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本当に本気で好きなんですっ!  作者: 咲良
少女時代編
3/11

3話「……いいんだよね?」

「ルリアナ嬢。」

「ひゃい!」


ずっと黙りっぱなしの私に、業を煮やしたのかルーク様が声をかけてきた。ひゃいって何だよ私!せめてきゃっ!とかだったらまだ可愛いげがあったのに仮にも貴族のご令嬢がひゃいって……!これが女子力の格差社会かちくしょう……!


「ひゃい……?」


あああルーク様が首をひねっている。ごめんなさい大した意味はないんで気にしないで下さい。元々攻略対象なだけなってルーク様は子供の頃から素晴らしいお顔をお持ちでした。青い髪に青い目。ここは公式通りだが、スチルで見たよりも格好いい気がするのは気のせいでしょうか。いいえ気のせいではないでしょう!そのお美しいお顔が怪訝そうに歪められてて、これはこれで興奮するような……

っていうかこの気まずい沈黙どうしよう!ルーク様は頭にはてな浮かべてるし私はだらだらと冷や汗を(心の中で)流しているし。


「ごめんなさい!」


ええいと思って謝ると、ルーク様は不思議そうな顔をした後眉を寄せた。その幼いながらも端正な顔が歪められると、あどけなさが少し抜けて乙女ゲーのスチルで見た大人の彼にだぶる。ワンモア!そのキョトン顔ワンモア!ってしてくれないよね分かってる。


「何に謝っているのだ……?」


どうやら何を謝っているのか分かっていないようだ。まさか奇声をあげてごめんなさいとは言えんし。分からなくていいんですよルーク様。そのまま忘れちゃいましょう。ね。

私の無言の圧力を感じ取ったのか、ルーク様はそれ以上追求してくることはなかった。その代わり、じーっとその真っ青な瞳でこちらを見つめてくる。


「なに?」


耐えきれなくなって問いかけるといや、と濁された。え?敬語?ああ3歳の子供が4歳の子供に敬語使ってたらおかしいでしょうよ。この世界は貴族であろうと子供は子供で、わたくし、とかですわよ、とか言わなくてもいいのだ。それに今はまだそんな偉い人に会ったりしないからいいんだって。私がそんな事を考えていると、目の前のルーク様がポツリと呟いた。


「ルリアナ嬢の目は綺麗だな。」


え?


「綺麗な緑だ。」


……。いやぁぁぁ!!!今綺麗って言った!?私の!?目が!?ひゃっふぅ!どうしたんですかルーク様!場に耐えられなくなったんですか!?私の目は今ルーク様が言った通り薄目の緑だ。緑よりグリーンって感じの。初めて見た時はうわぁゲームで何回も見たよこの顔……って感じだったけど今はもうすっかり慣れてしまった。でも、本当に思ったことを言っただけという風だったので私は嬉かった。ルーク様の本当の言葉って感じで!


「ありがとう!」


溢れる気持ちを抑えずに満面の笑みを向けると、ルーク様は少し照れくさそうに微笑んだ。いやぁ!微笑んだ!可愛い!

その後は談笑しながらボードゲームをしたり、ジェンガ(もどき)をしたりして、それはそれは楽しい時間を過ごした。そして私がこの部屋に通されて二時間ほど経過した頃。


「ルリアナ?入るわよー。」


コンコン、と扉がノックされ、入ってきたお母様はにこにこしている私と若干赤い顔のルーク様を見比べてきょとん、とした後にやり、と悪い笑みを浮かべた。


「仲良くやってたみたいねぇ?ルーク様、ありがとう。」

「大丈夫です。」


あーこれは帰ってからJKのようなノリで根掘り葉掘り聞かれるパターンですね分かります。それにしても、お母様がここまでご機嫌って事は話し合いとやらは上手くいったようだ。よかったよかった。

そのままルーク様は流れるようにお母様と私の手のひらに唇をおとし、お母様もルーク様の耳に唇を寄せた。この世界ではえせ中世と、えせアメリカが混ざりあっていて妙にスキンシップが激しい。耳ににキスをするのは感謝や親しみを表す仕草。手にキスするのは挨拶。額にキスするのは信愛を伝える仕草。そして頬にキスするのは恋や憧れを伝える仕草。唇は愛を伝える仕草だ。流石乙女ゲーこういう所細かい。耳はこういう知り合い同士ぐらいの関係でするもので、額は主に家族やたまに恋人同士でもすることがある。残り二つは完全に恋人用。もう一度言います。流石乙女ゲー。


「ルリアナ?」


はっ!美男美女(片方子供だけど)のキスを眺めてうっとりしている場合ではなかった!私もキスを返さなければ。この場合、私がするべきなのは耳へのキス。だけど私は、ルーク様の耳に唇を寄せキスを落としてから頬に唇をかすらせた。


「わっ!?」


驚いた声をあげ、ルーク様が飛び退く。一応応接質的な場所に通されていたので当然あるソファーにつまずいて、ひっくり返った。


「うわっ!!」

「まぁルーク様。大丈夫ですか?」


見たところ怪我もないようなので、お母様がゆっくり近寄る。立ち上がってからもルーク様はしばらく呆然としていたが、はっと立ち直るとぎぎぎと音がたちそうな動きで私の方を見て、そして顔を赤くしながらゆっくりと私の頬に口づけた。

ぼんっ!そんな音が聞こえそうなほど赤くなったのはきっと私です。自分からやったくせに恥ずかしくて死ぬ……!でも、キスを返してくれたということは同じ気持ちって事でいいんだよね……?うん!いいと思うことにした!

お母様はそんな私達をまぁまぁとでも言いたげに見ている。うぉぉう何で私あんな事したんだろう……!子供だから許されるよねって、思ったんだよ……。今さら自分が何をしたのか思いだし、わたわたしている私とさらにわたわたしているルーク様を見ながら、お母様はあらあらとでも言いたげに口許を手でおおった。目が笑ってますよ。


「じゃっ、じゃあまた今度。」

「あっ、ああ。また会う日を楽しみにしている。」


ぎこちなくお互い挨拶をして、私は逃げるように部屋を出た。頬が熱くて火傷しそうなので、早く帰りましょうお母様。


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