第24話 「俺のせいだ」
ルナを追ったユアンが手ぶらで帰ってきても、俺は彼を責めることが出来なかった。
自分の魔法で未だ眠っているアルパを見つめるサンが悔しそうな表情を浮かべても、俺は彼女の感じている責を軽くすることが出来なかった。
何も知らないアルパが目を覚ましても、俺は彼に謝ることが出来なかった。
「俺の、せいだ・・・」
俺たち以外何もいなくなった塔の中。俺はその言葉を発する以外何も出来なかった。
「シュラ・・・」
俺が選ばなければマリアは連れて行かれなかったかもしれない。
俺がもっと強ければルナを倒すことが出来たかもしれない。
俺がもっと。もっと。
「くそ・・・!」
過ぎていった選択肢が、頭の中を駆け巡る。
「シュラ様・・・」
若い男性の声が後ろから聞こえ、反射的に振り返った。そこには、マリアの父親がいた。
「アロンさん! どうしてここに・・・」
「先ほど、塔の1階がなくなり、1つのドアが出現しました。そこに入ったら、この部屋に。ここは一体・・・」
アロンさんが、部屋の壁一面に埋められている小さい金色の繭に目を瞠る。
次期魔王がいなくなったから、塔に細工をしておく必要もなくなったってことか。
「ところで、マリアは?」
「マリアは・・・」
何も知らないアロンさんの表情が、俺の心を締め付ける。
「すみません・・・。マリアは、連れ去られました・・・」
俺たちは、何があったか全てアロンさんに話した。
それは、アロンさんにとって知りたくなかった事実であるはずなのに。最後まで、俺たちに怒声は飛んでこなかった。
「何があったかは分かりました。シュラ様、サン、ユアン。マリアを守ろうとしてくれてありがとう」
「でも! でも俺たちは! 守れませんでした! 守れなかったんです・・・! お礼を言われる筋合いなんて」
アロンさんは静かに首を振った。
「マリアも領主の娘です。あの子が一緒に行くと言った以上、覚悟をさせました。何があっても、自分の責任だという覚悟を。だから、マリアが連れ去られたのはシュラ様のせいではありません。あの子の力が足りなかったということです」
マリアが持っていた覚悟。それは俺が信じられなかったマリアの本当の姿だった。俺が大切にできなかったものだった。
だからやっぱり、俺のせいであることには変わりないんだ。
「アロンさん。すみませんでした」
頭を下げるしかない俺の言葉に込められた意味をアロンさんは知らない。
優しく置かれた頭の上の手を払いのけることを、俺はずっと我慢していた。




