愛情
「お嬢さん。美味しい林檎はいかが?」
「まあ、ありがとう。1つ頂くわ」
少女は、嬉しそうに真っ赤に熟れた林檎を受け取り、一口食べる。
すると、少女はバタリと床に倒れる。
一応、自分の娘だったがどうせ生き返るので罪悪感を感じる事もなくその場を立ち去った。
「た、助けてくれ」
森を歩いていると誰かの叫び声が聞こえてきた。
声の聞こえてきた方へ行ってみると、そこには、綺麗な湖とそこでバタバタと泳いでいる男性。
「助けてくれ」
「何をしているの?」
「見て分からないのか?」
「泳いでいる?」
「いやいやいや、これが!?、普通に溺れているだろ!?」
沈みそうになりながら、訴える男性。
「あら、そうなの?」
「助けてくれ」
「はあ、しょうがないわね」
と渋々引き上げた。
「ふぅ、助かった」
青年は、その煌びやかな格好からどこかの王子だろう。
「命の恩人よ。俺と結婚しないか?」
「はぁ?よくそんな台詞を言えるわね」
「で、返事は?」
「残念ね。私には夫と娘がいるわ」
「…」
「それに、この森には少女が住んでいるわ。その娘なんてどうかしら?」
私の娘でしかもさっきまで殺そうとしていたのだが。
「ああ、あの娘か。確かに可愛かったが、無理だ。見たところ7歳位。俺はロリコンでは無い。どちらかというと熟女の方が良い。人妻ならばなお良しだ」
「……」
そんな事、知らなくて良かった。
「という訳で、俺と結婚しないか」
「………」
いやいや、どういう訳だよ。
「はぁ」
やれやれ、と溜め息をつく青年。
「だから、お前は俺のタイプど真ん中なんだよ」
何を言っているのだろうかこの変質者は?
うん、無視だ、無視。
相手にするだけ無駄だ。
「さようなら」
「おい、待て」
立ち去ろうとする私を引き止める青年。けれど、それを無視して城へと戻っていった。
「やあ」
爽やかな笑顔で私の前に立っている青年。
何故だ。
「こいつは、隣国の王子でな。3日間だけこの国に滞在するそうだ。宜しくしてやってくれ」
と説明する私の夫否、国王。
それから、3日間毎日私の所に来ては、自分の国の話などいろいろな事を話し、段々と打ち解けていった。
「なぁ、やはり結婚は無理か?」
「まだ、諦めていなかったの?無理よ」
「……」
後日、城で働く侍女に聞いた話だが、森の姫は偶々通りかかった海辺の国の王子に助けて貰ったらしい。