄介なものを見つけてしまった。レオンは内心でそう思いながらもパンツ以外の服を脱ぐと、助走をつけて一息に川へと飛び込む。
川の水が火照っていた体を程よく冷ましてくれるのを感じながら、同時に下水道であることを出来る限り頭から排除しつつ、レオンはぷかぷかと流れていくと白い塊に追いつくと、それを川岸へと押して進んでいき、飛び込んだ場所から多少流されたりはしたが、レオンは無事に陸地へと辿り着いた。
「ふぅ、体が温まっていたのは、不幸中の幸いだったな…」
陸地にたどり着いたレオンはそのまま白い塊を抱き上げると、そのまま先ほど服を脱いだ場所へと戻るが、ある問題に気が付いた。
「パンツぬれたままじゃ、服を着れないじゃねぇか…」
水の中に入れば濡れる。至極当然の事実に今更気が付いたレオンは、少しの間そんな事すら浮かばなかった自分の馬鹿さ加減に呆れながらも、白い塊をゆっくりと下ろすとパンツを乾かすために必要な火を起こすために木の枝を集め、手早く火を起こす。
そして、木の枝を組み合わせて、そこに服を掛けて乾かしていく。
そこで、横に置いた白い塊が眼に入った。
「…そう言えば、これも乾かしておいたほうがいいか‥‥? いやでもなぁ…」
川からここまで抱え運んできた白い塊。それがなんとなくドレスのように感じていたレオンは下手に触るのはどうなのか。そう思いレオンはドレスに触る事よりは、まずじしんの服を乾かして部屋に連れて行った方がいいと考え、少しでも早く乾くように火力を上げるために更に火を強くするために木を投げ入れ、それから数分後には服は着るのに問題ないほどに乾き、レオンは手早くを服を身に着け、全身強化を発動させると白い塊を両手で抱え上げる。
「よし‥‥急げば見つからないはずっ!」
そう自分に言い聞かせると、寮の部屋へとレオンは全速力で駆け出した。
もし誰かに見られれば最悪の場合は誘拐犯と思われる可能性も、無いとは言えず。むしろその可能性が圧倒的に高い中、幸いにして人に出会うことなくレオンは自分の部屋へと戻ることが出来たのだった。
「‥‥ふぅ~」
部屋の中に入ると、レオンは誰にも見つからなかった。その安心感から深く息を吐く。
「良かった、誰にも会わなかった…」
その事に、改めて幸運だったと思いながらレオンは部屋の中へと進み、ベッドが濡れるのも構わずに、白い塊をゆっくりと寝かせる。
「‥‥流石に‥‥このままって訳には、いかないよな…?」
それはつまり、目の前の塊に見えると白い服、ドレスを脱がせるという事で。ドレスという事は女性が身に着けるもので、それをしょうがないとはいえ脱がせる。その何とも言えない罪悪感にレオンは誰もいない部屋でそう呟き。
「無心だ、無心になるんだ…っ!」
覚悟を決め、頭を意図的に空にして白い塊、ドレスを脱がせ始め、絡みついたドレスの布を外し始めて凡そ五分。慣れない事で苦戦しながらも、足元から解いていったドレス。その最後である顔の部分を解くと肩に掛かるほどの長さのハニーゴールドの髪、唇は淡いピンク色で、顔立ちは整ったレオンより少し年上といった感じの女の子が姿を現した。
「ッ!?」
絡まりは解いたが、濡れているせいでドレスは重く、更に体に密着している事で、女性的な細い手足に加えて大き過ぎず、されど小さくもない胸の膨らみといった女の子のボディラインがくっきりと浮かび上がっていたが、それよりもレオンが引きつけられたのは、初対面のはずなのに、強烈な既視感を感じた女の子の顔だった。
「なんでだ…?」
初対面、それもあったことのない女の子だというのにレオンはその顔を知っている。そんな自覚があった。が何故そう思うのか理由が思い当たらない。
(くそ、もやもやするな)
そのもやもやを解消するために、レオンより近くで見るために女の子へと顔を近づける。
「‥‥ん、んんっ‥‥‥‥‥ふぇ?」
「あ」
レオンと女の子の顔の距離、凡そ二十と少しほどに迫った時、少女は目を覚まし。
「きゃあああああぁぁっっ!」
「がはっ!?」
女の子は悲鳴を上げながら咄嗟に発動させた部分に身体能力を強化する部分強化を発動させてレオンを殴り、それでも加減されていたのかレオンはそのまま壁を突き破るという事は無く、そのまましかし壁にひびが入る程の威力で激突し、一切の受け身が取れていなかったレオンの意識はぶつかった急激によって急激に薄れる。
(確かに、あんなに顔を近づけた俺も悪いけどよ…それはねぇだろ‥‥)
女の子がレオンを殴り飛ばした際に、シルヴァから教えてもらった全身強化よりも難しい部分強化によって殴れたと分かったレオンはそれに対する愚痴を最後に意識を失った。
その一方、ベッドから体を起こした女の子は部屋の中をぐるっと見ます。
「ここは一体、何処?」
そして、小さくつぶやいたのだった。
次話にて、レオンが助けた今回出てきた白い塊に包まれた誰なのかが判明します。
でも、現状時間があまりないので、執筆が滞っている状態です…◯神と時の部屋…本当にほしいです…。




