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救世主?

ブックマークしていただけていて嬉しかったので、投下

 担架から若干はみ出ながら運ばれていく俺がタックルをかまして気絶させてしまった騎士さんが部屋を出ていくと、再び周囲の視線が俺たちの方に集中し始め、ざわついていた室内が徐々に静かになっていく。


 周囲の変化を感じ取った彼女は一度深呼吸をし、主に俺のせいでグダグダになってしまった場をなんとか整えようと頑張ってくれていた。


「それでは救世主様、改めましてご挨拶を。私はソルン教の巫女を仰せつかっているフレア・ユズリハと申します。ソルン様の神託により、貴方様のお世話をさせていただきます。以降お見知り置きを」


 少々ぎこちないが、がんばってる感は伝わってくる。そんな感じで彼女は再び深々とお辞儀をしながら自己紹介を行う。


 さっきもチラっと聞こえたが、神託って……正真正銘完全に救世主扱いじゃねぇか。あのクソ女神マジで余計なことしてくれる。

 それにこの子がお世話係とか正直微妙だ。なぜ男子の俺に女子を付ける?しかも美人。世話係に気を遣う自分という未来が目に浮かぶんですが……しかもしかもセットで後ろのゴツデカ騎士も付いてきそうだし。

 俺みたいな童貞には美人つけときゃとりあえずなんとでもなるだろ。とか思われたのかね。舐めんなよ?俺の悲惨な青春時代は女どころか全他人に対してビッグな不信感を育て上げたんだぜ?人間ってホントえげつないことやる生物だからなぁ……。


 っていやそうじゃねぇよ。今は重要なのはそこじゃねぇよ。俺、救世主(笑)だからなぁ……。しかもここは異世界……さすがに急に放り出されるよりかはここでお世話になった方がいいのかね。


 心の中でだけでため息を吐く。


 えぇと……一応俺も自己紹介しといた方がいいよなぁ……。


「俺……僕は秋津時貞といいます。苗字が秋津で名前が時貞です。よろしくです」


 同じように頭を下げてる。


「アキツ……様ですね。私のことはフレアとお呼びください」


 たどたどしい発音で俺を呼ぶフレアさん。様付け微妙だが、わざわざ直させるのもめんどいしいいか。んでなんかこの子偉いっぽいし様付けといたほうがいいのか?……まぁ~別にいいか。


「わかりましたフレアさん。それで……」


「アキツ殿」


 威圧感が声に乗ってカットイン。


「!?……はい?」


 情けないことに一瞬びくっとしてから恐る恐る声のした方……フレアさんの後ろにいる騎士に返事をする俺。この人はサラッと俺の名前を呼べてるし。たどたどしい感じだったらまだもうちょい怖くないのになぁ。

 フレアさんも不思議そうに騎士を見る。


「フレア様は教皇庁……いやこの国の尊きお方である。その言葉遣いはいかがなものか?」


「へ?あぁ、そ、そうなんですか。すみません、改めます」


 直後、ハッとした表情でこちらに向き直るフレアさん。


「アキツ様、お気になさらないでください。私のことは呼び捨てにしていただいて結構です。今、この時をもってこの国……いえ、この世界でもっとも尊きお方があなたなのですから!」


 フレアさんはこちらの表情を伺いながら早口でそう捲し立てるとすぐに振り返り


「フリードさん!」


 あぁーこの人フリードさんって言うんだ。


「……失礼しました」


 フレアさんの声も騎士の声も双方硬い。


 どうもよくわかんない関係性だなぁこの二人も。俺に対しての温度差も何やらズレてるし。こっちとしては別になんでもいいんだけど……何が地雷になって俺の首がチョンパされるかわかんないから結構めんどくさい状況ではあるよなぁ。


「と、とりあえず言葉遣いに関しては一応気を付けます。ただ、元々いた世界で僕はあんまり学のある方じゃなかったんで、そんなに期待されても困るんですが、それでいいでしょうか?えぇーっとフリードさん?」


「……心遣い、感謝する」


 その間は気にしちゃダメですね。まぁー彼からすれば同僚をいきなり襲った暴漢だし、護衛対象であるフレアさんにいつ何をするかわからないし気が気でないのやも?


「アキツ様……」


「フレア……様もそんなに気にしないでください。僕も悪いんですから。それよりもこの後ってどうすればいいんでしょうか?」


 様付けすることでまた表情が不安そうに揺れるがもうこの話題めんどいんで強引に次にいくこととします。


「救世主であるアキツ様にお気を使わせてしまい申し訳ございません。えぇと……この後ですが、こちらでお部屋をご用意するので、少しお休みいただいて、それから教皇様とお会いいただきたいのですが……よろしいでしょうか?」


 この子も色々大変そうだなぁ……俺なんかにいちいちこんなに気を使って。とりあえずは向うの予定に合わせますかな。一応救世主なわけだし悪いようにはされないだろ。もしされたら全力で抵抗するまでだしな。


「わかりました。それでお願いします」


「は、はい。ではこちらにどうぞ」




☆☆☆




 つ~まりは~単純に……


 軟禁ですねこれ。


 いやいいんだけどさ、いいの?って逆に聞きたいんですが。


 赤い絨毯が敷かれ、所々に高級そうな絵や壺なんかが置かれた天井の高い廊下を歩き、階段を結構上がった先、偉い人らしいフレアさん自ら案内してくれた部屋は落ち着いた感じのシンプルな部屋でした。


 最初のド広い部屋や途中の廊下と同じで生成色の石造り。んで窓が一つ、テーブルとシングルサイズのベッド、鏡台のある8畳くらいの部屋。

 

 勢い的には国賓みたいな感じだと思ってたんだが……窓に格子が付いてるんですが……。


 この世界でもっとも尊いとか言われた気がするんですが……扉には鍵がかかっているんですが……。


「若干、嫌な予感がするんですけど」


 一旦、思いっ切りため息を吐いてみる。


 まぁーホントなるようにしかならないんだろうからジタバタしても仕方ないんだけどさ……。


 やや透明度に難があるが、ガラスちっくなものはあるようで外がなんとなく見える。


「やっぱここって城なのかな。城壁っぽいやつあるし、んであとは絶壁と海しかないと……オーシャンビューだと解釈すれば、ハワイの高級ホテルに来たと思い込むのも手か?」


 多分この部屋、建物の裏側に位置してんだろうな。仮に格子と窓をぶち破れても逃げれそうにないです。


「はぁ……。待つしかないとして、暇だ。何すっかなぁ……ってそうだ、さっきのあれ」


 逃げようとして騎士にタックルかました時のことを思い出す。


 あの時、俺はタックルするつもりなんてなかった。だけど、フレアさんの脇を抜けて、一気に加速しようとして一歩目を踏み切った次の瞬間……騎士にぶつかってた。


「まぁーつまり……」


 ちょっと力を籠めてジャンプしてみる。


 結構高めの天井近くまで跳びあがる俺。


「こういうことね……」


 身体能力がすごいことになってるのか、もしくはなんか別の力が働いてるのか。


「怪我もしにくいみたいだし、確かあのバカ女神が器を用意するとか言ってたよなぁ……あ、そういや言葉もいきなり通じてたな。この身体はそういうことか。うはぁ気持ちわりぃ……」


 しかもそれだけじゃなく、この世界にはアレがあるんだよなぁ。


「魔法なのか超能力なのかはたまた別物かわからんけど、不思議パワーが存在してるんだよなぁ」


 どうする、やはり俺も男の子だ。ちょっとだけ試してみちゃおうかな。


 内心なかなかにワクワクしつつ、目の前で掌を広げ、若干力ませ


「火よ起これ」


 小さく呟く……。


 ……。


「……」


 醸し出されるのはかめはめ波を大声で練習していたあの頃のあの空気感。


「はいはい、ワロスワロス」

 

 いやいや、全然期待してないからね?そりゃそうだろうよ。俺別に魔導士じゃねぇし、ただの救世主だし。全然そんななんも思ってないから。全然悲しくないからね?


「はぁ~……」


 ため息を吐きつつ、思考を元に戻す。


 まぁー不思議パワーがないとしても、こんな無駄に身体は高性能なわけだし、色々めんどくさいことに巻き込まれるに決まってる。しかも戦闘とか戦争とかそれ関係で……。だって救世主だし。


 ここで自殺するというのも手だが……一度死んであいつにこの状況にされてるわけだからうまくいくかわからないし、単純な気分的に死ぬのは嫌だ。


 だんだんと気分が暗くなってくる。


 帰りたいなぁ……。

 

「はぁ……寝よ」


 結局ふて寝することにする。固めのベッドで横になると意外にも眠気が出てきてウトウトすることができた。


 浅い眠りに身を委ねていると、コンコンというノックの音がし、フレアさんの声が聞こえてきた。


「アキツ様、入室してもよろしいでしょうか?」


「んあ?あ、はい」


 急いで上半身を起こし、身体をズラしてふちに座る。


 部屋に入ってすぐの場所でお辞儀をするフレアさん。


「用意が整いましたので、謁見の間までご足労いただいてもよろしいでしょうか?」


 先ほどとは違い、表情の引き締まったフレアさん。またなんか緊張してるようですなぁ。


「え、ああ……」 


 う~ん確か教皇とかいう人と会うんだよなぁ。


 響き的に多分偉い人っぽいし


「あの~俺ってこんな服装だし、礼儀作法とかもよくわからないんですが?」


 俺の服装は朝刊を配ってた時のモノと同じで上下とも青いジャージだ。機能性はあるが笑えるほどダサい。


「服装はそのままで結構です。ご希望でしたら、こちらで正装を用意いたしますが……。作法については節度を守っていただければ結構です」


 その節度ってやつがどの程度のものなのを聞きたいんだけどなぁ。

 でもまぁ~そもそも俺がそんなへりくだる必要ないか?この世界の階級とか身分とか関係ないといえばないし。

 ただやっぱここでどう振る舞うかで今後に色々響いてきそうでもあるんだよなぁ~。俺への待遇もなんかちぐはぐだし。引き続き流れに身を任せつつ、だけど油断せずの様子見だな、無難にいきましょうか。


「このままの服装でいいならこのままでいいです。わかりました。では早速行きましょうか」


 その答えに幾分か表情が緩んだ感じのするフレアさん。俺がこの場面で「行きません」って言うかもしれないとか思ってたんだろうか。


「はい、では参りましょう」


 さぁ~て、待つのは地獄か天国か……。はぁ~、めんどくせぇー。

次は来週になります。よろしくです

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