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本当に本気で好きなんですっ!  作者: 咲良
少女時代編
5/11

5話「落ち着けぇ!」

何だかワルツっぽい音楽が流れ、辺りには何やら美味しそうな料理がずらりと並んでいる。あっ、あれはまさか生ハムメロン!?あれは……私が前世で食べたくても食べれなかったローストビーフ……!?回りにいる綺麗なお姉さまや未来のお友達の同年代のご令嬢ではなく料理に目をとられながら、私はふらふらとうろつく。ええいこのふわふわしたドレス危なっかしいな。白だし汚したらアウトですよねわかります。と、そこにお母様がやって来るのが見えた。


「綺麗だわ、ルリアナ。さすが私の娘ね!」

「ありがとうお母様。」


茶目っ気たっぷりに誉められた言葉に綺麗に腰を折って返しながら微笑みあう。

今日は、私の十二歳の誕生日である。この世界では二十歳が成人なのは前世と一緒なのだけれど、その前に十二歳で令嬢の仲間入り、十八で貴族の仲間入りというシステムがある。これはいきなり社交界入りしたお嬢ちゃんお坊っちゃんが騙されないようにという理由で設けられたシステムだ。この世界は、案外子供と女性に優しい。要するに疑似貴族体験のような物だ。ここでお友達をいっぱい作ると未来の自分のパイプになる。逆に、ここで取り返しのつかない失態を犯すと将来見方が居なくなる。将来の自分のために今から自覚をもてという意味もあるかもしれない。まぁそんなこんなで、今日は同年代のご令嬢とご子息とその親を呼んだ私のお誕生日パーティーなのだ!

そのままお母様と談笑していると、ぷるぷると震える声が後ろから聞こえた。


「あのっ、ルリアナ様っ。お招きいただきありがとうございます。お誕生日おみゃ……おめでとうございます!」


え!?噛んだ!?今噛んだよねこの子!微笑ましさについつい顔に微笑みを浮かべながら振りかえると、そこには声と同じくぷるぷる震える小動物チックな同い年ぐらいの女の子がいた。


「ご来場いただきありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか……?」


どう?聞いた今の!?私だってこの九年ちょっと遊んでいたわけじゃあないのだよ!ちゃんと貴族様っぽい話し方とか、貴族勢力図とかも頭に叩き込んできたのだよ!内心でどや顔を連発する私に気付かず、目の前の少女はビビりながらもフォン・ハイゼッヒ・メアリーと名乗った。ちなみにこの情報を聞き出すまでに彼女は三回ぐらい噛み、私はそんな彼女を五回ぐらい必死で慰めた。えーとハイゼッヒねハイゼッヒ……。も、もちろん分かるよ?えーっとハイゼッヒ……。あ、ハイゼッヒ男爵。の一人娘のメアリー様ね。分かった思い出した。


「ええっとお父様はどちらに……?」


そう聞いた瞬間、メアリー様は目は虚ろ全身から負のオーラを漂わせながらうなだれた。あ、これ駄目なパターンや。


「会場までいっしょだったんですけど……はぐれちゃいました……。」


お、おう。予想はしていたが、まさか本当に迷子だとは思わなかったため顔がひきつる。乾いた笑みを浮かべた私を見て、無礼者だと思われたとでも思ったのだろう。さっと顔を青くさせると謝りながら退散しようとした。ちょっ、ちょっと待てい!


「待って!」

「ひゃっ、」


とっさにその白い腕を掴み、引き留める。あああ動かないでその綺麗なピンクのドレスがぐしゃぐしゃになるよ!落ち着け!

しばらくすると落ち着いたのか、元々青かった顔を更に青くしながら申し訳ありませんっ……!と腰を90度に折って謝ってきた。待って止めて苛めてるみたいだから。あっ、すいません回りの皆さん何でもないんで。はい。


「あのっ!私丁度お腹が空いたから一緒に回りませんか!」


かたかたと禁断症状を起こし始めたメアリー様を無理やり立食コーナーの方に引っ張っていく。これからどうしよう。っていうかそもそも迷惑がられたらどうしよう。しばらくそのまま立ち呆けていたが、ふと我に返ったメアリー様は、きょとん、ぱあっ!と擬音二段階で喜びを表現した。あ、これ大丈夫っぽい。


「本当にいいんですかっ!?嬉しいです!」


そうかそうかそれは良かった。元々お客様のおもてなしは私のお仕事ですし。いいんだよ。それから甘いもの好きで意気投合し、ようやく話しかけても泣かれない程度に慣れてくれたメアリー様とスイーツ巡りをしたり、一緒にご令嬢に話しかけにいったりと中々楽しく過ごしているとパーティー開始から三刻ほど過ぎていた。早いなおい!外はまだ明るく、今は昼の十二時ぐらいかな?パーティーはまさに宴もたけなわ状態だった。

隣でもさもさとケーキを食べているメアリー様がぽつりと嬉しそうに「あ、リオン様だ。」と呟くのが聞こえる。え?どこ?どちらさま?首を伸ばしてきょろきょろするがそれらしき人物は見当たらず、そもそもリオン様が誰なのかも分からないため探しようがない。そこで(走って行きたいけどルリアナ様の手前……)という心境を顔に思いっきり写し出しているメアリー様に行っても良いよの合図に微笑み、もっと言うと手綱を手放した。

とたんにぱあっと顔を輝かせ、とたとたと走っていくメアリー様を(やれやれどっこいしょ)と心の中で言いながら後を追う。端の方で、壁に沿うように立っていた少女に向かって、メアリー様は一直線に走っていった。あ、タックルした。ぷぷぷ怒られてる。しばらく立ち止まってそのやり取りを眺めていたがメアリー様がこっちに気付いたようなので歩み寄る。何だろう、この別に盗み見してた訳じゃないのに胸に広がる気まずさ。


「リオン様っ、こちらルリアナ様です!」


いや、ここにいる人なら皆知ってると思うよ!検討違いの紹介に苦笑いしながら改めて自己紹介しようと、少女に向き直る。少女も今私に気付いたらしく、こちらを振り返った。


「えっ……?」


呟いた声はどちらの物だったのか。その顔を見た瞬間、私は頭の中に電流が迸る程の衝撃を感じた。

その少女は、「恋の魔法でドッキドキ!~秘密の学園生活~」の主人公に次ぐ主要人物。誰のルートでも必ず登場する、悪役令嬢リオン・ユーグダズ様だった。

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