一
オレは出雲大社を後にする。
「む、待て、私を置いて行くな」
「俺達は急いでるんだよ」
ただし、足早に。
興味本位で千夜に連れられ出雲大社に寄ってみたら、なんてことはないただの古ぼけた神社だった。いや、神社自体が持つ荘厳さには驚かされるものはあったが、それだけだ。酷くつまらない思いをした。
「そうであったな。すまなかった」
「いや、たまには息抜きも必要だろ」
なにせ、歩きっぱなしだったからな。
「まあ、わかってくれればもう何も言わないよ」
「いや、何も言ってくれないのは少し困るな」
「何か忘れてんのか? オレは何も知らないぞ」
知ってると思うけど。それとも、他の理由か?
「いやいや、道中無言で歩くだけというのは物足りないであろう?」
「俺に聞くなよ。自問自答しててくれ」
すれ違いざまに鳥居を撫でながら答える。
「私は物足りないと思うのだがなっ!」
「あー、オレもだなー」
「そうか、やはりそうであろう。そうに決まっている」
「そうだな」
今日も空はどんよりと曇っている。昼だから歩くのには苦労しないが、いつ雨が降るか心配でしょうがない。
「ところで被。一つ聞いていいか?」
「面倒臭い」
「良いだろう、もう一度言うぞ。一つ、聞きたいことがあるのだが、どうだ被?」
目を逸らしているにも関わらず、ひしひしと言い知れぬ圧力が千夜から伝わってくる。ここで無視しても、おそらく千夜は聞いてくるだろう。
「……なんだ?答えられることなら答えてやれるぞ」
「それは嬉しい限りだ」
早くしてほしい。
「三人ほどであろうか、私たちは囲まれている、ということに気付いているか?」
「そういうことは早く言え」
「彼は無気力な被でーす。そして隣りの彼女はちょっと話し方が可笑しい千夜ちゃんでーす。別に二人は付き合ってるわけではありませんよー」
↑誰でしょうね?
天の声……。