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第17話 「俺よりチビが何を言う」

 第4エリアに足を踏み入れた翌日。アロンさんが言っていた通り、塔の前には多くの住民が集まっていた。


 俺たちが立たされている中央に向かって右に、ビケルによく似た髭面のおっさんを筆頭とした頭の固そうな男性たちが並ぶ。

 そして向かって左側には、ひょろっとしたチキナーを筆頭として、どいつもこいつも背中には羽根を持っている。


 なるほど。右がジュゲッカ家。左がモース家というわけか。


「みなの者。本日は集まってくれて感謝する。こちらにおられるのは、この国の王子、シュラ・イレーゼル様だ。今回、ラウンジの中を視察するために、第4エリアまで足を運んでくださった。みな、無礼のないよう頼む」


 アロンさんが、領主然とした態度で俺の紹介をしてくれる。


「では、この後、シュラ様。そしてご友人であるサンとユアン。私の娘のマリアがラウンジに入る。異論はないな?」


「ちょっと待てよ!」


 モース家の当主のちょうど真後ろ。挙げられた手がちょんまげみたいにユラユラ揺れている。


「アルパ! お前、何を言いだしてるんだ!」


 モース家のひょろっとした当主が止めに入るのも聞かずに、その少年は一番前に躍り出た。


「おやじは黙ってろ。王子様がどんなやつかと思えば、こんなガキで。そんなやつに俺たちの大事なラウンジを任せられるかよ」


 俺のことをガキだとのたまうそいつは、俺よりは確実に小さい。下手すればマリアより小さい。しかも、その羽は黒く染まっていた。


「すいません、王子様。バカか、お前は。お前がそんなこと言っても、お前には何も出来ないだろ。王子様は俺たちがこれ以上諍いをしないように来てくださったんだ。ここで反論するってことは、ジュゲッカの方にケンカを売るのと同じだぞ」


 家同士でケンカしていると言うからどんな当主かと思えば、意外に事態を把握出来ているらしい。


「ケンカしてんのは、あんたたちだけだろ! 俺はただ、俺たちの領域を知らねえ内に荒らされるのが嫌なだけだ!」


 アルパとか言う少年は、俺たちの方を力強く見た。その視線から目を外すようにユアンを見ると、至極面白そうなものを見つけた笑みを浮かべていた。


「ユアン? 何か見えたのか?」


 人とは違うものが見えている彼は、俺の質問に笑みを深める。


「シュラ。少しだけ、俺のわがままで動いていい?」


「あ、ああ」


 俺たちのまとめ役として動くユアンがそんなこと言うのは珍しいが、よく考えたら彼は基本面白いことには忠実なやつだ。俺の許可を取ったのは、一応公的な場だからだろう。


 おそらく俺が頷かなくても動いただろうスピードで、アルパの前に繰り出した。


「チビ。名前は?」


 俺よりは背の高いユアンが見下げると、アルパが少しだけ怯んだ。


「アルパ。アルパ・モース」


「アルパ。そこまで言うなら、お前も一緒に来るか?」


「え? いいのか?」


「ああ。シュラ。サン。いいよな?」


「いいけど・・・。でも、そいつ強いのか?」


 サンの疑問は真っ当なものだ。何があるか分からない中でマリアも守らなければいけないのに、その上アルパの面倒まで見るとなると荷が重い。


「俺が保証するよ」


 俺たちは、ユアンの見えているものを信じるしかなかった。


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