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第22話 「こいつはヤバい」

 繭から放たれた衝撃に、一瞬で“ヤバい”という言葉が頭を駆け巡る。


 何とか防御をしようと、2本の剣を身体の前に掲げた。


「シュラ! サン!」


 ユアンの叫び声が聞こえた瞬間、目の前を黒い羽が覆い隠す。


「大丈夫か?」


 ユアンが羽を広げて俺らを守ってくれたようだ。隣を見ると、サンは鋭い目線で繭を見つめていた。


「なんだあいつ」


 初めて聞いたサンの声色に、その事態の重さを把握する。


 ユアンの羽の隙間から前を覗くと、繭の前には人型の“ナニカ”が佇んでいた。その肌は黒く染まり、背中には羽というよりは翼に近い形状の物が付いている。ヒューマニーでもチキナーでもコナーでもない。


「誰ですか? あなたたちは。ここは、どこですか?」


 目の前の“ナニカ”から、少年のような高めの声が発せられた。どうやらこいつも、状況は分かっていないようだ。


 ただ、その問いは俺たちが聞きたい。


「それはこっちのセリフだぜ? お前は何だ?」


 ユアンは額から汗を垂らしながらも、精一杯の虚勢で言葉を発した。


 衝撃をモロに受け止めてくれたユアンの羽は、切り傷が入り震えている。痛覚はないらしいが、衝撃の強さを一番理解しているのはユアンだろう。


「僕? 僕は・・・あれ? 僕は何だろう?」


 ぎょろっと見開かれた目を右往左往させて、“ナニカ”は首を傾げた。周囲を見渡してはその奇妙さに目を瞠り、何も分かっていないのか、自分の形状にすら驚いているように見える。


 いきなりの衝撃で圧倒されたが、その様子はまるで生まれたばかりの赤ん坊みたいだ。


「お、おい。お前。自分が何でここにいるのかも分からないのか?」


 勇気を出して問うてみると、ぎょろっとした目が俺の方へ向けられた。


「うん。分からない。気が付いたら目が覚めて。ここに君たちがいて。排除しろって聞こえて。・・・そっか。君たちを排除しなきゃいけないのか。あれ? でも君はなんか懐かしい匂いが・・・」


「に、匂い・・・?」


 物騒な言葉と共に“ナニカ”が近づいてくる。その歩みは堂々たるもので、あまりにも自然すぎて動けない。


「おい!」


 近づいてきた“ナニカ”を警戒するようにサンが剣を抜いて立ち塞ごうとした直後。


「ストーップ!」


 部屋の中に声が響き渡り、1人の男性が舞い降りた。


 そう。舞い降りた。天井があるのかどうかも分からないほど霞んでいる上の方から。そんなにも上の方からなのに音もなく。まるで、最初からそこに存在していたかのように自然に。


 ユアンのように羽があるわけでもなく、一見ヒューマニーに見えるその男性。黒いスーツのような服装に身を包み、軽やかな足取りで“ナニカ”に近づいていく。


「お早い目覚めですねぇ。次期魔王様?」


 嘲笑うかのように言い放ったその言葉は、男性以外のその場にいた全員を驚愕させた。


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