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第16話 「やってきました、第4エリア」

 第4エリアでは貿易業を営むモース家とジュゲッカ家の2大名家が名を馳せていた。しかし、その2つの家系は20年も前から覇権争いを行っている。


 そのことを俺は、学校でも習ったし、ビケルから聞いて知っていた。


 だけど、その争いの規模がどのくらいなのかは知らなかったんだ。


「シュラ! お前、それ以上そっちに行くと・・・」


「うわっ!」


 目の前に飛んできた矢を間一髪の所で避ける。


 山に囲まれた第4エリアに入り、エリアを縦断する大きな通りを歩いていた矢先の出来事だ。


「な、なんだ、今の。ビケル! お前、まだ俺に言ってないことあるよな?」


 目を細めてビケルを睨むと、ビケルは困った顔をして頭をかいた。


「すまん。ユアンから聞いてると思ってた」


 ビケルが隣にいるユアンに視線を送ると、ユアンはニヤッと口角を上げた。


「実際に見た方が分かりやすいだろ?」


 間違いない。ユアンは確信犯だな。


「シュラ様! 大丈夫ですか?」


 俺たちのやり取りを見て、1人青い顔をしているのはアロンさんだ。


「ああ。大丈夫です。ユアン。どういうことだ」


「ビケルの家ともう1つの家が争っているのは知ってるな? 武力を持ち出しているわけではないが、その争いは地形にも発展している。その証拠がこの線だな」


 ユアンは俺の足の先にある赤い線を指さした。


 さっきは気が付かなかったが、通りを分けるように赤い線が引いてある。それを目で追うと、大きな塔が映った。


「第4エリアを2つに分け、お互いの家の者やそこで働いている者は相手のエリアには入ることが出来ない。それを破ったら・・・まあ、今の通りだな。領家の人間とか、外からの関係ない人間は反応しない仕掛けのはずなんだが。ラウンジのことで気が立ってるのか? 王子様に矢を向けたなんて知れたら、家ごと潰されるだろ」


 ユアンは思案しながらも、何故か楽しそうだ。


「ったく。早く言えよ」


 しっかりしているくせに、人の反応を楽しもうとするところは、ユアンのじいちゃんそっくりだな。


「で、あれがラウンジか?」


 俺の指先を全員が見た。


 塔の頂上は雲の上まで伸びており、上がどうなっているのかは分からない。ふもとの方は他の建物が邪魔をして見えないのだが、見えている限り、窓はない。レンガで囲まれた茶色い塔だった。


「そうだ。あの塔が赤い線の上に立っていることも、争いの原因なんだ」


 ビケルが疲れた顔で同意した。


「シュラ様。先ほどの仕掛けはおそらくモース家のものです。申し訳ございません。このエリアの者に王家に介入してもらうことを認識してもらうために、明日、塔の所にみなを集めております。今日は、私の家でお休みください」


「分かりました。アロンさん、お世話になります。行こう、ユアン。サン。・・・サン?」


 俺が矢を避けた時からずっと黙っていたサンは、塔をじっと見つめていた。


「どうした? 何か気づいたのか?」


 ユアンが顔を覗き込むと、サンはやっと顔をこちらに向けた。


「シュラ。ユアン。お前らもあいつと話しできるなら、今日の内にしておけよ。おそらく関係あるぞ」


「あいつら?」


 同時に首を傾げた俺たちに答えを返さずに、サンはアロンさんの後を付いて行った。


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