始まり。(前編)
走る。口に含まれているパンを飲み込みながら。信号が赤から青に変わるのが遅く少し焦りながら。
そして僕は止まる。今日から入学する学校を前に少し浮き足立ちながら。
前川 周視それが僕の名前だ。よく女の子っぽいとか、似合わない、なんて言われる。それは自分でもわかるし、何かを言う気もないけど、ひとつ言わせてもらえるならば、このふたつの漢字を初見で【まみ】と読める人がいない事ぐらい。
特徴があるのはそこだけで僕の見た目は黒髪黒目、背は170あるかないかで、もしかしたら160後半かも。
そんな思考を停止する。なぜなら僕の求めて止まない物があるかもしれない、この県立浜内高校の入学式がついに始まるからだった。
入学式はあっというまに終わった。そして発表された。クラス編成というやつが。
1ーB。僕は自分のクラスを確認して、次に紙に羅列されてある文字を確認する。ぶっちゃけクラスに知り合い一人もいないのは少しきつい。
だけどそれは現実にならない。紙には繭川 美輝という文字があったから。
それを見てホッとする。繭川 美輝という少女。中学生からの知り合いで仲が良いから。というのもあるが彼女はとても穏やかで優しい。
もちろん、女の子にも好かれる。一部その仕草なんかを勘違いして、猫を被っているなんて言う人もいるけれど。
彼女には色々助けてもらっている。父さんとおんなじくらいに尊敬の的である。
本当にあんなに優しくて、確か料理も勉強もできる女の子はあの子以外僕は見たことが無い。
「まみくん、よろしくね」
そこに現れたのは繭川 美輝 その人だった。身長は160cm程度。短すぎず長すぎないおさげ髪。