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こんにちはカラスです!

あるところにシンデレラというとても美しい女性がいました。僕にもよくえさをくれます。あとはそのえーと、そのなんだっけ?


うんうん、よくできました。

ナレーター交代致しました、ねずみです。

前々からその兆候はあったものの、父親が死ぬと同時に再婚した義母と継母にシンデレラは陰湿にいじめられるようになったそうです。

可哀想!とても可哀想です!そんな彼女の目は死んだ魚の目によく似ています表情筋もピクリともしません。


よく分からないけどそれってとてもいい事だよね!だって魚美味しいもん。


そうかな?あ、ほらまた今日もシンデレラが次女に苛められている。


「シンデレラまだトイレの掃除が終わっていないじゃない!今日の夕食は抜きよ。舞踏会にも連れて行ってあげないわ!」


「・・・」


「なによ!不満なの!?」


「いえ、どうせ掃除しても夕食はくれないし、舞踏会にも行けないだろうなーって思いまして。」


「そんなことあるわけないでしょう」


「そんなことがあるのですよ、お姉さま。現に昨日私はしっかり働いたのに食べたのはジャガイモを2個ふかしたものだけです。その前の日仕事に間に合わなかった私が食べたものはにんじん1本。大して変わりません」


「それがなによ。食べさせてもらっているだけありがたいと思いなさい!」


「いえ、労働に使うエネルギーに対して食事が見合ってないです。あーだるい。動くのもうるさいおばさんや小娘の戯言を聞くのもだるい。」


「まぁ、お姉さま、お母様!!」


次女はまさかのシンデレラの反撃に顔を真っ青にし、姉と母を呼びに部屋を出て行きました。

部屋といっても可哀想なシンデレラは屋根裏で生活しています。

それにしても困りましたシンデレラ、このまま継母を呼ばれると今晩どころかこれからのご飯すら与えられなくなってしますかもしれません。



「それにしてもまぁって、くす」


笑っているはずなのに、目が死んでいる系女子のシンデレラの表情筋は全く動かず楽しそうじゃありません。


次女が出て行った扉に木を置き簡易な鍵をし、シンデレラはおもむろに前から作ってあったシーツとシーツを組み合わせた簡易ロープをベッドにくくりつけ屋根の窓から先端を落としました。

その次に汚い箱を開け、大きな袋を取り出し背負い、そのままレンジャー訓練のごとくするするとシーツをつたって降りはじめました。僕は袋の上に移動します。カラスは外で見ています。

というか手馴れていますねシンデレラ。



Q.袋の中には何が入っているのですか?

A.父や母が存命の時に買ってもらった(形見も含む)金類やアクセサリー、服等です。


「金遣いがあらいのは最初から分かっていたし、あまり高くないものだけは父の形見なんです!!とか言ってわざと没収されるように偽造しました。ほんとお目出度い人たち。」


シンデレラはとても計算高いですね。(チュー)


だけどそんな所もすてきだよ!(カー)


「世の中しくしく泣いているだけじゃ何も解決しないのよ、ねずみさん、カラスさん。」


あざやかな手さばきで地上に降り立ったシンデレラは今まで自分がいた部屋が騒がしいことに気付きました。

おそらく継母がシンデレラの部屋の前まで到着したのでしょう。

そんな継母や義姉を尻目にシンデレラは歩き出しました。


これからシンデレラはどこに行くのー?


「父が存命のころ懇意にしてくれていた伯爵のもとに。そこで養女として受け入れてもらえることになったの。それにこの家は近い内に破産する、そんな所にいてもあなた達にご飯をあげられないわ」


難しくてよく分かんないけどそうなんだ。だったら僕もついてくよ!だって僕はシンデレラが大好きだもん。その死んだ目だって僕にとったらとても素敵だよ。美味しそうで。


僕ももちろん付いていきます


「ふふ、ありがとうカラスさん、ねずみさん。ええ、一緒に行きましょう。」


カラスは嬉しそうにカーと鳴きます。

相変わらずシンデレラの表情は変わりませんが、今のはきっと、喜んでいるのでしょう。


それにしてもシンデレラ、今夜は舞踏会なのによかったのですか?

運がよければ王子様に会えるかもしれないのに。


僕達は魔女にお願いをしようとしていたのです。

シンデレラを綺麗に着飾ってお城に連れて行って下さいって。

でも実際はこんな日にシンデレラは家出をしてしまいました。



「ああ、それこそどうでもいいです。王子?はっ。綺麗な顔は自分の顔を見るだけで充分。それに今更美味しい料理なんて食べても胃が受け付けないわ。」


「私はもう・・・」


シンデレラは初めてずっと歩きどうしだった足を止めました。


どうしたのー?


「ううん、なんでもないわ」


少しだけ眉を困ったように寄せただけでシンデレラはまた歩き出しました。



その後辿りついたきれいなお家。

案内されたシンデレラの部屋は埃くさくないし、せいけつで綺麗だ。



今日からは一緒に寝ようとぼくたちを部屋にいれてくれた。

ぼくはベッドの端に、ねずみは籠に小さなハンカチをしきつめた場所に置いてくれた。


ねずみが教えてくれた。

シンデレラはもうあんなつらいおもいをしなくてすむんだって。

よかった、安心したら眠くなってしまう。


優しいさびしいシンデレラ。


僕のお父さんが言っていた、昔はよく笑っている可愛い子だったって。でも彼女は母親がしんじゃった時に笑うのをやめ、父親がしんだときに表情がなくなったんだって。僕がはじめて会うときにはもう無表情だった。


気付いて欲しくて鳴いていたらその内ぼくたちと会話できるようになったシンデレラ。

とても嬉しかった。


でもしばらくしたらねずみが悲しそうに言ったんだ。

ずっとこうしていたいけど僕達のほうが早く死んじゃうからシンデレラは一人ぼっちになってしまうって。

そんなの嫌だった。シンデレラは寂しがりやなんだから誰かが一緒に居てくれなきゃこまる。そしたらねずみが魔法使いに頼ろうと言った。それに賛成した。

魔法使いをよぶのは失敗しちゃったけど、ねずみはここにいればシンデレラは寂しくないし苦しまなくて済むって言ってたんだ。それならよかった、もう少しシンデレラといられるんだ。



ねぇシンデレラ幸せになって。


そしたらぼくたちもとても幸せなんだ。


そのためならなんだってしてあげるのに。


そのためなら死んだっていいのに。

ご閲覧ありがとうございました。

2話はシンデレラの独白になっております。

シンデレラはあまりいい性格ではないのでお読みになる際はご注意ください。

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