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第13話 「思わぬ伏兵がいました」

 突然現れたアロンさん、マリア、ビケルをつれて、俺たちは父上の部屋に戻っていた。

 母上は俺の勝負が中断して不服そうな弟たちの世話。

 ミッヘルは勝負によって中断されていた国軍の仕事に戻った。


「さて、ビケルと言ったな? 詳しく説明してもらえるか?」


 玉座に腰を下ろした父上が、目の前に立つアロンさんたちを見下ろす。俺は父上の隣に立たされているが、ちょうどよい。父上から俺の顔は見えない。


 第4エリアに行くということは、大手を振ってこの城から出れる。そのついでにどこか寄り道をしたところで文句を言うものはいない。リュンもシークもまだ戻っていない。この部屋に俺が旅をすることを反対するのは父上のみ。今のうちに説得できることを考えると、自然と顔がにやけてくる。


「はい。第4エリアにて、ジュゲッカ家とモース家が20年前から争い続けていることは、国王様もご存知のことかと思います。その原因は第4エリアにあるラウンジ」


「ラウンジ?」


「シュラ様。ラウンジというのは、20年前、第4エリアに突如出現した塔のことです。誰が作ったのか我がヒュート家の全勢力を上げて調査をさせたのですが分からず、1階に椅子が並び市民の憩いの場になったことから自然とラウンジという名が付きました。ただ、2階より上に行ったものは今まで誰もおりません」


 アロンさんが困った顔で教えてくれた。


「もちろん国からも軍を派遣した。まだ、シークが軍隊長の時でな。だが何も分からなかった」


 ラウンジなんて、聞いたことがなかった。憩いの場になっているとはいえ、2階以降は未知の世界。いわゆるダンジョンか。


「何で、それが争いの原因になるんだ?」


「ジュゲッカ家とモース家は第4エリアの土地を半分ずつ所有している二大権力者だ。それを第3者であるアロンさんが国から派遣されて統括するという二重統括の形を取っていた。そんなところに持ち主不明のものが現れた。どっちが所有するのかっていうケンカだよ。幸い武力を持ち出しているわけではないが、市民さえも巻き込んだ大ゲンカだ」


 ビケルは呆れたように肩を落とす。ケンカしているのが実の父ともなれば、気持ち的に複雑なのだろう。


「それで、なぜシュラが出るという話になる?」


 そこが本題だとでも言うように、父上は目を鋭くさせた。


「実は先日、今まで1階部分しか入れなかったラウンジに、2階に行く入口が出現しました。ジュゲッカ家とモース家の者がこぞってそこに入ろうとしたのですが・・・」


 言い淀んだアロンさんは、目線をマリアに向ける。それを受けて、マリアは恐る恐る口を開いた。


「そこに入れたのは、私を含む20歳以下の人だけでした」


「大人が入れない・・・」


「魔法・・・?」


 人魔法の一種か?


 待てよ。魔法なら、ビケルは。


 俺がビケルに目を向けると、彼は首を横に振った。


「俺も入れなかった。魔法ではない何かだ」


 堂々と言い切ったビケルだが、要は何も分からないということだろ。


「第4エリアに強さを備えた子どもはいませんし、私の娘を行かせるわけにもいきません。そこで、ビケルがシュラ様の友達だと言い出しまして」


「シュラが里帰りしていることを聞いてな。王家の者なら、ジュゲッカ家からもモース家からも異論はない。さらに、今ならユアンやサンも一緒にここにいるんだろう? 学園でもトップのお前たち3人が来てくれるなら、心強い。国王様。どうか、シュラ様のお力を貸していただけないでしょうか」


 ビケルは父上に向かって深々と頭を下げた。


「うーむ・・・」


 渋る父上の気持ちは分かる。


 元々俺が強くなるのに反対し、今は旅に出ることに反対をしている。何の危険があるか分からないラウンジに行かせるわけにはいかないし、一度国を出してしまえば寄り道という名の旅をしたところで文句も言えないことを分かっているのだろう。


 しかし、国王として国民の願いを無下にも出来ない。父上も、この状況では王家の俺を派遣することが一番いいと分かっているはずだ。


 俺にとっては渡りに船。この機会を無駄にするわけにはいかない。


「父上。渋る気持ちは分かります。しかし、王家の者として、国民の頼みを断るわけにはいかないでしょう。父上が俺を次期国王にと望むのなら、なおさら俺が行くべきだと思います」


「しかし、どんな危険があるか・・・」


「俺の、俺たちの力は先ほど十分お見せしたはずです」


 あの3人に、1勝1引き分け1無効は十分だろう。


「父上。少しは息子である俺を信頼してください。俺は、友人であるビケルの願いを断りたくありません。それに、マリアがいる第4エリアにそんな危険な場所があることを見過ごしておくことは出来ません」


「うむ。分かっ・・・」


「待ってください」


 父上が首を縦に振ろうとした瞬間、か細い声が響いた。全員がその本人へと顔を向ける。


「私は、反対です。シュラ様に危険な目にはあって欲しくないです」


「マリア? いや、でも。俺しか行く人は・・・」


「どうしてもというのなら、私も付いて行きます!」


 目の端で、アロンさんが頭を抱えるのが映った。


 どうやら俺の想い人は、一筋縄ではいかない人物らしい。


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