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第11話 「これが俺の力だ」

 俺はメビウス学園に行って、様々な出会いをした。

 その中で出会った最高齢の人物。それが、俺の第二の師匠と呼ぶべき人だった。


「合成魔法・・・?」


 俺の魔法に吹き飛ばされたミッヘルが、片膝をついて苦悶の表情をしている。


 殺傷力のない魔法とはいえ、ゼロ距離でこれを食らって耐えるとは。さすが軍隊長か。


「リュンに聞いているかもしれないが、俺は特魔法が使えない」


「今のは、特魔法のように見えましたけど?」


 ミッヘルの疑問。いや、ここにいる全員の疑問かもしれない。

 その疑問の意図は分かっている。


「特魔法は、身体の中で法力を組み合わせて外へ放出する。だけど、特魔法が使えない俺は、身体の中で組み合わせることが出来ない」


 俺が剣を軽く振るうと、残っていたウォールの水滴が軽く飛んだ。


「その剣に何か秘密が?」


 勘が鋭いな。


「そうだ」


 2本の剣を重ねてミッヘルの前に掲げる。

 ミッヘルは剣をじっと見つめるが、何も剣に細工がしてあるわけでもない。


「身体の中で出来ないなら、外でしてみればいい、というわけだ」


 俺は一旦剣をしまい、両手をミッヘルの方に突き合わせる構えをした。


「右手にウォール。左手にウィン」


 右手に水の塊が、左手に小さな竜巻が出来る。


「ここまでは剣がなくても出来たんだが、どうにも合わせるのが上手くいかなくて」


 その魔法を保ったまま、それぞれ剣を引き抜く。そのまま剣を交差させた。


「合成魔法ウォール・ウィン」


 剣の先から水をまとった竜巻が空の彼方へ飛んで行った。


「剣を媒介にして2つの魔法を合成する。それが、特魔法が使えない俺が創った合成魔法。これが、俺の強さだよ」


 呆気にとられたミッヘルが俺を見つめる。


「そ、そもそも、両手から魔法が出るっていうのは・・・」


 魔法は利き腕からしか出ない。それは知ってる。


「それは、まあ。天からの贈り物ってことで」


 人差し指を立てて笑顔を浮かべた俺を見て、ミッヘルは頭を抱えた。


 剣が2本出来た時点で予感はしたが、おそらく俺の前の魂は死んでいない。

 両利きなのも、その名残だろう。


「そんなに細かく考えるなって」


 未だに悩ましい顔をしているミッヘルは、ため息を吐いて剣をしまった。


「さすが王子様は規格外ですね」


「それ、褒めてんのか貶してんのか分かんないんだけど・・・。ていうか、まだ試合終わってないよね。何で剣収めて・・・」


 立ち上がったミッヘルの赤い瞳を見た瞬間、背筋に寒気を感じ思わず後ろに飛び去る。

 それと同時に、俺がいたところに雷が落ちた。


 黒焦げになった地面から煙が立ち上る。


「よく避けましたね」


「然魔法・・・?」


 電気を操る然魔法サンテック。だが、こんな威力はないはずだ。

 大体、ミッヘルの動作に、魔法を使うモーションはなかった。


「剣も魔法もどちらも疎かにせずに力を付けた王子様に敬意を表して、僕も本気で行かせていただきます」


「現軍隊長の本気・・・」


 唾を飲み込んだ音が、俺の脳裏に響く。


 今までの剣裁きだって、決して容易いものではなかった。

 しかも、剣を収めたということは、こいつの真打は魔法。


「ああ、それ。僕がなぜ軍隊長になれたかご存知ですか? この魔法のおかげですよ」


 ミッヘルが手を地面と水平に振ると、青空に陰りが見えてきた。

 太陽が巨大な黒い雲に隠れていく。


「まさか・・・」


 いつかのリュンの言葉がよみがえってくる。


『然の賢者級魔法は、天候を操るとか』


「然魔法の賢者級・・・」


「ええ。然魔法スカーライト。天候を操る魔法です」


 魔法で顔を変えているはずのミッヘルの笑みを見た瞬間、額から冷や汗が流れ落ちた。


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