汎発流行
俺達は何度もNINJA達に助けられた。
時に正面から、時に影の中から。
重火器でも軍隊でも戦闘機でもNINJA達には敵わなかった。
NINJA達に護られながら五年程過ごした頃だろうか。
この頃から俺達は気付き始めていた。
本当はNINJA何て存在しない事を。
NINJA達の所業は時にニュースを賑わす事があったが、そのどれも正体不明の武装集団による物として片付けられた。
NINJA何て荒唐無稽な話よりもありふれた武装集団の一つと解釈した方が遥かに現実的だったからだ。
しかし、その一方でNINJAの様な目撃情報も多数存在していた。
当時の俺達は、大蝦蟇や影から湧き出る様や細く長い片刃のナイフと言った俺達がそうだと感じる物に関する話しか認識していなかったが、中にはカラフルな装束に身を包んでいただとか亀の甲羅を背負っていたとか言う当時の俺達が知らないNINJAのイメージに則した話も多数存在していた。
明らかにNINJAのイメージが実体化している。
俺達がその事に気が付いたのは軍隊殺し事件の後だ。
そう、俺達の祖国だった場所で戦闘行為を続けていた全ての武装勢力が皆殺しにされた、未だに解明されていないあの事件の後だった。
国連を介して駐留していた先進国の軍隊すら差別する事無く、小規模な武装勢力も暫定政府と名乗る連中の私兵も、全ての兵士が首を斬られて死んだ。
生き残った非戦闘員が口を揃えて語る事件のあらましは、NINJAのイメージに則した人物が影から湧き出たと言う物だった。
祖国を失い世界中に散らばっていた俺達はネットを介して話をして、一つの仮説に辿り着いた。
いいや、違うな。
その事には皆もうずいぶん前から気が付いていたんだ。
NINJA達を造りだしたのは、俺達だと。
正体不明の何かに武装集団が制圧された事件は、いくら記録を遡っても俺達の学校が巻き込まれたあの一件が最初だった。
それは俺達の中で特定の一人か複数が引き起こした事象なのか、或いは俺達全体で引き起こした事象なのか。
それは今となっては分からないが、少なくとも最初の一件から先半年程は俺達が知るNINJAの特徴を持つ者のみが時折目撃されていた。
きっとそこまでは俺達だけのNINJAだったのだろう。
でも途中から俺達以外の誰かのNINJA像が混じって行ったのだろう。
NINJA噂が広がるにつれて、NINJAの外見は多様化してった様だった。
きっとその中にNINJAが殺すのは武装集団だけと言う認識が醸成されたのだろう。
軍隊殺し事件で非戦闘要員が生き残ったのはその辺りの条件が適用されたと俺達は考えている。
その結論に至った俺達は事態の収拾を図った。
だってそうだろう? NINJAが造り出した結果は皆殺し事件何て名称が付いてしまったのだから。
皆殺しの範囲が武装集団から全人類に切り替わったとしても不思議はない。
軍隊が無くなれば戦闘が起きなくなるなんてのは表面的な話に過ぎない。
人間は武器を持たない隣人にだって殺意を抱ける生き物だから。
その日、俺達はNINJA達を俺達のNINJAに戻すか、最低でもある程度の制御を可能にする事を決めた。
同時に、祖国を祖国へ戻す事も。
俺達は誰にも負けない力を手に入れたのだから。