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第15話 「ラスボス感が半端ねえ」

 父上の許しは得た。マリアの条件もクリアした。ユアンとも誓いを共にした。


 1週間後の旅立ちまで、俺たちの道を遮るものは何もないと思っていた俺は、大事な一人を忘れていた。


「それで? 何であなたはそうやって何でもかんでも許可を出すのよ!」


 国王である父上に唯一意見が出来る人物。


それが、今俺と父上が正座をする目の前で仁王立ちしているミル・イレーゼル。俺の母上である。


「いや、しかし・・・。国民の願いを無下にするわけには・・・」


「しかしも何もないわよ! あなたはシュラが心配じゃないの? ねえ、リュン!」


「女王様の仰る通りです」


 リュンは神妙な顔つきで頷く。


 リュンを味方につけるなんてずるい。俺の後ろで同じように正座させられてるユアンもサンも何も言えないじゃないか。


「で、でも、母上。俺は友人の頼みを断りたくありません。学校で助けてくれたビケルを、今度は俺が助けたい!」


「だって、あなたが帰ってきて、まだ数日しか経っていないのよ。私、あなたにまだ母親らしいこと何もしてあげれてない・・・」


 もしかして、母上はずっと気にしていたのかもしれない。


 6歳で家を出て、それまでだって、母上と常に一緒にいたわけではない。俺の世話も、ほとんどニールがやってくれていた。


「もう母親のいないサンとユアンにだって、私はもっと色んなことをしてあげたかった・・・」


 母上の目元に涙が溜まっていく。


 二コラとマーラに構っていた分、俺に構えなかったことが心残りなのかもしれない。


 サンとユアンに目配せをすると、2人も俺を見てきた。

 大切な友人の頼みを無下に出来ないように、大事な母上の気持ちも無下には出来ない。


「リュン。母上の仕事は?」


「毎日の書類のチェックと各地の収穫高の報告を聞くことは国王様か女王様が為さらなければいけないことです」


 リュンは俺の思惑を感じ取ったのか、簡潔に述べた。


「ならそれは俺と父上でやる。王族の俺なら母上の代わりになるだろ?」


「ええ」


「母上。旅立ちは1週間後。それまで母上の公務は俺が引き受けます。その代り空いた時間でサンとユアンと共にいてください。俺も出来るだけ母上と共にいます。だから、俺たちが旅に出るのを許してください。ずっとあなたの子どもではいられない俺を、受け入れてください」


 母上の気持ちも分かる。


 でも、俺だって父上の仕事を手伝えるくらいには成長した。


 ずっと子どもではいられない。ずっと母上のそばにはいられない。


「あなたはもう、私が心配してあげなきゃいけない子どもではないのね」


「でも母上。俺は、どこにいたってシュラ・イレーゼルです。8年前、母上が言ってくださったように、ここが帰る場所なのは変わりません。母上と父上が俺を想ってくれているから、俺は俺の友人のために、この国の国民のために、シュラ・イレーゼルであろうと思えるのです」


 悲しそうな母上を、俺は初めて自分から抱きしめた。


 8年前とは違う。母上の小ささを俺はこの手に感じた。


帰郷編はこれにて終了です!

次回からはダンジョン編が始まります!

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