第1話 「ただいま帰りました」
「父上、母上。ただいま帰りました」
「お帰り、シュラ」
サンとユアンと城に帰ってきた俺は、まず父上と母上に挨拶に行った。父上も母上も8年前と全く変わっていない。
「大きくなりましたね、シュラ」
母上は俺を見た瞬間、抱きしめてきた。こういう親バカな所も全く変わっていない。正直、サンとユアンがいる前ではやめてほしい。
「国王様。お久しぶりです」
「ロトの息子か! 大きくなったな」
俺は14歳、サンとユアンは16歳になり、体つきは昔と全く変わってきた。
「国王様、女王様。お久しぶりです」
「サンも女性っぽくなったな! なあ、リュン」
父上が部屋の隅に控えていたリュンに話をふる。
「ええ。ところで、何故今回帰ってこられたのですか?」
こいつも相変わらず鋭いな。
「何でって。休みに帰郷したらいけない道理もないだろ?」
「今まで一度も帰郷されなかったではないですか」
確かに、俺は城を出て初めて帰ってきた。だからって、いきなりその事情に踏み込まなくても。
「シュラ」
ユアンの言いたいことは分かっている。いつかはちゃんと言わないといけないことだ。だけど、今言っても反対されそうで怖い。
「あのですね、父上。実は……」
「うわ!」
大きな音がした入り口を、部屋の中にいたものが一斉に振り向く。
「もう! だから押すなっていったじゃないか! マーラ!」
「あんたがちゃんと支えないからでしょ! ニコラのバカ!」
入り口から入ってきたのは、俺の弟と妹だった。
「ニコラ様、マーラ様。部屋に戻るように言ったではないですか」
「だって…」
「お兄様に会いたかったんだもん」
俺と似て、リュンの言うことはあまり聞かないらしい。
「ニコラ、マーラ。今はシュラと大事な話しをしているから、あっちに行っていなさい」
「嫌だ! 僕らも大きくなったもん! 王子様だもん! 話に入れてくれてもいいじゃん!」
「シュラ。お前の弟はお前と違って王子としての自覚があるようだな」
サンが面白そうに囁いてくる。そりゃ、王子として育てばそうだろうな。
だが、父親にも反抗するか。
「それでこそ、俺の弟と妹だ」
俺は、2人に近づいて2人を抱き上げた。
「父上。リュン。俺が帰ってきたのは大事な話しがあるからです。でも、今日くらいはゆっくり帰郷を味あわせてください。大事な話しはまた後日に」
「分かった。ゆっくりしなさい。シュラ」
「はあ」
リュンのため息はしっかりと俺の耳に届いた。
「よし! ニコラ、マーラ。俺たちと遊ぼう!」
「私、お姉さまとも遊びたい!」
「ああ! いいぞ。私とも遊ぼうな」
どうやらサンも子どもは好きらしい。
「ユアン。お前も来いよ」
「はいはい。王子様」
ユアンは呆れながらも、俺からニコラを奪い取った。