華麗な王宮の裏側なんてこんなものです。
父さん、疲れました。
もう限界だよー。
「書類をフキイロ様の執務室に届けてくれ。」
憧れのレギ・エアリ先輩に
どーんと書類を押し付けられました。
重いです。
…あこがれは政治官としての腕前だけです。
今のところですが。
「帰りに、社員食堂でるり茶ポットでもらって来てください、あと、砂糖とミルク。」
リカ王子は端末から顔も上げずに言いやがりました。
砂糖?ミルク?なんですかそれ?
るり茶にゃいれないと思いますよ。
私はこのブルー・ルリーナ王国の
王宮に今年入った新人
セレスト・フェリアです。
一応政治官でリカ王子の
執務室配属になりましたが...。
「あと、洗浄符もお願い。」
デルフィーヌ・マーシェ先輩が言った。
エアリ先輩の婚約者だよね。
洗浄符命だけど優しいです。
「売店いくならランシャツもお願いします。」
リカ王子が言った。
ランニングシャツですね。
綺麗な王子の下着はランニングシャツなんだ。
なんか知りたくなかったよ。
もうすぐ真王様がご訪問されるので仕事はまた前倒しです。
過労で倒れる自信があります。
父さん、瑠璃の実運びの方が楽です。
うちはケエラリルの町で
瑠璃の果樹園してます。
わー、関係無いことも出てきたよー。
現実逃避?現実逃避なの?
「フキイロ様、書類が参りました。」
取り次いでくれた政治官が言った。
わー、どこも目の下くまさんがいっぱいだ。
「あ、ありがとう、今年のリカんとこの新人よね、よろしく。」
リカ王子の一番上のお姉さん。
この国のお世継ぎのフキイロ様が
端末から顔をあげていった。
わー、綺麗な王女も仕事中は
メガネにひとつくくりの髪なんだ。
くまさんが目の下にいるし。
「はい。」
リカ王子の執務室より確実に
多い書類をみながら思った。
リカ王子のところで良かったよ。
さてと、社員食堂よってっと。
「すみません、ルリ茶ポットでください、砂糖とミルクつけてください。」
私はカウンターで食堂のおばちゃんに
声をかけた。
確か、ドバータさんだったっけ?
「リカちゃんだな、その注文、全く超甘党なんだから。」
ドバータさんがるり茶と砂糖瓶と山羊ミルクのパックをトレーにおいた。
「あんたも、疲れてるみたいだね、飴でもなめな。」
ドバータさんが大きなルリ飴をくれた。
「ありがとうございます。」
私は飴をポケットにいれた。
「はい、気を付けてもってお行き。」
ドバータさんがトレーをわたしてくれた。
あとは売店だよね。
ランシャツあるかな…。
「リカ王子だよね、はい、白一択だけどね。」
売店の販売員ギーファルさんがまるでおっさんが着るようなランシャツを出してくれた。
ああ、綺麗な王子はこれを着てるのか…。
いいけどさ。
「まあ、いつも、タマイロ王女が買うのはこれだからあってると思うよ。」
ギーファルさんが言った。
タマイロ様はリカ王子の妹です。
王家には今、上から、
フキイロ王女(跡取り、既婚、子供二人。)
ベニイロ元王女(臣下になってアルファンガスの家名を賜る、娘一人。)
リカ王子(独身、恋人確認されず。)
タマイロ王女(婚約者あり。)
の4人子供?がいます。
リカ王子が一番残念王子なんじゃないかな?
マーシェ先輩の洗浄符買って…。
「ただ今戻りました。」
私はリカ王子の執務室に戻った。
「すみませんね。」
リカ王子が微笑んだのでルリ茶と砂糖とやぎミルクを渡した。
ああ、どっさり砂糖とミルクいれて飲んでるよ。
綺麗な王子は甘党らしいです。
「相変わらず、個性的な飲み方ですね。」
マーシェ先輩が魔化マネーを私に送信しながら言った。
「美味しいんですか?」
私は聞いた。
「美味しいです、飲みますか?」
リカ王子が言った。
わー、甘い……駄々アマだ。
ルリ茶の繊細な風味を消してる。
「美味しいでしょう?」
リカ王子は微笑んだ。
「…水飲んできます。」
私は言った。
後味わるー。
ああ、駄々アマ(党)王子は
やっぱり残念王子だ。
ルリ茶も名産品なのに…。
「好奇心は災いのもとってね、駄々アマなのよね。」
マーシェ先輩が水をくれた。
マーシェ先輩も飲んだんだ。
「話してないで、仕事だ!」
エアリ先輩が言った。
はいはい、やりますよ。
今日も十倍部屋で仮眠かな…。
寮に帰りたいよ~。