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第十一話 「エルの過去と気持ち」

※二〇二一年、四月七日に大幅な改稿、加筆をしましたが、タイトルの「過去と現在の気持ち」の内容の根幹部分は弄ってませんので、ご安心ください。

今回ほぼほぼ過去・現在のエル視点ですが、最後は別視点です。

また主人公の名前はシルヴァへと変更しております。

 気が付くと、『私』は何もない真っ白な空間にいた。けれど、『私』は何もせず、ただただ長い時間を過ごした。

 それから、どれだけの時間が経ったのか。ある時どうしてそうしようと思ったかは忘れてしまった。けれど何かに突き動かされるように『私』は歩き、白い空間を出た。

 その瞬間、今まで感じたことのない『体』を引っ張る力、重力と共に辺りは澄んだ青色に真っ白なもの「雲」が浮かぶ「空」へと投げ出されていて。

 落ちていく先に緑の鬱蒼としたものであるのが「森」。茶色や黄色などの「大地」にそれを切り裂きように流れるのが「川」、先ほどの白いものを頭に被るのが「山」だと無意識の間に理解しながら落ちていく。


(『私』は、どうして知っているの?)


 初めて見たはずの真っ白い空間とは違った色とりどりの景色。なのに知っている。そんな不思議な感覚を感じていると、私は迫っていた大地に激突して、衝撃で土が巻き上げられて土煙が起こる。

 けど、そんな中で、私の体は痛みどころか傷すらなかった。


(ここは‥‥何処?)


 白い空間から出たと思ったら風を切りながら空に居て。気が付けば大地に激突したけれど傷もなくて。けど、何かをしよう。そんな気持ちもなくて。

 私は背中の翼を動かして自分が作った穴から浮かんで出ると、そのまま近くの草の上に降りるとそのまま翼を畳み、体を丸めて眼を閉じて、私は眠りに就いた。


(‥‥?)


 それから、どれだけの時間が経ったのか。ふと私の周りに何かが居る事に気が付いて閉じていた眼を開けるとそこには「兜」や「鎧」と言われる金属の防具を、手にはそれぞれ鋭い切れ味を持つ「剣」や「槍」。更に離れた場所、射るための「弓矢」を持った「人間」の集団で、彼らの持つ武器は、私に向けられていた。


(どうして、『私』に向けているの?)


 そんなことを思いながら、敵意が無い事を示そうと『私』は体を起こすと。人間達は一様に驚きの表情を浮かべて、けれど直ぐに彼らはそれぞれの武器で『私』に攻撃を始めた。

 とはいっても、彼らの武器は私の皮膚や鱗を貫くことは出来ずに火花を散らすだけで。それでも彼らは諦めることなくを続けて来ることに私は「困惑」から徐々に「恐怖」へと変わってきて、それが伝わったのか人間達はより私により一層攻撃を降らせた時だった。


「おいおい。な~に弱い者いじめをしてるんだよ?」


 私の上。一つの人影に全員の視線が集まった瞬間。辺り一帯に強烈な暴風が吹き荒れて、矢は彼方へと吹き飛び、武器を持っていた兵士の十数人ほどが吹き飛び。飛ばされなかった兵士達も『私』から引き剝がされるように距離を取らされていて。その間に降り立ったのは黒髪で、見たことのない服の男と、不思議な力を感じる剣を持つ男で。

 その男の顔は見えないが、男が見ているのは、他の人間と比べて明らかに肥えていて、上質で、豪華な装備を無理やり身に着けたこの人間達の長とぼしき男と思われた。


「き、貴様っ!? い、一体何処の国の者だ!?」


「何処のって、東の方の国から来た者。その程度だ。これ以上は、無抵抗の龍に攻撃する馬鹿と話す必要はないだろ?」


 そんな『私』の予感は当たっていたようで、黒衣の男は長の言葉にそう答えて。


「無抵抗の龍だと!? ふざけるな!龍とは天災そのもの! 国を思い、それを排除しようとする我らの勇気を愚弄する気か!!」


「勇気も何も、()()()()、眠っていたその天災とやらを目覚めさせたのはお前たちだろ?馬鹿な連中が国を思うってのは、愚か、という他なかろう?」


「き、貴様ああぁぁぁぁっ!! 」


 長は黒衣の男の言葉にその顔を真っ赤に染める、その様子を黒衣の男は笑いながらも涼しい表情で眺めていていると。長は手を上げると人間達はそのまま私を取り囲む。勿論、黒衣の男も含めてだ。


「いいだろ、ならば我らを愚弄した貴様は龍と同じく殺してやる! 全軍、突撃っ!」


「「「「「うおおおぉぉぉぉっっ!!!!」」」」」


 突撃の合図と全方位から迫って来る人間達と空からは放たれる矢が迫る中、私は翼を広げて彼を守ろうとしたけれど。私の方を見た眼から「何もするな」と言われたような気がして、私は動きを止めると黒衣の男は前を向きながら笑った、ような気がした。


「荒れ狂え、暴嵐ぼうふう


 彼が短く告げた瞬間、彼と私を囲むように生まれた嵐は先ほどを遥かに超える強さで。


「「「「「うあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!??」」」」」


 矢を吹き飛ばすのではなく砕き、突撃していた人間達全てを巻き上げ、吹き飛ばし。その中に豪奢な装備を身に着けた長と思しき男の姿もあり。


「…こんなものか」


 そんな時間が十秒ほど経った時、男がそう告げると同時に嘘のように暴風はぴたりと止んで、それは巻き上げたものが落ちてくるという事で。


「がっ!?」


「がはっ!?」


 空へと舞い上がっていた兵士を含めた辺りの全てが大地へと次々に落下していき。辺りは一瞬にして死屍累々の惨状が目の前に広がり、その中には動かない長の姿もあり『私』は彼を見る。


『死んだの?』


『いや、案外受け身は出来たようだ。と言っても何処かしら骨がバキバキに折れてるだろうが、死にはしねぇよ。というか、念話は使えたんだな?』


『「念話」がよく分からないけど、使える。それと、殺さないでくれて、ありがとう』


 彼に私が感謝の言葉を伝えると彼はぽかんとした表情になったかと思うと、お腹を抱えて笑いだした。


「…はははははっ! やっぱりお前は面白い奴だな? 普通自分を殺そうとした相手の心配はしねぇぞ?」


『そう?』


『私』の言葉が面白かったのか、彼はそれから少しの間笑い続けて。彼が落ち着くのを待って、私は無意識に彼へ尋ねた。


『なにか、願いたいことはある?』


「ぷっ、ははははははっ!」


『どうして笑うの?』


『私』言葉に、先ほどと同じように突然笑い始めた彼の反応に私は首をかしげていると、笑いが落ち着いたのか、彼は目元に浮かんだ涙を手で拭う。


「はぁ、はぁ…。いやなに、まさか助けた龍から願いはあるかって言われるとは全く予想していなかったもんでな」


『そう?』


「ああ。‥‥「あの時」の事を僅かながら、いや無意識に覚えている、か」


 頷いた後、『私』にも聞こえないほどの小さな声で何かを呟いた後、直ぐに元の何処か飄々とした表情へ戻っていた。


「にしても、願いねぇ…」


 男は、何かを考えるように黒い瞳で空を見上げ、私もその間は何をするのでもなく、ただ待った。そして、やがて何か思い当たるものがあったのか、彼は空を見つつ口を開く。


「‥‥じゃあ、願いを、というよりは君にある頼みごとをしたい。だが、これはお前の自由を奪い、長い更に長い時間を掛けさせてしまう。そんな頼み事なんだが、それでもいいか?」


『…どういう意味?』


 まるで、未来を予知するかのような彼の意図が読めない言葉に『私』は、尋ねる。


「俺に、いつか子供が出来るだろう。だがその子は俺の子供であるが故に、厄介ごとに巻き込まれると思う。だから、その時その子を支えてやってほしい」


『その子のつがいになれ、ということ?』


 つがい。それは自分と対を成す存在にして、生殖の相手を指す言葉で、私の言葉に男は曖昧にだが頷く。


「まあ、番に関しては強制じゃない。それはお前が実際に見て決めろ。…頼めるか?」


 男の眼は、真剣そのもので、まるで先ほどの兵士たちが使っていた剣よりも鋭く、斬られると感じさせるほどだった。そして、助けられた私の答えは、決まっていた。


『分かった。あなたの願いを受け入れる』


「すまん、ありがとう」


 そう言うと、黒い着物を身に纏った男は私に頭を下げてきて、それが分からなかった『私』は尋ねる。


『なぜ、謝る?』


「なに、自由なお前を縛ることになっちまうことへの対する謝罪だ」


『気にしないでいい。これは、私が決めた事。でも疑問、なぜ貴方は『私』に子の事を頼む?』


「なんでだろうな。けど、何となくお前なら俺の子供と上手くいく。そんな予感がしただけさ」


 呆気らかんにそういうと、そういうものなのかと『私』は納得した。


「それと、もし俺の子がお前から見て駄目だと思ったら、この約束は破れ。ダメな息子に付き合わせるのは、流石に申し訳が無さすぎるからな」


『それに関しては、『私』は大丈夫だと思う』


「‥‥へぇ。そいつはどうしてだ?」


 男は私の言葉に興味深げに尋ねてきた。なので、私は思った事を言う。


『あなたが使っていた言葉を借りるならば、「予感」がしただけ』


「はははっ、こいつは一本取られたな!」


『私』の言葉が面白かったのか、彼は再び笑いながら、その身は風を纏い始めて、彼が何処かへと行くのが分かった。


『それじゃあ、いずれ生まれる俺の子供を頼む』


『分かった。『私』もそれまでの間、眠りに就きつつ世界を見る。あなたの子が生まれて、来るべき時が来る日に』


 話している間にも男が纏う風は強くなり始め、そろそろ行くのだと思わせる。その時だった。


「ああ、忘れていた」


『なに?』


「幾つかあるんだが、まず俺の名前の名前だ。俺はスサノヲ。そんで、いつか生まれる息子の名前は、シルヴァだ」


『‥‥シルヴァ?』


 教えられた、もしかしたら未来の私の番となるかもしれないであろう子。その名前を忘れないように、小さくつぶやく。


「ああ、それともう一つ大切な事を伝えておく」


『?』


 子の名前以上に、男が伝え忘れていた大切なこととは何なのか。分からなかった『私』は首を傾げると男は肩をすくめた。


「お前の名前、というよりは呼び名、というべきだろうがな」


『‥‥呼び名?』


 その時の『私』は、今に至るまでずっと感じていた、自身の欠けている何かが埋まるそんな予感に突き動かされるようにスサノヲにそれが何か聞き。それに答えるようにスサノヲは口を開く。


永遠なる(エターナル・)星龍(レイドラゴン)。それがお前の呼び名だ。けど、これはあくまで呼び名であって名前じゃない。だから俺の子供に会ったら付けてもらえ。お前の名前を、な」


 そう、告げると同時に彼を中心に風が集って輪郭はぼけていき、風が収まるとそこにはもはや誰もいなかったけれど。私にはそれを気にする余裕は、なかった。


永遠なる(エターナル・)…‥‥星龍(レイドラゴン)


 まるで、失っていたものが嵌った。そんな感覚と共に、私はその呼び名を繰り返しながら、翼を広げ空へと飛び立ち空を駆け、初めてのはずなのに知っている、この世界で最も高く人が到達できない山脈カエルム山脈へと向かい、山脈の洞にて私は高揚感に似たものを感じながら眠りに就いた。



 そして、月日は流れ。私はスサノヲが言っていた子が生まれたのを本能的に知った。そして、スサノヲが言っていた通り、色々な事に巻き込まれることも、一緒に。


 そして、十歳になった彼、シルヴァと出会ったその日の夜。パーティーと呼ばれるものが終わり、私は二階にある一室のベッドで体を横たえていた。


「ふかふか」


 知ってはいた。けれど実際に体験したふわふわと温かさに、私は捕われていた。そして、この部屋を用意してくれたのは、私に名前を付けてくれた約束の子であるシルヴァ、その母親であるリリフィアで。

 部屋を用意してもらった私は外に寝るつもりでいたのを伝えると。


「もう‥、貴女を外で寝かせるわけないでしょ?それに、シルヴァの花嫁なら私たちの家族よ」


 困った表情で、でもその後、リリフィアは私を優しく抱きしめた。


「それにね、私、息子もいいけど娘もいいなって思っていたのよ。だから、そんな事を気にしないでいいのよ」


 そう言ってくれたリリフィアに私は、不思議な感覚を覚えながら体はそっとリリフィアの背中に手を回して。


(暖かかった‥‥)


 抱きしめられたその時の感触と暖かを思い出して私はそう感じた。

 今日までの長い間、誰一人とも触れ合った事がなかった私にとって。それはとても心地が良くて胸が温まるもので。母というのはああいうものなのかもしれない、そう感じた。


 そして、私は身に着けていたドレスから白を基調としたワンピースタイプの寝巻へと着替えてベットに横になったけれど、いつもならすぐに眠れるのに眠れなくて。それから少しの間横になっていたけど、全然眠れる様子はなかった。


「‥‥‥‥」


 私は用意された部屋を出ると、そのままある部屋へと向かい、その部屋の扉をノックすると、直ぐに返事は帰ってきた。


「は~い。だれ~?」


「私」


「あら、エルちゃん? 少し待ってね」


 返事が返ってきてすぐに扉が空くと、そこには私と同じタイプの寝巻の上にガウンを羽織ったリリフィアが立っていて、そのまま私を部屋に入れてくれて、椅子へと座らせてた後、リリフィアが口を開く。


「エルちゃん。もしかして、眠れないの?」


「どうして分かった?」


「う~ん。母親の“感”かな?」


 曖昧な笑みを浮かべながら私の言葉を待ってくれて。私を口を開く。


「今まで、寝ようと思えば眠れた。けど、今はなんだか胸の辺りがドキドキして、眠れない」


「そう。じゃあ、それだけ今日が楽しくて、寝るのが名残惜しいのかもね?」


「名残惜しい?」


「そう、エルちゃんは、今までずっと1人だった。だからこそ今日のパーティーが楽しくて、それが寝れば終わる。それが寂しい。そう思ったんじゃないかな?」


「寝るのが‥‥寂しい」


 それは、考えても見たことがないことで。でも、不思議と名残惜しいという言葉を含めてしっくりと感じた。


「けど、寝ないのは女の肌の敵だから、今日は一緒に寝ましょうか?」


「…一緒に?」


「ええ。エルちゃんはシルヴァの花嫁さん。まだ、本当に決め切れていなくても、私にとってはもう家族も同然で、大切な娘よ」


 そういうが早いか、リリフィアは一足先にベッドへと向かい、予備の枕を自分の枕の隣へと置く。


「これでよし、じゃあ、一緒に寝ましょう?」


 そう言うとリリフィアはベッドへと入り。私もそれを真似るようにベッドに入ると、リリフィアは優しく私を抱きしめてきた。


「大丈夫。楽しいのは 今日だけじゃない。これからもあるの。だから、安心して眠りなさい」


「‥‥うん」


 リリフィアはそう言いながら優しく私の頭を撫でてくれて、それが気持ちよくて、暖かに包まれた私はすぐに眠りに落ちていき、微睡の中に見えたのは、優し気な笑みを浮かべるリリフィアの姿だった。





 幸せそうな寝顔を浮かべる息子であるシルヴァの花嫁にして、龍であるエルちゃんのあどけない寝顔を見ながら私は、ここにはいないあの人に語り掛けるかのように口から言葉が漏れた。


「貴方…どうか二人を見守ってあげて」


 私はそう願うように言葉を言うと、疲れが押し寄せて眠りへと落ちていき、完全に眠ってしまう直前、一陣の柔らかい風を感じた。


『大丈夫さ。お前と俺の子供だ。それにこの二人なら、超えていけるさ』


 そう言っているような気がして、私も、眠りに就いた。

エルが過去にあったスサノヲとの約束は果たされる。…スサノヲって、どの具体の強さなんでしょうね‥‥(すっとぼけ)と言いますか、今回、ほぼほぼ新規執筆みたいな感じで、過去の自分を久々に殴りたくなりました(文章校正が(今も)下手すぎる)


次話に関しましては、改稿が改稿するための原本が出来次第改稿しますので、皆様、今後も改稿をしていきますので、どうかよろしくお願いします。また、誤字脱字のご報告、評価や感想などを頂けると嬉しいです。


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