表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/121

第百九話 「異変」

今話は短いです。

久方ぶりの最新話を投稿しました…感覚を取り戻しつつ、取り敢えずは少しづつ投稿していきます。

 所変わって、俺は母さんと執務室で向かい合うように座っていた。結局あの後、騒ぎを聞きつけたメイド達によって気を失った三人の女たちはメイド達によって部屋に運ばれ、傷の処置を終えた現在はベッドに寝かされてはいるが厳重に監視されていた。


「単刀直入に聞くわね、シルヴァ。何か知らない?」


 俺にそう訊ねる母さん。その眼には怒りの炎が揺らめいていた。息子を大切にしている母さんが怒らないはずがない。そしてもしその相手を教えれば母さんは武力、政治的にもその相手を確実に潰しかねない熱がそこにあった。


「ごめん。全く分からないんだ」


 だが、そんな母さんに俺が言えるのはそれだけだった。何せ、暗殺者を送られるほどの恨みを買った覚えなどサラサラないのだ。あり得るとするなら一方的な逆恨みという可能性が高いと俺は考えていた。


「そう。貴方が知らないという事は、一方的な逆恨みの可能性が高そうね」


 すると、まるで俺の思考を読んだかのような母さんの言葉。しかし別に驚くことはなかった。暗殺者を差し向けられた本人が分からないのであれば、一方的に逆恨みをして暗殺者を放ったと考えるのが妥当だったからだ。


「母さんもそう思う?」


「ええ。貴方は同年代の子と比べても相手にどう思われているかを、うすうす感じ取れるでしょ?」


「まあ‥‥ね」


 正直、その感覚は経験でしか分からない事で、俺は介護の仕事をしている中で、利用者の雰囲気や表情からどのように思っているのか、何を考えているのかを予想、察する技術を発展させた結果だが、その技術をもってしても、誰かしらに恨まれるという事をそもそもしていないので暗殺者を差し向けられた意味が分からないでいる時だった。


「そう言えば、シルヴァ。学院に居る時も事件に巻き込まれたらしいけど。教えてもらっていいかしら?」


「え? いいけど…」


 唐突な母さんの問いに俺は不思議に思いながらも学院に入学してから夏休みに入るまでの事を、多少省きながらも話し終えると、母さんはそのまま黙ったまま視線を窓から外の月へと目を向け、そのまま数分間ほど間の後。母さんは口を開いた。


「今回の犯人。その死んだ子の父親ピッグレン・アルフレッドの可能性が高いわね」


「どうしてそう思うの…?」


 まるで、断定するかのような母さんの言葉に俺は理解できずに母さんに問うと、母さんは答えた。


「人って言うのは理不尽なものでね。例えば自分の子供が事件に巻き込まれて死んでしまった場合、どうしてあの子が死ななければいけなかったのか、って思うの。けどその後はどうしても子供を信じて上げたくて、やがて原因を他の子に押し付けてしまう。そんな時があるのよ」


「‥‥‥」


「まあ、推測も混じってし、全ての親がそうって訳じゃないけどね?」


 そう言って母さんはお茶を濁したが、俺は何も言えなかった。前世で子供を持ったことが無い俺では、そんな考えておらず、盲点だった。

 だが、そう考えれば母さんの話は良く理解できる内容だった。


「さて、でも気になる事があるのよね」


「何が?」


「今回の件。ピッグレンがしたのだとしたら、雑過ぎるのよ」


 雑過ぎる。今回の事を母さんはそう言い切った。


「母さんは、ピッグレンを知っているの?」


「ええ。直接会ったことはないけど、情報としては知っているわ」


 母さんが言うには、アルフレッド家は噂の通り捕まえた女子供を貴族に売り、それによって得た金と客である貴族の後押しもあり子爵という爵位を得ることが出来たとの事だった。

 そして、それを聞き俺も確かに雑だと言わざるを得ない。


「母さんは、この件には続きが、そして裏があると思う?」


「ええ。少なくとも、学院での事件を解決するだけの力を持つ貴方をピッグレンは過小評価していた。可能性は否定しきれない。けど、本来のピッグレンであればまだ数段は上の刺客を放つことが出来たはずなのよ」


「そんなことが出来る人物がどうして今回のような雑なことを…?」


 先ほど母さんから聞いた。ピッグレン・アルフレッドという人物の情報の限りでは確かにそれはあり得たと思えた。故に雑であるという事が引っ掛かっている時、部屋の外から声が聞こえてきた。


「奥様。急ぎのご報告はございます」


「いいわ、入りなさい」


 母さんがそう言うとドアが開き、部屋に副メイド長であるサリスが入ると一礼する。普段はそれほど感情を露わにしたのを見たことのないその表情は、少し強張っているように見えた。


「サリス、一体どうしたの?」


 そして、母さんがサリスへと尋ねると。


「王城が、ピッグレン主導により貴族たちの反乱によって占拠されました」


「ッ!?」


「そう。それでアルテス達は?」


 サリスの報告に俺は驚くが、母さんの表情にそれ程の驚きはなく、淡々と尋ねる。


「アルテス様たちは極秘に用意した抜け道にて場外に脱出されたとの事です。ですが、その際にラミリア王女がはぐれられた様です」


 サリスは、さらりと爆弾的発言を投下した。


「そう…まあ、あの子であれば大丈夫でしょうけど、相手方に渡るのだけは避けたいわね。予想されるはぐれた場所を中心に捜索をお願い」


「分かりました」


 しかし母さんはそれを軽く流し、一応といった感じで捜索をサリスに命令し、サリスは一礼した後とそのまま部屋を出ていき、俺と母さんの二人だけとなり、俺は母さんに尋ねる。


「あの、母さん? さっきのはぐれたって王女さまだけど‥‥一応って感じで探すだけでいいの?」


「え?‥‥ああ。シルヴァは知らなかったわね」


 何故俺がこれほどに衝撃を受けているのか、それが分かった母さんは納得したと言わんばかりに頷いた。


「まあ、普通はそうなんだけど。あの子に関しては大丈夫なのよ。だってあの子、格闘と剣術の腕だけを見れば、私よりも強いし」


「‥‥は?」


 母さんからの情報の大きさのあまり、俺はそれを処理し、理解するのに三秒ほどの時間を要した。


(マジか‥‥。格闘術と剣術で母さんを超えている、だと…)


 どんな化け物だ。と思うのは仕方が無いと思ってほしい。

 もちろん。母さんが世界最強だとは思ってない。けど強者であるという事は純然たる事実で、過去に母さんが火龍を撃退したという過去が証明している。

 そんな母さんに格闘術と剣術で勝つ王女というのは信じ難い事だった、けど、嘘とは思えなかった。


「まあ、魔法を加味しての総合的には私の方が強いけどね?」


 と、先ほどの情報と比べれば気休め程度の事を母さんは茶目っ気交じりの笑みを浮かべながらそう言いそれを聞いて、そんな王女様なら何とかなるか。そう思うと先ほどの母さんの対応は間違っていないと思えた。


「それで、シルヴァ。貴方はこの後どうするの? 私はこの後アルテス達と合流して、情報を集めつつ反乱を起こした貴族を討つための部隊を編成するつもりだけど」


「俺は‥‥」


 母さんからの問いに、俺は。


次話の投稿予定は今のところ決まっていませんが、今月は後二本は出来る限りの投稿したいと思っています。

どうか、少しでも楽しんで貰えると幸いです。

それでは、また次話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ