第19話 「大切なものはなんだ?」
第4エリアに入った昨日。俺たち3人はマリアに内緒で作戦を立てた。
その1つが、マリアを1階に置いて行くこと。
サンには女心が分かってないと反対されたが、そんなことを気にしてられない。それよりも、マリアが傷つかない方が俺にとっては大切なんだ。
結局、サンの魔法によってマリアを眠らせ、バリアを張って1階に置いておくことになった。
そこにイレギュラーのアルパが加わったが、作戦には何の支障もない。
「特魔法、バリアス」
サンが魔法を唱えると、2人の上に薄い膜がかかった。
「よし。これでいいな。お前も安心だろう、シュラ。そろそろ本命にいくか」
マリアとアルパの様子を見て、ユアンが先へ歩を進めようとした。
「いやいや! ちょっと待て! まだ聞きたいことがある。お前のその羽、どうしたんだよ!」
引き留めようと伸ばした俺の手が、ちょうどユアンの黒い羽に触れた。昔触った時と、その感触は何も変わっていない。
「見てただろう? アルパから貰ったんだよ」
「ああ。見てたさ! 見てた上で聞いてるんだよ!」
「空中を無限に飛ぶことが出来る黒い羽を持つやつは、一定の範囲内にいるチキナーにその力を渡すことも出来る。だが、それには条件がある」
ユアンの代わりに説明してくれたサンは、自らの魔法を確かめるようにマリアとアルパを見つめている。
「条件?」
「法力の量が同程度であること。外でわざわざアルパの前に行ってまで見たのは、それだろう? ユアン」
「ああ。そうだ。アルパは俺のように皆無とまではいかないが、法力がほとんどなかった。条件の合うやつなんて中々いないからな。俺も初めてだったが、上手くできて良かった」
ユアンは上機嫌に自分の羽を見つめる。
なら本当に、こいつはアルパをその為だけに連れてきたのか。
「サンは、面倒ごとが増えなければ良いと、そう言ったな?」
「ああ。アルパをここに置いて行くなら、負担が増えるわけではないからな」
「でも、俺はそうは思わない。アルパがここを守りたいって付いてきた気持ちを、ユアンは踏みにじったんだぞ!」
そりゃあ、アルパがここに来たいって言わなければ、ユアンもアルパに力を貰うことを思いつかなかっただろう。そして、1階に置いて行くのであれば、アルパに危険が及ぶことはないだろう。
でも、ここを守りたいと付いて来たこいつに、力だけ貰って置いて行くなんておかしい。
「何だよ、それ。シュラがそれを言うのか? マリアの気持ちを踏みにじったお前が?」
ユアンへの怒りに、なぜかサンが反論をした。
「マリアの気持ち?」
「マリアだって、シュラを守りたいと思ったから一緒に行くことを条件に挙げた。それをお前は自分にマリアを守る覚悟がないからって逃げたんだ」
「でも! サンだって賛成してくれたから魔法をかけたんじゃないのか?」
「私は! お前が! シュラが、お願いしたから・・・」
サンが口をしぼませて押し黙る。
もしかしたら俺たちは、身体の安全よりもっと大事にするものがあったのかもしれない。
「はい。そこまで。シュラとサンの言いたいことは分かった。でもシュラ。俺は、アルパの気持ちよりも、ここで生きて帰る確率を上げたい。俺の力が増えれば、それだけ勝率も増える。このチームの参謀役として、俺は使えるものは何でも使うぞ」
ユアンの言い分はもっともだった。
作戦を立ててくれるユアンに、俺が責任を押し付けるのは間違っている。
「分かった。悪かったよ。とりあえず、頼まれたことを終わらせて、生きて帰ろう。言い争うのはその後でいい」
「うん。私も悪かった。マリアとアルパにかけた魔法は大丈夫だ。数時間は目を覚まさないし、外からも内からも干渉できないバリアを張ったから」
サンは2人から目を離し、1階に唯一あった階段の方へ足を進める。
「よし。なら、行こうか」
俺たちは、ラウンジの2階へと足を踏み入れた。




